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私たちは何とか身だしなみを整えた(ほんとに、よくできたと思う!)。そして、アンジーとふたり腕を組んで、腰を振りながらトイレから歩き出た。共に、それぞれの彼氏に会うために。
私の笑顔が、アンジーの笑顔と同じくらいまぶしいほどの笑顔だと嬉しい。そう思いながら、明るい顔で歩いた。前には感じなかった元気良さを発散していた。トイレに入る前とは違って、今回はちゃんと飲み方をわきまえた。前のように飲みっぱなしではなく、アペタイザーを食べながらカクテルを飲み、ディナーを楽しみながらシャンパンを飲んだ。ロブともちゃんとできた。円形のブースの奥に座ったけれど、奥に私とアンジーが並んで座り、私の外側にはロブが座り、アンジーの外側にはジムが座った。
私の血液中のアルコールレベルが上がるにつれて、私も自信を持って振舞えるようになり、会話は前より自然に流れ出した。アンジーはジムに身体を密着させて座っていたけど、私もロブに同じように身体を擦り寄せていた。
ディナーが終わったころには、私はロブの腕に腕を絡ませていた。おしゃべりをしながら、要点を言うところで彼の手の甲に優しく触れることにしていた。アンジーも私も、彼らがジョークを言ったら、大きな声で笑い、はしゃいだ。でも、別に演技で笑ったわけではなく、ジムとロブのジョークは、重役クラスの男が言うジョークにしては、驚くほど面白く、話しも上手だったから。お偉いさんたちは話しが下手って誰が言ったの?
食事の後、4人でレストランを出た。私はまだロブの腕に腕を絡めたまま。頭を軽く彼の肩に乗せて歩いた。
彼にキスされた。その時、私は驚いたかしら? いいえ、正直言って、驚かなかったと思う。でも、私の口に彼の舌が入ってきて、それを私自身が掃除機のように吸いつけて、そのまま感触を楽しんだ時は? 私は驚いたかしら? ええ、まあ…この時は、我ながら驚いたのは事実。でも、いちばん恐ろしく思ったことは、それがとても気持ち良かったこと。
私はダイアナのことを思ったかしら? ええ、すぐに思った!
これから私とロブがどういうことになるか、はっきり知っていた。この時点では、そうなることは避けられないことだった。そうなることは、私とダイアナの関係において、彼女がいまだ不愉快に思うことであるのも知っていた。
だから、この時点で私がすべき高貴なことは何か、というのも知っていた。ロブとジムに素敵な夜をありがとうと丁寧にお礼を言い、家に帰ること。タクシーを呼んで。…こんな夜遅くであるだけに職場のひと気のない駐車場に止めてある私のベンツに向かうのは、リサという女になっている身としては、どれだけ大変なことになるか分からなかったから。そして、家に帰ってからダイアナに電話をし、彼女がどこで何をしていようが、彼女を探し出し、会って、彼女を心から、深く、気が狂いそうなほど愛すること。
ではあるけど、今夜はそういうことは起きることはないとも思っていた。アンジーと私は、エスコートしてくれるふたりの男性と一緒に帰路についてるけど、それは「自然の成り行きとホルモンの導きに身を委ねるため」。なんなら、これをするのは私自身の昇任のため、あるいはアンジーの昇任のためと、自分に言い聞かせてもいい。何回もそう自分に言い聞かせていたら、いつの間にか本当にそうだと信じるようになるかもしれない。