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ライジング・サン&モーニング・カーム 第7章 (9:終) 


「だから、あなたが私を舐めた時、あんなに速く傷が癒えたのね?

「その通り」 とノボルは彼女の傷に軽くキスをした。「私の唾液には抗ウイルス性物質と抗生物質の両方の性質をもったものが含まれているのです。そうやって感染から防御するのに加えて、抗腫瘍効果がある様々なシトキン類を刺激する物質や、癒し過程を刺激し加速させる第二メッセンジャ・システムを刺激する物質も含まれている。さらには、身体を異化状態にし、傷の修復のためにエネルギーを集め活用するようにさせるのです…」

ノボルはいたずらそうに笑って付け加えた。「だからあなたはとても大食いになってるんですよ。傷の癒しはエネルギーを多量に消費する過程なのです」

「ああ、ノボル! この研究の応用範囲は無限よ! 抗体研究、傷の治療、痛みの緩和、さらにはHIVの治療にも」

アンジェラは、目を見開いて、この情報が拓く可能性に驚いた。「あなたの会社は株式に出てるの?」

ノボルはその質問に笑った。「私たちは公にはしていません」

「残念ね」 ウォール街が大騒ぎになるのは間違いないのに…

「まあ、うちの研究者たちが私の遺伝コードに隠された秘密を明らかにするまでは、私もあなたも、この特質を特権的に利用できる人間であるということです…」

その時、ノボルの携帯電話が鳴り、ふたりの会話は遮られた。

「モシモシ[Moshi moshi]? ああ」

彼は電話を置き、アンジェラを見た。

「あなたが求めていた通り、ゲンゾウがここに来ます」

「え? もう?!」

「明日、職場に行く前に彼に会っておきたいと言ったでしょう?」 とノボルは何食わぬ顔で言った。

「ええ、それはそうだけど…」 アンジェラはこんなに早く会うことまでは考えていなかった。ノボルには驚かされることばかりだ。

「彼はあと2分ほどでくるでしょう。ですから、そのローブの前を閉じた方がよいでしょう」 と彼自身、ローブを羽織り、ゲンゾウを出迎えるため階段を降りた。

アンジェラがちょうどキモノ・ローブの帯をしめた時、ノボルが玄関ドアを開けた。黒いタートルネックのセーターとジーンズ姿の若者が入ってきた。ふたりは何か言葉を交わし、その後、ノボルは顔を上げ、ベッドの上に座るアンジェラを見上げた。若者が靴を脱ぐと、ノボルはアンジェラに手招きし、降りてくるよう合図した。

若者は深々とお辞儀をし、真面目な表情で自己紹介した。

「ジョオーサマ[Jo-sama]、ウエハラ・ゲンゾウと言います」

つづく


[2013/03/14] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

ジェシー借金を返す (5) 

僕たちは試合のことについておしゃべりをしたが、少し経つとジョンが立ち上がり、壁際のキャビネットに行った。そこを開けると、中にはかなり本格的なステレオ装置があり、彼は音楽を流し始めた。軽いジャズ音楽で、ダンスするのにうってつけの音楽だった。

ジョンはジェシーのところに戻ってきて、手を差し出し、こう言った。「そろそろ借りを返してもらおうかな?」

ジェシーは笑顔で立ち上がった。

僕は自分の妻が他の男に抱かれ、ダンスを始めるのを、割と楽しみながら眺めた。ジョンはジェシーの身体に密着するわけではなく、適切な距離を置いてダンスしていたし、ジェシーの方も楽しんでいるようだった。

ジェシーが適切にもてなされていると納得した僕は、トニーに向き直って、また試合のことについておしゃべりを始めた。

ふと会話が途切れたとき、ジェシーの方に目をやると、二人はダンスを止めて、今はバーカウンターのところにいて、飲み物のおかわりを作っているのに気づいた。それから、新しい曲に合わせて、また踊り始める。今度は最初の曲より、ゆったりとした曲だった。

トニーに声をかけられたので、またトニーに向き直って返事した。ひとしきりおしゃべりをし、再びジェシーたちに目を向けると、今度はかなり身体を密着させてダンスをしているのに気がついた。ジェシーはそれでも楽しんでいるようだった。

その後も僕はトニーと会話を続けた。スポーツやその他のことについてだ。ときどき顔を上げ、妻のところに目をやった。しばらくダンスした後、ジョンとジェシーはビリヤード台に場所を移し、ビリヤードの準備を始めていた。二人とも、一緒にゲームの準備をしながら、楽しそうに笑っている。二人は何をしているのかちょっと気になった僕は、トニーに、ビリヤード台にいるジェシーたちのところに混ざろうと誘った。

近づくとジョンが僕に言った。「ビル、あなたはビリヤードの腕があるそうですね。ジェシーが言ってましたよ」

「ちょっとね」と僕は頷いた。

「すごい、じゃあ、やりましょう」とジョンは言い、「面白くするため、10ドル賭けよう」と付け加えた。

「いいよ」

ちらりとジェシーを見ると、かなり酔っているのが分かった。僕とジョンはエイトボール(参考)を始めた。トニーはこれをチャンスとばかりにジェシーに近づき、ダンスに誘った。ジェシーは喜んでその誘いを受け、二人はダンスを始めた。

ジョンは2回ほど難しいショットを失敗し、そのおかげで僕は容易にボールを沈め、最後に8番ボールも沈めた。もう一回ゲームを始めたが、今度は100ドル賭けようとジョンが言う。僕はあまり気が進まなかったけれど、酔っていたし挑戦されたこともあり、頭脳よりも口の方が優勢で、オーケーと返事してしまった。だが、結果は同じだった。僕は、案外、ジョンはそんなに上手くないんじゃないかと思い始めた。

ジェシーとトニーがビリヤード台のところに戻ってきた。ジェシーはラムのコーラ割のおかわりを手に、とても楽しんでいるようだった。ジョンがジェシーに言った。

「ビルに、もう2回もこてんぱんにやられちゃったよ。ビルは本当はすごく上手いのに、隠していたね、ジェシー。ずるいよ」 とからかう。

ジェシーはくすくす笑い、「彼ってとても上手でしょう?」と自慢した。

僕は、何となくジェシーがビリヤードのこと以外のこともほのめかして言っているような気がした。ともあれ、かなり酔っていて、陽気にはしゃいでいるのが分かる。僕は、早くホテルに戻って二人だけになりたいと、待ちきれない思いだった。

するとジョンが声を大きくして言った。

「もう1ラウンドしよう! 今度は勝った方は、素敵なジェシーにダンスをしてもらえるか敗者から1000ドルもらうかのどちらかということにしよう!」

「へえ? 確かにジェシーは素晴らしいダンス相手なのは分かるけど、でもいくらなんでも1000ドルに相当するとは言えないよ」

「ああ、僕が言ってるのは、僕たちがしてきたような種類のダンスじゃないよ。隣の部屋でやっているようなセクシーダンスのこと」

ジェシーはビックリして口を出した。「あそこにいた女の人たちが男たちにしていたようなことを私がするの? 本気で言ってるの?」

「もちろん」 とジョンはきっぱり言った。

「ありえないわ」 とジェシーが言った。

「いいよ、やろう」 と僕は自信たっぷりに言った。


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