「あなたがそばにいる限り、私は生きていける」とノボルは可笑しそうに言った。「それにしても、キモチイイナ[Kimochi-na]、あなたの身体は私のあそこに本当に良くフィットしている」 ノボルは手を二人がつながっているところへと降ろし、アンジェラの陰唇の間に指をあて、湿らし、それから彼女のクリトリスをこねるように愛撫し始めた。 「さっき私の部下たちが来たでしょう。あの時、あなたはシーツで隠していたけれど裸だった。部下たちはそんなあなたを見ていましたが、あの時、私にとってはどれだけ大変だったか、あなたには分からない。私は、部下たちが見ている前であなたを犯したくなって、大変だったのです。そうしないため、意思の力を総動員していたのですよ」 他の人たちが見ている前で彼に身体を奪われる。それを想像し、それが発火点となって、アンジェラは連続したオーガズムへ突入した。 「ああっ、ああぁぁぁ……!!」 第一波が収まっても、彼は相変わらずクリトリスをいじり続けている。逃れようと押し返しても止めてくれない。再び、快感が高まってくる。 「ああっ!! ノブ、お願いだから!」 「あなたが私の名前を言うと、かえってもっと激しくしたくなる…。あなたがイキ続けるのを止められるのは、私があなたの叫び声を聞くのに飽きた時だけ」 またも絶頂へ至る快感がアンジェラの身体の中、高まってくる。その彼女の瞳を鋭い視線でノボルは見つめ続けた。 もはやアンジェラにはこれ以上無理だとみたノボルは、彼女の身体を半転させ、うつ伏せにさせた。そして後ろから羽交い絞めにし、自分のペニスに引き寄せた。彼自身の快感も高まり続け、やがて、押し殺したようなうめき声をあげて彼は絶頂に達し、彼女の中に溢れんばかりの精子を注ぎ込んだ。 しばらく沈黙の時間が過ぎ、やがて二人の息づかいが落ち着いてきた頃、ノボルはアンジェラの声がするのが聞こえた。 「ノブ…?」 「…なあに?」 「お腹すいちゃった」 ノボルは笑いながら彼女を仰向けにさせ、そしてキスをした。「そうだね。私の子猫ちゃんに餌をやらなくちゃ」 1時間後、ふたりはガラス製のダイニングテーブルでノボルが注文しておいた寿司を食べていた。 「あなたが魚を食べないと知っていたら、寿司が好きかもとは思わなかったのに」と驚きまじりにノボルは言った。 「魚はダメ、タマゴ[tamago]は好き」 アンジェラは嬉しそうにたまご寿司を口いっぱいに頬張った。 元気よく寿司を頬張るアンジェラ見て、ノボルは測りがたいほどの幸せを感じた。 「あなたがそれを食べたくなったら、いつでも喜んで用意させますよ」 アンジェラは頭をこっくりと振り、明るい顔でウインクしてみせた。 自分の前に座っているアンジェラの姿…。先ほどの愛の行為のせいで髪の毛が乱れたまま、今は着物に身体を包んでいる…。ノボルは素晴らしい満足感に目を眩しそうにしつつも、同時に、しこりのような恐怖心が胸に生じるのを感じた。このような形で永遠に彼女といたい…。だが、それは…。 アンジェラは、水をちょっと口に含んだ後、寿司への攻撃を再開した。 「ノブ? 私、あなたの苗字を知らないわ。誕生日も、あなたがどこで生まれたかも」 微笑みながらノボルはしばし彼女を見つめ、それから返事をした。「私の名前は、実際は、ノボルです」 アンジェラはニヤリと笑った。「何だか、アジア系の訛りでnobleと言っているように聞こえるわね」 「そんなことは思ったこともなかった」とノボルは笑った。「苗字はナガモリ。名前をフルに言うと、ナガモリ・ノボル・タケオ・ツネオです」 アンジェラは名前の長さに驚いて、目をぱちくりさせた。「わーお、ずいぶん長い」 それから噛んでいた食べ物を飲みこんで、続けた。「それ、何か意味しているの?」 「大雑把に文字を訳すと、『不滅の森の、永遠に上昇する武士』を意味します」 「すごく壮大な感じね」と彼女は微笑んだ。「お会いできて嬉しいわ、ナガモリ・サマ[sama]」 アンジェラの[sama]の使い方を聞いてノボルは笑ってしまった。「いいえ、わたしこそ、あなたの忠実な召使なのですよ」 アンジェラは明るく笑った。「だって、音の感じが好きなんだもの」 「ところであなたの苗字は?」 「ベアク」 「その意味は?」 「『白』を意味するの」 アンジェラはノボルのことについていろいろ知ることも、彼が自分のことについていろいろ知ることも楽しかった。二人がすでに一生、固くつながった間柄になっていることを考え合わせると、奇妙なことではあったが。 「ということは、あなたは白い天使ということですね」 とノボルは嬉しそうに微笑んだ。 「そうみたいね。…ところで、ノブ? あっ、ノボルと言ってると思ってね?…訊きたいことがあるのだけど、あなたが私を舐めた時、一体どうしてあんなに速く傷が癒えたのかしら?」 アンジェラは食べ過ぎたと感じたのか、箸を置き、ノボルに質問した。
男は、また前のめりになってきて言った。「ありがとうと言わなくちゃいけないのは僕の方です。それにしても綺麗な方だ。僕の名前はジョン。こちらが、友だちのトニー」と彼は隣の男に手を向けた。 「こちらこそ、よろしく」と、僕は後ろを向きながら言い、ジョンと握手し、その後、トニーとも握手した。ジェシーも肩越しに手を差し出した。彼らは二人とも彼女と握手した。 「僕の名前はビル。そして、彼女は僕の妻のジェシー」 「お二人はウィングズが勝つのを見に来たの?」 とトニーが訊いた。 「いや、実を言うと、僕たちはカナダから来たんだ。当然、リーフズが勝つのを見に来たんだよ」 「そいつは残念だ」とジョンは苦笑いした。「リーフズはウィングズにこてんぱんにされるよ」 「見てれば分かるさ」 と僕も苦笑いした。 第1ピリオドが終わった段階では、試合は一対一のタイだった。僕はジェシーにビールを買ってこようかなと言った。彼女にも何か欲しいものはと訊くと、彼女もビールを飲むと言った。ジェシーは普段はビールは飲まない。多分、喉が渇いたのだろうと思った。 ビールを買って戻ると、ジェシーはジョンとトニーと何か話していた。 「仲良くなったのかな?」 「ええ、今、あなたが勝ち取ったチケットのことを話していたの」 ジェシーとジョンがこんなに早くうち溶けあってるのを知り、僕はちょっと驚いた。ジェシーは典型的なシャイな人間で、知らない人と簡単に仲良くなることはめったにない。彼女が、ジョンとの間で恥ずかしがる段階をすでに通り越していたのは確かだった。ジェシーは、相手がいったん気楽につきあえる人だと分かった後は、開放的につきあえるようになる性格なのだ。 ジョンはかなり人当たりの良い人間なんだろな、と僕は思った。 ジェシーにビールを渡すと、彼女はかなり大胆にごくりと飲んだ。 第2ピリオドが終わった段階で、リーフズは4対1でリードしていた。僕はご機嫌になって、もっとビールを飲みたくなっていた。買いに行こうと立ち上がると、ジェシーももう一本欲しいと言った。 この時も、ビールを買って戻ると、ジョンとジェシーが親密そうにおしゃべりしている。今回は、この試合の結果について活発な議論をしている様子だった。 「ウィングズは挽回するよ。見てれば分かる」 とジョンは自信たっぷりに言った。 「そうはならないわ。3点も離されているんだから」 とジェシー。 「じゃあ、こうしよう」 とジョンが切りだした。「勝負だ。もしリーフズが勝ったら、君とビルをクラブでの飲みに招待するよ。僕らのおごりだ。ウィングズが勝った場合も、君たちにおごる。でも、もうひとつ。君にはダンスをして欲しい」 「その勝負、乗った」 とジェシーは手を差し出し、ジョンと握手した。 「そのクラブってどんなクラブなの?」と僕が訊いた。 「ジョンの叔父さんがやってるクラブなんですって。街にあるそうよ」とジェシーが答えた。 「じゃあ、試合の後はそこに行くことになりそうだね?」 「ほんのちょっとだけよ」とジェシーは答えた。彼女は、僕ができるだけ早くホテルに戻りたがっているのを知っている。 試合はと言うと、第3ピリオドでウィングズが同点に追いつき、試合終了時点では逆転してしまった。リーフズ・ファンには残念な結果だった。でも、ジェシーはそれはあまり気になっていないようだった。彼女はジョンの言うクラブで飲むことを楽しみにしているのだろうと思った。 「さあ、奥様? ちゃんと支払ってもらいますよ」 とジョンが言った。 ジェシーは笑いながら答えた。「私は借りはしっかり返す主義なの」 「僕たち外に車を待たせてあるんだ」とジョンが僕に言った。 彼は僕についてくるように手招きしながら、ジェシーのそばについて出口に向かった。トニーもピッタリくっついて歩いている。 確かにジョンの言うとおりだった。角のところに大きなリムジンが止まっていて、僕たちを待っていた。運転手はスティーブと言う名の身体の大きな黒人で、ジェシーのためにドアを開けて、彼女が乗り込むのをサポートした。その後にはジョンが続き、妻の隣に座った。僕も乗り込んだが、トニーがジェシーの隣に座ったので、僕はジェシーの向かい側に座った。
アンジーは僕の唇に軽くキスをした。「あなたほど優しい人を知らないわ。あなたは、私が本当はダンなんかと付き合いたくないことをちゃんと理解してくれている。なのに私ったら。本当は二度と、日常的な頻度であの男に好き勝手にされるのを許してはいけなかったはずなのに。あなたは私が出会った最良の人だったのに。でも、もうダメね。とうとう、私はそんな大切なあなたを失ってしまった」 アンジーは再び声を上げて泣き始めた。10分くらい泣き続け、やがてゆっくり収まった。 僕は彼女をしっかりと抱きながら、このことの意味を考えた。そして、アンジーはダンが行う虐待を求める気持ちをコントロールできないのだという結論に達した。これは確かに病気である。正常な人なら、意図的にそういう虐待を行われるのを求めることはない。これは病気なんだと考えると、もはや、このことでアンジーを責めることはできなくなった。つまり、愛する人が癌になったからと言って、その人と別れることなどありえない。それと同じことだと。 アンジーは思う存分泣きはらすと、立ち上がり、言った。「もう私は出ていくべきよね。あなたにはあなたの人生があるから」 そう言ってドアの方へ向きを変えたアンジーだったが、ふらふらとよろめき、僕の腕の中に倒れ込んだ。 思わず二人とも笑ってしまった。 「僕が車で家に送るべきだと思うよ。君は運転できる状態じゃない」 アンジーは僕の頬にキスをした。「優しい人。どんな人もあなたのことをそう思うでしょうね。でも、本当に、もうこれ以上、私はあなたに迷惑をかけられないわ」 「迷惑じゃないよ。元々、君が来なくたって、そうするつもりだったから」 と彼女を助けながら言った。 アンジーは驚いた顔をした。「それって、家に戻ってくれるということ?」 「そうだよ。もし君が僕を受け入れてくれるなら、だけど」 と着替えを始めながら言った。 「ダンのことはどうするの? 私、ダンのところに二度と行かないとは約束できないのよ! これまでも何度も頑張ったけど、そのたびに失敗しているのよ!」 アンジーは必死に訴えた。 「それについては一緒に考えよう。君がまたあの男にどうしても合わずにいられなくなったとしても、そのことは理解するよ。僕はただ、それを知りたくないだけ」 アンジーが肩をがっくりと落とすのが見えた。 「それはできないかもしれないの。この前、ダンが言ったのよ。そろそろ旦那に、自分がどんな淫乱女と結婚したか、実態を教えてやってもいい頃だな、って。ダンのことだから、次に会うときは、絶対、あなたも一緒に来るように求めてくるわ。そういう人なのよ。いつも私を精神的にいたぶる新しい方法を探してくる…」 これは予想してないことだった。だけど僕は素早く答えた。「その時は、その試練を二人で乗り越えよう」 そのすぐ後、僕たちは一緒に家に帰った。その夜、僕たちは1ヵ月も会っていなかったかのように愛し合った。アンジーの女陰を舐めている時、ダンのペニスが彼女に出入りする光景が頭の中に浮かび、どうしても、ぬぐい去ることができなかった。そして、どういうわけか、そのイメージのため、僕はいっそう激しく彼女のそこを舐め続けたのだった。 次にアンジーが再びイライラし始めたのは、それから3週間後のことだった。彼女が、その衝動を抑えこもうと頑張っていたのは確かだったけど、でもその戦いに負けそうになっていたのも確かだった。 そうなった場合については前もって話しあっていて、アンジーがどうしてもダンに電話をしたくなった時には、僕に教えるようにと合意していた。秘密に会うことは絶対にないようにと。 とうとうアンジーはもうこれ以上我慢できなくなったらしい。僕の職場になっていた書斎に入ってきて、言ったのだった。 「どうしても電話したくなったの。本当に頑張ったわ。でも、どうしてもダメなの。傷ついたら、ごめんなさい」 「大丈夫だよ。いいよ、いいんだ、電話して」 と僕は仕事机の上の電話を指差した。 アンジーは受話器を手にしながら、何度も僕の方を振り返った。「ここで電話してほしいと言ったのはあなたなのよ。私が彼に言う言葉を、あなたが訊きたいと言ったのよ」 「もう秘密はナシと言ったはずだよ。もしこれが君の人生の一部なら、僕もそれに関わりたいんだから」 アンジーは何度か固唾を飲み、ようやく受話器を取り、電話した。 「ダン様? 淫乱女のアンジーです」 彼女は僕の顔を見ながら、そう言った。 「私のおまんこが燃えるように疼いています。私のような淫乱女を扱う方法をちゃんと知っている本物の男性に満たして欲しいと疼いているのです」 これを言いながらアンジーは顔を真っ赤にしていた。 アンジーは、二分ほど向こうの言う言葉を聞いていた。 「夫がその場にいられるか、私には分かりません」 アンジーは受話器を耳にピッタリ押し付けていたが、それでも、向こうの男が彼女を怒鳴りつける声は聞こえた。少しして、アンジーは言った。 「はい、分かりました、ご主人さま。夫に伝えます。次にダン様が淫乱の私に会うときは、夫が立ち会うようダン様が求めになっていることを伝えます。お時間を取らせてしまい申し訳ございません」 そう言ってアンジーは電話を切った。 僕がいる前で電話をかけさせられ、アンジーはかなり恥辱を感じたかもしれない。でも、僕は、これがどういうふうに進むのかを知っておきたかった。面白そうだからとか、そういうつもりで、これをさせたのではない。電話をオープンにさせることで、何らかの形で、アンジーが立ち直ることに役立つのではないか。僕は、一種そう期待しているところがあった。 電話を置き、アンジーが言った。 「彼、明日の7時に家に来るわ。あなたにもいて欲しいって。そうすれば、あなたが結婚した女がどんな淫乱女かしっかり見せることができるからって。明日、ダンがいたぶったり恥辱を味わわせようとしているのは、私だけじゃない。そう思う。できれば、あなたにっだけは、あまりキツイことはさせないでくれるといいんだけど…」 そう言う彼女の目にみるみる涙が溢れてくるのが見えた。 僕はアンジーを抱き寄せ、顔にキスをし、涙を吸い取った。その夜、できる限りの優しさでアンジーを愛した。たとえ何があろうと、僕は彼女を愛している。それを彼女に知ってほしかった。 翌日、僕は朝からずっと緊張していた。不安感で落ち着かなかった。一日の大半を家の掃除をして過ごした。長い間、落ち着いて座ってることができなかったからである。 午後5時、アンジーがオフィスから帰ってきた。二人、何度かキスをした後、アンジーはシャワーを浴びに二階に上がった。 6時半、アンジーが降りてきた。全裸でであった。化粧が驚くほど濃かった。 どうして裸なのかと訊くと、彼女は肩をすくめ、顔を赤くしながら、こう言った。 「家で会う時は、こういう格好で玄関に出迎えろというのがダンの要望なの。どこか他の場所で会うときは服を着ててもいいんだけど、下着は履いてはダメ。脱いでおかないとダメなの。さもないと、服ごと、引き裂かれてしまうのよ」 僕は彼女を抱きしめた。玄関のチャイムが鳴るまで。 つづく
アンジーは、両腕で僕の片腕にすがりつき、凍てつくような夜の寒気から逃れようと店の中へと急かした。食事テーブルではなく、バーへと向かった。僕はそこでフローズン・ストロベリー・マルガリータ( 参考)を飲んだ。このように本当に美味しいフローズン・ストロベリー・マルガリータを飲んだのは一体、何年前になるだろう。僕が初めてこのマルガリータを飲んだのは、スーザンととだった。キーウェストのファット・チューズデイ( 参考)でである。人は誰でも、人生で初めて経験したことを覚えているものだ。初めてのキス、初めてのデート、初めてのセックス…。 それに、初めての圧倒的な心臓発作も! バーカウンターにいる男を見て僕は息を飲んだのである。そこにはロブ・ネルソンとジム・グラントがいたのだった! 僕はアンジーに小声でつぶやいた。「今すぐ回れ右して、来た道を戻れば、気づかれないかもしれないよ」 だがアンジーは唇を尖らせた。 「どうして? 面白そうじゃない?」 「でも、オフィスの誰にも知られてはいけないって言ったのは君じゃないか」 僕は泣きそうになっていた。 「知られたくなかったら、おとなしくニコニコしてること。そうすれば大丈夫だから。私、彼らに、今夜は特別の夜だから、外に出てこないかと誘われたの。私たちのボスだもの、ノーと言うつもりはないわ。彼らには、4人組になれるよう、誰か友だちを連れて来てくれと頼まれたの。私としては、今夜、私と一緒に来てほしい女友だちは考えられなかった。というか、あなたより完璧な人は考えられなかった。だから、行きましょう! ミーハ( 参考)」 アンジーは僕の腕をぎゅっと握り、前へと進んだ。 「やあ、アンジー!」 とロブが明るい声で呼びかけた。「ここまで来る時間、新記録じゃないか? 渋滞がなかったのかい?」 アンジーは頭を横に振り、光り輝くような笑みを浮かべた。 「渋滞は関係ないの。私たち、ちょうどノース・ピア( 参考)にいたところだったのよ。実際、ここまで来る時間より、タクシーを待ってる時間の方が長かったわ。ロブ? ジム? 私のお友達を紹介させてね。こちらはリサ…」 ふと、その時になって、アンジーには私の女性名での苗字を教えていなかったことに気がついた。 「…レ、レインです」 どもってしまったが、おかげで適切な声を出すことができた。「お、お二人に会えて、嬉しいわ」 震えながら、手を二人にさし出した。二人とも、直ちに座っていたスツールから降りて、立った。ジムは優しいタッチで私と握手をした。男性が女性と握手する時と同じようだった。ロブは私の手を返し、手の甲にキスをした。彼は、私の瞳を見つめながら、まるで石に変わってしまったかのように釘づけになって突っ立っていた。そのロブの様子をジムはニヤニヤして見ていた。ロブはしばらく茫然としていたが、ようやく何かを払いのけるように頭を振り、元に戻った。 「す、すまない…」 とロブは恥ずかしそうに言った。「僕はどうしてしまったんだろう。僕は普段はマナーがいい人間なんだけど。見つめてしまって、失礼した。というか、どうしても目を離せなくって…。ああ、アンジー、君の言ったことは正しかったよ。彼女、本当に魅惑的な人だ」 良かった。これで少しは落ち着ける。それでも、私は北東風の第5クラスの強風にあおられる木の葉のように身体を震わせていた。
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