10
最近、とても気持ちが弱くなってきている。そんなことバカげたことだとは思うし、ジェニーにも話していない。でも、自分がとても小さくなった感じで、周りの人の誰もが僕を襲おうとしてるように感じてしまう。いつも男たちに視線を向けられているような感じだ。男たちの目に浮かんでるあの表情。実際、彼らは僕を見る時、男を見る時の目をしていない。男だろうが、女だろうが関係ない。若くて可愛い、欲望の対象。そんなものを見る目つきで僕を見てる。そして、僕の中に、そんな目で見られることを好ましく感じている部分がある。求められるのを喜んでる自分。でも、また別の部分も僕の中にあって、そういうことの帰結としてどんなことになるのか恐れている部分もある。
帰省旅行は最悪だった。ジェニーは違うと言ってるけど、彼女は間違ってる。完全に間違ってる。
あれは面白そうだし、危険だし、クレイジーなことのように思えた。高校生くらいの悪ガキがやるようなこと。大人はしないこと。でも、アビーと僕が高校の頃やったことをジェニーに話したら、彼女はそれをやってみたいと言ったのだった。ジョンソンさんは外出中だし、どこが危ないのと。そんなわけで、僕とジェニーはあれをやってみることにした。ふたりでジョンソンさんの家に忍び込み、裸になって、お風呂に飛び込むと(ジョンソンさんはいつも裏ドアにはカギをかけないでいる)。そういう計画だった。先にジェニーはお風呂に飛び込んでいた。そして彼女に続いて僕もお湯の中に入ろうとした時だった。その時、玄関ドアの向こう、パッと明かりがついたのだった。
「お前たち、ここで何をしてるんだ?」 と恐そうな声で怒鳴られた。「早く服を着なさい! それに……アレックス? おいおい、お前、アレックスなのか?」
僕はどう言ってよいか分からなかった。何も言えないじゃないか。だって、よその人の家の中、素っ裸のまま座らせられていて、警官に尋問されてるのだから(無音警報装置め!)。しかもその警官は、僕が高校時代によくいじめていた同級生だったのだから。
彼らがどんなふうに思ったかなんて、気にすべきじゃないのは分かってるけど、でも、彼の笑い方は…変身した僕の姿を見ての笑い方…。…でもまあ確かに、ジェニーの言うとおり、完全に最悪というわけでもないかもしれない。
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11
しばらくこの日誌をつけていなかった。というのも、書きとめるようなことがあまりなかったから。いつもの通りの毎日だったと思う。時々、以前、知り合いだった人たちとバッタリ出くわすことがある。そういう時、その人が僕を認識するかどうかは、一種、運任せのようなものだ。それに僕もそういう時、どう感じるか自分でもよく分からない。
僕は、人が僕のことを女の子のように言ったとき、いちいち訂正するのはやめてしまった。「お嬢さん」でも「奥さん」でも、ただ聞き流すことにしている。そんなの訂正する価値もないからね。それに、いくら僕は男だと言っても、半分くらいの人は信じることすらしない。やっぱり、こういう時も、僕は自分でもどう感じてるか分からなくなっている。
ひとつだけ確かだと思えることがあって、それは、僕とジェニーとの関係がこれまでにないほど良くなっているということ。まるで親友同士のような関係になってる。それは良いことだと思う。だって、僕にはもう親友と呼べる人がいなくなっているから。ああ、それで思い出した。先日、ロブに会ったんだけど、うまくいかなかった。全然ダメだった。
ロブは僕を見てすぐに僕のことを分かってくれた。実際、人が僕を見てがっかりする表情を浮かべることに最近ようやく慣れてきたのだけど、その表情がロブの目にはなかったので、僕は大きな期待感を抱いた。でもこの時すでに大きな間違いをしてたのかなあ? ロブは、僕がちょっと変わった服装になっている事実を無視しようとしてたのかなあ? そうであったらいいなと期待したし、彼がコーヒーでも一緒に飲んで、その後どう過ごしてきたか話さないかと誘ってくれた時には、ますます期待感が盛り上がった。もちろん僕は喜んで彼の誘いに乗った。
まあでも、彼が僕をデートに誘っただなんて、どうして僕に分かるだろう? いや、実際、男の人に誘われることは時々あった。よく知らない男から誘われることがあって、それには慣れていた。でも、ロブだよ? 彼は僕の結婚式の時の付き添いをしてくれた人なんだ。彼は僕がゲイではないことを知っている。僕がそう言ったとき、ロブが何と言ったか? 僕は彼の言葉を絶対に忘れないだろう。「いいかい、アレックス。君がゲイかどうかなんて、誰も気にしないよ。君が突然、女の子というか、女装子というか、君が最近してることを何と言うか分からないけど、そういうものになりたくなったのかなんて、誰も気にしていないって。でも、それは認めた方がいいぜ。平気な顔して、自分はノーマルですって顔をするのはやめた方がいいって」
僕はカッと来て、立ちあがり、剣幕を立てて立ち去った。コーヒー代は彼に払わせた。コーヒー代は、あんなふうに僕を侮辱した償いだ。でも、確かに僕は怒ったけれど、事実に関しては無視できなかった(本当は心から無視したかったんだけど)。実際、僕は女の子のように見えている。少なくとも極度に女性的な男に見えている。これは事実だ。いや違う! 連中は僕が可愛いことに嫉妬してるだけなんだ。そうだ、それだ! 僕は前と変わらぬ男だし、自分がその気になれば、充分に可愛らしくなれるほど成長したんだ。
可愛らしいという言葉で思い出した。先日、この可愛いパンティを買ったんだ。ジェニーが家にいる時はこれを履かない。これは自分のためだけ。僕の初めてのソング・パンティ。赤くて可愛い小さなピンクの蝶結びがついてる。すごく素敵!
双子のひとりが言った。「ちょっと見てみて、ディ・ディ。この人たちのこと覚えてる?」
多分ディアドラだと思うけど、もうひとりが言った。「まあ! 名前、何て言ったっけ? デビーとデリラ。なんかそんな名前よ」
最初の人、たぶんドナだと思うけど、彼女が答えた。「デリラ。そうよ、デリラよ。可愛い人だったけど、こんなに美人というわけじゃなかったわ。エアー・ブラシ担当の人、残業して頑張ったに違いないわね」
ディアドラが笑った。「意地悪なこと言わないの、ドニー。このふたり、いい身体をしてるもの。おっぱいも顔もいいし。去年、彼女たちがアンドリューのところに来た時、私、この人たちプレーボーイの素材みたいと思ったわ。あれから1年ちょっとしか経っていない。出産後、こんなに早くスタイルを取り戻したことは評価してもいいはずよ」
私は彼女をドナだと思っていたけど、ディアドラは彼女をドニーと呼んだ。そのドニーが例の男性に言った。
「ジェイク? テニスの試合をして来なさいよ。あなたがこのことを利用してアンドリューを地面に這いつくばせたがっていたのは分かってるわ。どうぞ、遠慮しないで。あなたがアンドリューをやっつけたら、その後は私たちが引き継ぐから。今夜は面白くなりそう!」
私は腰を降ろして、ノートを取り出した。たったいま目撃したちょっとした光景についてメモを取り始めた。私が想像していたようには進まなかった。私は、このアンドリュー・アドキンズという男性を独裁者的な嫌な男と思っていた。屈従的で気の弱い妻たちを脅かして、変態じみたライフスタイルに引きずりこんでる男と。でも今は、この家を誰が仕切ってるか分からなくなってきている。
「おふたりは、このことにそんなに怒っていないように見えますが…」
ふたりも椅子に座った。また、どっちがどっちだか分からなくなってしまった。ともかく、ひとりが言った。「怒る? どうして私たちが? 私たち、これを公にしようとした時から、何をしているかちゃんと理解していたのよ。政府が子供たちを狙っている。それが明るみになった以上、残りのところも隠せるはずがないでしょう?」
「でも、あなたは、ご主人が、このような他の女性と一緒になっていても怒らないのはどうして? 私の理解が正しければ、彼はすでに何百人という女性と関係を持ってるはずですが」
もう一人が答えた。「いいえ、すでに1000に近づいてるわね。彼がこれをしてるのは、私たちがそうしてと頼んだから。IAMの女性たちは妊娠するのが非常に難しいのです。気が狂うほど子供を切望してる人も多いの。で、アンドリューはなぜかそういう女性たちを何ら困難なく妊娠させられる才能を持っている。何か遺伝的なことだと思うけど。ともかくアンドリューは私たちを喜ばすためにこのような女性たちに自分自身を捧げているのです。私たちが彼にやめてと言ったら、彼はすぐに他の女性に目もくれなくなるでしょう」
「レイチェルは結婚すると思っていたけど」 と俺は言った。バルは俺の膝の上に座ったままだ。
「ええ、そうよ。それでも、レイチェルは焦らし好きの淫乱女」 バルは両手を俺の胸にあて、前のめりになった。俺の分身が彼女のソング・パンティ越しにあそこの中に入り始めるのを感じた。
「レイチェルは誰も知らないと思ってるけど、私は知ってるの」 そう言って、バルはさらに前のめりになった。乳房が俺の胸の上に垂れさがるほどまで。俺は、この状況を楽しみながら、仰向けになったままでいた。
「どうして知ってるの?」
「彼女、フィアンセがいるのに、他の男とヤリまくってるのよ」 とバルは身体を起こした。
「だから、どうしてそれを知ってるのかって…」 と俺は訊いた。小さなビキニの中、彼女の乳首が固くなっているのが見えた。
「それを言ったら、あなた、私のことを信じなくなりそう」 とバルは俺の膝から降り、仰向けになった。そして俺にココナツオイルの瓶を渡した。
俺は這うようにして彼女の足元に行き、瓶を開けた。そして、正座し、俺の太腿の上に彼女の足を乗せた。そのセクシーな足にオイルを垂らし、足の甲を両手の指で優しく撫で始める。足の指1本、1本に丁寧にオイルを塗りこんだ。バルの足の指は細長く、湾曲はまったくなかった。しかも足爪のネイル・ペイントも完璧だった。足や足首をマッサージしているとバルが口を開いた。
「私、夜にこっそり抜け出して、みんなのことをスパイしているの」
両手をふくらはぎから膝へと滑り上げると、彼女は続けて言った。「レイチェルを見たのは、教会の裏の通路のところ。トッドとやってたわ」
顔を上げてみたら、バルの股間部分はすでに完全にびしょびしょ状態になっていた。ソングが盛り上がっている。ということは、彼女のあそこがすっかり膨らんでいるということだ。呼吸もちょっと普通より荒くなっていて、呼吸するたびにお腹が上がったり下がったりを繰り返している。
「ほんとに見たの?」 と俺は彼女の太ももにオイルを垂らした。そしてオイルまみれの手で彼女の太ももを力を込めて揉み始めた。
「レイチェルはフェラが好きなのよ」
すごい会話になっている。俺はパンツの中、分身が爆発しそうになっていた。それにしても、バルの太ももの感触は素晴らしい。シルクのような肌に両手を這わせながら、太ももの筋肉が信じられないほど柔らかいのを感じていた。
「だけど、彼女、彼にやらせないの。やらせるのはクンニだけ」 とバルは両腕を頭の後ろに上げ、腕枕にした。