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心が望むものをすべて 6 (14) 

「別れた最初は、よりを戻すなど、ありえないと思っていました。その後、私は仕事、つまり、この本のことですが、これに没頭しました。そして、この仕事を通じて、非常に多くの人々を見たのです。心が空ろな人々、痛ましい人々、自分をあるがままの本来の姿で受け入れてくれる人が誰もいない人々のことです。私は、自分が置かれていた境遇を振り返りました。そして、私の過去の境遇がいかに素晴らしかったかを改めて理解したのです。ずいぶん考えました。やがて、私は、別れることになってしまった出来事のことを、何というか、取るに足らないこととまでは言いませんが、もはや、そんなに重要なこととも思えなくなったのです。その頃、ある出来事がありました。2ヶ月ほど前の夜のことです。・・・まあ、詳しくは言いませんが、ただ、明るいきざしが見えて来たとだけ言っておきましょう」

「最近、その人と話しをしましたか?」

「ええ。少し前、偶然、再会しました。本当に久しぶりだったので、嬉しかった。その時、私がそもそもどうして最初に彼女のことを好きになったのか、それを思い出しました」

「もし、その人がこの場にいたら、どんなことを伝えますか?」

「彼女が私にとって依然として最愛の人であると言いたいです。これまでもそうだったし、今後も変らないでしょう。まだ結婚指輪をつけている理由も、それです」

「彼女のほうはどうでしょう? もしここにいたら、その人はあなたに何と言うでしょう?」

「私が言えることではないと思います」

「・・・私なら、こう言うわ・・・」と泣きながら見ていた。「家に帰って来て! 愛しているの! これまでも、これからも!」 テレビに向かって叫んでいた。

「彼女には電話をするつもりですか?」

「多分、私の準備が整ったら。恐らく、この本の宣伝のためのツアーが終わった後・・・」

「ありがとう。ダニエル・デベロウさんでした」

本のツアー?

私は出版社のウェブ・サイトにアクセスし、調べた。1週間後、彼女がここに来る!

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[2007/09/03] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)