「お前の欲しいものは何だ、ダルザス?」 レオンは、剣を抜いてかまえる十数名の衛兵たちに一切目もくれず、堂々とイサベラの方へと進んだ。アランが合図を送ると、衛兵たちは一斉に動き、ぎこちない構えで歩み進むレオンを取り囲んだ。 だが、レオンは平然と衛兵たちの群れの中へと進み、彼らの前を通り過ぎた。まっすぐにイサベラだけを見つめ続け、衛兵どもなどまったく眼中にない様子だった。 レオンが衛兵たちの中5メートルほどに進んだ時、アランは手をかざし、止まれと命じた。レオンはそれに従ったが、決して好んで止まったわけではないことは、誰の目にも明らかだった。 「お前が欲しがっているものと同じだと思うがな?」 とアランは呟き、イサベラの頬を指で撫で、その愛らしい顔に眼を落した。 頬を触られイサベラは泣きそうな声を上げた。繊細なリネンのシャツの下、レオンの肩と背中の筋肉が緊張し、盛り上がった。 「イサベラは可愛いからのお。それに、情熱的でもある。わしが触れると、カッと燃えあがるらしい」 とアランはイサベラの顎を指でなぞった。 「彼女に触るな」 レオンは落ち着いた声で命じた。 レオンが威嚇するように一歩ずつ近づいてくるのを見ながら、イサベラは喉元に当てられている短剣に力が入るのを感じた。 アランは、いささかも怖気づくところなく、またも高笑いした。「アハハ。イサベラはわしのものなのだよ。わしが好きなようにできる」 そう言いながら、イサベラの肩越しに誰かに合図を送った。「…そして、わしは、イサベラをお前にやることに決めた。今すぐにな」 レオンは目を細めた。そして、次にイサベラの肩の向こうへと視線を移した。 イサベラは、この後に起こることを知っているからか、強い恐怖感が身体の中に溢れてくるのを感じた。ドゥ・アンビアージュ神父が衛兵に連れられてくる。それを見てレオンは顔をしかめた。 「もちろん、結婚させてやるのだよ」 「なぜだ?」 レオンは意表を突かれ、信じられない面持ちで訊いた。 「お前はわしを信じないのか? わしの孫がならず者と呼ばれたら困るからじゃよ」 「お前など、信じない!」 アランは笑った。「さあ、どうかな。それでは、始めることにしようか?」
ノボルは、名残惜しそうに勃起からアンジェラを引き離し、真剣な声音で話しかけた。 「認めてほしいことがあるのですが、明日、ある者をあなたに送り、付き添うようにさせてもらえませんか? あなたに独りで職場に行かれると、不安になりそうなのです」 「ノブ、そんなのダメよ!」 アンジェラは一時的に淫らな心も忘れ、退いた。 「一人だけでいいんです」 「私は精神科医なのよ! 誰か他の人が診察室にいたら、患者さんたちはプライバシーが守られていないと感じちゃうわよ!」 「私が送る男は、別にあなたと一緒に診察室にいなくてもいいのです。診察室の外に待機しているだけで充分なのです」 ノボルは食い下がった。 アンジェラはバンザイする格好をした。「じゃあ、私の患者さんたちに、どう説明すればいいのよ?」 ノボルはアンジェラの手を取り、手の甲にキスをし、痛々しい微笑みをしてみせた。「オネガイです[Onnegai]。あなたを再び失うなど、思っただけで耐えきれなくなる。お願いです。あなたの隣で安らかに眠る喜びを私から奪わないでください」 このような言い方をされては、ノボルを拒むことは難しかった。 「しょうがないわね」 とアンジェラは降参した。「でも、その人は必ず待合室にいること。いいわね?」 アンジェラの診察所は、ドアが2つあり、診察室を出る患者と入る患者が顔を合わすことがないように設計されていた。「…それに、その人がどんな人であれ、もし、私の患者が要求した場合には、診察の間、待合室にいると声に出して言い、知らせるように」 ノボルは満面の笑みになり、首を縦に振った。「決まりですね」 ノボルはアンジェラの首筋に顔を寄せ、甘噛みを始めた。それを受けながら、アンジェラは、精いっぱい努力し、苛立たしく感じているふうに演技した。 「あなたは、どうやったら女の子の人生をひっくり返せるか知ってるみたい…」 この48時間の間に、彼女は恋人を見つけ、住んでいたマンションを失い、その恋人のところに引っ越し、そして、ベビーシッターまでつけられたのだった。 「で? その人は誰なの?」 アンジェラが怒ってる様子にくすくす笑いながら、ノボルは彼女をベッドに押し倒し、耳たぶを舐めはじめた。抗議するようなうめき声が彼女の口から小さく漏れる。 「名前はゲンゾウです。自分の命を賭けてもよいほど、私はその男を信頼しています」 「そう。ならいいわ。でも、私の護衛を始める前に、一度、そのゲンゾウという人に会っておきたいわ」 「お望みの通りに…」 ノボルはかすれ声でそう言いながら、分身を彼女の中に滑りこませた。 アンジェラの頑固な怒りはすぐに溶けだし、消えた。ノボルは、アンジェラが彼の腰の後ろで両足首を交差させ、より深く引きこもうとするのを感じ、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。 「ひどい人…」 とアンジェラはノボルを睨みつけ、同時に腰を突き上げた。
僕は彼女に軽くキスをし、口紅を味わった。そしてもう一度キスをし、今度は舌を口の中にさし入れた。ジェシーもキスを返してくれた。そのキスは非常に情熱的なものになった。 長い間キスをしたが、ようやく唇を離すと、ジェシーは冗談まじりに言った。「本当に試合を見に行く気があるの?」 僕は微笑み、いたずらっぽい顔をして見せた。「今すぐ、君をベッドに押し倒して、朝まで覆いかぶさっていたい誘惑に駆られているんだが」 ジェシーは指を僕の頬に当て、なぞりながら僕の瞳を覗きこみ、そしてニヤリと笑った。「ビル? ディナーを食べて、試合を見て、そしてここに戻ってくる。そうしましょう? その後ならいくらでも私をベッドに縛り付けていいわよ」 「分かったよ」と僕は名残惜しそうに言った。そしてちょっと間をおいて付け加えた。「残念だなあ。今夜の君はほんとにとても素敵なんだもの。こんなに今すぐ君を愛したい気持なのに」 今度はいたずらっぽい顔をしたのは妻の方だった。「後で好きなだけできるから…。ね?」 僕たちはまたキスをした。このキスもなかなかやめがたいと二人とも思っていた。ようやく僕たちは顔を離した。ジェシーが身体を離す前に、僕は彼女のブラウスのボタンをもうひとつ外した。それを外すと、僕が買ってあげた赤いブラジャーの縁がかろうじて見える。それにセクシーな胸の谷間も、前よりずっと良く見える。 ジェシーは僕がボタンを外したのを受けて、ビックリした顔をしたが、ボタンを留め直すことはしなかった。僕は大満足。 さて、彼女はスカートの中にどんなものを身につけているんだろう? 僕の思考はそちらの方に移ろっていた。あのブラジャーは、ビキニ・パンティとおそろいになっているはず。チェックしようと妻のスカートを捲りあげたい衝動に駆られたが、彼女がおそろいのパンティを履いているのは確かだろうと、その姿を見るのは後のお楽しみに取っておくことに決めた。 部屋を出て、すぐにレストランに向かった。素晴らしい食事だった。それにジェシーを見る男たちの視線を見るのも、とても楽しかった。妻も男たちの視線に気づいていたし、ずっと頬を赤らめっぱなしだったと言ってよい。彼女が辺りを見ると、いつも男たちの誰かと視線が合い、そのたびに顔を赤らめてしまうからである。 ディナーを終えたのは、試合開始の直前近くになっていた。ホテルのドアマンにタクシーを呼ばせ、その10分後、僕たちはジョー・ルイス・アリーナ( 参考)に入ったのである。 すでにスターティング・メンバーの紹介が始まっていたので、僕たちは素早く席についた。ジェシーは、試合が始まる前にトイレに行っておきたいと、一度、席を立った。彼女が観客席の脇の階段を登るとき、二人の男性とすれ違った。二人とも通り過ぎるジェシーをまじまじと見つめ、何度も振り返っていた。 その二人は僕の後ろの列に座ったが、ジェシーのことについてまだ話しをしていて、何てそそられる女なんだろうと言う声が僕にも聞こえた。 この二人の男はジェシーや僕より少し若い感じだった。多分、30代前半だろう。たいていの女性なら、彼らのことをイケメンと言うに違いない。身なりも良い。 ジェシーが戻ってくると、二人はまた彼女についてコメントをし始めたが、ジェシーが僕の隣、彼らの前の列に座ると、その話しをピタリと止めてしまった。僕は、二人が突然、話しを止めてしまったことに、ちょっとくすくす笑ってしまった。二人とも僕が二人の話しを聞いていたのを知っていたわけで、ちょっと気まずく感じたのだろう。 どうやら、二人の気持ちはその通りだったようで、実際、二人のうちの一人が僕の方に寄りかかって、僕に声をかけてきた。 「あなたの奥様について、あんなこと言ってしまって、悪かった。とても綺麗なもんで…」 僕はにやりと笑った。「おいおい、全然気にしてないよ。そうだろ? 綺麗だろ?」 その男は姿勢を元に戻した。その少し後、ジェシーが僕に身体を傾け、「あの人、何の用事だったの?」 と訊いた。僕は、君がとても綺麗だと言ってたんだよと伝えた。彼女は不思議そうな顔で僕を見つめ、そして再び顔を赤らめた。「そんなはずないわ」と言うので、僕は本当だよと頭を振った。 ジェシーは、後ろの男の顔を向け、恥ずかしそうに微笑み、「ありがとう」と言った。
「ジャッキー」 第14章 by Scribler **********
これまでのあらすじ
ジャックは妻アンジーの浮気現場を見てショックを受け、彼女と知り合った頃を回想する。彼は法律事務所のバイト、アンジーはそこの上司。仕事を通じ親密になった二人は交際を始め、その過程でジャックは女装の手ほどきを受け、ジャッキーと名付けられる。ジャッキーは女性として、アンジーにアナル開発され、オーガズムに狂う。やがて二人は同棲を始め、バレンタインデーの翌日、アンジーはジャッキーに結婚を申し込み、ジャッキーもそれを承諾する。最初は幸せな結婚生活だったが次第にアンジーの変調が目立ってきた。尾行したジャッキーはアンジーが他の男に性奴隷のように扱われているのを目撃する。その事実をアンジーに暴露すると、彼女は泣き崩れたのだった。
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アンジーは、涙を武器に使ったことはなく、ワニの涙( 参考)すなわち嘘泣きをするような人ではない。もっと言えば、僕は彼女が泣くのを見たことがほとんどない。あったにしても、いつも、苦痛など現実的に泣く理由があった。 手で涙をぬぐいながら言う。「あれを見てしまったのね。ごめんなさい。でも、たとえどんなことを見たとしても、私が愛する人はあなただけだと分かってほしいの。あなたが見た、私の行為は愛とはまったく関係がないこと。もっと言えば、毎回、あの切望に負けてしまうたびに、自分自身に吐き気を感じているの」 アンジーが何のことを言ってるのか理解できず、訊き返した。「あんなことをするなんて、どんな切望なんだ? 大きなペニスに犯してもらいたいという動物並みの欲望なんだろ? それに、ずっと前から他の男を愛人として抱えていたのだったら、どうして、そもそも僕に結婚を申し込んだんだ?」 アンジーは立ちあがり、僕に近づき、僕の手からグラスを取った。 「お願い、ジャック。あの男のことを愛人なんて呼ばないで。彼にはいかなる意味でも、まったく愛情を感じていないの。あなたが信じたいと思うかどうか分からないけど、私の真の愛はあなただけなのよ。あなた、ただ一人なの」 そう言って彼女はグラスを一気に飲み干した。 僕は何をバカなことをと笑い出したかったが、笑いを堪えて言い返した。 「そんなふうに平気で嘘が言えるなんて、よくできるものだ。君はあの男の前にひざまずいていたんだよ。ペニスを押し込まれた途端に、即、逝きまくっていた。前に、セックスでは逝けないって言ってたよね? 確かに、君は僕とでは逝けなかった。多分、大きさの点で僕のアレがあの男のに敵わないからなんだろ?」 アンジーは小テーブルに腰を降ろし、自分でウイスキーをグラスいっぱいに注いだ。「確かに、特別な場合でなければセックスでは逝けないとは言ったわ。でも、あなたは私の感情にそんなに無神経になれる人ではないはず。それには、大きさなんかほとんど関係ないのに…」 言い返そうとしたが、そうする前にアンジーは一気にウイスキーを飲み、話しを続けた。「…私が17歳の時だった。ダンと1年近くデートしたの。あなたが見た男がダンよ。ともかく、ダンは、デートするといつも私をぼろぞうきんのように扱った。最初から最後まで。愛し合ったことは一度もない。ただのセックスだけ。ダンは、私がオーガズムを感じたかどうか、まったく気にしなかったし、私の身体がセックスできる状態かどうかすら気にしなかった。生理の時ですら私を犯したわ。そんな時ですら、ダンは私の身体を使い終わると、私の口にペニスを突っ込んで、後始末をさせる…」 アンジーはまたもグラスにウイスキーを注いだ。3杯目だった。「…私は、そんなセックスを楽しんだことはなかった。だけど、それにもかかわらず、次第にそこからオーガズムを得るようになっていったの。ひどく病的なことを言っているとは思うけど…。セックスでオーガズムは得られないと言ったとき、私が意味していたのはそのことなの。安淫売のように扱われないと、逝けなくなったのよ。ダンはそんな私を知っているし、私がそんなふうにされるのを望んでることを喜んでいる。たとえ、ロールプレイでも、私にはダメなの。相手が本気で私のことをぼろぞうきんのように思っていると実感できて、初めて逝けるの…」 「そんなに嫌なら、どうして、あいつと会い続けるんだ?」 また、アンジーの目から涙が流れ始めた。今度はいつまでも涙が止まらないように見えた。 「私にも分からないのよ…」 泣きじゃくりながら続ける。「私も頑張ったわ…。でも…、でも止められないの。虐待されるのを切望しているようなもの。辱めを受けたいの…。いたぶられたいの…。ダンにやらされたことの数々…、それを聞いてもあなたには信じられないでしょう……」 「…初めてダンのもとに戻った時、私はバーに呼び出された。そして、そこでダンの仲間たち全員の前で乞食みたいにおねだりさせられたわ。みんなの前で売春婦のように私を犯してくださいと言わせられた。ダンは私を男子トイレに連れて行った。私は、汚い床にひざまずかせられ、その場でフェラをさせられた。そして、小便用の便器に顔をくっつけんばかりにして、便器につかまる姿勢を取らされ、後ろから犯された。乳首にピアスをしてるのもダンの命令から。決して外してはいけない。ダンは、知りあいを呼び出しては私を犯させた。それは今も続いている。時には街でひろった赤の他人を連れてくる時もあるの…」 アンジーはまた一気にグラスを空にし、続けた。「…病院にも行ったけど、全然、役に立たなかった。医者に処方された薬ですら、それを飲んでも、もっといたぶられたいという気持ちを高ぶらせることにしかならなかった。そして、今は、とうとう、ダンのためにあなたまで失おうとしている…」 アンジーはさらに激しく泣き始め、言葉はしどろもどろになっていた。僕はアンジーのことが哀れに思え、両腕で抱きしめた。アンジーは僕の肩に顔を埋めて泣き続けた。30分は泣き続けて、ようやく泣きはらしたようで、顔をあげた。 「ごめんなさい。あなたをこんな目に合わせてしまって、本当にごめんなさい。心からこんなことはやめたいと思ってきたけど、でも、どうしてもやめられないの。あなたが私と別れたいと思っても、仕方ないわね…」 すでに、この時までには、僕の怒りは完全に消え失せていた。あるのは腕の中にいるこの女性に対する愛情だけになっていた。 「君と別れたいなんて思っていない。これまでも、そして今も。君があいつと会うのを自由にさせていたのは、僕の不注意でもあるし」 アンジーは少しだけ笑顔になった。何時間ぶりだろうと思えた。
用を足している間、今日の午後のことについての絡みあった感情を整理していた。アンジーにばれてしまったというショック、それに彼女が見せたちょっと脅迫とすら思える強引さに、最初は驚いたが、それから立ち直ると、後はとても興奮することばかりだったと思えた。 元々、僕は僕の美人秘書にずっと前から惹かれていたというのは否定できないだろう。そして、今は、以前にまして惹かれている。アンジーは、前から、同じ気持ちでいることをいろんな機会に僕にほのめかしてきていた。彼女は、これからどこに向かっていくつもりなのだろう? 本能的に、これは単なる気軽なお付合い以上のものになるのではないかと感じた。 これはダイアナに対して不実を働いていることになるのだろうか? いや、そうではない。ダイアナは、男とセックスするかもしれないと前もって僕に伝えることができない場合があると言っていた。そして、そういうことが起きた場合、彼女は、後から、僕にそのことを教えてくれるのが常だった。いまは、僕も同じことができるはずだし、それでまったく問題はないはずだ。 ダイアナは、僕がダニエルと「デート」したとき嫉妬したが、もし僕が秘書とセックスしたら、ダイアナはあの時と同じように嫉妬するだろうか? アンジーはダイアナがしたように、僕に挿入したいと思うだろうか? この場合はディルドを使ってだが? 僕はその場合に備えて準備をしておきたかった… うちのバスルームは完全装備になっている。ジェットバスのバスタブでシャワーは個室。洗面台は二つ。そしてトイレにビデも。購入にあたってこのマンションを見学した時、ビデを見て、バスルームの隅に見放されたように佇んでいる装置を変なものだなと思った。決して使うことはないだろうと…。だがいまは…。強力なジェット水で完全に洗浄される時の感覚は、刺激的ではあるけど、同時にちょっと落ちつかなる感じにもなる。洗浄しながら、その刺激で身体の中が疼き始めていた。洗浄行為だけでなく、これから起きることへの期待も疼く原因になっていた。 バスルームにいる間、アンジーが話す声が聞こえたと思う…誰かと話す声が… それはともかく、僕がいない間に、アンジーは顔と髪の毛に「ちょっと手を入れ」たのだが、その結果は僕と同じくらい劇的なものだった。僕がバスルームから出ると、眩いばかりの笑みを見せ、手を差し伸べた。 「準備いい?」 デジャブ? 「何のための?…」 「お祝よ!」 とアンジーは大きな声を出した。「2分くらいでタクシーが来るわ。私たちみたいな美人が二人、こんな格好になっているのに家にいるなんて、あり得ないわ。今夜はシカゴ中の人に私たちを見てもらいたいの。自分がこんなにイキイキしているの、いままでなかったわ!」 告白すると、僕も同じ気持ちだった。スエードのハンドバッグを取り、現金を足し、運転免許証(これは見せなければならなくなったら、恥ずかしいけど、法律だから仕方ない)、香水、コンパクト、それにKYゼリーをもう1本入れた。アンジーは、僕がすでにバッグに入っていたコンドームに加え、KYゼリーを入れるのに気づくと顔をパッと明るくさせた。 「あら? 何かいいことあるかもって期待しているの?」 とアンジーは女友だちに話すような声で訊いた。 「ちょっと頭に浮かんだだけ…」 と僕は恥ずかしそうに女の声で答えた。 アンジーはウインクをした。 「その通りになるかもね。私、いまとても興奮しているもの。それにあなたも素敵! セクシーよ。もうどんどん楽しくなってくる」 タクシーに乗ってる時間は短かった。ディアボーン通りのルース・クリス・ステーキハウスの前で降りた。まあ、ここでいいか。バーはちょっとナイスだし、もう少し時間が経ったら、小さなフィレ肉を食べられるくらいはお腹がすくだろう。でも…
ときどき、急にエッチな気持ちに襲われて、どうしても彼を奪わなくちゃいられなくなる時がある。 私はアンドリューを引きずるようにして1階の寝室に連れていった。アンドリューは、この部屋を「アンドリューを犯す部屋」と呼んでいる。確かにアンドリューは犯されることになる。でも、その前に、私は彼の逞しい分身を味わいたい。 私は服を脱ぎ捨てた。あっという間に素っ裸になった。彼の視線が私の乳房に来て、次に股間に降りて、それからまた乳房に戻ってきた。彼は私のことをセクシーだと思っている。彼にこういう目つきで見られると、私はアメフトのアトランタ・ファルコンズのチーム全員を一度に引き受けることもできそうな気持になる。 彼をベッドに仰向けに押し倒した。靴を脱がせ、ソックスも脱がす。ベルトのバックルを外し、ズボンを引っぱり降ろした。彼も自分でシャツを脱ぎ、手伝ってくれた。あの美しいペニスがすっかり膨らんで立っている。文字通り、宙に向かって直角に起立してる。私は、どうしてもお口に入れたくてたまらない気持になる。 彼の脚の間にひざまずき、優しく両手で捧げ持った。芯のところが鉄のように固くなっているけど表面は柔らかくて滑らか。舌を根元のところにつけて舐め、そこからてっぺんまで舐め上げた。愛しそうに小さく上下に擦る動きも混ぜながら。片手で睾丸を包み、優しく揉んでいる。その後ろにある、あの可愛いつぼみの部分もくすぐりながら。アンドリューはこれが好きだから。 そして先端のところを口に入れた。いつしても、彼の大きさに口を馴染ませるのは、そのたびに新しい経験だ。上の口でも下の口でも、どちらでも。右手で根元を押さえ、擦りながら、頭のところを吸いこんでいく。 堂々とした勃起を咥えながら、頭を上下に弾ませた。アンドリューは目を閉じている。呼吸が短くなっている。私のあそこは、すっかり興奮して、もうびちゃびちゃになっている。 彼が、そろそろぎりぎりのところに近づいているが分かる。でも、私は、自分がこういう状態になっている時は、割とわがままになるので、決して彼を口ではいかせない。いってくれるなら、絶対、私のあそこの中! 這うようにして彼の上に覆いかぶさり、あそこを彼のペニスに強く押し付けた。ぐっと一気に、深々と。アンドリューは大きな声で唸ったけど、その大きな声も私のあげた叫び声にかき消されていたみたい。私は、全部を入れる前に、最初のオーガズムに達してしまった。 少し腰を浮かせて、身を引き、それからまた強く腰を沈めた。両手を彼の胸板に当てて、身体を支えている。でもそれは最初だけで、その後は手を離し、まっすぐに身体を起こして、座った。腰全体で円を描くように、ぐりぐりこね回す動きをした。ふたりがつながっている部分から、できる限り、ありとあらゆる刺激を引き出したいから。 しばらくそれを続けた。やがて、単に「気持ちいい」状態は充分、それはもうお腹一杯となる段階にくる。狂わんばかりの絶頂状態に行きたい。そういう切迫した段階になってくる。 腰を浮かせ、そして強く沈める。浮かせるときには筋力を使うけど、沈める時は重力を使う。重力については、この使い方が私は一番お気に入り。 でも、やがて、もっと強くしたくなってくる。だから浮くときも沈む時もどちらでも筋力を使い始める。自分がまるで機械になったような感じだった。彼の太く長い分身の上、上がったり下がったりを繰り返した。できる限り激しく、そして速く動き続けた。アンドリューはただ横になっているだけ。私に犯されるがままになっている。 彼のペニスが噴射を始めたのを感じた。突然、私もまた叫んでいた。目の前にチカチカとスパークが飛ぶのが見えた。彼が放ったものが子宮口にビュッビュッと当たるのを感じた。激しい情熱のせいで身体がぎゅっとして、強張る。小刻みに震えているけど、動けない。そして、その後、すべてが真っ暗になった。
ケイトがミセス・グラフの胸の上、ロウソクを傾けた。クリーム色の柔肌の乳房にポタポタと蝋が滴る。 「あああぁぁぁぁ!」 ミセス・グラフは、つま先を内側に曲げ、喘いだ。 ケイトは今度は、その乳房に氷を当て、ゆっくりとそれで円を描いた。その刺激に、ミセス・グラフの乳首がますます固くなり、大きく膨らんでくるのが見えた。するとケイトは、またも蝋を垂らした。今度は少し乳首に近いところに滴る。 「ううぅぅぅッ……」 そしてまた、乳輪に氷を当てる。大音量の音楽の中、ミセス・グラフの喘ぎ声が聞こえた。 ケイトはマジックミラーに目を向け、俺に舌舐めずりをするところを見せた。そして、今度は、乳首と乳輪全体に、直接、とろとろと蝋を注ぎ始めた。 「あっ、あっ、あうぅぅぅぅッ!」 ミセス・グラフの叫び声。そしてまたも氷を乳首に当てるケイト。 蝋は氷によってすぐに冷やされるので、急速に固まっていくのが見える。 ケイトは、またロウソクを傾け、今度はゆっくりと、右の乳首から胸の谷間を渡り、左の乳房へと蝋を垂らしながら移動した。 ミセス・グラフの呼吸が激しくなっていた。豊かな乳房が激しく上下に波打っている。左の乳房に輪を描くように蝋を垂らされ、徐々に乳首に近づいて行くにつれ、腹部が緩んだり、緊張したりを繰り返した。 「ああぁぁぁっ! ひどい! うううぅぅぅぅ、ぐぅぅぅぅっ!」 乳首に蝋を一気に注ぎかけられ、その後に乳輪を氷でなぞられ、ミセス・グラフはひっきりなしに叫び声を上げ続けた。 ハアハアと荒い息使いをするミセス・グラフ。観客は期待しながら、その姿を見つめていた。音楽と照明のせいで、このイベントにシュールな雰囲気が加わっていた。 ケイトはミラー越しに俺の方を見た。うっとりと目を半分とじているような顔をしていた。再び舌舐めずりし、今度は自分自身の乳首に氷を当て、円を描く。すぐにケイトは顎を突き上げ、感じ始めた。ケイトの乳首もみるみる固くなり、破裂寸前まで大きくなっていく。 氷のかけらが小さくなってしまったのか、ケイトはそれを投げ捨て、新しい氷を取った。ロウソクも新しいのに持ち替える。いったんミセス・グラフの頬を愛しそうに撫で、柔らかなブロンドの髪の毛を掻いてあげた。 そうしてから、またロウソクを掲げ、今度は、胸の谷間から腹部へと蝋を垂らし始めた。波打つ腹部にジグザグ模様を描いていく。それを受けて、ミセス・グラフはヒクヒクと身体を痙攣させていた。蝋の落ちるところが、充分に手入れされた陰毛部に近づくにつれ、今度は腰が上下に動き始めた。そして、とうとう、恥丘に蝋が注がれた。 「ああぁッ! い、いやぁぁぁッ!」 蝋が陰毛にまとわりつき、さらにはその下の陰唇の間を伝い、アヌスへと下っていく。ケイトは片脚を上げ、ミセス・グラフにまたがった。彼女の顔に尻を向けた格好でまたがる。そして、ミセス・グラフの乳房に腰掛けるようにして、濡れた陰部に集中的に蝋を垂らし始めた。 「ああっ、ああっ、ああぁぁぁぁぁっ!」 腰が上下に激しくうねる。 ケイトは蝋を垂らし終えると、陰部の割れ目に氷を当て、上下に擦りつけた。そしてまたもや、蝋を垂らす。またミラー越しに俺に顔を向けた後、指2本で、ミセス・グラフの陰唇を左右に大きく広げた。
「前屈みになるんだ。お尻を階段の方に突き出してな。そうすれば、クリスティが降りてきた時、自分のママがとんでもない淫乱ママだって分かるだろ?」 言われたとおりにした。ああ、ほんとに、してしまってた。言われるとすぐに脚を広げて、脚は曲げずに前屈みになっていた。しかも、手でお尻の頬を広げて… 「ああ……、したわ。ああん…言われたとおりに、前屈みになってる……」 「そんな格好をクリスティに見てほしいのか?」 ほんとに吐き気がするほど変態じみたことを言うのね! 自分の娘にこんな格好を見せるなんて! でも、こんな格好をするまいってどんなに頑張っても、心がダメなの。性的に刺激を受けちゃってて、階段からわたしを見てるクリスティのイメージがチカチカ頭の中に浮かんでくる。 「ああ…そ、そうよ……ああん。こんな格好になってるママを見てほしいの」 「じゃあ、今度は指をアナルに入れてみろ」 手が震えている。その震える指先がお尻の穴触れた。呼吸が乱れていた。 「あっ、あっ、あっ……。ああぁぁぁん……」 強引に入ってくる指…。その強引さにお尻の輪の形の筋肉が観念していくのを感じた。 「入ったか? じゃあ、動かして、出したり入れたりしてみろ」 「ああん、ああん…ううッ! ああん、ああん……い、いい!」 どうして、わたしはこんなに簡単に、こんな男の言いなりになってるの? どうして、わたしはこの男に自由にさせているの? 答えはひとつ。そうしなければいけないから。写真を返してもらうためには、こうしなくちゃいけないから。そうなのよ。自分でしてるんじゃないの! 興奮や快楽は二の次なの。そうよね? 「いま、アナルを自分でやってるんだよな? おばさん?」 「え、ええ……」 「淫乱になってるんだよな?」 「ええ……そう。そうです」 「ちゃんと自分で言ってみろ。おばさんの口から聞きたいな」 一瞬、ためらった。こんな男に、わたしの本性を認めてしまうなんて。家で恥知らずにも裸になってるわたし。お尻の穴を自分でいじってるわたし。そんなの言いたくない。でも、実際にわたしのお口から出てきた言葉は…… 「わたし、淫乱女なの…ああ、ほんとうにイヤラシイ淫乱女なの」 目を閉じ、エッチなお尻の穴に指を深く突っ込みながら、電話に囁いていた。 「よし。じゃあ、おばさんは、今夜、俺専用の淫乱女になるんだ。俺が言うことを何でもするんだぞ、いいな?」 わたしはフランクが何を言ってるか理解し、身体を強張らせた。もし、この人にわたしを自由にさせるとしたら、どんな変態じみたことをさせられるか分からない。それを思って、本当に吐き気がしてきた。でも、わたしのもう一つの部分は……何か期待している部分がある。そうよ、写真を返してもらうためにはしなきゃいけないの。どうしても、しなきゃいけない…… 「……はい」 ほとんど聞こえない声になっていた。 「聞こえねえぞ、ケイト。ちゃんと言うんだ!」 強く叱るような声。 「は、はい。今夜、あなた専用の淫乱女になります…。あっ、ああぁぁぁぁ……」 思ったより、しっかりした声で言っていた。わたし自身のお口から出た言葉、それにアナルを犯してるわたし自身の指…それが相まって、わたしは淫らな声を出していた。本当に淫乱になった気持ち。 これって、わたしの夢にものすごく近いから…。誰かに身体を好き勝手に使われる夢…。誰かにわたしの身体の穴という穴をぜんぶ犯される…まるで安い商売女のように扱われて、あそこの中にも、おっぱいにもお口にも、いっぱい出されて汚される! 心の中がそんな下品な思いでいっぱいになって、頭の中がからっぽ。あるのは変態じみたエッチな妄想だけになってる…… 「ああ、フランク、あなた専用の淫乱女になるわ。どんなことでもします。わたし、そんあ淫乱女なんです!」 もう止まらない。言葉が勝手にお口から出てくる。そういう言葉を言えば言うほど、あそこにもお尻の方にも刺激が送られてくる! もう立っていられなくなって、床に崩れ落ちてしまった。膝をついて、脚を広げ、お尻を突き出していた。 「ああっ、ああっ、ああっ………」 片手でお尻の穴に出し入れを続けながら、床に転がった受話器に顔を近づけ、喘ぎ声を上げ続けた。 肩越しに階段の方を振り返って、娘が部屋から出てくるのを想像した。素っ裸で床にへたりこんで、お尻の穴をいじってるわたし。それを見下ろしてる娘! 娘はどうするかしら? こんなわたしをどう思うかしら? わたしのことを淫乱ママと呼んでくれるかしら? お仕置きにお尻を叩いてくれるかしら? あああぁぁぁ、いいぃぃぃ…! 指を抜いて、自分でお尻の頬を平手打ちした。刺激が背筋を駆けのぼり、ゾクゾクと痺れてくる。 いきたいの…。もう本当にいかせて! いくときの快感が欲しいの…! でも、いけなかった……。そこまでは登りつめられなかった。どうしてもおちんちんが必要。誰かの助けが必要なの! 「ああん、もお…ううん…」 いきたくてもいけない辛さに、電話口で不満の声を上げていた。 フランクはまるでわたしの心を読んで、この困った状態を知っているかのよう。電話の向こうで笑っていた。 「心配いらないよ、おばさん。今夜、ちゃんと良い淫乱女になったら、数えきれないほど、逝かせてやるから」 その言葉に、わたしは本当にこれに嵌まってるんだと気づいた。 「じゃあ、今夜、着てきてほしいものを言うからな。あと、俺に会う場所も」 わたしはフランクの要求を聞いた。そんな格好で人が見ているところを歩くの? わたしは、そんな自分を想像し、心が沈むのを感じた。 つづく
イサベラは身をこわばらせた。大きな手が腰からするすると降り、尻頬をつかまれる。そして、次の瞬間、突然ぐっと抱き寄せられた。イサベラは、両手を父親の胸板につっぱねて抗った。だが、それも敵わない。彼女が解放されたのは、主広間から大きな声で呼ぶ声が聞こえた時だった。父親がひるんだのを機に、イサベラは彼を押しのけ、主広間へと駆け逃げた。 教会の入り口に立っていたのはレオンだった。恐ろしい顔をし、険悪な目つきで辺りを見回し、警戒していた。やがて、その目は乱れた服のイサベラを発見する。彼の目がさらに細くなり、険悪さを増した。 イサベラは背後で父親が何事か叫ぶのを聞き、「イヤッ!」と叫んだ。階段を駆け下り、レオンの元へと走る。ただレオンだけを見つめて。イサベラはレオンに危険が迫っていることを伝えたかった。 だが、イサベラは無防備すぎた。突然、背後から腕が伸びてきて、捉えられしまった。イサベラはもがき逃れようとするが、捉えた者は暴れを収めようと、彼女を抱き、かかえ上げた。イサベラの足が地面から浮く。 「逃げて!」 イサベラは叫んだ。脚をばたつかせ、捉えた者を蹴る。だが、彼女の脚は流れるようなスカートの布地に絡まり、思うようにいかない。 突然、喉元に冷たい鉄製の物が当てられるのを感じ、イサベラは動きを止めた。ただ、恐怖に満ちた瞳でレオンの瞳を見つめている。 アランの部下たちが、剣をかざし、レオンの動きを封じた。レオンは黙ってはいたが、全身から怒りを発散していた。 「イサベラを放せ。お前が用があるのは俺のはずだ」 レオンは一歩前に進み、教会の中に踏み込んだ。それまで扉を開いたままに押さえていたレオンだったが、彼の抑えがなくなった今、扉が彼の背後で閉まった。そのために、レオンはたった一人になり、何十人もの武装した衛兵たちに対峙することになった。 イサベラの身体の中のすべてが「いやッ!」と叫んだ。 「ほー、何と感動的な。その態度、まさか本当にお前はイサベラを気づかっているように見えるではないか」 アランは胸の前で両腕を組みながら微笑んだ。彼はいま控えの間に通じるドアの前に立っている。 「イサベラを放すんだ」 レオンはイサベラから目を放さずに繰り返した。「この教会は俺の部下たちに取り囲まれている。彼らには、イサベラが無傷で解放されたなら、お前が咎めなくショボノウの門を通るのを許してよいと命令を受けている」 「レオン、いけない!」 イサベラが叫んだ。レオンに分からせなければ。城に戻るよう伝えなければ。もしレオンが私と結婚してしまったら、父が企んでいるように、レオンは事実上、殺されることを確実にしてしまうことになる。「レオン、決して…」 「こらこら、イサベラ。いい子になって静かにしてるんだ」 とアランは何事もないかのように言い、イサベラに歩み寄った。「わしはイサベラも、お腹の子も、傷つけるつもりなどないのだよ。お前がわしにそうするよう仕向けない限りはな」 と彼はレオンに言った。 イサベラは燃えるような怒りもあらわに、隣に立つ父親を睨みつけた。アランは手を上げ、彼女の紅潮する顔にかかるシルクのようなほつれ毛を優しく撫で、元に戻した。それを身震いしながら耐えるイサベラ。 「それにお前もだ、ドゥ・アンジェ。お前も、わしの希望に従うならば、傷つけるつもりはない。いったんわしのここでの仕事が完了したら、わしもわしの家来も直ちに帰路につくだろう」
ノボルの携帯電話が鳴り、二人は目を覚ました。ノボルは、けだるそうに電話を取り、「モシモシ[Moshi moshi]?」とつぶやいた。 アンジェラはその姿を眺めていたが、突然、ノボルが緊張しだし、電話の向こうの人が語ることに、ひとつひとつ頷くのを見た。 「ヨシ…。ハイ……ハイ……。ソレデハ[Yosh. Hai. Hai. Sorudewa]」 ノボルは電話を切ると、ベッドの中、寝がえりをうち、アンジェラの身体を包むように、体を丸めた。 「私の部下が今からあなたの家の物を運んできます」 「こんなに早く?」 ノブは確かに仕事が早い。 「サブローには、あなたに関する情報をさぐる時間を一切与えたくなかったから。そんな情報を与えてしまったら、あいつにとって役に立つことになるかもしれない」 とノボルはアンジェラの肩に優しく唇を這わせた。「あなたの家族はどちらに?」 「カリフォルニアよ。どうして?」 「良かった。それなら、すぐに危険になるというわけじゃない」 ノボルはシーツを払いのけ、立ちあがった。黒いキモノのローブを羽織り、腰に帯を巻く。振り返ると、アンジェラがずっと見ていたのに気づき、照れくさそうに笑った。 肩まで伸びた漆黒の髪。振りかえったときの彼の表情。それを見て、アンジェラはノボルの唇がいっそう誘惑的に見え、なおも彼を見つめ続けた。 「その人たちがここに来るまで、どのくらいかかるの?」 とアンジェラは意味ありげに訊いた。 アンジェラが興奮してることを示す匂いがノボルの鼻孔を満たし始め、彼の瞳に浮かぶ表情が、明らかに邪悪っぽく変わった。 「残念ながら、そんなにかかりません」 意志の力を最大限に発揮して、なんとか勃起を抑え込む。「…あなたは、私の命なのですから」 突然、ノボルがドアの方に聞き耳を立てた。アンジェラには何も聞こえず、奇妙に見えたが、彼の部下たちが到着したのである。ノボルはドアを開けると、黒スーツ姿の大きな日本人男性が4人入ってきて、礼儀正しくお辞儀した。男たちは、ノボルから日本語でいくつか命令を受けた後、アンジェラの持ち物を入れた箱々を搬入し始めた。小型の家具も運んできている。 見知らぬ男たちが動き回るのが居心地悪いのか、イン、ヤン、スノッティの3匹はベッドに飛び乗り、彼らを見るアンジェラに擦り寄った。アンジェラはシーツを前に引っ張って身体を隠している。 男たちは作業を終えると、動きを止め、アンジェラへと顔を向けた。アンジェラはノボルが男たちの視線を追っているのを見た。そして、彼が彼女を見た時、その顔にわずかに自慢げな表情が見えているのに気づいた。4人の男たちはアンジェラに深々とお辞儀し、ノボルに退出する旨を伝え、そして出ていった。 ノボルは階段を上がり、猫たちの邪魔をしないよう気遣いながらアンジェラの隣に座った。インとヤンはすぐにゴロゴロ喉を鳴らし、頭をノボルに擦りつけ始めたが、スノッティは迷惑そうな顔を見せ、ベッドから飛び降りた。 「ゴメン[Gomen]、スノッティ君。でも、君はお母さんを独り占めしないようにしないといけないよ。アハハ」 こげ茶色のスノッティは、無視するようにあくびをし、「それはお前のことだろ」と言いたげに目を細め、頭をぴんと掲げて、偉そうに歩き去った。 「ナニ[Nani]?」 とノボルは自分の腰のあたりに目を落とした。アンジェラがキモノの帯をほどこうとしている。 ノボルは自分でキモノのローブを脱ぎ棄てた。アンジェラは彼の分身が目の前に直立するのを見て、いたずらっぽく微笑んだ。 顔を下げ、彼女はノボルのそこの、むっとするような匂いを嗅いだ。 「まあ、とてもいい匂いがする…」 その言葉にノボルの勃起がピクッと反応した。アンジェラは頭部の皮を引き下げ、ぬるりとした表面を軽く舐めた。 「ノブ? 一日じゅう、ずっとあなたとしていたいのに、どうやったら仕事できるかしら? そんな気になれないわ…」 それを聞いて、ノボルが突然、真剣な顔に変った。 「何? どうしたの?」
「ジェシー借金を返す」 Jessie Pays Her Debts by The Warthog くじ引きにいつ、どこで応募したか覚えていない。だが、それはあまり重要なことではない。重要なのは、チケットを獲得したということ。お気に入りのホッケー・チームであるトロント・マープル・リーフがデトロイト・レッド・ウイングズ対戦する試合。その観戦チケットを2枚手に入れたのだ。僕が住んでいる地域では、このチケットはかなり入手困難なチケットである。しかも席も最高だ。リンクから数えて5列目なのだ。ただ一つ、普通と違うことは、普段、リーフを見る時はトロントなのだが、この試合がデトロイトで行われること。ということは、僕たちは南に接する隣国、すなわちアメリカに小旅行することになるということだ。 ジェシーと僕は、チケットのみならず、デトロイトの非常に良いホテルの1泊券も得ていた。ホテルのレストランで2名分のディナー券に、客室内にシャンパン1本もついている。なかなか良いパッケージ・ツアーと言え、ジェシーも僕もこの小さな旅行を楽しみにしていた。 試合は土曜日だ。僕たちは幼い二人の娘たちを世話してくれる人の手配をし、二人を預けたあと、デトロイトに向かった。ホテルに着いたのは午後の早い時間。早速、部屋に入って一休みした。シャンパンを注文し、二人で乾杯し、今回の幸運を祝った。シャンパンは2杯ずつ飲んで、残りは試合後に飲もうとボトルごと氷につけた。この時点では、僕は、僕たち自身がワン・オン・ワンの試合をすることになろうとは、予想すらしていなかった。 僕は、今夜は特別な日だからと、ジェシーに何か素晴らしい服装になるよう頼んだ。ちょっとばかり注目を浴びるような格好になってほしいと思っていたのだ。僕自身は、着飾ったジェシーを自慢するのが大好きなのだが、彼女は服装には保守的で、そういう機会があまりなかったのである。でも、今日は旅行していて、家から離れているわけだしと、僕は何とか彼女をセクシーな服を着るよう納得させていたのである。 シャンパンを飲んだ後、ジェシーはバスルームに入って身支度を始めた。だが、予想以上に時間をかけるので、僕はちょっと驚き、時間が来てるよと急かした。バスルームに入って1時間後、ジェシーが姿を現したのだが、確かにこれだけ時間をかけた価値があると納得した。 僕の愛する可愛い妻と、彼女の今夜の服装を紹介しておこう。 ジェシーの身長は168センチ、サイズは91-76-89のCカップだ。ストロベリー・ブロンド( 参考)の髪はショートにしていて、瞳は美しい緑色。肌の色は透き通るような白で、顔や肩のあたりにそばかすがある。 今夜は、袖なしのデニム・シャツを着ていて、上半身を具合よく包んでいる。そのシャツの裾は、スエードのミニスカートの中にたくしこまれている。そのスカート、膝の上20センチ近くが露わになっていた。そして足先には、セクシーなハイヒールの黒サンダル。ストラップ式だ。 僕は満面の笑顔で部屋を進み、僕のセクシーな妻を抱きしめた。彼女も僕の首に腕を絡めて抱きついた。彼女の身体からとてもいい香りがする。それに気づいたのかジェシーが言った。 「香りつきのバスオイルなの。気に入った?」 「もちろん。とてもいい香りだよ」 ジェシーは化粧も完璧だった。美しい瞳を強調し、どこかセクシーな輝きを放っている。それに、これまたセクシーな輪形のイヤリングをし、マニキュアをしているのにも気がついた。 「わーお、本当にセクシーだよ」 と妻を抱きながら僕は言った。 「旦那さまを喜ばせるためなら、どんなことでも」 と彼女は微笑みながら答えた。
最初、僕はホテルには一晩だけ泊まり、その後、自分のアパートを探すつもりだった。だが、不幸にも、そうはならなかった。ホテルの部屋に荷物を運び入れたとたん、強烈な絶望感に襲われたのである。 それから三日間、僕はベッドに横たわったままだった。ずっと、あの窓から見たことを反芻していた。加えて、アンジーと僕の生活についても、様々なことを思い出し、反芻していた。僕は彼女のことをとても愛している。彼女と別れることを思えば思うほど、絶望の度合いが深くなっていくのだった。 三日間、ベッドに横たわりながら、自分を憐れみ、自分の男性としての無能さを怨んだ。テレビはついていたが、見なかったし、何も食べられなかった。水を何杯か飲んだだけ。それも、何かの義務のように感じて飲んだだけだった。ウィスキーを買ったけど、結局、キャップを開けることすらしなかった。シャワーも浴びず、髭も剃らず三日間過ごした。月曜の午後には、自殺を真剣に考えるほどになっていた。 ドアをノックする音を聞いたのは、月曜の夜だった。最初は無視したけど、ノックの音はしつこく続いた。とうとう、僕は我慢できなくなり、「誰か知らないが、どっかに行ってくれ、僕を一人にしてくれ」 と言った。 だけど、その言葉は、ドアの向こうの人物にもっと強くノックさせることにしかならなかった。 絶え間なくドアをガンガン叩くようになり、僕は飛び上がって、独りにしてくれと言うために、ドアを勢い良く開けた。少なくとも、そう怒鳴るつもりだった。ノックをしてたのがアンジーだと気づくまでは。 アンジーは、あの眩い笑顔で微笑んだ。それを見た瞬間、僕の心は彼女の元に戻った。それでも、僕の理性と僕の自我は、戻ってはいない。バタンとドアを閉めようとしたが、それより速く、アンジーはドアを掴み、部屋の中にするりと入ったのだった。 彼女は部屋を見回して言った。「どうしたの、ジャック? 誰かとしけこんでたの?」 彼女が冗談でからかっているのは分かったが、僕はそんな気分じゃなかった。 「しけこんでたのはどっちなんだ! とっとと、ここから出て、君のオトコの元に行ったらいいんじゃないのか!」 と僕は怒って言った。 アンジーが僕の言葉にショックを受け、僕がそれを言ったことに傷ついているのが見えた。直ちに彼女は言い返してきた。 「ただ冗談を言っただけよ。あなたのこと、本当に心配してたのよ。置き手紙もなかったし、どこにいるか誰にも言わなかったから」 「ふん! 僕がいなくなって、さぞかしハッピーだったんじゃないかと思ったけど? もう、いつでも好きな時に恋人を家に連れ込めるんだから。週末じゅう、ずっと一緒にいられるだろ!」 僕は金曜に買ったウィスキーを開け、グラスに注ぎながら言った。 アンジーは僕に近寄り、手からグラスを奪おうとした。 「あなた? 私の恋人はあなただけよ。ねえ、何のことか私に話して」 僕は彼女の手からグラスを奪い、言った。「アンジー、僕は君があいつといるのを見たんだよ。金曜日、君が職場を出た後、僕は尾行したんだ。君はまっすぐあいつの家に行った。そして、家に入って5分もしないうちに、もう寝室に入っていたんだ」 アンジーの顔に浮かんだ表情は驚きの表情と言っただけではまったく表現不足だろう。秘密が暴露され、僕がすべてを知ってることを理解したのだ。 アンジーはハンドバッグでお腹を押さえるようにして、崩れるようにベッドに座った。それとほとんど同時に、目に涙が溜まり始め、その後ゆっくりと、その涙が頬を伝い落ち始めた。 つづく
僕は、お化粧の技術はそれほど会得してないことを正直に告白した。すると、僕のことを捉えて離さないアンジーは、私がすると言い張り、すぐさま、まつ毛とネイルを僕につける作業に取り掛かった。 このお化粧時間の間、アンジーは、僕の取ってつけたような男性的眉毛の秘密を発見し、大喜びした。そして、一瞬のうちにそれを剥ぎ取り、その代わりに鉛筆で、劇的なほど高く、細い眉を描いた。その形は、僕がこの週末、ずっと愛着を感じていた眉の形だった。さらに、アンジーは耳のピアスをカモフラージュしていたことも発見し、またも大喜びし、唇をすぼめて、大げさに頭を振って見せた。 「リサ、あなたって、本当に驚きの宝庫!」と浮かれた調子で彼女は言った。「ただ単に仕事をしに来るためだけに、これ全部を隠さなくちゃいけないなんて、本当に死にそうな思いだったんじゃない? こんなに綺麗になるあなたを見ただけで、そして、あなたが息のつまりそうな男性人格で、ものすごく冴えない状態に甘んじてたを知っただけで、私、死にそうよ」 アンジーの仕事が完了した。その出来栄えはと言うと、クラブの女の子たちが土曜の夜に僕にしてくれたような、全面開花したドラッグ的ステージ・ガールのルックスではない。しかし、劇的でエキゾチックなラテン娘のような印象が現れていた。特に唇。濃い赤ワインの色の輪郭を描き、中は鮮やかな赤で染め、全体にキラキラ光るグロスを塗っている。この週末ずっとつけていた爪と、今のえんじ色の長い爪。どっちも見栄えや雰囲気の良さは変わらず、優劣がつかなかった。 アンジーの指示に従って、アクセサリー類をつけ直し、仕上げに香水をスプレーした。 「素敵よ、リサ! じゃあ、今度はヘアに移りましょうね。ちょっと待ってね。つける前に作業させて」 ダイアナとカツラを買う時、僕たちはプロ用のカツラ、プロ用のスタイリング用ブラシ、それに、もちろん、プロ用のヘアスプレーを選んだ(「ヘアスプレーというのは、ショーガールの一番の親友なのよ」とダイアナが言っていた)。 いま、アンジーはブラシとヘアスプレーで僕の光沢のあるカツラに攻撃をしている。そして、あり得ないとほどの短時間で、彼女はそのカツラのボリュームを、比ゆ的にも文字通りにも、大きくかさ上げし、僕のお化粧の劇的な印象を補う形に変えたのだった。 「ほら、これこそ、私がさっき言っていたこと」 と彼女は嬉しそうな声をあげ、いったん手を休め、ウインクしてみせた。「私はあなたの有能な秘書だということ。さてこれをあなたにつけさせて。出来栄えを見るのが待ちきれないわ」 最初に伸縮性のあるメッシュが頭に被せられた。これを使って、やや長めの地毛を固定する。その後、彼女は、ちょうどミミがしてくれたように、カツラを注意深く装着した。後頭部についてるヘア止めをパチンと止めて押さえる。 その後、僕自身がアンジーのやり方を真似て、カツラを地毛にボビーピンで固定した。化粧台の鏡の中、視線を向け会うアンジェリナの笑顔と僕の笑顔が並んでいた。 「すごくいいわ…」と彼女が呟いた。「今度は靴よ。気取って歩く姿が見たいわ」 心臓がドキドキしていた。でも、これはもはや不安感からの動悸ではない。今はすっかり、これに嵌まっているということ。僕はミュールに足をするりと入れた。摩天楼級のスティレットのおかげで、脚が形良く伸び、胸とお尻を突き出す形になる。自分が無敵の美女になったような気持ち。 ダイアナが造作もなく流れるように部屋を歩く姿を頭に浮かべた。そして、意識的に自分の身体に彼女の真似をするよう命じた。 「ああっ…すごーい!」 愛らしいラテン娘が叫び声を上げた。「ああん、これって、歩くポエムよ! たった二日間で? あなたって、これのために生れてきたんじゃない? 私も負けないように頑張らなくっちゃ!」 興奮がーあるいはシャンパンがー効果を出してきたようだ。「アンジー? ……この相互倒錯の会を中断するのは嫌なんだけど、ちょっとトイレに行きたくなってしまったので…」 アンジーはアハハと笑い、頷いた。そして化粧台の前に座った。 「いってらっしゃい。私は、ここにある素晴らしいお化粧品のコレクションを使わせてもらって、お顔を直してるから」
ドニーの話し私たちが合衆国司法長官の秘密工作員によって攻撃されたというニュースが明るみになった後、誰もが私たちのことを知りたくなったようだ。私はどうかなと思っていたけど、アンドリューは、密かに隠れているよりも、誰の目にも分かる状態でいた方が安心だと感じている様子だった。 司法長官はインタビューで、ジョー・ウィリアムズやら、ラルフ・モーリスやら、誰のことか、まったく知らない男だと主張した。それに、人類向上機構という組織もアンドリュー・アドキンズという男も知らないと言った。というわけで、今のところ、私たちとしては何もできない状態になっている。 CNNが電話してきて、アンドリューにラリー・キング・ライブ( 参考)に出演してほしいと言ってきた。ある南部のバプティスト教会( 参考)の牧師と一緒に出ることになるらしい。その牧師については、名前を聞いたことがなかったが、非常に重要な人物だと言う。 アンドリューは、子供も一緒に出てよいなら出演すると答えた。子供たちが焦点となっているわけなので、CNNはすぐに承諾した。 私には、これはあんまり良い考えとは思えなかった。 この時、私たちはリビング・ルームでソファに座ってくつろいでいた。娘たちは裏庭で犬と遊んでいる。息子たちはお昼寝をしていた。ディ・ディは集会に出かけていた。アンドリューは初めから、私たちは地元コミュニティの重要なメンバーになるべきだと言っていた。いまは、そのわけが分かる。友達がたくさんできている。ここは私たちの町という実感がある。 「アンドリュー? どうしてもテレビに出なきゃいけないの? 自分自身を標的にしようとしてるんじゃない?」 アンドリューは他に選択肢がないと思っているらしい。 「僕たちはもうすでに標的になってるよ。政府が僕たちは重要人物だと決めたら、そのこと自体で、僕たちは重要人物になってしまうんだ。僕たちが話題になってから、もう何日か経つだろう? 君もディアドラもインタビューの要請を断り続けている。でも、最終的には、事態を明るみにされてしまうものさ。僕は報道メディアのコントロールは嫌いだけど、でも、今回は、僕たち自身で報道メディアをコントロールするのに絶好の機会だと思うんだ。トークに出ないよりは出た方がましじゃないかと」 私は牧師が加わることを心配していた。「この、ウォルターズ牧師という人についてはどう? この人、あなたの側には立たないでしょう? この人は、今回のことを枝葉末節の問題に変えようとするんじゃない? この人、どんな行動予定がお好みなのか分からないけど、そっちに持っていこうとするんじゃないかしら?」 アンドリューはにやりと笑った。 「なぜ僕がエミーを連れて行くか分かる? エミーは僕にとって可愛い小さな秘密兵器なるだろう。まずはエミーに、その男の教会と自宅のコンピュータに侵入してもらい、何か僕たちを攻撃するようなものがあるかどうか調べてもらう。そして、この男が実際に攻撃してきたらーまあ、確実にそうしてくるだろうけどーそうなったら、エミーがそいつの頭に入ってもらって、どんな薄汚い秘密を隠してるか探ってもらう。その上で僕がそいつのキンタマを握りつぶすわけ」 「その喩え話、吐き気がしてくるわ。どうか、するにしても、言葉の上だけにしてね。私たち、マナーが悪くないお気楽な男性と結婚したと思っていたけど、今のあなた、ずっと攻撃的に見えるわ。そういうマッチョ的なことに興奮するの?」 「ドニー? 他に方法が見つからないんだよ。できることなら、この小さな隠れ家にこもって、子供たちを育てていたいんだ。でも、子供たちは守らなければならない。子供たちのために、実世界に出て、戦わなくちゃいけないんだよ。で、それで? 君の方は、こういうマッチョ的なことに興奮するの?」 正直、こんなに確信を持って行動するアンドリューを見て、私は身体が疼いていた。彼は私たちにとても優しく接してくれるので、この甘い外見の内側には本物の男性の心が潜んでいるということを簡単に忘れてしまう。 私は立ちあがって、彼の手を取り、ぐいっと引き寄せた。そして、いきなり舌を彼の喉奥へと突き刺した。
観客は大騒ぎだ。低音のベースがびんびん鳴り響く。照明がぐるぐる回り続ける中、ケイトが祭壇から離れた。俺の目の前の光景はまさに驚愕もの。ミセス・グラフの脚の間が丸見えになっている。 驚いたのは、その部分の濡れ具合だ。すっかり膨らんでいて、陰唇がぱっくり花開いている。祭壇の上、大の字に身体を開いているので、ミセス・グラフは完全にケイトに自由にできる状態になっている。 ケイトは、ミセス・グラフの身体をじっくり観察しながら、祭壇の周りを一周した。ケイト自身の姿も信じられないほどそそられる。小さな赤いソング・パンティとセクシーなハイヒール姿。 ケイトはミセス・グラフを完全に拘束したのを満足げに確認し、自ら祭壇に上がり、ミセス・グラフの横に座った。 祭壇に座ってちょっとポーズを取った後、今度は祭壇の横に立っているロウソク立てから燃えたままのロウソクに手を伸ばした。注意深くロウソクを外し、それをミセス・グラフの上に掲げた。ミセス・グラフは一瞬、恐怖の表情を浮かべたが、これから起こることを防ぐことはできないと観念したのか、その後は落ち着きを取り戻した。 ケイトがミセス・グラフの乳房の上にロウソクをかざす。その動きをミセス・グラフはじっと見つめていた。熱い溶けたロウをかけられるのだと察知したのだろう、ハッと息を飲むのが見えた。ケイトはゆっくりとロウソクを乳房から離し、手首の方へと持っていった。俺はそれを見ながら、ペニスがピクピク反応するのを感じた。 ケイトがロウソクを傾け、溶けたロウをミセス・グラフの腕に垂らした。 「い、いやあぁぁぁ!」 ミセス・グラフが苦痛の叫び声を上げる。ロウがぽたぽたと腕先から、脇の下まで、腕全体に振りかけられる。 「ああ、ひどい……」 大音響の音楽の中、ミセス・グラフの叫び声が聞こえた。掛けられたロウが次第に固まり始める。 ケイトは素早く熱いロウを指先ですくい、ミセス・グラフの乳輪と乳首につけ始めた。円を描くようにロウをなすりつける。それを受けながら、ミセス・グラフは激しく身悶えを繰り返した。 ケイトが素早く片脚を上げ、ミセス・グラフの腹の上にまたがった。ケイトは俺に背中を向けているので、何が行われているのか見づらかったが、ミセス・グラフのもう一方の腕にロウソクを垂らしているのだろうと推測できた。この時も、敏感な柔肌に熱いロウを垂らされ、ミセス・グラフは狂ったように身悶えした。 ケイトはミセス・グラフから這うようにして降りると、また彼女の横に座り、今度は燃えたロウソクをミセス・グラフの顔の上にかざした。 「まさか…」 そう思いつつも、俺の勃起は爆発寸前までいきり立っていた。 俺の元女教師の顔にパニックと恐怖の表情が浮かんでいた。その顔にケイトがゆっくりとロウソクを傾ける。 「い、いやぁぁぁぁぁぁッ!」 耳をつんざくばかりの悲鳴があがり、それと同じくして、溶けたロウが彼女の額と頬に垂れた。 ケイトはそれでもなおロウソクをかけ続けた。ミセス・グラフは顔を激しく左右に振り、身悶える。やがてケイトは溶けていたロウすべてを顔にかけた。逃れようと必死に両腕、両脚を動かし、叫び続けるミセス・グラフ。だが、それも無駄だった。やがて、ミセス・グラフは諦めたのか、抵抗するのを止めた。 ケイトは使いきったロウソクを元に戻し、別のロウソクを手に取り、またミセス・グラフの横についた。一瞬、マジックミラー越しに俺の方へ目を向け、ニヤリと微笑む。それから、もう一方の手をロウソク立てに装着されているかごに伸ばし、中から氷を取りだした。 ミセス・グラフの女陰からとろとろと愛液が流れているのが見えた。尻の割れ目を伝って流れている。ミセス・グラフの、両脚を大きく広げられ、高々と吊るされている姿は、無残な姿ではあるが、驚くほど美しい姿でもあった。その脚の間、美しく花開いた女陰が、俺の真正面に来ていて、俺を見つめているようだ。
「おばさん、本当はクリスティのあそこを舐めたいんだろ? 若いビラビラの間に舌を這わせて、口の中にちゅうちゅう吸いこみたいんだろ? …そこのお汁がおばさんの口の中に流れ込んできて、そいつを味わいたいんだ。それから舌を尖らせて出し入れして、自分の娘がイクのを見たいんじゃねえのか? そうだろ、ケイト? 言ってみろ!」 わたしは目を閉じて、壁にもたれかかっていた。手が濡れたあそこに円を描くように勝手に動いている。 「ああ、いやッ…だめ。……ああっ…。分からないわ……もう、お願い。わたしに何をしたいの?」 わたしは電話口に喘ぎ声を上げていた。言ってしまってから、自分で言ったことに気がついた。 分からないわって? 分からないわって? クリスティは自分の娘なのよ! 「おばさん、自分でいじってるんだな? 俺には分かるぜ。その喘ぎ声や荒い息づかいからな。ほら、言ってみろよ、ケイト」 お豆をいじる手の動きが速くなっていた。エッチな気持ちで気が狂いそう。 「ええ……ええ、そうよ。自分であそこをいじってる……」 小さな声で答えた。 「よろしい。じゃあ今度は、綺麗なクリスティがおばさんの目の前で素っ裸になってるところを想像してみるんだ。涎れが出そうな大きなおっぱいと固くなった乳首。おばさんの方に歩いてくるのに合わせて、そいつがゆらゆら揺れるところをな」 「いやッ! もうダメ、フランク! やめて…」 フランクが言ってることを想像しまいと、ぎゅっと目をつむった。 「下の方に目をやると、ツルツルのパイパンだ。発情して膨らんでるのか、可愛い唇が顔を見せてる。おばさんに触ってほしいって言ってるぞ。どうだ、ケイト? クリスティに触りたいんじゃねえのか?」 「いいえ、そんなことありません!」 わたしは心の中で戦っていた。フランクが頭の中に送り込んでくるイメージに、ありったけの意思をもって戦った。 「でも、クリスティの方は求めているんだぜ? ほーら、もうこんなに近くまで来てる。ママ、私に触ってぇって」 「いやぁ…! ああん、もうイヤぁぁぁぁ……!」 意志が溶けていく。 「クリスティに触りたいんだろ? 娘の肌を自分自身で感じたいんだろ? どうだ? ケイト?」 「ああん…。もう……。あっ、あぁぁぁ……」 「おばさんなら、触るよな。俺には分かるぜ。ただ、自分の気持ちに素直になればいいんだよ。クリスティに触るんだ。あそこを擦ってやるんだよ」 「え、ええ! そうよ! ひどい人! その通りよ!」 叫ぶような声を上げていた。お豆が信じられないくらい大きくなっていて、そこをわたしの手がものすごい勢いで動いていた。 「それでいいぞ、淫乱おばさん。ところで、いまパンティは履いてるのか?」 「ええ」 かすれた声で返事した。 「じゃあ、脱いでほしいな。今すぐだ、ケイト!」 震える手を下に伸ばして、素早く脱いで、近くの椅子のところに投げ捨てた。 「もう脱いだか?」 「ええ」 「じゃあ、今度はシャツも脱ぐんだ。素っ裸になるようにな」 この時も素早くシャツを脱いだ。素っ裸になって立っていた。興奮で身体が震えてる。 「裸になったか?」 「はい」 「乳首は固くなってるか?」 「…はい」 指でつまみながら、囁き声で答えた。 「手を下に伸ばして、おまんこに触ってみろ。濡れてるか?」 言われたとおりにあそこに触った。…濡れてる。ああんと声が出てしまった。 「すごい…。びちゃびちゃになってる……」 「じゃあ、誰かに舐めてほしくてたまんねえだろう? 舌でそこを可愛がってもらいたいんじゃねえのか? そうしてもらって、快感で叫び声を上げたいんだろ?」 「ああ、そう……ああん……、そうなの」 わたしの手がお豆のところをものすごい速さで動いてる。身体の中、どんどん快感が溜まってくるのを感じる。苦しい快感。その快感がどっと解放される瞬間を、わたしの身体が今か今かと待っている。 「いま、この場にクリスティがいたらいいのに、って思ってるんじゃねえのか?」 「そ、そんな…ああっ……ううっ……ああん……ううん…」 「ちゃんと答えるんだよ、ケイト。クリスティに舐めてもらいたいんだろ? 舐めてもらって、逝きたいんだろ?」 自分がどうなってしまったのか分からない。ただ、夢中になってるだけ。家の中、素っ裸になって、立ちながら自分を慰めているわたし。頭の中は娘のことだけ。 「そ、そうなの……ああんッ!」 大きな声で喘いでた。身体が欲望だらけになってしまった感じ。 「脚を大きく広げて、その間にクリスティが割り込んで、口を寄せてる。そして、おばさんが出すお汁を美味しそうに啜ってる。それを望んでるんだろ?」 「ええ、そう……そうなの!」 本当に淫乱女のように喘いでた。自分の娘への欲望を言ってるなんて、もう頭から消えていた。 「お尻の穴の方はどうだ? そっちも舐めてほしいんだろ? クリスティにねっとりとアヌスを舐めてもらいたいんだろ?」 「ええ、お尻の方も、そう! してほしいの」 もう完全に我を忘れていた。淫らな喜びで身体が震えていた。誰かにお尻の穴を舐めてもらう。すごいイメージ。強烈な興奮…
イサベラは緑色の瞳を大きく見開き、父の目を見つめた。その父アランに美しい房毛をぐいと引っぱられ、泣きそうな声を上げた。 「私はあなたを憎みます」 「お前は、わしが修道院に送ったころの柔和で従順な娘ではなくなってしまったな」 とアランは目を陰険に細めた。「ドゥ・アンジェがお前を女にしてしまった。お前もあいつも、そのことへの償いをしなければなるまい」 胴着の薄地を通してではあるが、父親の手が彼女の胸を這い、覆った。イサベラは、冷たくねっとりとしたその手の感触に身の毛がよだつ思いだった。 「お前が従順な娘だったら、ドゥ・アンジェが求婚したら、お前もそれを受けたことだろう。だが、今となっては、わしが自分でお前たちの結婚の面倒を見てやらなければならなくなった。最後にあいつを始末する前にな」 「な、何ですって?」 とイサベラは息を飲んだ。父親の指に乳首を見つけられ、身を強張らせる。その指で勃起した蕾をつねられ、転がされる。イサベラは両手にこぶしを作って耐えた。「ど、どうして?」 「そうすれば、わしはわしが望むものを手に入れられるからだよ。合法的にな。ドゥ・アンジェが突然、逝去すると。その折には、あいつの妻であり、あいつの後継者の母であるお前が、あいつの領地を完全に支配することになるわけだ。お前の子が成年に達するまでな」 イサベラは父親の意図を知り、唖然とした。レオンを殺した後、まだ生れぬ子供を使って、ドゥ・アンジェの領地を支配しようと企んでいるのだ。 あまりの衝撃に、乳首をいじり続け、勃起させてる父親の指の感触すら意識から消えかけていた。イサベラは無理にでも深呼吸し、冷静さを保った。 「生れてくる子が女だったらどうするのですか?」 「性別は関係ない。ドゥ・アンジェの曾祖父が、どちらの性別でも領地を継承できるよう取り決めを変えたのだよ。ドゥ・アンジェの家系は多産の家系ではなかった。そこで曾祖父が先を見越して、ドゥ・アンジェの領地が国王の元へ返還させられることを防ぐ必要があったのだよ。わしらにとっては好都合だった」 「『わしら』などと言わないでください。私はこれには関係しません。父上がレオンの財産を盗むのを手伝うくらいなら、死んだ方がましです!」 「そうなったら、お前の子も一緒に死ぬぞ?」 とアランは愉快そうに言った。そしてイサベラの胴着を撫で、捲れを戻し、立ち上がった。 イサベラの顔からは血の気が失せていた。「だめよ…」 息が荒れていた。「そ、そんなこと、決してさせません!」 「させませんだと? わしにはそうなるとは思えんがな」 アランは、イサベラの両腕に手を乗せた。逃れようともがくイサベラだったが、父親に無理やり立たされた。 イサベラを立たせた後、アランは顔を寄せ、鼻から深く息を吸い、イサベラの香りを堪能した。イサベラは首筋に唇が触れるのを感じ、ぶるぶると身震いした。 「ドゥ・アンジェが死に、わしが合法的に領地を相続した後、お前にたっぷり教え込んでやろうな。わしの分身に、お前の締りの良い女陰やその後ろの穴を繰り返し貫かれる喜びをしっかり教え込んでやろうな」
さしあたり切迫した欲望を発散させた後も、ノボルはアンジェラの中に包まれたままでいた。だが、今度は彼女の傷を舐めはじめた。いくつもの傷口を舐めつつ、ぐったりしたアンジェラの身体を優しく抱きかかえる。 やがてアンジェラも身体に力が戻ってきたが、それと同時に、彼が依然として勃起したままであり、ゆっくりとではあるが再び出し入れの動きを始めているのを感じた。 変身後は陰茎が敏感になるらしい。ノボルはその部分からの過剰ともいえる刺激に、唸りながら引き抜こうとした。しかし、アンジェラのあの部分はきつく締めつけ、彼を離そうとしなかった。そしてノボルが抜け出ようとすればするほど、かえってアンジェラの陰部は彼に強く食いついて離さない。 アンジェラ自身、その体内をきつく押し広げるノボルの分身を喜んでいた。両腕をベッドについて身体を押し上げ、自らお尻を突き出し、再び絶頂へと向かい始める。 「ああ、いいぃ……、ノブ、お願い! もっとして! もっと、もっと!」 アンジェラがオーガズムにより発作を始めた。それによりノボルは陰茎をぎゅうぎゅう締めつけられるのを感じた。先に強烈なオーガズムを味わった後で、さらにこれである。過剰ともいえる刺激にノボルは遠吠えのような声を上げ、再び射精を迎えた。 二人の絶頂が終わり、やがて情熱の波が収まっていく。アンジェラはがっくりと崩れ、ソファに顔を突っ伏した。 ノボルは彼女の肌を舐め、癒し続けた。それを受けるアンジェラはうっとりとした笑みを顔に浮かべていた。嬉しそうに喉をゴロゴロ鳴らしながら肌を舐める。それはアンジェラにとって信じがたいほど気持ちよく、ゴロゴロという声の振動が身体じゅうに優しく響くのを感じた。 「あなたに再び会えて、こんなに幸運なことはない」 とノボルは甘美なバリトンの声で呟いた。 「私も…」 とアンジェラは、うっとりとしつつ微笑んだ。「ノブ? 私もあなたのようになるのかしら?」 ノボルはアンジェラを抱き寄せ、答えた。「ええ。私は退化した状態で、あなたと愛の体液を交換し合いました。あまりに多量に。もっとも、あなたのDNAが書き換えられて、変化が現れるまでは少し時間がかかるでしょうが」 「私もあなたのような素敵な青い目になれるかしら?」 とアンジェラはサテンのような感触のノボルの顔毛に頬を擦りつけた。 ノボルは顔には出さぬものの心の中で微笑んだ。「残念ながら、そうはならないでしょう。私が感染させた人で、目の色を変えた人はこれまでいません」 ふとアンジェラの心に迷いの暗い影が浮かんだ。「ノブ? 本当に私と関わり合いたいと思ってる? 私のことほとんど何も知らないと思うけど」 アンジェラの顔には汗の跡がついていた。それをノボルは舌を伸ばして舐め取った。舌を刺すピリピリとした味が嬉しい。 「私はあなたを見つけるために4世紀以上も待ったのです。それは長い時間だが、自分が本当に求めるものは何なのかをしっかりと見つめ直すには必要な時間なのです」 ノボルの姿はゆっくりと元の姿へと戻りつつあった。 「あなたこそ、こんな形で私とつながることを本当に望んでいますか?」 とノボルはアンジェラに覆いかぶさり、身体を押しつけた。「私たちはとても長く生き続けることになるのですよ?」 アンジェラは両腕を彼の首に巻きつけ、彼の下唇を甘く噛んだ。「だったら、私たち、これから本当にたくさんセックスできることになるわね」 それを聞いてノボルの目が泳ぐのを見て、アンジェラはクスリと笑った。 「モチロン[Mochiron]」 とノボルは彼女のまぶたに優しくキスして囁いた。「サランへ[Sarang-heh:愛してます]」 その言葉にアンジェラは目に涙が溢れてくるのを感じた。うつむいて顔を隠しながら、彼女も囁いた。「サランヘ」
次にチケットを見た時、それに気づくのにしばらくかかってしまった。そして、それがあのチケットだと分かった後、本当にパニックになってしまった。夫じゃなかったから! 友だちのシンディと一緒にいた時で、私はシンディに、車のキーを私のハンドバックから取ってきてと頼んだのだった。そして彼女が戻ってきたんだけど、キーと一緒にくしゃくしゃになった小さな紙を持っていて、それを開いて、ニヤニヤしながら読んでいる! 私は、突っ立ったまま彼女を見つめていた。しばらく沈黙状態が続いた。 そしてようやくシンディが口を開いた。「あなたたち、なんだかちょっと面白そうなことをやってるみたいね」 「誕生日のプレゼントなのよ」 と答えた。すこしほっとしていた。シンディは、もっと別のことを言えたはずだから。たとえば、あなた、なんてショッキングな人なの? とかそんなことを。 そしてシンディは紙切れを私に渡した。私は受け取ってハンドバックに戻そうと歩きかけたけど、ちょっと気になって立ち止まった。 シンディは私を見ている。何だか変な感じで。いや、「変な」というのとは違う。何か重要なことが起きようとしてる感じ。私は混乱していた。 でも、混乱しつつも、私は目を落とし、紙切れを読んだ。そして、ハッと気づく。シンディはこれを私に手渡したのだ。「このチケットをジニー・グリーンに手渡せば……」 私は顔を上げなかった。座ったまま、床を見つめていた。いいえ、シンディはそんなつもりなはずがない! そんなのあり得ない! 心の中が騒いだ。チケットはビルのためのものだもの! それにこのチケットは、すでに一回使われたものだもの! 数に入らないわ! どうして私はこんなことを考えているのだろう? まだシンディの顔を見ることができなかった。 でも、なんとかして顔をあげ、彼女の顔を見たーどうしても彼女の考えてる事を読み取らなきゃいけない! シンディは、ひとかけらも見せてくれなかった。ただ座って私を見ているだけ。次に起こることを待っている。でも、確かに感じた。彼女は私が「する」のを期待しているって! シンディ?! 私とシンディ?! 何か言わなくちゃ。ー反論しなくちゃ。だけど、もし私が何か反論したら、どうなるだろう? シンディが…、何と言うか…、彼女が私と性的なことをしようと考えていると私が思っていることを白状してしまうことになる。 彼女がそう考えているのは、私には分かったけど、そのことを私から告白するのはできない。もし万が一、彼女がそう考えていなかったら、どうなってしまうことか! そうしたらシンディが笑顔になって、ちょっとくすくす笑った。「あなた、すごく可笑しいわ」 そして私はシンディが単に私をからかっていたのだと分かった。 「そんなゲームをしているんだから、ちょっとしたトラブルになるかもって予想しておかなくちゃいけないわよ」 と彼女は続けた。 確かに、シンディは人をからかうのが好きな性格をしている。でも、こんなふうにからかってくるとは、考えてもみなかった。 そして、その後、ビルと公園を歩いていた時、次のチケットを渡された。野外で、しかもひと目につく公園で! 彼が小道の前後を見回していたのに気がついた。確かに、人通りの多い通り道からはちょっと離れている。私も辺りを見回しそうになったけど、止めた。それよりも、まずは速くと考えた。いや、速くというのは、むしろビルの仕事。 私たちは真昼間に、しかも公共の場所でこういうことをしたことは一度もない。私は始めた時は神経過敏な状態だったけど、でも、彼が辺りを注意し続けてくれてるのに気づいた。それに、私自身、こういうことをしている自分がとても淫らな感じがして、むしろ楽しかった。 このチケットを使うと後は最後の一枚だけ。白昼、公の場所で彼のあれを舐めしゃぶっている私。……こういうことが起きるかもしれないと最初から私は思っていた。これこそ、まさに私が欲したこと! 少なくともある意味では、これは予想していたことだし、ビルのためにしてあげたいと思っていたことだった。 そうなのだ。状況によって興奮するという側面もあるにしても、私は本当は淫らになるのが好きなのだ。姉夫婦の家であっても。 私はしゃぶり続けた。気持ちよくしてあげようと、頭を振り続けた。そして、シンディのことを頭に浮かべていた。どういうわけか、ビルにしてあげているのに、シンディのことを頭に浮かべていた。 彼女の前にひざまずかされている私。彼女の下着を下げ、ドレスの裾を捲り上げている私。そんなことを考えたことは一度もなかったのに、今は、ビルに奉仕をしつつ、そういうことを無意識的に思い浮かべている。 ええ、やっぱりその夜も私たちは愛し合った。私はものすごく興奮していた。そして、その時もシンディのことを思った。 もし、シンディにさせられたら、どうしよう? ビルと愛し合った後、私はチケットのことを考えた。ビルが持っているのは、あと一枚だけ。ちょっとした冒険もあと一回だけ。使ったチケットは(注意深く細かく刻んで)ゴミ箱に捨てた。ポケットに丸めたままの1枚を残して。 ビルが眠った後、私は再びシンディのことを考えた。彼女は、私のバッグから出したしわくちゃのチケットを使おうとしていた! 一度使ったチケットを! 私はちょっとベッドから降り、ポケットの中のチケットを取り出した。ビルの財布を見つけ、それを忍び込ませた。そして私はベッドに戻り、横になった。シンディのことをもう少し思いながら。 おわり
車を飛ばしながら、僕は、目撃したことを振り返り考えた。自分の命よりも大切と愛した女性。その女性が他の男に身体を捧げていた。最初、どうしてアンジーがこんなことをしてるのか分からなかった。僕は彼女が求めることをどんなことでもしたし、彼女がどんなことを求めても、それに疑義を挟んだりしなかったのに。だが、あの男がペニスを挿入した瞬間、アンジーがオーガズムに達したところを思い出した。その時になって初めて、僕はどうして彼女がこういうことをしたのか悟った。 そして次に、僕には彼女を満足させられる代物を持っていないことを悟った。僕のは小さすぎて、彼女が切望しているオーガズムを与えることができなかったのだ。それにアンジーが僕のペニスをまともな呼び方をしたことがないことも思い出した。いつも「可愛いの」とかと呼んでいたし、女装した時は「クリトリス」と呼んでいた。 それを悟った時、僕は気力が失われていくのを感じた。自分がまともな男でないことに対する絶望感に満たされた。それに、これからはアンジーを以前と同じような目で見ることができなくなったことも知った。あの男と大きさの点で決して敵わないと知りつつ、彼女と愛することなど、今後、決してできないだろう。 この情事は、かなり前から続いていたに違いない。僕たちが婚約するずっと前から。あの男のトラックが僕たちが住む地域を走り去るのを、去年、何度も見かけたことがある。あのトラックを目撃した日は、必ず、アンジーに面会の約束ができ、二人とが異なった時間に職場から帰った日だった。アンジーの面会相手はあの男だったのだ。僕がオフィスで働いている間、アンジーは僕たちのベッドで彼に性奴隷のように奉仕していたのだった。 もう二度とアンジーの顔を見ることができないと思った。彼女の顔を見るたび、あの男が彼女を犯すところを思い浮かべることになるだろう。 これから何をすべきか、決心するまで何分もかからなかった。アンジーが帰宅する前に、衣類をまとめて家を出るべきだ。自分自身の生活のためばかりでなく、アンジーの幸せのためにも、そうすべきなのだ。アンジーは僕に隠れて浮気をしているのは事実だが、それでも僕は彼女を深く愛している。 レンタカー会社に戻る代わりに、僕はまっすぐ家に帰った。アンジーが帰宅するまで、荷物をまとめる時間は2時間もないと知っていた。できるだけ迅速に作業した。紳士物の衣類しか集めなかったが、紳士用の下着を持っていなかったので、パンティは何着か集めた。普通の紳士用下着を買いに店に行くまでは、そのパンティで過ごそうと。 夜の9時、できる限りのすべてを二つのスーツケースにまとめ終えた。もうすぐアンジーが戻ってくるので、すぐに出発しなければならなかった。まだ持っていきたい物があったが、彼女が戻る前に出なければならない。 そして、かろうじて間にあったのだった。僕たちの住居地域を出てすぐ、アンジーの車が走ってくるのを見かけたからである。あの黒いミニバンに乗っていたのが僕だとは、彼女は決して気づかなかっただろう。 2時間後、僕はレンタカー会社にミニバンを戻し、自分の車へスーツケースを1つずつ運び入れ、そして車に乗り込んだ。そして酒屋に立ち寄りウイスキーを1本買い、安宿を見つけ、そこで悲しみを酒で紛らわしながら、一夜を過ごしたのだった。 アンジーと僕の銀行口座は別々だったので、自分が使えるお金はあった。僕が稼いだお金は僕の口座へ、彼女のお金は彼女の口座に振り込まれている。僕たちはもっぱら彼女の口座を使っていたのだが、アンジーは給与を別々にしておきたいといつも言っていたのだった。
「裏切り」 第7章:第8の段階? Betrayed ch.07: The Eighth Level? *****
これまでのあらすじ
ランスは、妻のスーザンとジェフの浮気を知りショックを受ける。ジェフがシーメール・クラブの常連だったのを突き止めた彼はそこでダイアナというシーメールと知り合い、彼女に犯されてしまう。だが、それは彼の隠れた本性に開眼させる経験でもあった。1週間後、ランスは再びダイアナと会い女装の手ほどきを受ける。翌日、ふたりはスーザンとジェフに鉢合わせし険悪な雰囲気になる。ダイアナはランスをクラブへ連れて行き、本格的な女装を施した。リサと名前を変えたランスは行きずりの男に身体を任せる。それを知りダイアナは嫉妬を感じたが、それにより一層二人のセックスは燃えあがった。ランスはダイアナが奔放に男遊びを繰り返すことに馴染めずにいた。そんなある日、会社の美人秘書アンジーに正体を見透かされる。
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アンジーは、僕の腕に両腕でしがみついたまま。逃れようとしても逃れられない。ふたりでタクシーを拾い、僕の住処に戻った。ダイアナも僕のマンションに驚いたけれど、アンジーはそれ以上だった。 「まあ! まるで女王様のような暮らしじゃない!」 アンジーは自分の言ったことに気づき、くすくす笑った。 「あら、いけない! でも、言おうとしたこと分かるでしょ?」 彼女は一直線に主寝室に入っていった。彼女の訓練された目は、宝石箱や化粧台を見逃すことはなかった。ドレッサーの引き出しをひとつひとつ開けてチェックしては、ランジェリーやダイアナのコルセットを見て、うんうんと頷いていた。化粧台に移ると、MAC製品を見て、またうんうんと頷き、微笑み衣装箱を調べる。ダイヤとルビーのジュエリーを見て、目を飛び出さんばかりにした。 「お願いしようとも思わないけど…」 とアンジーはゆっくり言い出した。 僕には彼女が何を意味しているか分かり、頭を縦に振った。アンジーは大きな音を出して息を吐き、それからクローゼットへと移動した。彼女は黙って立っていた。スウェードのスーツ、赤いシークインのガウン、そして、あのコートをじっと見ていた。それから静かにドアを閉じ、くるりと僕の方を向いた。 「何と言うか…想像したほどたくさんあったわけじゃないけど、でも、すごい……」 彼女の最後の単語は、ほとんど囁き声になっていた。 「僕は、こういうのにはまだ新しいから…。だから、衣装類がこんなに限られているんだ」 「『新しい』とは? もっとはっきりと言うと?」 「う…この前の週末?」 「たった二日間? …わーお! まだ、処女みたいなものじゃない」 「い、いや…正確には、違うけど…」 アンジーの瞳が大きくなった。チシャ猫のような笑みを浮かべている。 「本当に時間を無駄にしない人なのね」 と彼女は笑った。「あなたについての私の見解は、やっぱり正しかったわ、リサ。あなたは、その時が来た時には時間の使い方をちゃんと知っている人。私たち、とても、とても親密な友だちになれそう……」 「でも、アンジー、僕には……」 「…それに、オフィスの誰も私たちの秘密を知る人はいないー私が教えようとしなければ。さあ、リサ! 私のために着替えて見せて。あの赤いシークインを着たあなたも見たいけど、今はやっぱりあのスエードのがいいと思うわ」 僕は男性用の衣類を脱いだ。それからピンクのパンティから、洗いたてのラベンダー色のふらジャーとパンティのセットに着替えた。そのブラの中に偽乳房を滑り込ませる。アンジーは、コルセットのレース紐を締め直すのを手伝ってくれた。最大限まで締めつけ、僕の身体から呼気を絞り取った。彼女は、ストッキングを濃い肌色のから漆黒のものに変えるよう指示した。
今年の初めだった。エレが僕のところに来たんだが、いつもより綺麗でチャーミングに見えた。何か欲しいものがあるのだろう。僕の短い人生ではあるが学んだことがあって、それは女性というものは、綺麗でチャーミングに見える時は、何か欲しいものがあることが多いということだ。 エレはいきなり本題に入った。「パパ? 私に1万ドル使わせて? お願い、お願い、お願い。いいでしょ、パパ、ねえ、いいでしょ?」 まあ、たいていの5歳児の親だったら、こういう要求は断るものだろう。5歳の僕だったら、何百ドル分かお菓子とマンガ本を買った後は、どうやってお金を使うかアイデアに窮しただろうと思う。 でも、エレの場合は僕とは違う優先事項があるかもしれない。というわけで僕は、「1万ドル、何に必要なの?」 と訊いた。 「もちろん、市場に使うのよ」 「でも、エレはもう150万ドル自由に使えるお金があるじゃないか。どうしてもっと欲しいの?」 「でもね、パパ。パパはあのお金、安全に使えって言ったでしょ? 賭けはするなって。だから、まだ儲けがあんなに少ないのよ。もっと利益が出るかもしれないけど、ちょっとだけ確実じゃないベンチャーを試してみたいのよ。ちょっとだけ。いいでしょう、パパ? ねえ、お願い」 「エレ? ギャンブルするつもりなのかい?」 エレはニヤリと笑って言った。「それは俺の流儀じゃねえ」 エレはW.C.フィールズ( 参考)のファンだ。エレがエミーに「あっち行け、ガキ。邪魔だ」 と言うのを何度も聞いたことがある。 もちろん僕はエレにお金をあげた。エレは、一応、僕に頼んだけど、それはただの形式的儀礼にすぎないと知っている。というのも僕は世界一ちょろい標的だから。でも、普通なら僕も5歳児に1万ドルあげるのは気が進まないかもしれないが、自分の愛娘が株式市場で100万ドル以上稼いだとしたら、その娘の言うことを真剣に考えるものじゃないかなと。 そういう形式的儀礼は、エミーの場合はまったく気にせず、無視するのが普通だ。エミーの場合、何かしたいと思ったら、勝手にやる。で、気が向いたら、後になってから僕に言うのだ。 先日、エレに彼女自身のポートフォリオ(個人所有の各種有価証券)はどのくらいになっているかと訊いた。すると1500万ドル以上で、さらにまだまだ増えているとのこと。確かに、僕もそんな情報を聞いたら卒倒してしまいそうになる時代もあったのは事実だ。だが、僕たちはすでに1600万ドル以上持っている。それもエレが株式市場で稼いだ金だけで(エレはポートフォリオを二つ分けて記録している。家族用の財産と彼女の「賭け」用の財産とのふたつだ)。 僕はディ・ディとドニーに、このお金のビジネス面での末端部分をきちんと処理するようにさせた。僕にはうちのEガールたちのことはよく分かってるので、国税庁が関わってきたら、途端にお金は雲散霧消してしまう気がするのだ。娘たちは、信頼を置いてない政府に、自分たちが稼いだお金への税金を払うなんて妥当じゃないと思っている。少なくともその点では、娘たちは保守派だ。娘たちは、政府は私たちの1500万ドルに口出しなんかする必要ないのにと言い張っている。 「でも、書類で追跡されるはずだよ、エレ。電子的に追跡される。分かるだろ?」 エレは僕をこの地球で一番惨めな敗残者を見るような目で見た。 「パパ? そんな、ホモ・サピエンスすぎるようなこと言わないで。もちろん追跡はあるだろうけど、私たちにたどり着けるとは限らないわ」 僕の感覚はというと、僕たち家族が突然、大金を手にしたら、最終的には誰かが、どこからその金を得たのか訊きに来るだろうということ。だから、僕たちはいくらか所得税を払った。そんなのは気にならない。もう金持ちなのは確かだから。税金を払ったら、ちょっとは金持ちの度合いが減るだろう。しかし、無限から無限以外の数を引いても、やっぱり残りは無限なのである。この方程式は、この忌々しいアメリカという国の富裕者たちの大半がまだ理解していない方程式だ。連中は、どうして、まだそれっぽっちの税金も払おうとしないのか? というわけで僕たちはエレの獲得金のほんのわずかを使って、僕たちと世界との間に壁を築こうとしていた。壁を築くのを考えるとかなり悲しくなる。僕たちは無害なのに、外敵に弱いなんて。 まあ、正確に言って、僕たちは無害と言うわけではない。それに外敵に弱いと言うのも正確には間違いだ。よくよく考えてみれば、僕たちは危険であり、かなり難攻不落であるというのが実情だ。司法長官は、本気で介入する気なら、ナパーム弾を持ってきた方がよいだろう。 政府は、自分がどんなミミズが詰まった缶を開けてしまったか分かっていない。司法長官は、眠っていた犬を起こすべきではなかった。僕たちからは彼に何もしなかったのに。でもさしあたり、僕は司法長官に半年猶予を与えることにした。その後、エマが彼を個人的に呼び出すようなことをするだろう。 エマには、先に進んで、もし望むなら、この腐った政府をひっくり返していいよと伝えた。次の政府には、もし生き残りたいなら僕たちに協力した方が良いと教えることにする。もし連中がそれに同意したら、我々は皆、平和に調和して共存していくだろう。それが僕の描くストーリーであり、僕はそれに固執している。
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