ビリーがジョーンズに訊いた。
「妻のこと、傷つけたりしないよう注意してくれるか?」
「俺は、自分の持ち物は大事にする主義だ」
「いつ、彼女を帰してくれる?」
「あんたの奥さんを返すなんて、一度も言ってねえぜ」
ビリーは怒りを爆発させ、ジョーンズに突進した。しかし、ジョーンズに掴みかかる前に、この店の者が二人出てきて、その巨体の腕でビリーを捉え、押さえつけた。ビリーは激しくもがいたが、体の大きさが違いすぎる。
ジョーンズが続けた。
「まあ、俺もリーズナブルな男だ。お前の奥さんが、俺の指示にためらうことなく従って、俺を喜ばせてくれたら、月曜の朝には返してやってもいいぞ。それに、お前もおとなしくしているなら、今夜、俺がお祝いに開くパーティに出るのも許可してやろう」
ビリーは暴れるのをやめた。だが、巨体の二人の男は、彼の両隣に立ったままだった。何かしようとしたら、即座に押さえつけられるのだろうとビリーは悟った。
「それでいいんだよ。それじゃあ、ちょっとお楽しみの時間にするか」
ジョーンズはそう言って、ブリイの方を向いた。「名前は何て言うんだ?」
ブリイはかすれた声で応えた。「ブリイ」
ジョーンズは笑顔で続けた。「良い名前だな。さて、ブリイ。あんたは、俺が言うことを何でもしなくちゃいけねえのは分かっているよな?」
ブリイは頷いた。
「よろしい。じゃあ、まずは、その金を俺によこしてもらおうか」
ブリイは言われた通りに、金を渡した。
「次に、あんたの身体をじっくり見せてもらうことにするか。立ち上がって、ゆっくり、回って見せてくれるか」
ブリイは、ゆっくりとスツールから降りた。どんなことが自分を待ち構えているのか、不安でならない。ジョーンズは、くるりと回るよう、手で指示して見せた。ブリイは、かなりぎこちない動きで、その指示に応じた。ジョーンズは、途中で、遮った。
「そんなんじゃダメだな」
ジョーンズは店の者に音楽を鳴らすように言い、それから、またブリイに顔を向けた。
「俺たちにダンスを踊って見せてくれるか?」
部屋に音楽が流れると、ジョーンズはダンスを踊るよう、身振りで示した。
「セクシーに踊ってくれよ、ブリイ」
ブリイは、恥ずかしそうな顔をして、ためらった。
「おい、ブリイ。俺を怒らせたいとは思わないだろう? えぇ?」
ブリイは頭を縦に振り、ゆっくりと身体を揺らし始めた。
「踊りながら、両腕を上に持ち上げてくれるか?」
指示の通りにして踊ると、結果として、胸を前に押し出す姿勢になっていた。ジョーンズはブリイの後ろへと歩るいた。次の瞬間、ブリイが気づくよりも前に、ジョーンズは彼女のトップを捲り上げ、頭から脱がしたのだった。
男たちがいっせいに口笛を吹き、歓声を上げた。ブリイの可愛い赤のレース・ブラが姿を見せたからである。
ジョーンズは両手をブリイの腰にあて。それから、その手を上へと滑らせた。手のひらをお椀の形にして、ブリイの乳房を持ち上げる。わざとタプタプと揺すり、男たちに、ブリイの胸がどれだけ大きいか、どれだけ重量感があるかを見せ付けた。
ジョーンズは、顔をブリイの美しい髪の毛に埋もれさせ、細く女性的な首筋にキスを始めた。ブリイは、この男にまとわりつかれるのを嫌悪していたものの、男の愛撫を受け、乳首が勃起してくるのを感じた。
3ヶ月が過ぎようとする時には、誰もが私の変化に気づいているようだった。裸の私を見た人に限ってのことだけれど。胸は大きくなっていた。ブラジャーを満たすほどにはなっていないけれど、Aカップならほぼ満たすほどになっていた。乳首も、高さも大きさも、元のほぼ3倍に膨れていたし、乳輪は50セントコインほどの大きさになっていた。
体毛も変化を見せていた。もはや、ひげはほとんど剃る必要がなくなっていたし、たとえ生えてきても、細く柔らかい毛に変わっていた。髪の毛は、前にも増してボリューム感が出てきているようだった。いまだ、体毛リムーバーは使っているけれど、先月は、1度しか使う必要がなかった。ただ、脚の毛だけは例外で、そこはいつも無毛状態に手入れし続けていた。
常時コルセットをつけていたおかげで、いまや、すっかり女の子っぽい腰つきになっていた。誰もが、砂時計の形になっている私の胴体に目を奪われていた。一度、マークに言われたことがある。後ろからセックスすると、本当に、女の子にしているのと同じ感覚になると。
このような体の変化で、一つだけ、困ったことがあった。それはペニスである。今は、前に比べて少し小さく、細くなっている。たいていの時は、問題なく勃起ができるが、何度か、勃起するまで時間が掛かったことがあった。それに、勃起せずに射精してしまったことも、2、3回あった。エーカーズ先生にそのことを話したら、摂取するホルモンを調整してくれた。おかげで、その問題はほぼ解決できている。
そろそろ豊胸手術を受けても良いのではないかと感じていた。エーカーズ先生は、ホルモン注射で自然には、これ以上、胸が大きくならないと判断したら、次の段階として、手術を行うと言っていた。唯一の問題は、豊胸手術を受ける前に、エーカーズ先生に加えて、マシューソン先生の了解を得る必要があるということだった。と言うのも、私はマシューソン先生の手術を行って欲しいと思っていたから。マシューソン先生は、トレーシーの豊胸手術を行った先生で、是非とも先生にして欲しいと思っていた。トレーシーの胸は、豊胸しているとは、まったく感じられない。私の胸もトレーシーの胸と同じように素敵にして欲しいと思っていた。
エーカーズ先生もマシューソン先生も、同意書にサインすることを了解してくれた。ただ、3つ条件があった。第1の条件は、術後も半年はセラピーを受け続けること。第2の条件は、1年間、ホルモン治療も受け続けること。この2つの条件には、私もまったく問題がなかった。ホルモンについては、マリアがいまだにいくらか取り続けているのを見ていたし、何年も続けていると知っていたので、条件になくとも、摂取は続けるつもりでいた。
第3の条件は、他のに比べて、ずっと同意しがたい条件だった。先生たちは、私に、自分の父親に、どうしようとしているか説明するよう求めたのだった。ただ連絡するだけではダメで、実際に父親に会い、話しをすること。そして、本当に会って説明したか、証明することを求めていた。
先生たちが言うことは正しいと分かっていた。私自身、父に会い、自分がどれだけ彼に傷つけられた思いだったか伝えなければならないと感じていた。だけど、先生たちは、私に、女の子の姿で会いに行くよう求めていた。私も、いずれ、そうするつもりではいたけど、私の頭の中では、例えば、父の臨終のときなどに、その姿を見せようと思っていたのだった。だけど、私が望むものを手に入れるためには、他の選択肢はなかった。すぐに、女の子の姿で父に会いにいかなければならない。
父とは、家を出た日からずっと会っていない。父は東海岸に引越し、計画通り、望んでいた仕事についていた。しかし、依然として、何週間に1回は、会議のためにこちらに飛んできていると語っていた。
ある月曜日、私は、トレーシーに付き添ってもらいながら、受話器を取り、父に電話した。