その後、どうなるか、俺はじっと待っていた。例のウェイトレスは他の客の応対をしていて、全然、こっちには反応していない。延々と待たされている感じだった。
そして、突然、事務室のドアが開いた。出てきた人を見てビックリした。背の高い、ブルネットの女が、セクシーなラテックスのドレスを着て出てきたのだ。俺のテーブルにやってくる。信じられないほどセクシーなハイヒールを履いている。そいつを見たら、男なら誰でもよだれを垂らすだろう。彼女は俺のテーブルに来ると、手を差し出した。
「一緒に来て」
そう言って俺の手に指を絡めてくる。
彼女の柔らかいセクシーな指を握りながら、俺は立ち上がった。彼女は、俺から手を解き、事務室の方へ向き直った。
「ついてきて」
彼女の後に続いて歩きながら、俺は心臓がドキドキしているのを感じた。ぜったい何かある。多分、裏部屋があって、プライベートなクラブが開かれているのかもしれない。事務室に入ると、彼女はドアを閉めた。
「そこに腰掛けて」
そう言って、彼女はデスクの前に行き、そこにある椅子に腰を降ろした。
腰を降ろす時、前屈みになったので、ドレスの中、彼女のたっぷりとしたおっぱいの谷間を見ることができた。黒のラテックスのドレスは、胸元が深く切れ込んでいて、しかも、ノーブラなのだろう、乳首の突起が生地の上からはっきりと見えていた。
彼女はデスクに手を伸ばし、タバコを一本とって、セクシーな赤い唇に咥えた。ライターをカチッと鳴らす音。俺は固唾を呑んで見ていた。他には何の音も聞こえない。
彼女は、一回だけ煙を吸い込み、すぐに灰皿にタバコを置いた。それから、顔を上げ、俺の目をまっすぐに見つめた。そして、少し間を置いてから話し始めた。
「君は何歳なの?」
「18」
また、タバコを取って一服した。その間、まるで俺の心を読んでいるように、俺の目を見つめていた。
「この場所は、どうして知ったの?」 また、一服、吸いながら言う。
「ウェブで」 俺は、少し、おどおどしながら言った。
彼女は、今度はワイングラスを手にした。飲みかけだったらしく、すでに半分ほどなくなっている。そのグラスから、一口、啜って、言った。
「ここは、君のような人が来る場所とは思えないわね・・・」 と言って、片手を軽く挙げた。俺の名前を訊くような素振りだった。
「名前はジャスティン。・・・でも、どうして?」
俺はできるだけ自信に溢れている雰囲気を作って、名前を名乗り、逆に問いかけた。彼女と同じように、片手を上げて見せ、名乗ってもらうのを期待した。
「このクラブは高級なの。君のような人には手が出せないわ」
彼女が名乗らなかったので、少しがっかりした。
彼女は、またタバコを吸い、俺はそれを見ながら待っていた。またワインを一口啜った後、また俺の目をまっすぐに覗き込み、口を開いた。
「現金で5000ドル」
俺は溜息を漏らした。もちろん、そんなお金はない。
彼女は、座っている椅子を少し後ろに押し、脚を組んだ。脚を組む時、ほんの一瞬だったが、ラテックスのドレスの下、パンティがちらりと見えた。
まるでパワーゲームをしているようで、俺と彼女の間、嫌な沈黙が漂っていた。
沈黙の間、突然、何か音がした。音楽の音とそれに紛れて、かすかに女が叫ぶ声が聞こえてくる。女の声だと分かり、俺はまた心臓が高鳴った。ベースの音で床が振動している。下から聞こえてくるようだった。
「それに加えて、テストに通る必要があるわ」
彼女は、タバコの煙を吐きながら言った。
「身体検査?」
「いえ、違うわ。5000ドル持ってきなさい。その後で、テストのことについて話すから」
「Experiment 実験」 by deirdre
初めて、マイケルズ先生と会ったのは、ルームメートのシンディと一緒にキャンパスを歩いていた時だった。偶然、先生の顔を見かけたシンディが、呼び止めて私を紹介してくれたのだ。
「こんにちは」
先生は、親しみ安そうな雰囲気で、私に声をかけてくれた。でも、どこか、一緒にいて居心地が悪くなるような雰囲気がある人だった。
私が先生のクラスに登録するまで、先生に会ったのは、それだけだった。正直、私は先生の授業に出る必要はなかった。学位のために心理学系の授業で取らなければならないのは一つだけだったし、すでに入門コースの授業を取り終えていたからだ。でも、シンディに、是非とも、もう一つ取っておくべきと言われ、取るとしたらマイケルズ先生の授業にすべきと言われたので、仕方なく、選択授業として登録したのだった。どうしてシンディは、特にマイケルズ先生の授業を取るよう、あんなに声高に言い張ったのか、ちょっと変な感じがしたのは事実だった。
でも、授業が始まると、マイケルズ先生はとても魅力的な先生であることが分かった。それに、彼女は、私たち学生にとっても優しくしてくれる。学生の誰にでも、すれ違った時などに、いつも、立ち止まって話しかけてくれる。ある日、課題を取りに、先生の研究室に行った時があったけれど、結局、一時間も先生とお喋りを続けていた。どの教授たちも、先生と同じように、気軽に付き合えるようになってくれたら良いのに、と思った。
それで、ある日のこと、授業が終わったあと、私は先生のところに立ち寄って、お喋りをしたのだった・・・ただ、なんとなく、先生と話したい気持ちになっていたのだと思う。先生と会って、少し、雑談した時だった。先生が、一緒に夕食に行きましょ、と私を誘ってくれたのだった。私はすぐに賛成した。そして、結局、私と先生は、とあるバーに行って、ちょっとしたオードブルを食べていたのだった。
その夜は、先生といろんなことをお話しした。話しの話題は、いつの間にか、男性のことやデートのこと、そしてセックスのことになっていた。すでに何杯かお酒も飲んでいたからか、私は先生に、他の時なら誰にも話さないような個人的なことを話していたと思う。でも、先生は、とっても、話しやすい人だったから。
「ねえ、君は女性に惹かれる感じがしたことはある?」
先生は、私がバイセクシュアルかどうか訊いていた。どうして、この話題になったのか覚えていないけれど、全然、場違いで不自然な質問ではなかったと思う。先生は、私がちょっと沈黙したのを見て、それが答えだと解釈したようだった。
「真剣に惹かれたこと、っていう意味でよ?」と先生は付け加えた。
「何と言うか・・・」
「あら、何も恥ずかしがることじゃないわ」 先生は、私の秘密の気持ちを察してしまってるの? 「だれか、可愛い同級生とか・・・誰が、お気に入り?」
「これって、恥ずかしすぎるわ、先生!」
「心配しないで、大丈夫だから。心に思っていることを他の人に話すことは、精神上、良いことなのよ。私を信頼して。で、誰?」
「あの・・・」 私は、そこでまた、間を置いた。「・・・チアリーダの一人のことを・・・ブルネットの髪の子なんです」
このことを誰にも話したことがなかったし、話すなんて予想もしていなかった。でも、実際、私はそのチアリーダに惹かれていたのは事実だったし、夜に、彼女のことを思っていることも、時々あったし、彼女を見かけると、実際、少し興奮するのも本当だった。
「その子のことを知ってるの?」
「いえ、全然! ・・・ただ、試合で見かけるというだけです」
「なるほど。単に心を惹かれているということだけなのね。大丈夫。恥ずかしがることはないわ。私たち女性には、珍しいことじゃ全然ないんだから」
先生は、それから、いろいろ話して、そういう感情を抱くことには、何も恐ろしいことなどないと、私に言い含めた。私は、内心、この種の感情にはずいぶん悩まされていたのだけれど、そのことについては先生に漏らしたりはしなかった。ともかく、この話題については、会話は、それだけだった。この日の後は、私は、この会話のことをほとんど忘れていたと思う。