時が過ぎていく。ジルは、遠くから生徒たちを注意深く監視していた。その彼女を、別の男が注意深く監視していることも知らずに。校庭の方から、児童たちがいっせいに歓声を上げるのが聞こえた。ようやく集会が終わったのだろう。チャイムの音が鳴り響き、本日最後の授業が開始する時刻が来たことを告げた。
アーチーは、橋の下から顔を上げ、児童たちが全員、最後の授業のため校舎に入っていくのを確認した。それから、逆方向へ顔を向ける。若い美人教師が、同僚の教師たちに手を振っているのが見えた。先に帰ると伝えているのだろう。
再び身を潜め、しばらく待った。やがて、頭上でコツコツと橋の上を歩く音が聞こえた。アーチーは、素早く、テープ・レコーダのボタンを押した。
「だ、誰か? ・・・助けて!・・・」
テレビ番組で、子供が助けを呼ぶところを録音し、編集したテープだった。
「え? 誰かいるの? そこで待ってなさい。いま助けに行くから!」
アーチーはにやりと笑った。
橋の横、谷間へのゆるい坂に、ジルの細く美しい足が現れた。その瞬間、下から大きな黒い腕が伸びてきて、彼女の両脚もろともすくい上げた。体が後ろに倒れそうになると、別の腕が出てきて、抱きかかえ、同時に手で口を塞ぐ。ジルは、最も嫌悪する男につかまってしまった。
「んー!! んんー!! んー!!」
口が塞がれているので悲鳴にならない。
アーチーは、そのままジルの体をマットレスに降ろした。100キロ以上の巨体で、彼女の上にまたがり、のしかかる。片手で口を塞いだまま、もう一方の手で、白いブラウスを引き千切った。ボタンが飛び散り、中の白肌が出てくる。ブラジャーからこぼれそうに隆起している乳房に手を伸ばし、揉み始めた。母乳が充満しているはずもないが、驚くほど、重量感があり、柔らかい。
「んんー!! んんー!! んー!! っ!!」
ジルは、男が何をしようとしているのか、恐怖に目を見開いたままだった。
アーチーは、ブラジャーをずり上げた。中から、ジルの成熟した乳房がぶるんと躍り出た。子供が2人いるのが嘘のように、張りがあり、乳首の色も若々しい。アーチーは、背を丸くし、顔をジルの桃乳に寄せ、かぶりついた。下品にべろべろとピンク色の乳首を舐めまわす。
「んんー!! んんー!!」
ジルの声は、言葉にはなっていないが、「やめてー!」と叫んでいるのが明らかだった。必死に体を動かし、アーチーから逃れようとした。
だが、この巨体の男が相手である以上、ジルの抵抗も無駄だった。両手をバタバタさせ、暴れたが、アーチーの大きな手で簡単に押さえられてしまった。ばんざいをするように頭上に持ち上げられる。
両手首は交差させられ、黒く大きな手で握られている。口は、相変わらず、もう一方の手で覆われている。巨体にのしかかられ、足をバタバタさせても、何の助けにもならない。腕力の点では、アーチーにかなうはずがなかった。ジルは、動くことも叫ぶこともできない。しかも、欲しくもない刺激を与えられ、ジルの乳首は固くなり始めている。
クリスティンへ
あなたは、これまでも、今も、そしてこれからも、私の最愛の人です。あなたと分かち合う喜びに匹敵する喜びはありません。あなたの元を離れた、あの夜は、何にも増して悲しく、苦痛に満ちた夜でした。あの夜以来、私が受け、耐えてきた出来事よりも悲し句、苦しい。あなたのこと、あなたと私たちのことを、切望と後悔を持って考えない日は、一日もありませんでした。あなたの触れる手、暖かさ、寄り添っているという実感が失われたことを悲しまない夜も、ありませんでした。
この本に書かれている通り、色々なことが私の人生に起きました。その出来事のいくつかは、私たちがまだ一緒だった頃に起きたことです。それは、あなたの想像力、創造力、情熱、私への愛がなければ、一つも起こらなかったことでしょう。あなたが私にしてくれたことが、心の点でも体の点でも、私に良い結果をもたらしたと思っています。Tガールとして、美しく変身できたし、心も充足しています。この自己評価に、世の中のすべての人が同意してくれるわけではないとは思いますが、誰も、すべての人が認める存在になることはできません。理想の状態に近づこうと最善を尽くした結果の、今の自分。私は、それに満足すべきでしょうし、それで良いと思っています。以前は、あなたにとって最もよい存在になれたらと願ったこともありました。でも、今は、そうは思っていません。とにかく、今の自分に至るのに助力してくれたことに感謝しています。
あなたを愛さなくなったことは一度もありません。ですが、あなたを信じなくなったことはあります。恐らく、私は間違ったことをしたのでしょう。あなたは、気ままに行う不実の行為について、私にいつも正直に話していました。他の人なら、おそらく、隠そうとすることなのに。私は、その点を含めて、あなたを受け入れました。でも、そのときの私は、他の多くの人と同じく、愚かにも、そのうちあなたを「変える」ことができると思っていたのです。実際は、あなたが私を変えた・・・良い方向にとは思いますが。ただ、例外的に、悪い方向へ私が変わった部分もありました。それは、過剰に反応する、女性的な感情でした・・・ネガティブな意味での女性的な感情。あの夜、私は、その感情が自分の中に生まれていること発見したのです。あなたがロン・ランドールと一緒にいるところを目撃した、あの夜に。
実際は、ロン・ランドールが、フライデイーズであなたに初めて誘いをかけたときにすでに、私は初めて嫉妬の痛みを感じていました。あの夜、家に戻った後、何が起きたか覚えていますか? 私は、あなたが彼のことをすべて忘れてしまうようにと、一生懸命に努力しました。でも、もちろん、あなたは、忘れてくれませんでしたね。そして、家に戻ったとき、私はあなたが彼とセックスしているのを見てしまったのです。私たちのベッドの上で。人生で、このときほど、裏切られた気持ちになったことはありませんでした。ああ・・・どんなに復讐したいと思ったことか。事実、私も、同じことをしました。レクシと寝たし、グウェンとも寝ました。そして、そのことをあなたが知ったとき、私は小躍りして喜んだのです。
しかし、あの夜に本当に起きたことを知ったとき、私はショックで死にそうになりました。私は、いまだに、あの夜、あなたが私を交えずに彼らを家に招いたことを不愉快に思っています。それでも、あのようなことが、あなたの身に起きることを願ったりはしないでしょう。あなたばかりでなく、私たちが知ってる、他の誰の身にも。
エスコートクラブの世界に入ったわけは、そこが、私が書く女の子たちの社会構造に密接に関係しているからです。彼女たちのことを理解したいと思ったなら、まず、その世界のことを理解しなければならない。それに隠れた動機もありました。ある意味、あなたに仕返しをしていると思いながら、デート嬢の仕事をしていました。男性が相手のときが大半ですが、女性が相手のときもありました。
エスコートの仕事の大半は、きわめて機械的と言えます。たいてい、デートをしても、魅力的に感じるところは、まったくありませんでした。ただ、お金を受け取り、客が望むことをしてあげるだけ。それでも、その仕事には、何か麻薬的に惹きつける点があるのも事実です。それをするときの、客の目に浮かぶ表情が、それです。私の体や奉仕を得られるなら、喜んでお金を払いたい、それだけ私のことが欲しいのだと叫んでいる表情。もし、あのままデート嬢の仕事を続けていたら、やがて、他の女の子たちと同様に、薬物中毒になってしまうか、心の中が死んだ状態になっていたことでしょう。幸い、私は、その仕事を辞めました。そして、いま思っているように感じていることを残念には思っていません。
時々、セックスの点で、本当に素敵と言える男性に会うことがありました。私がその男性をいかせるだけでなく、私にも喜びを与え、いかしてくれる男性です。そういう男性は、私が勤めていたクラブで、自然に知り合った男性であることが普通です(あの夜、ゴーサムで私と一緒にいた男性も、そういう男性の一人です)。男性が現れ、その人が瞳にあの表情を浮かべる。ズボンの前が盛り上がっている。その盛り上がりを私が引き起こしているのだと知る。それらのことがあると、私は、その男性を喜ばせて上げなければならないと思ってしまうのです。そういう時、その後、その男性とどこかに行き、彼のズボンを脱がし、そして、初めて、その美しいペニスに触れる・・・。ああ、考えただけで、濡れてきます。こんなことを言って、多淫に聞えるのは分かりますが、でも、今は前より、私は、あなたのことを分かっているつもりです。
セリーヌとは寝たことはありません。でも、そういう欲望が生まれなかったからではありません。彼女は、私に許してくれなかったのです。その理由は、後になるまで知りませんでした。彼女については、言いたいことを言って良いと思います。でも、一旦、彼女の「あの態度」のことをやり過ごせば、セリーヌは、私が会った中で、最も洗練され、優しい人間であると分かるはずです。実際、セリーヌは、よく、私にあなたのことを話してくれました。私の目には、セリーヌを失うことは、あなたが死ぬところを見るのと同じです。ひどく悲しみましたし、それは今も変わりません。
あなたの誕生日に、ゴーサムであなたを見たとき、そして、あの特別な妄想をあなたと一緒に分かち合ったとき、私は、あなたを欠いた人生が、いかに虚しいかを悟りました。あなたの元を離れることになった、あの出来事のことは忘れることができません。それは、あなたが、あの日以来、私がしてきたことを忘れることができないのと同じでしょう。私たちにとって最善のことは、出来事を忘れることではなく、出来事が大きな意味を持つとは考えないことだと思います。あなたは私を今の私にしてくれた。あらゆる意味で。その過程で、あなたは、あなた自身と私を強くしてくれたのです。多分、小さな危険信号が現れても、簡単には崩れないほど、私たちは強くなっているでしょう。私はまだ結婚指輪をつけています。それを誇りにしています。かつて、クッキーに「これは永遠」と書かれていたのがありました。私の一番大きな間違いであり、後悔は、その言葉を真に受けなかったことです。少し時間をかけて考えたなら、その過ちすらも直せると思えるのです。
愛を込めて
ダニー
私は、声を上げて泣きじゃくっていたと思った。実際は、違ったけれど。彼女は、この言葉をつむぎだすのに、どれだけ時間をかけたのだろう? でも、私は何を言ってるの? ダニーはプロのライターだし、今は作家でもあるの。しかも、すごく優れた作家。彼女は、多分、さっと一気に、これを書いたのだろう。少し時間をかける? 必要なだけ時間をかけて。私、待っているから。
涙のあまり、タイトルのページにポスト・イットが張ってあるのを見落とすところだった。走り書きしてある。
ここは5時には終ります。その後、オマリーの店に! 妄想を分かち合いたいと思わない? Dより
おわり