「デス・バイ・ファッキング」 第7章 次の世代 Death By Fucking by thebullet Chapter 7: The Next Generation
これまでのあらすじ
若きアンドリューはコンサルタント会社から派遣されるディアドラ(ディ・ディ)と仕事をすることになっていた。二人は握手をしたが、そのとたん彼は激しい性欲を覚える。ほとんど化学反応と言ってよい反応だった。そしてそれはディ・ディも同じだった。その4日後、二人は身体を重ねた。ディ・ディは妹のドニーに会ってほしいという。アンドリューはドニーともセックスをしてしまう。ディ・ディとドニーは双子だった。彼女たちの家系は双子の娘しか生まれないらしい。3人で夕食を取った後、ディ・ディはホテルに戻り、アンドリューはドニーを連れてアパートに帰り、そこで二人は愛し合った。ドニーは、自分たちにはまだ秘密があるという。
ディ・ディの話しドニーはアンドリューと一夜を過ごした。そうすると分かっていた。私自身が設定したんだから。私自身がこれにどう反応するか、我ながら興味深い。
ドニーと私は、これ以上ないって言うほど仲が良い。自分を愛するのと同じように彼女のことを愛している。でも、そんな私たちが同じ男性を共有するということが本当に可能なの? それにアンドリューはどうだろう? 一人の男に、二人の女を平等に愛するように求めるのは、求め過ぎなのでは?
でも、それができるとしたら、アンドリューしかいない。彼の情熱は海のように限りを知らず、彼の愛は海のように深い。彼は若々しくてロマンティックなロミオ。愛せるのは彼だけ。ドニーも私も、欲しい男は彼だけ。
アンドリューのことを魂の底から愛している。彼に私のところにいてほしい。でも、なぜかドニーには嫉妬心を感じない。少なくとも、そんなには感じない。双子姉妹の間の小さなライバル心はあるけれど、そのためにかえって、私たち二人の愛する気持ちが高められる。私とドニーは、彼への愛情を証明しようと張り合うことになるだろう。でも、それによって出てくる恩恵は、すべて私とドニーに返ってくるのだ。
そういった側面のことについては、すでにドニーと話しあっていた。私たちはどんなことでも話しあう。今は、私たちの人生で最も重要な時だ。ドニーとのコミュニケーションの回線はいつも開けっ放しにしておく必要がある。
私もドニーもアンドリューを馬鹿にしない。偽の約束や嘘で彼を誘惑しない。愛の名の元でなら誘惑する。毎晩、彼を誘惑する。毎日が前戯になる。彼は私たちに飽きることはない。それは彼も言っていた。でも彼は、まだ話しの半分しか知らない。
私とドニーはアンドリューの人生を際限ないほど波乱に満ちたものにするだろう。彼は私たちに飽きることはないだろうけど、それは私たちがそれを許さないから。彼が欲してるものは知っているし、私たちはそれを彼に与える。今、彼は私たちを必要としているが、彼は永遠に私たちを必要とするだろう。
でも、さしあたって今は、現実の問題に直面しなければならない。アンドリューは私たちと同族なのかという問題。私たちにはもう一人いるの? ドニーは確信しているけれど、私は、これまでずっと懐疑的だった。ドニーはアンドリューにそれについて話したがっているけれど、私はそんなに自信が持てない。
アンドリューは、この話しをちょっと変だと思うかもしれない。私たちだって変だと思ってるのだから。それに彼は、昨夜、何度か私たちのことを「変すぎる」と言っていた。後で彼は言わなくなったけど。彼は私たちを「変すぎる」と言って私たちの気持ちを傷つけたと心配したのだろう。確かに私たちは変だ。でも、変すぎる? そこまでとは私は思っていない。それに彼は私たちが変なのを喜んでいると思う。
アンドリューは、『プレーボーイ』風の可愛いバニーちゃんには慣れっこになっているのだ。胸は大きいけど脳味噌が少ない若い娘たち。望みと言えば、AWC社のハンサムで若い重役である彼と一緒になることだけ。でも彼はそんな女の子に飽きている。私には分かる。火曜日に、セクシーで可愛いけど何も考えていないような生き物が、ほとんどすがりつくような勢いで彼の隣に座ったのを見た。でも、アンドリューは彼女の存在をほとんど意に介していなかった。
彼には頭脳がある、私たちのアンドリューには。彼は自分が思っているよりはるかに賢い。ドニーや私の方が知的に優れていると彼は思っているけど、それは彼の不安感が言わせていること。私が知ってるなかでいちばん賢い男だと思う。それにいちばん気がきく男。それにいちばん情熱的な男。
アンドリュー・アドキンズ。情熱と思いやりという奇妙な取り合わせの男。坊やたちが多数を占めるこの世界で、坊やたちの中で一人光る本当の男。でも、それこそが私たちの話しの重要点でもある。私たちがうまくいけば、世界はそういう男たちが住むところとなるのだ。
イサベラは、小部屋の中央に全裸で立っていた。恥ずかしさに、モスグリーンの瞳を伏せている。それゆえ、柔らかな朝の光が彼女の乳色の肌を照らし、美しく輝かせていることには気づいていない。
イサベラの父は、暖炉に背を預け、ゆったりとパイプを吸いながら、メイドに手伝われて彼が選んだガウンに着替えるイサベラを見ていた。そのガウンは、薄緑色のファイユ生地(
参考)でできており、光を受けてキラキラ輝く小さな緑や青のガラス玉が散りばめられていた。それは高級感あふれる仕立てであり、繊細な下着類とマッチしたものである。
下着類を身にまとうところから父は見ていた。イサベラは、そんな女性の大切な部分を隠すところまでも父親に見られているのを思い、肌を染めるのだった。
ベッドの柱につかまり、身体を支え、足元にひざまずくメイドに足先からくるぶしへとストッキングを巻き上げさせる。その間も父の視線を感じ、どうしても目を上げることができない。
イサベラは、ここに滞在することはできないと思っていた。父の自分に対する愛情は普通ではない。父は、マリイに鞭打たれた傷が癒えしだい私を自分のベッドに引き連れようと待っているにすぎないと知っていた。
彼女は、いまだに、あの時の記憶が不確かだった。レオンの城の外、野原でレオンと一緒にいた時、父の手下たちに襲われたが、そのとき何が起きたのか。ここ城内での噂話も断片的で曖昧とした話ししかなかった。
どうやら、レオンの手下たちが狩りから帰るとき、少人数の兵士たちが野営しているところに出くわしたらしい。数の点では、レオンの兵士の方が圧倒的に勝っていた。それにもかかわらず、その兵士たちは攻撃してこようとした。それを見て、レオンの手下たちは、もしかして、この兵士たちがレオンを殺してしまったのかもしれないと考えたらしい。だが、その後、敵味方の間で何らかの話し合いが行われ、兵士たちは別れた。しかし、父は、兵士どもがレオンを連れずに戻ったのを知り、怒り、兵士たちに死を命じたらしい。
イサベラは、父がパイプを深々と吸い、煙を吐き出すのを見ながら、嫌悪感に背筋を震わせた。茶色の狡猾そうな目で舐めまわすように自分の身体を見ている。メイドがガーターをつけるときも、イサベラのクリーム色の滑らかな太ももの間に茂る、薄い赤毛に何度も繰り返し視線を向けていた。
この朝はイサベラは警戒を怠らなかった。父のパイプから出てくる煙と同じように、父の回りに漂う、あの偽善的な穏やかさを信じることはできない。どんな思惑を持っているのか、知れたものではないから。
「お父上、今日はご機嫌のようですね」
イサベラは、父にレオンの子を身ごもっていることを知られて以来、いつも恐怖に付きまとわれている気持ちだった。マリイにとってはただの遊びだったのだろうが、あの残虐な行為をされた後、私は、何かを呟き、意識を失ってしまった。その時の言葉は覚えていない。だが、のちに意識が戻った後、父は怒りを込めて私に言ったのだ。私がすでにひどく仕置きされていなかったなら、自分みずから、子供を身ごもるなどというお前の愚かさを責めて、懲らしめるところだ、と。
そのようなことがあったので、かえって今の父の穏やかさは、イサベラにとっては恐ろしかった。
メイドがイサベラに鯨骨コルセット(
参考)を着せ、胴体を締め付けた。このコルセットは、背中の傷に触らぬように背中が大きく開いているものだった。その時になってようやくイサベラの父は口を開いた。
「うむ、上機嫌だ。それというのも、お前の苦境を知った時に、わしが発した怒りの言葉がドゥ・アンジェの耳にも届いたそうだからな… わしには通商人という仮の姿で国じゅうを旅させ、噂を広めさせている者が何人もおるのだよ」
「というと、どういうこと…?」 イサベラは恥ずかしそうに両手で乳房を隠しながら、幾重にも重なるペチコートへ脚を踏みいれた。
「分からんかな? わしは、ドゥ・アンジェをもはや探し回らなくてもよいと分かったのだよ。あいつは、自分からわしのところに来るだろう」
「そ、それは… 私を餌につかうということですか?」
イサベラは驚いた口調で尋ねた。ガウンが頭の上から被されたのを受け、両腕を上げ、袖を通す。
「…でも、レオンはこの子の存在を知ったとしても、子自体は求めないはずです。レオンの目的は、最初から最後まで、父上への復讐手段として私に子を孕ませて、父上のもとへ送り返すということだったのですから。…ただ、私は子ができたことを彼に言わなかっただけで…」
「イサベラ… お前は自分の魅力に自信を持つべきだな」と彼はドアへ向かいながら言った。「…お前の柔らかな太ももの間に入るためなら人殺しも辞さない男は少なくないのだぞ」
殺しを聞いてイサベラは恐怖に目を固く閉じた。不思議そうに見上げるメイドと視線を合わせることができなかった。
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