マリアはキッチンに戻り、私は、毎朝の決まった仕事をしに浴室に入った。体の中も外もきれいにした後、お化粧をし、メイド服に着替え、今日一日の仕事に取りかかる支度を終えた。
キッチンに入ると、マリアが私に言った。
「朝食は後で食べて。マークは、仕事に行く準備がすっかりできているの。今、朝食が来るのを待っているところなのよ」
トレーシーの寝室に3人分の食事を運ぶため、カートを使った。マークの朝食と、トレーシーの朝食、そして残りの一食はヘレンの分だろうと思った。ローレルは、トレーシーとマークと一緒に夜を過ごした場合を除くと、いつもキッチンで朝食を食べていたから。
寝室に入ると、マークはトレーシーの化粧台に腰をかけて、まだベッドの中にいるトレーシーとヘレンとおしゃべりをしていた。トレーシーは、毎朝そうであるように、この日も裸のままだった。マークは着替えを済ませていた。ヘレンは多分、裸のままなのだと思ったけれど、シーツをかけたままなので、胸から下は分からなかった。
マークの朝食を彼の前にセットしたとき、彼が手を私の脚から上へと滑らせ、お尻を軽く揉むのを感じた。どういうわけか、私は、くすくす笑いたい気持ちになってしまった。けれど、何とか堪え、ただにっこりと彼に微笑みかけた。マークも笑みを返してくれた。
トレーシーの膝の上にトレーを置いた時、彼女は私の手を取った。
「あのね、今朝はヘレンが私と一緒にバスタブに入ることになるの。だから、あまり一杯にお湯を張らないようにね」
「かしこまりました」
そう答えて、今度はヘレンの膝の上にトレーをセットした。彼女が顔を赤らめるのを見て私は驚いた。なぜだか分からないけれど、どうやら、ヘレンは、今のこの状況にいることを恥ずかしがっている様子だった。それとも、彼女が身体を起こしたとき、シーツがずれて、滑り降り、胸が露わになってしまったからかもしれない。
3人が朝食を食べている間、私は浴室に入り、タブにお湯を入れ、トレーシーのエネマを準備した。ヘレンもエネマの用具を使うのか、迷ったけれども、もしヘレンが使うのなら、多分、ヘレンの分も用意するように命じられるはずだと考え、準備はしなかった。
バスの準備ができたことをトレーシーに伝えようと浴室を出ようとしたら、マークが浴室に入ってきた。すぐに私を両腕で抱きしめて、ねっとりとキスをしてくれた。
「昨夜の君は最高だったよ。また、できる時が待ち遠しいよ」
彼の褒め言葉に、私は顔が赤らむのを感じた。
「マーク様も、最高でしたわ。私も、また中に来てくれる時が待ち遠しいです。でも、昨日の夜、一緒だったことをトレーシーは知ってるんですか?」
「トレーシーは、俺が誰と夜を過ごしたか、いつでも知っているんだ。俺よりも詳しくね。だけど、君と過ごそうと決めたのは、彼女じゃなく、俺の気持ちからだからね。気になるかも知れないから、教えておくけど」
このマークの言葉に、なぜか、自分が特別な存在になったような気持ちになり、嬉しかった。マークは、もう一度、私にキスをし、その後、仕事に出かけた。
本当に自分はキムのあそこの中に分身を埋め込みたいと思っているのだろうか? はっきりしなかった。いや、もっと言えば、自分のあそこが彼女のそばに近づくことすら、避けたいと思っていた。だが、どうしてよいか分からない。
スティーブは気分が悪くなるのを感じていた。ビデオの中でキムとセックスをしている男たち、その4人全員、コンドームをしていないのだった。
「それに、他にももっとビデオがあるのよ」 キンバリーはうわの空で話している。
この日の朝にスティーブを襲った陰鬱とした気分が、最大級の力を持って再び彼に襲い掛かった。この時の欝とした感情の方が、もっと酷い。コーヒーテーブルにはさらに9本、ビデオカセットが置いてある。キムがそれを一緒に見たいと興奮している様子から察して、その9本とも、彼女が主人公になっているのは確かだった。この若い娘は、一体、何人の男たちに身体を与えてきたのだろう。彼女が様々な性感染病に冒されている可能性が数え切れない。スティーブはますます沈んだ気分になっていった。
ふと、彼は、自分が沈んだ気分になっていることにキムが気づかないのを不思議に思い彼女の方を見た。キムは、相変わらずテレビ画面に全注意を傾けていた。ハアハアと荒い呼吸をして見入っている。腰も太腿もスティーブの身体にぴったりくっつけたままだ。いや、さらにもっと興奮を高めているようだった。隣に座る彼女の体から、激しく興奮した女の体臭が匂ってくるのにも気づいたスティーブだった。
スティーブは、彼を取り巻く様々な悩みから抜け出られなくなっていた。バーバラには裏切られた。彼女は他の男を求めたのだ。夫婦は破綻したのだ。なのに彼女は離婚を許さない。夫婦であり続けるよう要求している。それは、つまり、スティーブにいつまでもこの心痛を抱き続けろと言っているようなものだ。そして、今度は、バーバラの妹も・・・愛らしく、穢れのない可愛いキンバリー・・・そのキムが、彼女の股の間に割り込みたがる男ならどんな男でも迎え入れる淫乱娘になっていたとは。
そして、いま自分は、そのキムと一緒にいる。
キムとやりたい。ペニスを後ろからキムの女陰に突っこみ、彼女に悲鳴を上げさせ、何度となく激しいオルガスムを味わわせてやりたい。自分は、このビデオに写ってる他の男たちと全然変わらぬ最低の男なのだ。そして、キムは自分に性病を移すだろう・・・そうなってしまうはずだ・・・
スティーブは、自分を打ちのめす様々な攻撃に対処できなくなっていた。何も考えられない。理性的に対処できない。
頭の中でスイッチが切れるのを感じた。事態をより良くするために自分にできることは何もないのだ。もう、頑張るのはやめた。自分の行動に関して、それがもたらす結果について考えるのもやめた。様々な結果があるだろうが、すべて考えないことにする・・・一つを除いて。その一つさえあれば、あらゆる問題から解放される。そうとしか考えられなくなっていた。
突然、キムが自分から状況を変える動きを取った。やにわに立ち上がり、スウェット・パンツを乱暴に降ろしたのである。足をけるようにして靴を脱ぎ捨て、足先からズボンを脱ぎ捨てる。彼女は下着を履いていなかった。キムはスティーブを自分の横に引き寄せ、彼のカーゴ・ショートパンツ(
参考)を引き摺り降ろした。チャックも降ろさずに。スティーブはすでに裸足だった。彼は一日中裸足で過ごしていた。
スティーブは抵抗しなかった。次にどういうことになるか分かっていたが、それは、対処しなければならないジレンマには、もはや、なっていなかった。むしろ、気持ちの上では楽になっていた。自分に対して、自分を取り巻く世界に対して、これほど気楽になったのは、何ヶ月ぶりのことだっただろう。
「早くして!」
キンバリーは、息を荒げながら、座りなおした。横寝になり、顔をテレビに向けている。後ろに手を伸ばし、スティーブを自分に引き寄せている。
「早く!・・・私の中に突っ込んで!」 キムは半狂乱になっていた。
スティーブはすでに挿入可能なほどに勃起していた。彼はずっと勃起し続けていた。テレビの画面の中の娘が実在性をなくした時から。今や、彼女は生身の女ではなく、ただのセックスのおもちゃにすぎない。
「早く突っ込んで!」 キムが急かした。