Worthwhile 「してみる価値」 「そんなに目立たないわよね? ていうか、故郷に戻ったとき、人に気づかれない? ほんとに?」 「あなたが、あたしの夫というよりも、あたしの妻のように見えてるってことに? ええ、大丈夫よ。確実にレーダーに見つからずに行けるわ」 「でも……」 「心配しないで。もう1000回は行ったと思うけど、他の人がどう思おうが関係ないの。重要なのは、あなたがいま幸せでいるかという点。で、あなたはいま幸せなんでしょう? 違うの?」 「多分……そうだと思う」 「そうだと思う? そんな言い方はヤメテ。あなたのことはちゃんと分かってるの。あたしは、最初からずっとあなたのそばにいた。あなたが初めてパンティを履いたときのあなたの顔を見たわ。美容院に初めて行った後のあなたの表情をずっと見ていた。あなたのあそこからストラップオンを引き抜くたびに、あなたがもっと、もっととおねだりするのを聞いてきた。ここまで来るまで、100万くらいの小さな段階を経てきたけれど、その小さな段階をクリアするたびに、あなたは、あたしに、これこそあなたが求めていることだと身をもって示してきたのよ」 「わ、分かってる……でも、すごく不安なの。分かるでしょう? みんなはどう思うだろう? ママ。パパ。友だち……」 「みんな、あなたが幸せになってるのを知って嬉しく思うんじゃない?」 「あなたは、あたしの友だちのことを知らないから……」 「本当にあなたのお友達なら、今のその姿がどれだけあなたにふさわしいカラダか分かるんじゃない? あなたがようやく自分自身を見つけたんだと喜んでくれるんじゃない? 海外で過ごしたこの1年は、あたしたちふたりにとって最高の1年だった。あなた自身にとっても最高の1年だった。あなたも知ってるでしょ?」 「でも、簡単じゃないの。簡単にはいかないって分かるわ」 「何事もしてみる価値があることは簡単にはいかないものだわ。それに、あなたにはあたしが、あたしにはあなたがいるでしょ? それだけで充分なはずよ?」 「た、多分……。いや、そうだね。ええ確かにそうよね。それに、もし、この体が新しいあたしだということを受け入れることができない人がいらた、まあ、その時は……多分……そういう人は、そもそもあたしの人生には必要のない人たちだと。そういうことよね?」 「その意気よ。そう、その意気!」 If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
An honest self-appraisal 「正直な自己評価」 「早く! お願い! キミが望むことをすべてやったよ。だから、そのストラップオンを装着して、ボクに……」 「すべて?」 「や、やったよ? ウィッグを被ったし、体毛を全部剃ったよ。キミがくれるあのビタミン剤も飲み始めてるよ」 「でも、あなたに買ってあげたあのスーツを着て仕事に行く話になったら、誰かさん、怖気づいたの、あたし覚えてる気がするけど?」 「で、でも、あれは女物のスーツだったんだよ。スカートを履いて仕事に行くなんてできないよ。みんながボクのことを……」 「シシーだと思うと?」 「そ、そうだよ」 「可笑しいわね。だって、まさに誰でもそう思うのが当然だと思うけど?」 「マリア、ボクはシシーじゃないよ。ボクはただ……」 「四つん這いになって、アナルをやってってせがんでるのに? あたしの化粧品を使って、キレイにお化粧してるのに? 体毛もなくて、全身ツルツルなのに? あたしが立ってるところから見ると、あなたはまさにシシーそのものだわ。でも、それはそれでいいの。あたしは、そういうあなたが好きなんだから。でも、ひとつだけ言っておくことがあるわ。あたしは、このことを秘密にしておくつもりはないということ。あたしとあなたの間では、あなたがシシーだと分かっている。今後は、あなたがシシーとしてフルタイムで生活し始めるか、それとも、今後一切、あなたにおちんちんを入れてあげないことにするか、そのどっちか。いい? 分かった?」 「ええ?」 「簡単なことよ。あなたの醜い紳士物の服を全部捨てて、新しい服を買ってあげるわ。そうなったら最高だわ。そして、あたしとあなた、レズビアンとして愛し合うの」 「ぼ、ボクにはできないよ、マリア。そんなのムリだよ」 「いいわ。じゃあ、このまえ買った、この新しいストラップオンは欲しくないって言ってるのね。多分、返品できるから問題ないわ。まだ、箱から出してないもの」 「ダメ! ダメだよ。そんなのって……うーん……わ、分かったよ。ボクは……うーん……あたしはあなたのシシーのガールフレンドになるわ。だから、お願い! それでヤッテ!」 「ああ、その言葉こそ聞きたかった言葉。さあ、お尻を出しなさい。ママがあなたのために新しいおもちゃを買ってきておいたの。これを使うとすごく気持ちよくなれるはずよ。すっごく気持ちよく」 If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
Tradition 「伝統」 「これ、本気なの、ミランダ? ちょっとバカになった感じだよ」 「バカなこと言わないの。あなた、最高よ」 「ボクが言ってるのは、そのことじゃないよ。ボクはキミのプロムに行くけど、万が一、ボクだけが……分かるよね?……ボクだけがドレス姿だったらイヤなんだよ」 「だって伝統なのよ。知ってるでしょ。男子は全員、ドレス姿になる伝統」 「ああ、でも……あのねえ……キミのお兄さんに相談したんだ。そしたら、お兄さんは、そんな伝統、聞いたことないって言ってたんだよ。女装のプロム? 何が言いたいかって言うと、これって……ちょっと……なんて言うか、ちょっと変だよ」 「あら、あたしにしてみれば、男子がタキシードを着てダンスする方がよっぽど変だわ。でも、それは、あたしがあなたの学校のダンスパーティに行った時に、あたし、指摘しなかったかしら?」 「いや、でも、それって……ちょっと違うよ。男子は、やっぱり、タキシードを……」 「ちょっといい? この伝統が存在している理由は、まさに、その点にあるのよ。男子であれ女子であれ、何か特定の服装をすべきだと決まってるわけじゃないのよ、チェイス。服装なんて恣意的な決まり事なのよ。だからこそ、こういうことをするわけ。あなたたち男子には、キレイに着飾る機会を、そしてあたしたち女子には、ちょっとラフになってズボンを履く機会を設けるわけ。完全に理にかなっているでしょ?」 「ま、まあね。でも……なんて言うか……それでも、ちょっと極端に走ってる気がするんだよ。気持ちは分かってる。本当に。男子はドレスとかを着て着飾ると。でも、これは着ける必要があるのかなあ。このおっぱいだよ? それに、このランジェリーも?」 「それも、全部、衣装の一部よ。加えて、プロムの後に起きる出来事に備えて、あなたも最高のルックスでいたいと思うんじゃないかしら? あたしが言ってる意味が分かればの話しだけど」 「プロムの後?」 「ちょっと、頼むわよ、あなた。聞いたことあるでしょ? プロムってのは、男子にとっては、まさに初体験をする夜のようなもの。あたしも、その時の仕事に備えて、完璧な道具を用意してあるわ。でも、それ以上のことは今は何も言いたくないわ。だって、サプライズの出来事にしてあげたいもの。さあ、分かったら、ぐずぐずしないで。出かける前に、山ほど写真を撮らなくちゃ」 If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
70_Coming home 「帰宅」 「お願いだから、何か言ってくれ」とボクは彼女の前に座って言った。別の人生の道を辿っていたら、彼女はボクの妻になっていたかもしれない女性だ。「カーラ、お願いだから……」 「何て言ってほしいの? あなたは死んだと思っていた。消えてしまったと。みんなで葬式も挙げたわ。あたし……本当に辛かったのよ。でも、あたしは前に進んだ。なのに、今になってあなたは帰ってきた。しかも、そんな姿になって」 わざわざうつむいて下を見なくても、彼女が何のことを言っているのかは分かっていた。ボクは3年間、囚われ、性奴隷となっていたのだった。モルドバの親戚を訪ねにモルドバに行った時に拉致された。そして女体化され、性奉仕を強要された。ようやく、脱出してきたのだけれども、女性化の証拠は拭い去ることができなかった。そもそも、自分でも本当に消し去りたいと思っているのかも分からない。 「ごめん」 「あなたのせいじゃないわ」と彼女は涙ぐんだ。「あなたがそうなることを望んだわけじゃないのだから」 ボクは、ボクも涙が溢れてくるのを感じ、彼女から目をそらした。「でも、うまくやっていきたいと思っている」と言って、鼻をすすった。「キミがそう思っていないとしたら、それは理解できるよ。でも、まだキミの中にボクを愛してくれている部分が残っているなら、ボクの今の存在を愛することができる部分が残っているなら……それなら……ボクにチャンスをくれないかって思ってるんだ」 「どうしろって言うの? あなたは女になってるの。でも、あたしはレズビアンじゃないの」 「わ……分からない。ボクもレズビアンじゃないし。変なのは分かってる。本当に。でも、ボクは向こうにいた間に、ずいぶん……ずいぶん変わったんだよ。いろんな点で変わったんだ」 彼女は返事をしなかった。その沈黙のためにボクはひとり自分で考えをまとめなければならなかった。不可能なことなのだと分かっていた。ボクたちは以前のボクたちの関係に戻ることはできない。もはや無理なコト。 何分か経ち、彼女が口を開いた。「あなたの体を見たいわ。あなたのすべてを」 「え、何?」 ボクは急に沈黙が破れたのに驚いて訊き返した。 「服を脱いで。あなたがどんなことをされたのか見なくちゃいけないの」 ボクはそれ以上ためらうことはしなかった。すぐにボクは素っ裸になっていた。「こ、これが今のボクだよ」 「まだ、ついてるのね」と彼女はボクの股間を見つめて言った。「小さくなってるけど、まだついてる」 「そんなの関係がある? もうほとんど役に立っていなんだよ?」 「どうかしら。そうかもしれないし、そうでないかもしれないわ。でも、今は、昔のあなたの名残がちゃんと残ってるように見えるわ。かつてのあなたとあたしの名残。それを見てると、ちょっと試してみてもいいかもしれないと思うの」 望み薄なのは分かってる。彼女が、ボクに、男性としてのカケラでも期待してるなら、確実に失望することになるだろう。でも、今この瞬間は、それは関係なかった。彼女が試してみたいと思ってる。それだけ聞けばボクには充分だった。
70_Coming back 「帰還」 「どこが悪いの?」 ボクは脚を広げて訊いた。バカな質問だ。ボクたち、ふたりともちゃんと何が悪いかを知っている。でも、ボクは彼女は気にしないと思い込みたかったし、ふたりともどうにか何とかやっていけるだろうと思い込みたかったのだと思う。なんだかんだ言っても、ふたりとも愛を味方につけてるのでは? 愛があれば、どんな障害も乗り越えられるのでは? 「ご、ごめんなさい」とメラニーは言った。「あたし……あたし、こういうのどう対処していいか分からないの」 彼女の表情を見て、ボクたちは、愛がすべてを征服するおとぎ話の世界で生きてるわけではないのを悟った。何でもオーケーになるわけではない。そしてふたりは末永く幸せに暮らしました、ってことになるわけではない、と。 「分かった」と、ボクは脚を閉じた。「キモすぎて、とてもついていけないということだよね?」 彼女は頭を左右に振った。「考えたわ…どうなったらいいかと考えたし希望ももった……だけど、どうしてもだめなの」 すでに彼女はすすり泣いていた。「そうできたらいいんだけど。本当に。でも……でも、できないの」 「それはいいよ」 今までいろいろな困難を乗り越えてきた時の内に秘めたチカラをかき集めようと頑張った。不思議なことは、この現実世界に戻ってきた今の方が大変だということだった。急に、すべてがバカバカしい感じになってしまい、ボクは笑い出した。 「な、なんなの?」 「何でもない。ただ、可笑しくなってしまって。ボクが向こうに行っていた間ずっと、この……このボクたちの関係のこと……君との関係があってこそ、ボクは乗り切ってくることができた。前に進むチカラを得てきたんだ」 そこまで話してボクは頭を左右に振った。「彼らに捕まったときも、ボクは一切の希望を失いかけた。でも、君のことを思いさえすれば、1歩ずつでも前に進むことができた。毎日、今日一日だけでも生き延びようと思うことができた」 「そして、あなたはこのように家に戻ってきてくれた」と彼女は言った。 「ボクは兵士だったんだよ、メラニー。当然、拷問を受ける覚悟はできていた。いつでも死ねる覚悟はできていた。でも、こんな姿に変えられるなんて? きっと君は想像すらしたくないだろうけど、ボクはいろんなことをしなければならなかった。でも、いつの日か君のいる家に戻ってこれるかもしれないと、ボクはどんなこともやってきたんだ。そして今は? 目の前にキミがいて、ボクはキミと愛し合いたいと思っている。前のように愛し合いたいと思っている」 「でも、今は違うわ」と彼女は言った。 「その通り。ごめん。君はできないし、ボクも同じくできない。連中はボクを変えてしまった。カラダばかりか心まで変えられてしまった。魂の根っこのところまですべて変えられてしまった。以前のボクに戻ることもないだろうと思ってる」 彼女は体を起こした。「それで?……今はどうするつもり?」 「分からない。本当に分からない。多分、死ぬまで女として生きていくだろうと思う。でも、それ以外のことは何もかも、本当に分からないんだ」
Cold feet 「ためらい」 「ジェニー、……こんなことしたくないよ。本当にやりたくない」とボクは言った。 「ただ、不安になってるだけよ」とジェニーは言った。「ためらい。結婚式の当日になって、そうなってしまう女の人はたくさんいるわ」 「本当に嫌なんだよ!」 ボクは繰り返した。目がしらに涙が溢れてくるのを感じた。「イヤなの。何でこの場に自分がいるのかすら分からない」 「あなたがここにいるのは、あなたがそうしたいと思ったからでしょ?」 ジェニーは冷淡な声で言った。「それこそが、こうしてる理由。あなたのフェチ。あなたの計画。これはすべてあなたが考えたことなの。あたしはただ手助けをしただけじゃないの」 ボクは彼女に背を向け、うなだれ、床を見つめた。「これは、ボクが望んだことじゃない。ただの好奇心から……」 「あなたが女装して、街のクラブで男を漁ってるところを見つけた。まさに、その場であなたと離婚すべきだったかもしれないわ。でも、あたしは理解しようと努めたの。怪しいけど大目に見てあげようと思ったの。そして、あたしは、あなたが本当のあなた自身を発見するのを手伝ってきたわ」 「でも、これは本当のボクじゃない。あれはただの……現実的なことじゃなかったんだよ。ただの……ただのフェチだったんだよ。残りの人生を女性として生きていくなんてことじゃなかったんだよ。ましてや、誰か男と結婚するなんて。ボクはただ……」 「あなたは自分が何を求めているか分かっていないのよ」とジェニーは当然のことのような口調で言った。「でも、あなたが気持ちを落ち着けることができるなら、なんなら、1年か2年間だけ、あの男と結婚するのでもいいのよ。彼と別れる時に彼の財産を分与してもらえるだけの期間だけ結婚していればいいの。それが計画でしょ、マンディ?」 ボクは自分の新しい名前を耳にし、思わず泣きそうになった。「だけど、それでもボクは……」 「あなたに選択肢はないわ。あなたも分かってるでしょ? いろんな手術。医療費。あなたが無職でいるという事実。そのすべてで、借金が山のようになってるの。こうしなきゃダメなのよ。そして、すべてが終わったら、あたしたち、また一緒になれるわ。そうするって約束するわ」 「き、キミはまだボクを愛してくれてるの?」 ボクはちょっと驚いた。 「もちろん」 彼女は躊躇いなく答えた。「でも今は、それは重要なことじゃないわ。あなたが考えなくてはいけないことは、ただ一つ。新しい夫を幸せにしてあげることだけ。だから、式場に行って、誓いの言葉を言って、新婚旅行に出かけなさい。そして、新妻として、精いっぱいご主人に尽くしてあげるの」 「わ、分かったよ……そうする。そうするよ」 「あたしはあなたのことを一秒たりとも疑わなかったわ」
Choose 「選んで」 「デイル、こんなこと続けられないわ。誰かにバレたら……」 「僕は恥ずかしいと思っていないよ。キミは?」 「あたしも思ってないわ。そのことを言いたいんじゃないの。何て言うか、あなたは自分の将来のことを考えてみて、と」 「僕は考えているよ。そして将来も君と一緒でいると思っているよ」 「優しいのね。本当に、嬉しいわ。でも、お互い、周りの人たちがこのことを見逃すなんてあり得ないの。あたしは恥ずかしいとは思っていないわ。でも、みんなにバレたら……あたしが……」 「キミが1年近くホルモンを摂取してきたことを? それとも、キミが、他の人がいない時に、僕の秘書のような服装になるのが好きなことを? それとも、僕たちは1年以上も、一緒に寝てきていることを? ケイシー、僕はそんなこと気にしないよ。本当に。バレるならバレてもいいんだよ。むしろ、全部オープンにしたら、今より良くなると思う。キミも女性化を最後までやり遂げられるだろうし、それに……」 「あなたの奥さんについては?」 「彼女について、何?」 「もし、奥さんにバレたら? すごいショックになるわよ。あなたも、そうなるって知ってるはず。本気であたしのために奥さんと別れるつもりでいるの?」 「そこは……そこはちょっと厄介なところなんだ」 「そこよ。その点をあたしは考えたの。デイル、あなたは大きなことを言う。いつもいいことばかり言う。そして、あたしも時々そんなあなたの言葉を信じてしまうことがあるわ。でも、毎回、毎回、最後にはあなたはバネッサとの何の曇りもないささやかな生活に戻ってしまう。あなたは、あたしのようなトランス女と火遊びできるようにと、今の状態を掻き回そうとは決してしないのよ」 「そんな言い方、フェアじゃないよ。キミだって分かってるだろ? これって……」 「分かってるからと言って、事実じゃないことにはならないわ。そういう状態になっているのは事実だわ」 「そうじゃないとしたら? いや、僕は真剣に言ってるよ。もし、僕が彼女と別れたら? もし……」 「もしもの話は関係ないわ。仮定の話しなんかどうでもいいの。もしあなたがあたしと一緒にいたいのなら、それは素晴らしいわ。あたしも同じ気持ちだから。でも、あたしは、もうこれ以上、2番目でいるつもりはないの。この状態を秘密にしておきたいという気持ちはないの。もう、これ以上はイヤ。だから、デイル、ちゃんと決心して」 「そんなに簡単なことだったらどんなに良いか」 「簡単なことよ。あたしか彼女のどっちなのか。今すぐ選んで」
Choices 「選択肢」 「もう……もう、こんなこと続けられない。彼女にバレてしまう」 「そんなの誰が気にするの? あなたは彼女を愛してないんでしょ? 元々、彼女を愛したことなんかなかった」 「もっと複雑なんだ。それは分かってるはずだよ、ライリー。彼女とは高校時代から一緒だったんだから」 「それはあたしたちも同じでしょ? それに、彼女がカウチで眠ってる隙に、あなたがあたしの部屋に忍び込んできたことを覚えてないの? あたしとふたりで釣りをしに行くと言って、何度も一緒に旅行したことを忘れてしまったの? それに……」 「全部覚えているよ。でも、彼女は俺の妻なんだ」 「彼女のことを愛していないばかりか、そもそも、好意すらもっていないのに? これまであなたは、何回、彼女と離婚したいと思ってきたっていうの? 分かってるでしょ? あたしたち、やろうと思えばいつでもできるの。ふたりで荷物をまとめて家を出ればいいのよ。何も気にすることなんか……」 「一緒にどこに行くの? 俺にはここでの生活がある。それは君も同じだろ?」 「あたしはそんなのどうでもいい」 「でも、俺はどうでもよくはないんだ」 「あたしが本当の女だったら、あなたは躊躇ったりしないんでしょうね」 「そんなこと言わないでくれ」 「あなたはいつもそれを問題にしてきた。あなたはあたしのことを女として見ていないのよ。どんなに胸を大きくしても、どんなに女性的な服を着ても、あたしは、あなたにとってはずっとカレンの可愛い弟のままなのよ」 「俺は、そんな……それは違う……そうじゃないんだ」 「じゃあ、そうだと証明して見せて。あたしと一緒に逃げて。彼女にちゃんと理由も言って。そうすれば、あたしたち本当に一緒になれる。こそこそ隠れて会うこともなくなる。だましたりすることもなくなる。あなたとあたしのふたりだけ。ずっと」 「俺は……ああ、俺に選択をさせないでくれ、ライリー」 「あたしかカレンのどっちかなの。両方はありえない。片方を選んで。あなたが選ばないなら、あたしが代わりに決めてあげるわ。あたしは出て行く。そしてあなたとは二度と会わない。でも、どちらにせよ、あなたは、今日、どちらか片方を失うことになるの」 「俺には……できないよ」 「だったら、あたしが出て行くわ。あなたの最愛のパートナーさんに、あたしの代わりにさようならを言ってね。それに、あたしがあなたのためにしてきたこと、それと同じことをカレンにやらせられるよう、幸運を祈ってるわ」
70_Chloe 「クロエ」 「でも、すごく居心地が悪いんだよ! いつもズリ上がってきて……」 「とても素敵に見えてると思うわ。それに、ついでに言えば、あたしたちは美のためならちょっとくらい居心地の良さなんて犠牲にしなくちゃいけない時があるものなの」 「これ、本当に男性用のモノなの? 誓ってもいいけど、これにそっくりなのを女性物売り場で見たと思うんだけど」 「男の子供向けのモノよ、クロエ。もう何百万回、同じことを言わせるの?」 「それはボクの名前じゃないよ」 「もう、どうしてこうなのかしら。クロエはニックネームよ。『あなた』とか「お前』とかと同じようなもの。別にクロエって呼んでも害はないでしょ?」 「でも、ボクの名前じゃない!」 「そうかもしれないけど、あたしに言わせてもらえれば、クロエの方がパトリックなんて名前よりずっといい感じだと思うわ。あなたにフィットしてるとも思うし」 「そ、それって、どういう意味?」 「マジで分かってないの? 鏡を見たら、そこには、もう、以前のパトリックはいないでしょ? もちろんそうよね。あなたはパトリックで通すには、ずっとずっと可愛らしくなっているから。だからクロエの方がいいのよ。すっといいわ。あなたも同意するはず」 「いや、ぼ、ボクは……」 「本気でこの話を続けたいなら、後で話し合わない? でも、今は持ち物をもって出かけましょう。遅れてしまいそうよ」 「ぼ、ボクは……ボクは行きたくないよ。こ、こんな格好じゃイヤだ」 「もうこれ以上は言わないからね。最後にもう一回だけ言っておくわよ。これは選択で着ることじゃないの。あの人たちは、あなたのお友だち。そして、そのお友達があなたをパーティに招待してくれたの。それに行かないなんて失礼だわ。少なくとも顔くらい出さなきゃダメよ」 「でも……」 「『でも』はもうヤメテ、クロエ。荷物を持って車に乗る。話し合う余地はナシ」 「わ、分かったよ。でも、みんなにからかわれたら……」 「何もすることないわよ。男っていうのは時々、バカになるものなの。でも、そんなバカな男たちも役に立つことはあるのよ。行けば分かるわ」 「そ、それも意味が分からないよ」 「いま言ったでしょ。行けば分かるって」
70_Adjustment 「適応」 「ほら、どうしたの? そんなに変なことじゃないわよ」 「よくそんなことが言えるなあ? 君は素っ裸で目の前に座ってるんだ。ああ、それにおっぱいまである。それが変じゃないって言うなら、変なことって他にあるかって思うよ」 「まず第一に、これはただ着衣をしてないだけ。たいしたことじゃないわ。第二に、これをおっぱいと呼ばないで。そんな言い方すると、まるで間抜けな学生みたいに聞こえるわよ。そして第三に、あなたは、あたしがこういう胸になってる正確なワケを知ってるんじゃない?」 「でも、君はその胸を元通りにするつもりだとばかり思っていたんだ。前に言っていた手術は……?」 「手術しないことに決めたの」 「彼女のせいだね? そうだろ? 彼女は君に男に戻って欲しくないのだと」 「エリンは、あたしに幸せになって欲しいと思ってるだけ。多分、あたしはバカだったのね。あたしの一番の親友も、エリンと同じく、あたしに幸せになって欲しいと思ってると思い込むなんて」 「いや、僕だって君に幸せになって欲しいよ。本気だ。でも、ただ、これって……」 「あなたは、あたしになって欲しい姿になって欲しいって、ただ、それだけでしょ? それはそれでいいの。あの薬の反応が出た後、あたしも同じことを願ったわ。元の自分に戻りたいと思った。あの時期はあたしにとって最悪の時期だったわ、ジョン。今から思えばだけど、あの時期、すぐ死ぬと思ってた。今まで生きてるなんて思っていなかった。でも、あの時、エリンに出会ったのよ。あたしがどんどん女性化していく。彼女はそれを受け入れて感謝すべきって、あたしに教えてくれたの。心身ともにそれを受け入れるといいって教えてくれたの。そして、今、あたしは幸せよ。あなたも同じように思ってくれたらいいと思ってるの」 「分かってるよ。同じように思ってるんだ。……ただ、全部、受け入れるのって大変なんだよ……」 「分かるわ。でも、あなたはそこまで到達したのよ。あっという間に、あたしが男だった時のことなんてすべて忘れるはず」
男は、いまだキッチンで椅子に縛り付けられたままの夫の横を通り過ぎる時、わざと自分の性器が夫に見えるようにさせた。そのペニスは、依然として半立ち状態で、だらりと長く垂れ下がり、彼の妻が出した体液でテカテカに光っていた。外見からでも、夫の目には、男のその道具が実際に使用されたものであり、しかも、たっぷりと使用されたものであることは明白だった。そして、この強盗は自分に、妻が受け入れていた代物を見せたがっている。 この泥棒は、最近、監獄から出てきたばかりで、世の中の体制側の存在を憎んでいた。ここにいる白人男、小綺麗な家に住み、金髪の小綺麗な妻を持つこの白人男は、男にとって、まさに体制を代表するような存在だった。そんな体制側に仕返しをしてやりたい。 「旦那さんよ、あんたの奥さん、さっきまで俺のコイツを咥えこんでいたんだぜ。勃起したら、今よりずっと大きくなる。奥さんが初めてコイツを見た時の顔、あんたにも見せてやりたかったぜ。目を真ん丸にして見つめてた。俺が最初に、コイツを奥さんの中に入れようとしたとき、奥さん、何て言ったか知りたいか? 奥さんの小さいまんこには太すぎたかもな」 夫は、男が自分の妻のバギナを「小さなまんこ」と言うのを聞いて、歯ぎしりしつつも、その目は依然として男の垂れ下がるペニスを見つめていた。椅子に縛り付けられている夫の、まさに、目の高さに、そのペニスがあった。まだ少し濡れてテカっているように見えた。そして、そのテカリは妻の陰部によるものだと分かっていた。 男は、妻がどんな反応をしたかについて言いたいのだろうが、夫はそれを聞かされるのを恐れていた。しかし、その一方で、その話を聞きたいとも思っていた。すべて聞きたいと。夫は顔を上げ、男の目を見た。そして震える声で言った。「なんて……妻は何て言ったんだ?」 男はにやりとした。彼も夫のペニスを見ていた。そして、その夫の、椅子にだらりと横たわっているペニスが、前に見た時よりも長くなっているのを見た。さらに、ペニスの頭部が触れている椅子の側面にプレカムの小さな溜りができているのも見た。 ……なんてこった。このおっさん勃起してるぞ。しかも、勃起して、これだけかよ…… どう見ても、夫が、妻が犯されているのを聞きながら、しかも2回犯されているのを聞きながら、勃起し、プレカムを流していたのは明らかだった。男はそれを知りほくそ笑み、寝取られ夫にもっと話してやろうと思った。 「俺のみたいに太いのは初めてだったのか、奥さん、俺に入れられるとき大変だったみたいでね、最初は、自分が上になりたいって言いだしたんだ。そうしたら、自分のスピードでヤレルからって。多分、あんたも聞いただろう? 最初の喘ぎ声、あれは、奥さんが初めて俺の亀頭を受け入れた瞬間に出した声だ……。 しかし何だな、奥さんのまんこ、本当にきつかったぜ。まるで、一度もちんぽを入れられたことがないまんこみたいな感じだったよ。でも、奥さんが、ようやく、根元まで咥えこんだあと、どんなふうに俺の上で動いていたか、あんたにも見せたかったな。本当に楽しんでいたようにしか見えなかったぜ」 男は夫の顔を見てにんまりした。どう見ても、この話しを聞いて興奮しているようにしか見えなかった。 「もっと聞きたいか?」 「ああ、頼む」 夫は、自分から認めてしまい、顔を赤らめた。
70 Acting 「演技」 誰か知ってる人がいるのかもしれない。疑ってる人がいるのは確かだと思ってる。陰謀論をいくつも見てきた。でも、陰謀論を言う人は傍流にすぎない。あの人たちが、あたしが男として生まれたなんて信じていないと思ってる。 でも、あたしは男として生まれた。今のあたしの姿を見て知っている人はたくさんいる。そして、その人たちは、あたしが女性になるためにどれだけ時間と労力と仕事をしてきたかを、まったく知らない。数えきれないほど手術を受けてきた。あたしの肉体の仕組みは、男性向きにできてるのだから仕方ない。あたしはほとんど食べたいものを食べない。毎日、何時間も、スキンケアに費やしている。大衆はあたしの本当の髪の毛を見たこともない。すべて、彼らがアイドルとあがめる人にあたし自身を変えるための努力。彼らがなりたいと思い願う人になって見せるための努力。端的に言って、スターになるための努力。 でも、あたし自身はそういう気持ちになっていない。これまでも、そんな感じになったことは一度もない。この姿で自分は快適でいられるのか、いつも問い続けている。自分は本当に女性になった気持ちになれるのか、いつも悩んでる。そういう気持ちになりたいと願っているけど、あたしは、心の奥に根付いてる「自分はニセモノだ」という想いに永遠に悩まされるのじゃないかと恐れている。 あたしは、みんながスクリーンで見ている女性ではない。あるいは、少なくともあたしはそう感じていない。スクリーン上の彼女は美しく、自信に溢れ、そしてとても女っぽい。あたしは自分はそのどれにも当てはまらないと思ってる。心の中では、あたしは、いまだ、セラピストの診察室にビクビクしながら座ってる10代の若者のまま。セラピストに、姉のチアリーダーの衣装を盗んで着たことを告白してる若者のまま。 でも、もしかすると、充分長くこのまま女性のフリを続けていたら、あたし自身が、あたしが上手に演じている役柄の女性になるかもしれない。ひょっとすると、自分の過去が示す男か女か分からない不安定な気持ちを払拭でき、現在の自分の美しさを心から受け入れることができるかもしれない。多分、いつの日か、あんなに長い間、なりたいと夢に見続けてきた女性になれるかもしれない。肉体的にも、精神的にも、魂の点でも。 でも、その時までは、あたしは演技を続ける。他にどうしてよいか分からないから。
70 Acceptance 「受容」 「いつまで隠していられるか分からない。そもそも、隠せているかどうかも分からないよ。もう、誰か、何かに気づいた人がいるに違いないよ」 「例えば? ブールの清掃員? あなた、もう、ほとんど家にこもったきりになってるんじゃない?」 「先週、友だちと遊びに出たよ。そしたら、フィルがボクのことをずっと変な目で見てたんだよ」 「それはフィルがキモイから。フィルはずっと前からキモかったわ」 「フィルは、ボクに太ったのかと訊いてた。そう訊く理由は分かるよ。ボクは、この体を隠すためにスウェットシャツを2枚着て、その上にジャケットを着てたから」 「マイカ、何て言ってほしいの? 指をパチンと鳴らして、連中を追い払って、って? そんなことできないわ」 「できれば、ボクをお医者さんのところに連れっていって欲しいんだけど。元に戻す方法があるはずだから」 「その方法、あたしにも分からなかったのよ。医学部を出たばっかりの若造に分かるはずがないじゃないの。ごめんなさいね。でも、あなたはこの状態に慣れなきゃダメなのよ。あの事故が起きなかったら良かったのにって、あたしも本当に思ってるわ。事故の時、あなたが研究室にいなかったらよかったのにって。事故があなたの肉体に影響を与えなかったらよかったのにって。でも、こうなってしまった以上、仕方ないの。多分、いつの日か、あたしが方法を見つけることができるかもしれない。だけど、すぐに見つけられるとは思えないのよ。前にも言ったはずよ」 「じゃあ、ボクはこの状態を何とか耐え続けなくちゃいけないと?」 「そう。選択肢はないと思うの。それに加えてだけど……あなたもあたしが貸してあげたビキニ、気に入ってるんじゃない? 多分、他の女性服も気に入るかもしれないわ。その方が、真夏に6着も重ね着して動き回るよりは快適じゃない? それは確かよね?」 「分からないよ、ベッキー。これって……」 「大変なのは分かるわ。でも、それより他に、あなたが普通にしていられるようにする方法が見当たらないのよ」 「ぼ、ボクは……わ、分かったよ。でも、これからも、これを直す方法を研究してくれるんだよね?」 「もちろんよ。絶対に。でも、今のところは、あなたにはドレスを着てもらいたいわ。一緒にお買い物にいけるように。あなたにぜひ試着してもらいたい服があるのよ」
70 A turning point 「分岐点」 「ほら。着たよ。嬉しい?」 「意地悪な言い方、しないで。すごくいいわよ。とてもセクシー」 「キミが着た方が、ずっといいのに」 「そうかしら。あなたに似合ってると思うわ。お化粧も、ウィッグも、なにもかも。超イケてるわ」 「キミがボクを言いくるめて、これをするようにさせたのか分からなくなっているよ。これはボクがキミのために買ったモノなのに。ボクは……これって、おかしいよ」 「どうして?」 「だって、ボクは女じゃないんだ!」 「だから? さっきも言ったけど、すごく似合ってるわ。それ以外、何が問題なの? あたしは、その姿のあなたが好きなの。それに、正直になって? それを着ると、自分が可愛いくなった気持ちになるでしょ? あなたが鏡を見た時、どんな顔をしていたか、ちゃんと見てたわよ」 「あれは、ただ……あれは何の意味もないことだよ。ボクはただエッチな気持ちになっただけ。だって、もう1ヶ月も、キミはボクに指一本触れてくれていないし……」 「じゃあ、あなたも、自分の姿が気に入ったということよね。よく分かったわ。でも、そのおかげでご褒美を得られるわよ?」 「ということは……」 「その通り。今夜、あたしとヤレるわよ。あたしはストラップオンをつけるから……」 「ちょっと待って。ストラップオン? ボクが思ってたのは……」 「時代遅れのやり方でヤルって思ってたの? 言ったはずよ、そんなのもうやめるって。そんなので、あたしはもはや、1ミリも興奮しないの。でも、この新しいやり方だと……約束するわ、あなたも気に入るって。あたしを信じて。一回やったら、もう、昔のやり方に戻りたいと思わなくなるから」 「でも……ボクは……」 「何なら、何もしないってことでもいいわよ。あたしは、どっちでもいいと思ってるから」 「イヤ! わ、分かったよ。するよ。いいね? ただ……ボクが……ボクの方が動くよ」 「いいわ。あなたなら、あたしの考え方が分かる人だと思ってた」
You 「本当のあなた」 あなたが前からなりたいと思っていた本当のあなたになればいいの
≪前ページ | HOME |
次ページ≫
|