翌朝、レオは一番セクシーと思った服を着た。ズボンは肌にぴっちりで、お尻を心地よく包んでくれるものを選んだ。彼はパンティも履かなかった。ジャケットは腰のところを太いベルトで結んだ。これだと、腰のあたりの曲線を強調できる。シャツもボタンを外し、肌が少し見えるようにした。そして仕上げはヒール高8センチのハイヒールだった(この1週間ほど、ハイヒールを履いて歩く練習をしていたのである)。その姿でレオは会社に向かった。
午前の勤務時間が半分ほど過ぎたころ、レオは上司に呼び出された。
レオは上司にこう言われた。「レオ、この1ヵ月ほどの君の逸脱行動の理由から、君と我が社は袂を分かつのが最善であると決定したよ」
レオはビックリした。「逸脱行動?」
「君、自分の服装を見てみたまえ。転換とか言うのか? 君がその転換とやらをしているのかどうか分からんが、そんなことは大きな問題ではない。問題は、最近、君はかなり仕事をさぼってきてるのだよ」
レオはうつむいた。確かに女性っぽい服装をしてるのは認めるけど、でも、これは自分に似合ってると思うから…。
「でも…」
「でもはなしだ。君はクビだよ」
「何かありませんか?」 レオは聞いた。そしてあるアイデアがひらめいた。「別の仕事はどうでしょう? 何か一時的な仕事で。私がまだ会社の役に立てると証明したいんです」
レオは藁にもすがる思いだった。仕事は必要だ。
「あるとしたら、下級のオフィス・ガールの仕事くらいだが。まあ、あれは…」
「やります!」 とレオは言った。
「だが…あれは、あまり給料が良くないぞ。だが、君がしたいと言うなら…」
レオは笑顔になって立ちあがった。そして上司のところに近寄り、何も考えずに、優しくちょっと抱きついた。「決して、がっかりさせません」
「うむ…、まあ、そうなら…。ではミセス・スペンサーのところに行きなさい。彼女が君に仕事を与えるだろう。明日から始めてよろしい」
「はい、かしこまりました!」 とレオは挨拶し、上司の部屋を出ようとした。
「ああ、レオ?」 と上司は声をかけた。レオは振り向いた。「今日の君は素敵だよ」
オフィスに戻ったレオは自分の荷物をまとめた(彼はそもそも荷物が少ない)。そして帰宅し、金銭の計算をした。新しい仕事での給与では、借金を払えないことに気がつく。
この問題をどうしようか、彼は徹夜してでも考えようと思った。だが、この夜も彼はディルド遊びをし、そして眠りについたのだった。
*
翌日、ミセス・スペンサーがレオに説明した。「ここで働く女の子たちは、みなスカートを履きます。だからあなたもスカートを買いなさい。短ければ短いほどいいわね。会社からはそう要求されてるわけじゃないけど、男性社員はみな可愛い脚を見るのが好きだし、私たちの仕事は、彼らを幸せにすることだから」
「でも…」
「でもはなし! ここの仕事も悪くはないわよ。タイピングと電話の受け答え。あと、フィリップスさんの言うことは、基本的にどんなことでもすること。フィリップスさんがあなたの上司。だいたいそんなところね。たいした能力は必要ないわ」
レオは頷き、デスクに座った。小さなデスクだった。誰かが置いていったらしいマグカップがあった。新しい上司がピンク色のカップにしろと言ったらしい。
ミセス・スペンサーが振り返って、付け加えた。「あっ、それから。もうちょっとお化粧をして、その髪を何とかしなさいね。あなたは可愛いけど、それだけ。もうちょっと努力する必要があるわ」
「はい、分かりました」 とレオは答えた。
その日、レオは、こんなに働いたことは、ここ数年なかったなあと思った。フィリップスさんは、彼に無数の仕事のリストを用意しているように思われた。でも、彼はハンサムな人だったのがレオには幸いだった。チョコレート色の肌をして、背が高く、逞しい身体をしていた。
雑用をしながら、レオは家計のことを心配した。大学時代、彼はウェイターのアルバイトをしたことがあった。ちょっとお金を稼ぐためにアルバイトをしてみようかとレオは考えた。
*
スタジオに入り、カウンターに行った。そこには可愛い女性がいて、退屈そうな顔をしながら雑誌をめくっていた。ブロンドの巻き毛の髪。胸は小さいが張りがあってツンと上を向いている。俺が近づくと顔を上げて、にっこり笑った。その笑顔がまた良い。眩しい笑顔だ。
「ハーイ! いらっしゃいませ」
俺も頬笑みを返した。淡い青色の目をしているが、ずいぶん大きい目をしてる。
「ハーイ! ダンスのレッスンをしたいなと思って来たの。これまでダンスを習ったことないんだけど」
「大丈夫ですよ。当店では、ほとんど毎日、夜間にビギナー用のクラスがありますから。昼間のクラスは大半、小中学生向けですけどね。どのようなダンスをお考えですか?」
「よく分からないんです。何か面白いダンスがいいかな? ここには引っ越してきたばかりで、ダンス教室に通ったら、運動をできるのに加えて、新しい友だちができるかもしれないと思ってるの」
「そうですねえ。じゃあ、こうしましよう。これから私がクラスをご案内して、お見せいたしますね。セント・メアリー校の女子生徒さんたちのクラスをお見せします。そうすれば、どんな感じか分かっていただけるかと。それに別の種類のクラスについてもご説明しますね。お昼休みで生徒さん達がいっぱい来るまで、まだ2時間ほどありますから。言い忘れていましたが、私はローラです」
「ありがとう。私はアナスタシアです」 と俺はにっこり笑って自己紹介し、背が高くしなやかそうな身体の彼女の後に続いて廊下を進んだ。もっとも俺の目は、ヨガのパンツに包まれた彼女のお尻に釘付けではあったが。
*****
「そして、最後がここ。ポール・ダンス(
参考)の部屋です。このクラスのインストラクタは私なんです。よろしかったら、上級クラスのダンス・レッスンをお見せしましょうか?」
「うん、ええ、格好よさそうね」と俺は返事した。
すでにローラは俺に施設の大半を案内してくれていて、サンバ、タンゴの基礎もして見せてくれていた。それに「ブラック・スワン」のことを話題に出したら、バレエまでもして見せた。
ローラは人を気安い気持ちにさせる雰囲気があり、俺もずいぶん馴染んで居心地がよくなっていて、ふたりは急速に仲良くなっていた。ローラは俺のことを女だと思っているので、俺はそれなりの話し方で彼女と会話していたが、そんな話し方は、あの触手怪物に襲われる前だったら、あり得なかっただろう。ともあれ、ローラにはとても惹かれるところがあった。表面的にはとても純真で人懐っこい感じなのだが、その奥には何か激しいものが隠されているように俺には思えた。
「その椅子に座って見てて」 とローラは、ポールの1メートルくらい前にある椅子を指差し、それから音楽をかけて、ダンスを始めた。そのダンスに俺は目を奪われた。
ポールにつかまりながら、実に流れるように身体が動く。ひとつひとつ美しくポーズを決めては、ポールの周りを回転し、そして床に降り立った。俺のためだけに、その女性の肉体美をもっとも効果的に見せてくれた!
そんな俺の表情に彼女も気づいたのか、ちょっと悪戯っぽくはにかみながら、自信ありげに俺のほうへゆっくり近寄ってきた。そして俺の両肩に手を乗せ、俺の脚にまたがり、腰を震わせるようにして、乗っかってきたのだった。気づけば、彼女の尻頬が俺の勃起を擦ってるではないか。それまで忘れていたのだが、俺はすでに極度に興奮して、激しく勃起していたのだった。俺の秘密を知ったら、ローラはどんな反応をするだろう? 内心怖かった。
ローラは淫らっぽい笑みを浮かべていたのだが、それがみるみる驚きの顔に変わり、そして、信じられないといった顔に変わった。
彼女はサッと身体を引き、大きなテントを張っている俺の股間に目を落とした。そして、ますます目を大きくした。
「ええっ?! な、なんてこと! あなたは……。それ、ものすごく大きい! 私、そういうつもりじゃないの…。何と言うか…。ごめんなさい、アナスタシア。あなたを変人扱いするつもりはないのよ」
「いや、いいんだ。僕だって、予想してない時にこんなモノが突っついてきたら、変人扱いするだろうから」
「でも、あなたを興奮させようとしてたのはほんと。ただ、こんな大きな結果が出てくるなんて予想したなかっただけ」 とローラは笑顔になり、恥ずかしそうにうつむいた。そして、躊躇いがちに、言った。
「あの…、それ、見せてくれる?」
「うん、いいよ」 と俺は椅子から立ち上がった。そしてスカートの中に手を入れ、トランクスの端を掴み、引き下ろした。勃起がすごいので腰を振りながら引っぱらないと、突っかかってしまい、なかなか脱げない。ようやくトランクスが足元に落ち、俺は顔を上げた。ローラの目は俺の股間に釘付けだった。俺はスカートの裾をつまみ、「じゃじゃーん!」 と言いながら、捲り上げた。
ローラは、俺の大げさな行為にくすくす笑っていたが、すぐにその顔が畏敬の表情に変わった。