午前3時になった頃、私はヘレンに言った。 「あなたはどうか分からないけど、私、もう帰ろうと思うの。眠たくなっちゃって」 「そうね。私も横になりたいわ。さあ、もう帰りましょう」 ヘレンはそう言って立ち上がり、ビルの手を取った。私も立ち上がって、ビルのもう一方の手を握った。 車は運転席と助手席が別々のシートになっているので、誰か一人は後ろに座らなければならなかった。ビルは、ヘレンがタイト・ドレスの姿なので、自分が後ろに乗り込む方が楽だと察して、自分から後部座席に乗り込んだ。 ヘレンの家に向かって車を走らせると、ビルが言った。 「僕をオフィスのところで降ろしてくれると嬉しいんだけど、いいかなあ? 車をそこに置いてあるんだ」 「ええ、いいわ。でも、最初にヘレンのところに行くわよ。行く途中にあるから」 正確には、これは事実ではなかったけれど、私は、そう思えるように道を選んで走った。 ヘレンの家に着くと、彼女は、「二人ともちょっと家に寄っていって? コーヒーを入れるから」と言った。 「オーケー。じゃあ、ヘレンとビルとで先に行ってて。私、トランクからちょっと荷物を取ってから、行くから」 車から降りながらそう言った。ヘレンは、私が家に戻らないときに備えて、いつも寝泊りの用意を車に置いているのを知っていた。 家に入ると、すでにヘレンとビルは、立ったまま熱っぽくディープ・キスをしていた。へレンがコーヒーを入れるふりをしようとしたり、ベッドに入って寝ようと思っていなかったのは、あきらか。 私は寝泊り用のバッグを玄関脇に置いて、ビルとヘレンのそばに寄った。ヘレンは、私が来たのに気づくと、ビルから唇を離して、私の方を向いた。今度は私とへレンがキスをする。私は口を大きく開いて、彼女と舌を絡めた。どちらかと言うと、見ているビルを楽しませるためのキス。 ひとしきりレスビアン風のキスをして見せた後、私は顔を離し、ヘレンに後ろを見せた。ヘレンは私のドレスのチャックを降ろしていく。チャックが最後まで降ろされたのを受けて、肩をすぼめた。ドレスがするすると体を滑り降りて、足元に落ちた。床に落ちたドレスから踏み出し、今度はヘレンの方を向いて彼女のドレスのチャックを降ろした。何秒か後に、彼女のドレスも床に落ちていた。その後、ヘレンと二人でビルに注意を向ける。 ヘレンは彼のシャツのボタンを外し、私は袖口のボタンを外した。あっという間に、シャツはビルから剥ぎ取られ、椅子に掛けられた。 ビルの上半身を裸にすると、ヘレンは早速、彼の前に立ってキスを始めた。最初は唇に、その後は徐々に体を下げながら胸板にキスをしていた。私は彼の後ろの周り、後ろから両手を伸ばしてズボンのベルトを外した。 ズボンを下げた後、床に跪いて靴を脱がせてあげた。ビルは、靴がなくなったおかげで、簡単にズボンから離れられた。私は、それを見届けた後、今度は白いコットンのブリーフを脱がせた。 ビルのお尻はうっすらと体毛で覆われていた。こういうお尻にはあまり慣れていなかったけれど、私は気にせず、左右の尻頬にキスを始めた。それから唇を這わせながら徐々に上へあがり、やがて私の唇は彼の肩にキスをしていた。ビルは私よりかなり背が高いので、私にはそこまでしか届かない。 彼の背中にチュッチュッとキスを繰り返した後、今度は前に回り、ヘレンの背中と首筋にキスを始めた。それと同時に彼女のブラジャーのホックを外し、床に落とした。するとヘレンも私の方を向いて、私の唇にキスをし、同時に私のブラも外して、床に放り投げた。私とヘレンはキスをしたまま、ゆっくりと体を沈めて、ビルの前、床に膝をついた。 ヘレンと私は、膝をついて半立ちの姿のまま、ビルの方を向いた。彼のペニスが真ん前に来ていて、ピンと立って私たちを向いていた。 前に想像したとおり、本当に素敵なペニスだった。長さは20センチ以上あるし、太さは6センチ以上。その亀頭は、とても美しい形をしていて、見たところ、今にも爆発しそうに膨張している。それにとても濃い体毛で、ごわごわの茶色の陰毛が股間から陰嚢にかけてを覆っていた。鈴口からはプレカムが溢れそうになっていて、ビルが興奮していることを仄めかしていた。 でも、彼が本当のところどれだけ興奮していたのかは、私には、ペニスに手を触れるまで分からなかった。勃起した美しいペニスに私が手を添えた瞬間、ビルは低いうなり声をあげ、射精を始めたのだった。湯気がのぼるほど熱い、白いロープが5本、連続して噴出してくる。大半はヘレンの顔に降り注いだけれど、私の乳房にも何滴か落ちた。 可哀想なビル。でも、その顔に浮かんだ表情はとても得がたいものだった。がっかりした表情と同時に、恥ずかしそうな表情も浮かんでいる。その顔はすぐに赤く染まった。 「二人とも、ごめん。自分でも何が起きたか分からないんだ」 「私には分かるわよ、ビル」 私はそう言いながら、彼のペニスをゆっくり擦り続けた。 「あなたは、私たち二人に、とても興奮していたので、出しちゃっただけ。でも、気にしないで。ヘレンも私も、これを使える状態に保つことにかけてはとても上手なの」 そう言って私は彼の亀頭を口に含んだ。
「どうやら、お前は、彼を取り戻したようだね」 リディアは嬉しそうに語った。「簡単じゃなかったし、あの男もずいぶん抵抗したようだが、今は、お前は、あの男の女に戻れたし、あの男の方もお前のものに戻ったようだ」 バーバラは、憂いに沈んだ表情で祖母の顔を見た。彼女は、それほど確信は持っていなかった。確かに、事態は良い方向に進んでいた。だが、沈静化させなければならない問題がまだたくさん残っていた。沈静化というより、解決すべきと言うべきか。 「何が気がかりなんだい?」 リディアは、孫娘の顔を見ながら尋ねた。 バーバラは、しばらく下唇を噛んでいた。それから、ようやく答え始めた。 「かなり前のカウンセリングでスティーブが言ったことなの・・・私とのセックスで良かったと感じたのは、結婚して2ヶ月ほどまでだったとか、そんなことを・・・」 バーバラは悲しそうな目で祖母を見た。「ノニー? 彼、どうしてあんなことを言ったのかしら?」 「まあ、ただの当てずっぽうだけど、多分、感じてた通りのことを言ったんじゃないのかい?」 「ノニー! ひどいわ! 優しいこと言ってくれないの?」 バーバラは腹を立てた。 リディアはくすくす笑った。 「いいかい? セックスというのは優しいばかりじゃないんだよ・・・激しく、汗まみれで下品になることもあるものさ・・・淫らになりきると言うか・・・」 「わ、私は・・・」 バーバラは、どうしてよいか分からないような面持ちで祖母を見た。確かに、以前、ノニーは、誰についてのどんな話題でも話しあってもかまわないことにしようと言っていた。だが、この話題は暴走しそうな気がした。・・・しかも急速に手に負えなくなりそうと。バーバラはどう返事してよいか分からなかった。 「久しぶりにスティーブと愛し合ったわけだけど、どんな感じだったんだい?」 バーバラに同情しながらリディアは尋ねた。リディアは、バーバラが、しばらく前から悩んでいるこの話題にどう接近してよいか分からないでいると察知した。 「素敵だったわ」 バーバラは即座に答えた。「彼はとても優しくて、愛がこもっていて、気遣ってくれたわ・・・二人で達したとき、私、これまでの人生でこんなに素敵に感じたことなかったと思ったわ」 「ということは、スティーブは、お前を愛しながら、たくさんキスしたわけだね?」 バーバラは頷いた。 「お前の胸を穏やかに手のひらで包んで、乳首に優しくキスしたと?」 バーバラの首筋は、ほんのりとピンク色に染まり始めた。こういう話題は、母親とも話し合ったことはなかったし、ましてや祖母と話し合うなど夢にも思っていなかった。 「えっ・・・ええ・・・」 「腕を擦ってくれて・・・それから太ももも・・・いたるところ、優しく触れてくれた・・・それからお腹をキスしながら下って行って、そして・・・」 「ええ、そう・・・彼、全部してくれたわ」 バーバラはリディアの言葉をさえぎるように早口で答えた。リディアが話せば話すほど、首筋の紅潮はますます色を増し、ますます簡単には消えなそうな兆候を示すようになった。 リディアは、そんなバーバラを咎めることなく、微笑みかけた。 「それで彼が・・・彼がお前の中にペニスを入れた後は、ゆっくりと優しくしたんだろう?・・・お前が彼を受容するのを確かめながら?」 バーバラは、もう、頷くことしかできなかった。 「それに電気も消していた。お前たちすでにベッドに入っていたのだから。そうだろう?」 バーバラは再びこくりと頷いた。 「お前とスティーブが愛し合うときは、ほとんどいつもそうしていた。そうだね?」 バーバラは、今度は、かなり長い間、祖母の顔を見つめ、それからゆっくりと頷いた。ノニーは、何か、大成功を収めたかのような満足顔をしていた。バーバラは、ノニーが何かたくらんでいるのではないかと思い始めた。 リディアは立ち上がり、窓際に行き、ちょっと外を眺めた。バーバラは、リディアは、今まで言ったことすべてを・・・あまりにプライベートすぎて誰とも話し合うことなどできないと彼女には思える、そんなすべてを考えているところなのだろうと思った。 急にリディアは振り向いて、バーバラを見た。 「それで・・・スティーブがお前をキッチンテーブルにうつぶせにさせて、後ろから滅茶苦茶に犯した最後の時は、いつ頃だったんだい?」 唐突な質問に、一瞬、バーバラはきょとんとした。それから、ハッと息を呑んだ。 「ノニー!!」 リディアは嬉しそうにクククと笑った。若い世代の者を唐突に驚かせることも、歳を取ることの楽しさの一つと言える。 「さあ、いつだったんだい?」 リディアは引き下がろうとしなかった。 「ずっと前だわ」 バーバラは弱い声で答えた。 「新婚時代から?」 「・・・だいたい、そう」 バーバラの声は、囁き声ほどに小さくなっていた。彼女は必死に堪えようとしていたものの、首筋に広がっていた赤みは上方の顔面へと広がっていた。 リディアは声を上げて笑い出した。
「お願いだから、もうこんなゲームはやめて!! あなたのせいで、私の人生が滅茶苦茶になっちゃう!!! 結婚指輪を返して! そうしたらあなたに何の迷惑もかけないって約束するから。私の人生を元の普通の状態に戻したいだけなの。私の真意を知りたいなら、教えてあげるわよ。確かに最高だったわ。そう、あんなセックス初めてだった。あんなに激しく、何度も達したことなかった。何度、いったか、数え切れない。でも、こんなことをするのは、完全に間違っているのよ。あまりにも危険が多すぎる。こんなことは今すぐやめるべきなの。だから指輪を返して。そうしてくれたら、全部、秘密にしておけるから。お願いしているの。分かって!!!」 先生のメールを読みながら、その感情があからさまな言葉に、むしろ感動すらしていた。俺は、先生がこれまで経験した中で一番の男というのが分かった。俺が計画していることを先生も知ったらいいのに。先生を完全に俺の所有物にするのだ! 返信文を打ちながら、俺は邪悪な笑いを浮かべていた。 「ようやく先生も分かったようだな。言っただろう? 俺の愛奴隷となる身分を受け入れるのは難しいことではないと。俺も、お前のことを十分に気遣う、実に愛に満ちた優しいご主人様なのだよ。お前が、ようやく、旦那のセックステクニックに比べて俺の方が格段に優れていることを認めるというハードルを越えられて、俺は実に満足している。お前と俺の間に、確かな絆ができつつあると感じないか? 俺の言うことに従い続けるのだよ。そうすれば、お前は際限なく喜びを与えられることになるだろう。だが、再度、忠告しておくぞ、グラフ先生! 不服従があれば、その度に調教がますます厳しくなっていくだろうということだ。お前はまだ入り口に差し掛かったばかりだから、調教は軽度なのだよ。過ちをすることで調教を受け、それによって学んでいくのだ。服従を拒み続けたなら、調教が厳しさと激しさを増していくことを忘れるなよ ご主人様より」 メールを送信し、パソコンを落とした。ベッドにもぐりこみ、すぐに、明日の朝、どうやってあのレストランの女子トイレに忍び込むかを考えた。例のクラブにいた人の姿が頭に浮かぶ。それに、あのケイトという、いかした女マネージャーの姿も。 ・・・テストがあると言うが、どんなテストなんだ? 天井を見ながら考えた。・・・病気があるかを調べる検査か? それとも何か別の?・・・ 何度も寝返りを打った。時計を見ると、もうかなり遅くなっているのが分かった。目覚ましを7時にセットし、眠るために、何か他のことを考えようとした。 *** 目覚ましベルに、飛び起きた。素早くバスルームに行き、シャワーを浴びた。両親はすでに仕事に出た後だった。普段着のジーンズとTシャツに着替え、ガレージに走り、自転車に飛び乗った。ブラッドの母親に見つからないようにと願いながら、例のレストラン、つまりシーサイド・ダイナーに向かった。 レストランの前に着いた後、何気なさを装いながら、道路を挟んでレストランの向かい側にあるコーヒーショップに入った。ほぼ満員だったが、幸い、窓側の席が一つ空いていた。そこに座る。 ウェイトレスが来て注文を聞いた。俺は顔を上げ、彼女の胸についている名札を見た。 「トリスタ・・・可愛い名前だね」 ウェイトレスの愛らしい緑色の瞳を覗き込みながら言った。。 「ありがとう」 彼女は、顔にかかっていたブロンドの髪をかき上げながらにっこりと笑った。俺のコメントが気に入ったのだろう。そして注文を書くパッドとペンを出した。 「ジェリー・ドーナッツを一つと、コーヒーをもらおうかな」 セクシーな緑の瞳を覗き込みながら注文した。 俺は、奥の厨房へ戻っていくトリスタを目で追った。お尻の辺りも形がよく、目を吸い寄せられる。なぜか、そのまま彼女のジーンズの尻を見つめてしまっていたのだが、彼女が肩越しに振り返り、俺に微笑みかけるのを見て、俺は顔が赤らんでしまった。 ここに来た用件を思い出し、窓の外、シーサイド・ダイナーに注意を集中させた。時計を見る。そろそろステファニが金を持ってくる時間だ。 テーブルにコーヒーが置かれる音がして初めてトリスタが着ていたことに気がついた。顔を上げ、彼女の瞳をまっすぐに見る。トリスタは、相変わらず笑顔を見せながらドーナッツをテーブルに置いた。 「他に何かいかがですか?」 まだニコニコしている。 「いや。どうもありがとう」 丁寧に答え、窓の外に視線を戻した。 ブラッドの母親が来るのを辛抱強く待った。1分が1時間に思える。時計を確認し、窓の外を見ながら、ドーナッツを食べ、コーヒーをすすった。約束の時間が過ぎ、俺は次第に落胆し始めた。 その時、一台の車がレストランの駐車場に来るのが見えた。運転者は見えなかったが、ブラッドの母親の車のように見える。ドアが開き、中から人が出てきた。ステファニだった。 車から出たステファニは後ろのトランクに周り、素早くあたりを見回した。トランクを開け、もう一度、あたりを見回す。それからトランクの中に上半身を傾け、再び体を起こし、またも、あたりを見回した。そしてレストランの入り口へと早足で向かった。俺の指示通りに、茶色の紙袋を持っている。 「何か他にご注文は、いかがですか?」 突然、俺の背後から声がした。 ステファニに意識を集中させていたので、俺はトリスタが来ていたことに気がつかなかったらしい。 「いや、もう結構・・・もうちょっとしたら出るので」 できるだけ優しく返事した。 トリスタは請求書をテーブルの上に置き、離れていった。俺はポケットの中から5ドル札をだし、請求書の上に置いた。それから、再び、窓の外に意識を集中させる。ステファニが出てくるのを待った。 少し経ち、レストランのドアが開いた。中からブラッドの母親が出てくる。手には白い発泡スチロールのカップを持っていた。多分、コーヒーだろう。もっと重要なことは、茶色の紙袋を持っていないことだ。 心臓がどきどきし始めるのを感じた。額に汗がにじんでくる。あと何分かしたら、例のクラブに入会するための金が手に入るのだ。 ステファニは車のドアにキーを差し込み、それから、もう一度あたりを見回した後、運転席に座った。 彼女の車が走り去るのが見えた。ステファニーがこの近辺を何回か周回する可能性も考え、俺は、何分か待つことにした。 15分後、とうとう行くことに決めた。コーヒーショップから出て、素早く、向かい側のレストランへ向かった。あたりを見回し、ステファニがどこかで見ていないか確かめた。大丈夫だ、危険性はない。十分確認した後、シーサイド・ダイナーの入り口のハンドルを引き、中に入った。
翌朝、マーサは、出社してすぐ僕のオフィスにやってきた。興奮しているようだった。笑みを見せながら、訊いてくる。 「心づもりはできてる?」 「それより、君のほうこそ。楽しそうな顔をして。君は女性は好きじゃないと言っていたんじゃないかと思うんだけど」 「あなた、私はあなたがイクところを見るのが好きじゃないと考えてるの?」 僕は、マーサの言葉を信じてよいのかどうか分からなかった。確かに、マーサは、彼女自身の快感よりも、僕が快感を感じることの方に非常に興味を持っているように思えた。 マーサはランチタイムにも僕のオフィスに来て、僕にフェラをしたいと言った。確かにそれは魅力的なことだったけど、夜まで待てば、もっと気持ちいいだろうと思った。マーサは信じられないような顔をしていたが、ともかく、その行為はせず、代わりに僕たちは昼食を取りに外に出た。二人ともほとんど話しをしなかった。・・・二人とも、多分、気味が悪いほど、ニヤニヤした顔をしていたと思う。 勤務時間が終わり、僕はマーサにくっついて彼女のアパートへ行った。アパートに着くと、マーサはワインを1本と、グラスを3つ用意した。何分もしないうちにジョイスが玄関に現れた。僕が知っている普段のジョイスには似つかわしくなく、かなり恥ずかしがっている雰囲気だった。 3人とも腰を降ろし、ワインを飲んだ。大半は、マーサがおしゃべりをしていた。彼女はいろんなことについて話しをしていたが、多分、彼女はくつろいだ雰囲気にしようとしていただけだと思う。 しばらくして、ようやくマーサが言った。「さあ、そろそろ時間ね」 そんな感じの言葉だけだった。マーサは、あのミステリアスな笑みを口元に浮かべながら立ち上がり、ジョイスのところに近寄った。座ったままのジョイスを見下ろす。一方のジョイスは、恍惚状態になったような顔でマーサを見上げていた。 マーサは体を傾け、ジョイスの唇にキスをした。ジョイスは、うっとりと目を閉じ、座ったまま、マーサにキスをさせていた。 マーサはキスを解くと、ジョイスの手を取り、立ち上がらせ、寝室の方へ連れて行った。歩きながら僕に微笑みかけ、ついて来るようにと合図を送った。 僕が寝室に入ったときには、二人ともベッドの上に横になってキスをしていた。今はジョイスの方が主導権を握っていて、マーサは仰向けになり、ジョイスが彼女に覆いかぶさっていた。キスをしながらマーサのブラウスのボタンを外している。 僕は、その場にただ突っ立っているのがちょっと間抜けのように感じ、どこか腰掛けるか、横になれるところがないかと探していた。ジョイスは僕の様子に気づいたらしく、マーサと一緒に少しだけ横のほうにずれて、僕が横になれるようなスペースを空けてくれた。僕とジョイスでマーサを挟んで横になる形だった。 ジョイスはキスを再開せずに、片肘で体を支え、起こしながら、僕に微笑みかけ、マーサの服を脱がし続けていた。マーサもそれに応えて、ジョイスのブラウスのボタンを外し始めた。「あなたも脱いで」 と僕に言う。 信じてくれないかもしれないが、僕は、なぜか裸になるのが恥ずかしい気がした。見ていると、マーサはジョイスのブラウスの前を開き、それから、ブラジャーのホックを外そうと、両手をジョイスの背中に回した。 僕だけが服を着たまま二人を見ているのは、マーサもジョイスも好まないかもしれないと感じ、ようやく僕もシャツのボタンを外し始めた。ジョイスは一度、体を起こし、ブラウスとブラを一気に脱ぎ去った後、再び横になった。確かに。ジョイスは見事な体をしている。 ジョイスは横になると、マーサの頭を抱き寄せ、自分の胸に押し付けた。
僕は脇テーブルに手を伸ばし、ティッシュを取ってディアドラの涙を拭き始めた。2、3回鼻をかませ、その後は、ただ優しく抱き寄せた。次第に彼女のすすり泣きは収まっていった。大きく息を吸っては、ゆっくりと吐き出すのを繰り返しているようだった。やがて、ほとんど身動きしなくなり、落ち着いたように感ぜられた。 僕は彼女のあごを上げさせ、ディープキスを始めた。僕の見たところの印象だが、どういう理由か、ディアドラは、僕に対する感情を僕に知られたくなかったらしい。そこには、何か深遠で、暗い秘密が潜んでいるようだった。だが、そのことについては、後で考えればいい。 ともあれ、僕が拷問をかけるようにして彼女に真実を搾り出させてしまったというのは事実だ。実に簡単だった。軍隊での勤務に志願することも考えているところだ。女性捕虜全員に対して、公的な尋問者になれるかもしれない。全員から情報を引き出してしまうだろう。 ディアドラは、彼女の意に反して真実を白状した。その後、もう一度、その真実を認めていた。僕を愛しているという真実。 この件に関する僕の理論は次の通りだ。 彼女はセックスされる気持ちができている。いや、セックスされたくてたまらなくなっているのだ。僕を愛していると言えば、自分が愛し、自分を愛してくれる男性とセックスできることになる。互いが相手を愛していることを、双方とも知っていることになるのだから。これは、ちょっとした理論になるはずじゃないのかな? 僕自身は、ディアドラとセックスしたかったし、理由もまったく同じだった。愛していると告げあうことは、契約を結ぶことに似ている。愛を告げあうことは、人をただのセックス・フレンドの関係から、魂が通じ合った間柄へと変える、あの点線の上に書かれるサインのようなものなのだ。それは、愛し合う二人が永遠について思いをめぐらし始める瞬間なのだ。 僕は自分自身を握って、ディアドラの陰唇に沿って頭部を擦り始めた。彼女はすでに濡れていた。泣いたことで、淫らな気分にもなっていたのに違いない。はかなく、頼るものを求めた風情。守ってあげたくなる雰囲気。 僕は彼女がそんな弱い気持ちになっているところに付けこみたくはなかった。ただ、彼女を奪いたいだけ。 ディアドラを仰向けに倒した。亀頭で彼女を擦り続ける。唇の間に頭部を押し込んだ。滑らかに吸い込まれていく。まさに、僕のペニスは、自分の居場所をちゃんと分かっていた。そこしかないのだ。それは、勝手にゆっくりと奥へ進み続け、やがて完全にそこに埋まった。そのまま動こうとしない。 僕とディアドラは、互いに見つめあっていた。彼女の瞳に、あの表情が浮かぶのが見えた。あの崇敬にも似た表情。あの表情を僕は知っている。僕の瞳にも同じ表情が浮かんでいるから。 「ディアドラ、愛しているよ」 僕は囁いた。 「私も愛しているわ、アンドリュー。あなたは私のすべて」 二人はゆっくりと動き始めた。二人の腰が、同調し、ゆったりとしたリズムを達成する。僕は、彼女の中に入ったまま、わずか2センチほどの動きで前後していた。僕たちは愛し合っている。 ゆったりとしたロマンティックな愛の行為を続けながら、僕は心を込めて優しく彼女にキスをした。僕の両手が彼女の体を擦りまわる。僕の手は、あのとても柔らかい肌に触れたがってるだけなのだろう。あの小ぶりの丸い乳房を揉みたいだけなのだろう。尻頬に触れ、握り締め、もっときつく彼女を抱き寄せたい。それだけなのだろう。
「いやっ!」 イサベラは悲鳴を上げた。レオンが彼女の両膝をつかみ、持ち上げ、左右に広げたからだ。そのまま、ベッドの上、彼女の体を引きずり、ベッドの端まで引き寄せる。レオンは、彼女の両脚を大きく割り広げ、その間に移動して立った。 「動くでないぞ!」 レオンは黙ったまま、チュニック( 参考)を素早く頭から脱ぎ去り、床に無造作に放り投げた。その間、彼の目は怒りの炎を燃やしながら、イサベラの下腹部を凝視し続けていた。 レオンが怒りを今にも爆発させようとしている。だが、それを恐れている今ですら、イサベラの肉体は、彼の姿を見て妖しい反応を始めていた。彼女の視線は、幅広の逞しい両肩から、蜂蜜色の体毛に薄く覆われた金色の胸板へと下った。胸板を覆う体毛は、その下に広がる平らに鍛え上げられた腹部へと続き、魅力的な線を描いて下腹部を覆うレース生地の下へと姿を消す。レオンが興奮しているのは、腰を覆う生地を中からもりもりと押し上げているずんぐりとした隆起から明らかだった。 「お願い、レオン、やめて。怒りに任せてなんて・・・」 イサベラは、脚を押さえつけられ、仰向けのまま、レオンの姿を見上げていた。彼女の美しい金髪は、ベッドの上、光輪のように広がり、イサベラの顔を縁取っていた。 レオンが下腹部を覆う生地を指で手繰り上げる間も、イサベラは動けずにいた。ひとりでに呼吸が苦しくなってくるのを感じる。彼の分身が中から飛び出し、自由になったのを見た瞬間、それまで乾ききっていた女体の唇が、じゅんと湿り気を帯びるのを感じた。 本当にものすごく太く膨らんで、暗い黄金色の縮れ毛の茂みからそそり立っている。あれに、私の中を貫かれ、奥深い場所を擦られることになる。それを想像しただけで、イサベラの内部はひとりでにキューっと収縮を始めた。 「いや!」 イサベラは叫ぶと同時に、素早く動き、ベッドから体を起こした。それをレオンが止めないのに気づき、一瞬、がっかりした気持ちも混ざる。 だが、イサベラがレオンから2歩ほど離れた後、彼の腕が伸びてきて、彼女の上腕を掴んだ。レオンは、ぐいっと乱暴に腕力を使いイサベラの腕を引っ張り、背中を向けていた彼女の体を反転させ、力任せにきつく抱き寄せた。 抱き寄せられたイサベラは、腹部をレオンの剛棒が突くのを感じ、それが完全に硬くなっているのを感じた。 「お前を独りにしておいたら、早速、お前は、訪れてきた最初の者を使って快楽をむさぼろうとするとはな!」 レオンの怒りに満ちた荒い息が彼女の耳に吹きかけられた。「他の者に触れられ、気持ち良かったのか? わしに触れられるのではないので嬉しかったということか?」 「違います!」 イサベラは身をよじって逃れようとしたが、きつく抱きしめられ、動けなかった。レオンの呼気が彼女の髪をそよがせる。薄い布地を通して、彼の熱い体温が彼女の肌に染み入る。そして、オスの動物が放つ刺激的な匂いが彼女の鼻腔をくすぐった。 「お前はわしのものなのだ。他の誰のものでもない」 イサベラは、その言葉の背後にある心の痛み、独占欲による嫉妬心を察知し、レオンが自分に対して心を揺さぶられているのを感じた。 突然、イサベラは、強引に後ろ向きにさせられ、顔をベッドに押し付けられた。同時に、足首を蹴られ、足を開かせられる。つま先だけを床につけたまま、ベッドに覆いかぶさる格好にさせられた。割れ目に彼の分身が滑り込んでくるのを感じた。湿った肉門を探している。その先端に入り口を突付かれ、イサベラは思わず喘ぎ声を上げた。 「やめて、レオン」 喘ぎながら訴え、体をよじらせ逃れようとしたが、この体勢では、それも無駄だった。両手の指で尻頬が左右に広げられるのを感じ、肉棒の先端で再び入り口を探り当てられるのを感じた。 「お前はわしのものだ。わしだけのものだ」 レオンの声は、荒い息遣いで、ざらざらとしていた。嫉妬により欲情に火がついている。 レオンは一気に押し込んだ。イサベラの狭い肉筒の奥深くへと、強く貫く。イサベラは、これまでにないほど大きな悲鳴を上げた。強く激しく貫かれた勢いで、二つの肺から呼気が勢いよく搾り出されたのだろう。
「これって最高だわ!」 電話の向こう、ドナは興奮して叫んだ。「今のを見て、素敵なことを思いついたの。ねえ、今日はビクトリアとして仕事をしたらどうかしら? 別のオフィスからあなたの代理として来た人になるのよ。誰も気づかないだろうし、あなたも女性として過ごす練習もできるわ」 「ドナ! そんなことできないよ。まる一日、ビクトリアとして通すなんてできないし、第一、仕事にならなくなる」 「でも、ビクトリア? 鏡の前に戻って、自分の姿を見てみたら?」 僕は立ち上がり、鏡の前に戻った。鏡の中、女性らしい足取りと振る舞いで鏡に近づいてくる自分の姿が見える。確かに、僕の男性としての姿を仄めかすところはひとつも見当たらない。鏡の中、僕の前に立っているのは、黒髪の美しい女性だ。見たことがないほどセクシーなドレスに身を包んでいる。だが、確かに見た目では女性で通せるだろうけど、女性で、こんな服装で仕事をする人はいないだろう。少なくとも、僕の知る限り、そういう女性は多くない。 僕は電話に戻った。 「お願いだ、ドナ。こんなことをさせないでくれ」 「あなた、とても綺麗なのよ。それに、仕事が終わった後、帰ってくるあなたを迎えて、とても素敵なご褒美を考えているの。それを思っていて。いまはもう切るわ。じゃあ、後でね」 ガチャリとドナが受話器を下ろす音が聞こえた。 ちょうどそのとき、別の客がオフィスに来たのに気づいた。ゲイルが出迎える。 「ジョンさん、申し訳ございません。アルアは出張で今日は大半、不在なのです。ですが、別の支社から代わりに派遣されたビクトリア・スミスがおりますが、もし彼女でよかったら」 ジョン・パーカーが、それでもかまわないと言うのが聞こえた。電話が鳴り、ゲイルが彼のことを告げた。 オフィスに入ってくるパーカー氏を出迎えるため、立ち上がった。少し震えていた。デスクの横を回って進み、握手をしようと手を差し出す。ふと、そのとき、こちらから握手の手を出すべきではないと思い出し、前に出した手を降ろしがちにし、指先だけを向けた。うまく間に合って、彼には奇異に思われずにすんだようだ。パーカー氏は僕の手を取って、握手した。彼の視線が上下に動き、僕の体を一通り評価した後、再び僕の視線に合わせるのを見た。 「スミスさん、あなたに会えて嬉しいですよ。今日はビックが外出していたのは、私には幸運だったようだ」 そのお世辞に顔が赤らむのを感じたが、すぐに回復させる。握手していた手を引っ込め、椅子に座るように促し、僕自身はデスクに戻って腰を下ろした。生足の膝が隠れるように、椅子をデスクに十分に近づけて座る。 「こちらも嬉しいですわ、パーカー様。今日はどのようなご用件で?」 ジョンは、かなり長い間、僕の顔や体を見ていたが、それを頭から振り払うようにして、仕事の話を始めた。一通り話しを聞いた後、その用件をすばやく処理し、対処した。ジョンは、用件が済み、立ち上がって帰ろうとしたが、ふと、振り向いて僕に言った。 「あなたの顔は、なんだか、とても見覚えがあるような気がするのですが。一度も会ったことがないのは確かなんだが。これからは、よく覚えておくことにしますよ」 「まあ、私は、あちこちに出向くことが多いですから、多分どこかで私のことを見たことがあるのでしょう。では、また。パーカー様」 オフィスを出て行く彼を見て、僕はほっとした。 デスクに戻ると、すぐに電話がなった。 「はい、もしもし?」 できる限りの裏声で電話に出た。 「えーっと、アルアさん?」 女性の声だった。 「申し訳ございません。今日は、アルアは外出しているのです。私はスミスですが、代わりにご用件を伺いますが?」 彼女の声をもう一度聴いて、彼女が、先ほど、僕とゲイルが一緒にいたときにやってきた女性であることに気がついた。エレンという名前だ。 「あの・・・ビクターさん、ちょっと伝えたいと思って。あなた、ビクトリアとなった姿、驚くほど綺麗だったわということ。もしかすると、もう二度と、ビクトリアとしてのあなたを見ることがないかもしれないと思って、ビクトリアに会えた機会があって私がとても喜んでいたことを伝いたいと思ったの。たとえ、偶然の機会だったとしてもね。それに、言うまでもないことかもしれないけど、私に関しては、あなたの秘密は安全だから大丈夫です。心の中にしまってますから。でも、これだけは言わせて。ミス・ビクトリア? あなたは、この都市に住む美しい女性たちに、新たに加わったことだけは確かだわ。では」 「ありがとう、エレン。私ビクトリアとあなたが出会った状況を考えると、そのお言葉、とても嬉しいわ」 「あら、あの出会いは完璧だったと思うわよ。それじゃあ、素敵な一日を送ってね」 そこで電話は切れた。受話器を置くと、すぐにまたベルがなった。相手はドナだった。 「君は僕を一日中監視するつもりなのかい?」 「だって、ひとつも見逃したくないんですもの・・・それで、彼女、何て言ったの?」 「僕と会えて嬉しかったということと、僕が美しかったということ、それに、この秘密は守るから大丈夫だと、そういうことを言っていたよ。もう僕は人をだますことはできないよ。このままだと、厄介なことになりそうだよ」 「もう、ジョンをだましちゃったじゃない? ジョンは、エレンよりも、あなたのことはよく知っているのに、気づかなかったわね。女性には、男性より、観察力がある人がいるのよ。大丈夫、うまくやれるわ。じゃあ、またね、ビッキー」 受話器を置いて、今日の残りの勤務時間に備えて、身構えた。依然として、誰かが、僕が女装していることに気づき、すべてが明るみになってしまうのではないかと心配でならなかった。ドナやゲイルに説得されて、こんなことをさせられている、そんな自分が信じられなかった。だが、ともかく、始めてしまったことなのだから、最善を尽くすことにしよう。家に帰り、ドナを抱く時までの我慢だと。
ビリーは困ったような顔をした。「それは、ちょっと問題かも。実は、僕はクラブに着ていけるような服を持っていないんだ。あんまり外に遊びに行ったりしないし」 時計を見て、私は答えた。「そんなに簡単にあきらめないで。お店に行く時間はあるわ。閉まってしまわないうちに着けるから。だから急いで」 そう言って、彼の手をつかんでオフィスから引っ張り出した。 モールへと車を飛ばした。ためらわずに直行して運がよかったと思う。目に入った最初のデパートに入って、スラックスとボタンダウンのシャツを買った。服が決まった後は、靴とソックスを探し始めた。 ビリーは、ちゃんとドレスアップすると、ジーンズとスウェット・シャツの時より、ずっと素敵に見えた。ヘレンも私も意見は同じで、彼は女の子の目を惹くのは確かだし、努力の甲斐があったと思った。特に、彼の持ち物に目をやったときにそう感じた。バギーのジーンズでは分からないけど、新しいズボンだと、彼がかなり恵まれた持ち物を持っているのが明らかだった。 買い物の後、ちょっとレストランに立ち寄って食事をし、それからクラブに出かけた。予想したとおり、ビリーは上手にダンスはできなかったけれど、私とヘレンで教えてあげたら、かなりうまく踊れるようになった。 ヘレンと私は、多数派とは異なったライフスタイル、つまりオルタナティブ・ライフスタイルの人々に親切なクラブに通っている。だからと言って、普通のクラブには行かないというわけではない。オルタナティブなクラブだとリラックスできるからという、それだけの理由だ。男の人の中には、彼が足の間に持っているモノが私の足の間にもついてると知ると怒り出す人がいるけど、オルタナティブなクラブでは、そういう人のことを心配する必要がないから。こういうクラブなら、私のような人種が嫌だったら、単に他の人を探し始めるのが普通だから。それに、そもそも、私は、気に入った人と知り合っても、その人の車のバックシートで軽くおしゃぶりしてあげる程度で、一緒に家に連れていったりは決してしない。 ともかく、夜が半ばを過ぎた頃、私たちはテーブルに座っていたのだけど、私は隣に座るビリーにキスをしていた。どうしてキスをしたのか、自分でも分からないけど、そうするのが当たり前のような気がしたのだった。ビリーは、私がしてあげたのと同じくらい熱っぽくキスを返してくれた。そして、それから間もなく、二人とも互いに舌を絡めあいながら、相手の体をまさぐりあうようになっていた。 彼の両手が私の脇の下から胸へと動いてくるのを感じ、私は彼から唇を離した。 「人目があるところでは、ダメよ」 ビリーは謝ろうとしたけど、私は再び唇で彼の唇を塞いで、謝ろうとする彼を止めた。そのキスが終わったとき、ヘレンが私の手を取るのを感じた。私のことを女子トイレへ連れて行こうとしている。 トイレに入るとすぐにヘレンは訊いてきた。 「どうなっているの? 何て言うか、私たち、ここには、ただ遊びに来たのかと思ってたけど。それとも、今夜は彼と寝る予定でいるの? だったら、私、邪魔したくないわ」 私は両腕を彼女の首に絡めた。 「本当は、私、あなたと二人で彼を共有しようと思っていたの。ヘレンが嫌なら、話は別だけど」 ヘレンは私の唇にちゅっとキスをした。 「私は、ビリーを誘ったときから、そうなるだろうなって思っていたわ。あなたも私と同じ方向へ向かってるのか、確かめたかっただけなの」 私は鏡の中を見ながら、ヘレンに言った。 「まさに同じ方向へ向かっているところ。ビリーもその方向へ進みたいと思ってくれればいいんだけど。ねえ、ヘレンも彼にキスをし始めたらどうかしら? 彼の反応を確かめてみるの」 ヘレンと私はお化粧を直した後、クラブへ戻った。ビリーはテーブルに座って、私たちが戻ってくるのを待っていた。ヘレンはビリーの手を取って、ダンスフロアに引っ張り出した。運良く、流れ出した曲はスローな曲で、ヘレンは両腕をビリーの首に回して、体を寄せ、踊り始めた。 それから間もなく、ヘレンは彼にキスを始めた。ビリーはちょっと困ったような様子だったけど、それでも彼女にキスを返していた。それと同時に私のほうを見て反応を伺っている。私はにっこり笑顔を見せてあげた。 曲が終わり、二人はテーブルに戻って来て、腰を降ろした。ビリーは私とヘレンの間に座った。私は彼の方を向いて、早速、再びキスをした。私が唇を離すとすぐに、今度はヘレンが彼の顔を引き寄せ、キスをした。ビリーの頭の中で何が起きていたか分からないけど、彼のズボンの前のところに手を当てると、そこがものすごく硬くなっているのが分かった。
スティーブがカウンセラーの訊いたことについて考える間、部屋には長い沈黙が続いた。スティーブは、頭の中でヒューストン氏の言葉を反芻した。その間、彼の視線は焦点を失っていた。 ようやく、彼はためらいがちに言葉を発した。 「バーバラ、君の妹に対して持っていたイメージを台無しにしてしまって、済まなく思っている・・・そうする必要があったとは思っているんだ・・・キムは、彼女自身を破滅させることをしていると思ったし、そうなるのは時間の問題だと思ったから・・・でも、あのような方法で暴露する必要はなかったと思っている。・・・僕は、君に知って欲しかったんだよ。何か美しいものが破壊されるということがどういう感情をもたらすかを分かって欲しかったんだ・・・でも、それは意地の悪いことだったね。キンバリーがしていることをご両親に知らせるにしても、もっと良い方法を探すべきだった」 その後、スティーブは再び長い間、黙りこくった。彼の顔には、心の中の苦悩が滲み出ていた。バーバラが何か言いかけようとしたとき、彼は手を掲げて、彼女を制止した。 「それに、彼女とセックスしたことについても申し訳ないと思っているよ、バーバラ。死ぬまで済まなかったと思い続けるだろう・・・」 スティーブの声は落ち着き、静かだった。「僕が感じたのと同じ喪失感を君にも感じて欲しかったという気持ちもあったからだけど、そんなことをすべきじゃなかったと思う・・・」 スティーブはバーバラに顔を向けた。話しを始めてから、彼がバーバラを見たのは、この時が初めてだった。 「・・・僕たちが、このように互いに話し合うことになるとは、そのときは、まったく思っていなかったんだ。キンバリーとセックスすることは、ある種、僕の人生から君を最終的に追放する方法だと思ったから・・・」 「・・・それに僕自身の人生を終わらせる方法でもあったかな・・・本当に、それを行うことが僕の目的だったのか、それとも僕は単にひとつの可能性を受け入れて、その結果がどうなろうが気にしなかっただけなのか、今となっては、僕には、はっきり分からない。ともかく、ひどく落ち込んでいて、どうなってもいいと思っていたんだ・・・」 スティーブは再び深呼吸をし、息をゆっくり吐き出した。 「・・・彼女とセックスしたことは正しいことではなかったと思っているよ。たとえ、僕が僕たちの結婚生活は終わったと感じていたとしても、あのようなことを行う正当な権利はなかったし、今では、行わなければ良かったと後悔している」 スティーブは、何か他の表現の仕方がないかと言葉を捜し、苦しんだ。 「そのすべてを許すわ」 バーバラは落ち着いた声で答えた。「・・・あなたは、私の心をすでに知っていたと思っていたけど・・・あの件について私が知った後の最初のカウンセリングが始まる前に、私はあなたを許していたの。あなたは、ひどく落ち込み、その状態から抜け出る方法が分からなくなったために、キンバリーとセックスした。私は、その事実を受け入れ、あなたを許したの。実家から家に戻ったあの夜に。その後は、考えることすらしていなかったわ」 スティーブはバーバラの顔をじっと見つめた。二人は、彼とキンバリーの関係に関することを、それまで一度も話し合っていなかったのだった。 「変だと思わなかったの?」 「いや・・・まあ、少しは・・・だけど、あの件に関して君が僕を嫌悪していない様子なのはどうしてかなど、僕にはずいぶん長い間どうでもよくなっていたんだ」 スティーブは鼻を鳴らした。「・・・もっと言えば、君が僕を嫌悪してくれたら、直ちに離婚できるのに、そうならないことで、腹を立ててすらいた」 スティーブはバーバラとしっかり視線を合わせた。 「今は、そういうふうには思っていないよ。それに僕も馬鹿だった。僕は君が行ったことをそのまま繰り返していた。だが、そういう形で対等になれると思った僕が馬鹿だったよ」 「もう過ぎたことで、片付いたことなの」 バーバラはそれしか言わなかったが、少しだけ、ためらっている素振りを示した。 スティーブはバーバラを見つめたままだった。彼は、バーバラが言おうとしたことを理解した。その言葉が出てくる背後の心を理解した。そして彼は彼女から視線を外した。 「いつの日か・・・僕も同じことが言えるようになれたらと思っている」 バーバラは、うなずき、軽く笑顔を見せて、心の中の失望感を隠した。彼女も、そうなってくれたらと希望を持っていた。だが、スティーブが心地よいと感じるよりも先の段階へと急速に彼に迫ることで、ここ何日かの間に彼との関係に関して達成してきたと思っている進展を台無しにしたくないと思っていたのである。 ********
「ごめんなさい、ちょっと銀行に寄らなきゃいけなかったから」 ブラッドの母親は廊下の角を曲がりながら、そう言って姿を消した。それを聞いて、俺は思わず咳き込んでしまった。 「おい、大丈夫か?」 心配してブラッドが俺に訊いた。 「ああ」 さらに2、3回、咳をした。だが、これで答えが分かった。ステファニは、金を用意したのだ! 3分ほどして、ステファニは着替えをして戻ってきた。下はムッチリのショートパンツで、上もすごく丈の短いタンクトップだ。へそのあたりが露出している。ただ、シャツの下、ブラジャーのストラップが見え、ちょっとがっかりした。ステファニはキッチンに行き、夕食の準備を始めた。俺たちはテレビでビデオを見ている。 何分かして、「夕食ができたわよ」と声がかかった。 ブラッドの母親は、顔をのぞかせ、俺に、一緒に食べていく?と訊いた。俺はもう少し彼女の様子を観察したかったので、夕食に呼ばれることにした。 ブラッドの父親と俺はテーブルに着き、ブラッドは飲み物を出してくれた。俺が座った位置はベスト・ポジションと言えた。真正面にブラッドの母親が座ったからだ。 チキン・ナゲットとポテトを食べながらステファニの様子を観察した。確かに時々、落ちつかなそうにはなるが、他は普段と変わらない。 ・・・ひょっとすると、ステファニは、あの不倫相手と、俺が知ってる以上のことがあるのかもしれない。6000ドル近く銀行から降ろしたと言うのに、かなり平然としている。あんなちょっとした秘密なのに、それを守るためでも、それだけの金を出す価値があると言うことか? ・・・ 食事が終わり、ステファニは後片付けを始めた。彼女が俺の食器に手を伸ばしたとき、手がかなり震えているのに気がついた。 「おまえ、具合が悪いのか?」 ブラッドの父親が訊いた。ステファニは、シンクに水を流したまま、しばらく黙っていた。 「いえ、大丈夫よ。今日はちょっと仕事が大変だったら。それだけ」 彼女は俺たちに背中を向けたまま食器を洗い続けた。キュートなピンク色のショートパンツに包まれたムッチリとした尻が、何とも言えずそそられる。 「テレビでも見ようぜ」 ブラッドが立ち上がり、俺も一緒にリビングへ移動した。リクライニングの椅子に座ってビデオを見る。だが、画面を見ながら、俺の頭は例の秘密クラブのことを考えていた。 10分くらいすると、ステファニもリビングに来て一緒にビデオを見始めた。ブラッドの父親はブラッドと一緒にソファに座っており、ステファニはラブシートに横寝になり、両脚を端からぶらぶらさせていた。俺の目の前に、完璧とも言える美脚がぶらぶらしてて、とてもビデオに集中などできなかった。何度も、彼女の脚の方に目をやってしまう。 そんな風にちらちら見ていたら、一度、ブラッドの母親が窓の外をぼんやり見ているのに気がついた。例のことでも考えているのかな、と思う。ともかく一つ確信できる。明日になれば、あの秘密クラブに入る金が手に入るということだ。 テレビを見ながら雑談を続けていたが、かなり時間が遅くなっていた。ステファニはおしゃべりには全然加わらず、ただ、窓の外、庭を眺めているだけだった。尻の近くまで露出した生脚の眺めは、俺の体にも効果をもたらし始め、勃起してくるのを感じる。足先を包むピンクの可愛いソックスもたまらない。この美脚でセクシーなハイヒールを履いた姿を想像する。 勃起がヤバくなってきたので、俺は立ち上がり、「もう遅いので家に帰ります」と言った。ブラッドとブラッドの父親は、俺の自転車のところまで送ってくれた。ステファニはラブシートから動かなかった。 家に向かってペダルをこぐ。頭からは秘密クラブのことが離れなかった。 裏門から家に入ったが、両親はまだ起きていた。時計を見上げ、まだ、そんなに遅くなっていないことに気づく。まあ、いずれにせよ、明日の朝早く、シーサイド・ダイナーに金を回収しに行かなければならないので、今夜は早く寝るつもりだ。 リビングのところで両親とちょっと雑談した後、二階に上がり、シャワーを浴びて寝る準備をした。寝る前にコンピュータを立ち上げ、メールをチェックする。思ったとおり、グラフ先生からメールが来ていた。
翌日、マーサは、真っ先に僕のオフィスに入ってきて、ドアを閉めた。 「いい人が見つかったわ」 僕は、マーサが何を言ってるのか分からず、何秒か、座ったまま無反応でいた。マーサはせっかちそうに付け加えた。「私たちの3Pのための相手よ」 「仕事が速いなあ。それで、その女性に会ったことがあるのかい?」 「ええ。それに、あなたも会ったことがあるわよ」 これは興味をそそられる。 「誰なんだ?」 「ジョイスよ!」 マーサはにやりと笑った。 僕はマーサを見つめるだけだった。僕が知る限り、ジョイスは誰か女の人と暮らしていたはずだ。 「ジョイス自身が、してみたいと言ったのか?」 「そう!」 「じゃあ、彼女、男にも興味があるんだ!」 「それはないと思うわ」 僕は唖然としてマーサを見た。ということは、マーサは、ジョイスがマーサ自身に興味があると察知したというわけか。 「僕が思うに、あの手の女たちは、他の女に手を出せるチャンスがあったらいつでも飛びつくんじゃないかな」 マーサはショックを受けたような顔をしていた。その顔がみるみる怒りの表情に変わっていった。 「本気で言ってるの?」 わざと可愛らしい声で皮肉っぽく言う。 「でも・・・」 僕は言葉を捜した。マーサは、フェイスに浮気をしている僕自身が、まさに同じことをしているのじゃないかと言おうとしていたに違いない。 「・・・何と言うか、多分、レスビアンの人たちも、僕たちのようなストレートな人間同様、時々、自分から進んでややこしい人間関係に関わってしまうこともあるんじゃないかと・・・」 「いいこと? 私、そんなこと言っていないからね!」 マーサは、そう言って出て行った。まだ、怒ったままだった。 昼休みになり、マーサは戻ってきたが、僕と一緒に歩きながらも、不機嫌なままだった(実際、その日は、二人でランチを食べに一緒に外に出たのである)。それでも、ランチを食べながらお喋りしているうちに、彼女の態度は軟化し始めた。 彼女は、もう、さっきのような言葉は二度と僕から聞きたくないとはっきり断った後、嬉しそうに、例の3Pをいつ行うかという話題に移った。僕は、フェイスに残業ができたと言うか、あるいは、フェイスがこの次に妹と何か用事ができる時まで待つかの二つの選択肢を考えた。話し合った後、僕たちは多分、前者の選択肢の方が良いだろうと決めた。ジョイスも交えるわけだから、彼女にとって都合の良い夜を選ばなければならないかもしれないからだ。オフィスに戻った後、マーサは早速ジョイスに電話を入れ、暫定的な日時を設定した。 実際、僕は、フェイスに、そのデートの前の晩に、仕事で遅くなるので、夕食は外で食べることになりそうだと言うつもりでいた。その3Pデートは、マーサのアパートでの、割と早い時間からのデートになる予定だったから、8時半か9時には家に帰れるはずだった。 そのデートのことを考えながら、僕は一日中、仕事に集中できなかった。ジョイスは、上品な美貌の女性だ。それにマーサよりも魅力のある体つきをしている。まあ、確かに、髪の毛はかなりショートにしているのは事実だが。 そもそも、ジョイスは僕の方にはいくらかでも興味があるのだろうか? 多少なりとも、男に興味がある女性との方が、ずっと楽しいだろうというのは確かだ。それに、もし、マーサが正直なところ女性にまったく興味がないとしたら、いったい、どういう風に進むことなるのだろう? だが、そういう懸念があったものの、僕はこのデートにかなり期待していたのも事実だった。 デートの前夜、僕はフェイスに、翌日の夜は残業で遅くなると伝えた。普段よりもかなりナーバスになっていたと思う。多分、家に帰らないために嘘をついたのは、この時が初めてだったからだと思う。普段は、マーサと僕は、フェイスが夜に出かけるチャンスを待っていたから。
僕たちは、少なくとも一時間は抱きあったまま横になっていた。うとうととしながら体の回復を待つ。ディアドラは目をつむったまま僕の肩に顔を埋めていた。 ようやく彼女は体を回転させて僕から離れると、枕に顔を埋め、泣き始めた。最初は静かにすすり泣いていたが、次第に泣き声に力が入ってきて、突然、苦しげに悲痛な泣き声をあげ始めた。全身を震わせながら、何度も大きくすすり上げる。 僕はディアドラの肩に手を掛けたが、彼女は拒絶するように体を震わし、僕の手を振り払った。 「ディ・ディ? どうしたの? 大丈夫?」 ディアドラは、すすり上げつつ、喉を絞るような声で答えを返してくれた。 「本当に、ごめんなさい・・・私ってひどい人間だわ! 自分でも分かってるの! こんな私を我慢できるわけがないわよね? 私を嫌ってるに違いないわ。でも、お願い、嫌いにならないで、アンドリュー。本当に悪いと思ってるの! あんなこと言うつもりはなかったのに!」 「言ったって、何を?」 僕は意地悪をして聞き返した。 「何のことか、すっかり知ってるくせに! どうして、私の言ってることが分からない振りなんかするの?」 「ごめんなさい。でも、全然、問題ないことだから。僕は君を愛している。そして、僕は、無理やり君にそれを言わせたんだ。その言葉に責任なんか持たなくてもいいんだよ。その気持ちがないなら、僕を愛する必要なんかないんだから」 だが、ディアドラは、ますます啜り泣きの度合いを増していった。ほとんど言葉を出せないようだったが、搾り出すようにして返事をする。 「でも、私はあなたを愛しているのよ! ほんとに。どうしてこんな気持ちになるか、抑えきれないの。ごめんなさい。あんなこと言うべきじゃなかったわ。私、とんでもない人間なのね」 「ああ、そうだね、ディ・ディ。君は、僕が知ってる中で、一番とんでもない人だよ」 ディアドラは、ハッと息を呑み、今度は声を出して泣き始めた。苦悩に満ちた顔をしている。 「そんな私でも、まだ愛せるの?」 「・・・この世が終わるまで」 まさに言うべき言葉を言ったのかも知れない。ディアドラは、とたんに僕にしがみつき、両腕で僕の首を抱きしめ、顔を肩に埋めた。まだ、声を上げて泣いている。 男は犬だ。これは理論ではなく、その道の人々の間で認められているドグマだ。この哀れな女の子は、目を涙で泣き腫らし、僕に心を注いでくれている。明らかに、彼女は何か分からないが、現実に、あるいは、想像で僕を傷つけたと感じ、心を痛めている。 確かに、僕は、彼女の感傷的な姿を見て心の琴線に触れ、共感を感じた。確かに、彼女を胸に抱き寄せ、頭を優しく撫で、慰めてあげたいと感じた。だが、それ以上に、僕は彼女にセックスしたいと感じていた。この貪欲さ、まるで自分がブタになったような気分だった。でも、他に何ができるというのだ? 前に話した、僕の「男はペニスで思考する」の定理を思い出して欲しい。 この世の中、魅力にあふれた全裸の女性が泣きながら、ありふれたやり方で慰めを請い求める姿ほどセクシーなものは存在しないのではないかと思う。しかも、そのような慰めができる男は、この場に僕しかいないのだ。
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