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窮地に落ちたブリイ (6) 

ゲームを終え、ビリーとブリイが店を出ようとしたときだった。一人の男がビリーに近寄ってきて、友好試合をしようと持ちかけた。ビリーは、その申し出を丁寧に断った。すると、男は50ドル賭けてやらないかと言い出した。これにはビリーは、少し惹かれた。50ドルあれば、モーテル代が出るし、フロリダで遊ぶお金が増えることになる。でも、その一方で、自分の横、腕を巻きつけている絶品の女性がいて、一刻も早くモーテルに帰って、彼と情熱に溢れたセックスをしたがってうずうずしているのも知っていた。天秤にかければどちらが勝るかは自明だった。ビリーはまたもや丁寧に断った。

男はさらに何か言いかけたが、それよりも早く、ブリイがビリーの耳元に口を寄せ、囁いた。

「たった数分程度の仕事で50ドルよ」

ビリーはブリイの顔を見て、彼女がビリヤードをする彼の姿を見たがっているのを知った。ビリーもブリイも、ビリーが勝つのことは知っていた。「もう10分くらい、どうってことないか」 ビリーはそう思った。

ビリーはボールを木型に収め、挑戦者にブレークショットを打たせた。何分もかからず、容易くビリーが勝利を収めた。男は50ドル払った。だが、ビリーが花嫁と出て行こうとすると、男は今度は100ドルを賭けて、もう1ゲームしようと持ちかけた。この男が、懲りずにまたゲームをしようと言ったことにビリーは驚いた。そして、この時も、ブリイに促されて彼はゲームを受け、そして再び楽勝したのだった。ビリーは、またゲームを申し込まれても断りたくなっていたが、男は返り討ちのチャンスをくれと言う。この男は、明らかに腕前が下だ。またゲームをして勝ったら、250ドル手元に入ることになる。ブリイはにっこり笑ってビリーに受けるように勧めた。そして、またもやビリーが勝ったのだった。

この時までに、すでに男たちが数名、ビリヤード台の回りに集まっていて、様子を見ていた。全員、ゲームを見ると同時にブリイの姿も見て、眼の保養をしていた。とうとう男は諦めたようで、ビリーにお金を支払った。ビリーが受け取ったお金を数えていると、別の男が出てきて、250ドルでやらないかと持ちかけた。ビリーは、それは断り、出口へ行こうとした。だが、この時も、ブリイは彼にゲームするようねだったのだった。

ブリイの頭の中は、儲けたお金を使ってどんなことをしてハネムーンを楽しもうかと一杯になっていた。1週間のハネムーンを、二人は500ドルで楽しむ予定だった。今は、そのお金が750ドルに膨らんでいる。さらに250ドルが加わったら、どんなに良いだろう。彼女は、ビリーが勝つと確信していた。

ビリーは嫌気が差していたが、ブリイは何とか説得してもう1ゲームさせた。またもやゲームに勝って、ビリーはほっと安心する。だが、ここにいる男たちが怒り出す前に店を出た方が良いと彼は思った。

2番目の挑戦者は、ぶつぶつ文句を言いながら彼にお金を支払い始めた。そしてビリーに最後の1ドル札を払いながら彼は言ったのだった。

「お前、やり手だな。もうお遊びはやめるぞ。もう1ゲームどうだ? 今度は2000ドルだ」

ビリーは、信じられないと言わんばかりに目を丸くした。一旦、ブリイに目をやり、再び男に目を戻す。だが、ビリーは、2000ドルも持っていないと言い、丁寧に申し出を断り歩き始めた。すると男は、手を出して、ビリーの行く手を遮った。

「いくら足んねえんだ、達人さんよ?」

「1000ドルくらいだ」 とビリー。

「分かった、じゃあ取引しねえか。俺は2000ドル、お前は持ってる金全額ともう一つを賭ける、ってことにしよう」

「もう一つとは?」

「お前の女だ。あの女なら1000ドルの価値がある」

ビリーは困惑した顔をした。「僕の女って、どういう意味だ?」

「そこにいる女だろうが。お前と一緒に来た女だ。もし俺が勝ったら、お前の金と女を頂くことにする。お前が勝ったら2000ドルをやる」

ビリーは、怒りでみるみる顔を赤くさせた。

「自分の妻にそんなことはできない。彼女は物じゃないんだ。玉突きの賭けになんかできるか!」


[2008/08/29] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)