しばらくして、リロイはリンダから身体を離し、ベッドから降り、無言のままずんずんと浴室に向かった。シャワーを浴びるためにである。
リンダはうつろな眼差しでブルースを見た。
「こっちに来て、ブルース」
ブルースは、明らかに勃起した状態が分かってしまうし、ズボンの前が濡れているのも恥ずかしかったので、ためらった。リンダが気づかなければいいと願いつつ、立ち上がりベッドに向かった。
「もっと近くに」
ブルースがベッド脇に来ると、リンダは腕を伸ばし、ブルースのズボンの股間部分に触れた。
「あら、どうやら、あなたに今の私とリロイのショーを見て楽しんだかって訊かなくても良さそうね」
ブルースは恥ずかしさに顔が赤らむのを感じた。
「自分でいじったの?」
「いいえ」
「じゃあ、私とリロイを見てただけでイッちゃったの?」
「は、はい、奥様」 ブルースは小さな声で答えた。リンダの視線を避け、うつむいて床を見つめたままだった。
「その返事、認めたしるしと取ることにするわ。それで? 感動した?」
「私は…何というか…あのようなものは見たことがありませんでした」 ブルースは正直に打ち明けた。
「あのようなものって? …リロイのおちんちんのこと?」
「ええ、それもですが、何と言うか、すべてがとても…… 奥様があんなふうになるところを見たことがありませんでした。あんなに完全に狂ってしまうとは……」
「うふふ… 私がそうなってしまうには十分理由があるのよね。そうは思わない?」
ブルースは、あのようなセックスを見た後で、自分の感情について話し合うことに気まずさを感じた。自分自身、自分の感情を理解しきれていないのだ。
その時、リロイが腰にタオルを巻いてシャワーから出てきた。
「あなた? リロイの服を取ってきてあげて。家にいても、あなたは今夜は公式的に召使いなのだから」
「はい、奥様」
ブルースは、即座に、リンダと男性がいる場で求められている丁寧な物腰に戻った。目を伏せ、床を見ながらリロイの横を過ぎ、リロイの下着が置かれているスツールへと進んだ。そして、恥ずかしさもあるが、失礼にならないようにと気を使い、リロイの顔を見ないようにして、下着をリロイに渡した。
次にブルースは、リロイのズボンを吊るしているクローゼットに行き、ハンガーからはずし、腕に垂れ掛けながら戻り、リロイに差し出した。リロイは礼も言わず、無言でズボンを受け取った。
「俺のソックスと靴は、リビングルームだ」 リロイはブルースをせかした。
ブルースは、寝取られ夫という屈辱的な役割を演じているところを自分の妻にじろじろ見られ続けるのが嫌だった。その視線から逃れられるチャンスを得て、ありがたいと思った。とはいえ、寝室を出た彼は、リビングからリロイの靴などを持ってすぐに戻ってきたのだった。
リロイは身支度を終えるとリンダの元に近づき、ディープキスをした。
「あなた? リロイを玄関まで送って差し上げて」
「はい、奥様」 ブルースはちょっと必要以上に嬉しそうな声を出して返事した。
階下に降り、玄関に来たが、リロイは立ったままで、帰って行きそうな行動をしなかった。気まずい時間が過ぎ、ようやくブルースは、リロイが自分がドアを開けてあげるのを待っていることに気がついた。
「おいでいただき、ありがとうございました」 と、ブルースは玄関ドアを開けながら言った。
「いつでも来てやるぜ。あの女はハメ具合がいいまんこをしてるし、舌使いもうまいからな。まあ、そういう点はお前も知ってることだろうが…」
「はい、リロイ様」 ブルースはうなだれながら答えた。そう答えても失礼にならなければ良いがと願った。これは、リンダのためになる適切な態度なはずだと。
そしてリロイは帰って行った。
ブルースは玄関にカギをかけ、寝室に戻った。リンダはまだベッドに横たわっていた。