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浮浪者 (11) 


僕はこれは軽率すぎる計画であると思ったし、家に着くなりすぐに、そう思うとブリイに伝えた。家では引っ越し業者が嵐のように仕事をしていて、山ほどの荷物を家に運び、いろいろな部屋へと運び込んでいた。驚いたことに、マギーとストークリイのそれぞれの部屋に、次から次へと女物の服が持ち込まれ、山と積まれていく。

マギーが通り過ぎたので、「君たちのこの持ち物、どこから?」と訊いてみた。すると彼女は、「ブリイはあたしたちを何度もショッピングに連れて行ってくれたの」と言って、さっさと部屋の中に消えてしまった。

その会話を聞いたのか、ブリイが僕の部屋から顔だけを出した。「ああ、マック。あなた、何も片付けていなかったの? 結婚した時にあなたが持っていたモノが、いまだにあるなんて。全部、捨てるわね! 箪笥とクローゼットのスペースが必要なのよ」

僕はあわてて駆けて、高校時代のレタージャケット(参考)をゴミの山から回収した。

「やめてくれ、ブリアナ! これは捨ててはいけない物なんだよ! いらない物なら、とっくの昔に捨ててるんだ! まったく! ここは僕の家だ。もし、やめないなら、そのガリガリのケツ(参考)を蹴っ飛ばして追い出すぞ!」

すると彼女は顔を突き出して僕を睨み付けた。「ガリガリのケツですって? ふん!」

そう言って僕のジャケットの袖をつかみ、ぐいぐいと寝室へ僕を引っ張っていった。まさに台風が直撃したような勢いだった。1回の動きで、ドアに鍵をかけ、ドレスを頭から脱ぎ、ベッドに両手をついてお尻を突き出したのだ。僕は息が詰まってしまった。彼女はパンティを履いていなかったから!

彼女のお尻は決してガリガリなんかではない。小ぶりだが引き締まっていて、しかも鍛え抜かれた筋肉質のお尻だ! ブリイはそのお尻を僕に向かって振って見せた。

「ヤッテよ、マック!」 肩越しに振り返って僕を見ている。瞳がギラギラしていた。「こんなにエッチな気分になったことないわ。あなたの大きなおちんちん、入れてくれなきゃ死んじゃう。早く! 話し合いは、その後でいいんじゃない?」

「君のずる賢い計画に僕を乗せようとしてるんだね。僕をセックスに夢中にさせて、家のことも、僕の生活がぐちゃぐちゃにされることも忘れさせようとしてるんだ」

「ええ、そうよ。だから、今すぐヤッテ! ヤッテください、お願いですって、あたしに懇願させるつもりなの?」

残念ながら、彼女の狡猾な計画は成功してしまったと言わざるを得ない。彼女にとって僕が用済みになったころには、僕は生まれたての子猫のように何もできなくなっていた。彼女は、すぐには僕を立たせることができないと分かるとすぐに、立ち上がり、服を元に戻した。

「ビタミン剤を飲んでおくといいわよ。まだまだ、することがたくさんあるから。まだ終わっていないから」と言ってドアから出ていってしまった。

家の中が、ともかくも秩序だったと言えるようになったときには、午前3時になっていた。僕が疲れ切って使い物にならないとブリイが諦めたときには、4時半になろうとしていた。翌朝、僕は10時まで寝ていた。よろけながらシャワーに入り、ひげをそり、シャワーを浴びて、ようやく人間に戻ったような気分になれた。ブリイはまだ寝ていた。ベッドにうつぶせになっていて、炎の色の髪の毛が彼女の顔にかかっていた。そして、彼女のお尻! いつ見ても、見事なお尻だ! 寝室を出てリビングに行くと、グラニーが僕の一番上等なシャツの山に眠っていて、涎れだらけにしていた。


[2020/08/12] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Wイェックス:妊娠 (10)  


僕が妻を引き連れる形で寝室に入ったものの、彼女は僕が振り返ることを許さなかった。僕に前を向かせたまま、後ろに体を押し付けたままでいた。彼女の両手が伸びてきて、再び、胸を掴まれた。お尻に彼女の勃起が当たるのを感じる。カレンは、僕に後ろから覆いかぶさるような格好になって、首筋にキスを始めた。僕の背中に自分の乳房を押し付けてくる。

「うんーん、あなた……もし……ああ、楽しみたくない? だったら、あたしたち、服を脱がなくちゃ!」

胸もお尻も首筋も。こんなふうに同時にいろんな部分を攻められると、頭の中、理性的であり続けるのがとても難しくなる。

後ろ向きになろうとしたが、カレンはそれを許さなかった。僕は以前とは異なり、もはや、彼女の押さえ込みを振りほどけるほどの筋力がないのだった。

「こんなに、体が小さく、力も弱くなるなんて。あまり嬉しい気持じゃないよ」と僕は不平を漏らした。

カレンは腰を動かし始めた。ペニスを僕のお尻に擦りつけている。「ごめんね……でも、これまであなたの方がずっと大きくて強かったでしょう? 今はあたしの方が強くなってる。それが、ちょっと楽しんでいたい気持ちなの。ねえ、このままさせて? ちょっとだけでいいから?」

僕はため息をついた。抵抗しても無駄だと観念してのため息ではあったけど、快感からのため息でもあった。服の生地の上からとは言え、妻の切羽詰まった手つきで乳房を荒々しく揉まれながら、ペニスでお尻を突かれる感覚は、思いがけず気持ちいい。

「うーん……いいよ。でも、僕が女性の手管を習得した途端、君は困ることになると思うよ」

僕は首を傾け、もっと首筋にキスをしやすいようにしてあげた。同時に胸を揉む彼女の両手に、僕も両手を重ねた。彼女に体をゆだねる格好になる。

カレンは僕の胸から片方の手を離し、腰の後ろ、僕のドレスのウエスト部分を引き締めている結び目へと移動した。そして紐を引っ張って結び目を解く。ドレスが緩くなると、手繰るようにしてめくりあげ、最後には、僕の頭から引っ張り剥がし、脱がされた。

カレンは僕の両肩を掴んで、前を向かせた。いきなりキスをし、淫らに口の中に舌を入れてきた。僕も彼女の尻頬に両手を伸ばし、ぎゅっと握った。同時に彼女の体を自分に引き寄せ、いっそう、ふたりの体を密着させた。

彼女は巧みに僕のブラのホックを外し、ふたりの脇に放り投げた。せっかく彼女が気に入ってくれるかもしれないと思って選んだ黒いレースのブラ。だけれど、彼女はほとんど気に留めなかった! カレンは僕の胸を露わにした後、いったん引きさがって僕の姿を見た。興奮した様子で一瞬、僕に微笑んだ。すると、いきなり僕の前にひざまずき、片方の乳首に吸いついたのだった。

僕は男だった時は、乳首をいじられるのを喜んだことは一度もなかった。でも、今はすべてが違っていた。ものすごく感じる。あまりに気持ちいいので、知らぬうちに、メロンサイズの乳房を丸々彼女の飢えた口に押し込むとせんばかりに、彼女の後頭部を両手で押さえつけていた。

彼女は、僕の胸を吸いながら、片手を僕のパンティの中に滑り込ませた。そして僕は、クリトリスを擦られるとどんなふうになるのか、生まれて初めて感じることができたのだった。両ひざががくがく震えていた。

僕が立っていられなくなったのに気づいたのか、妻は嫌々ながらも仕方なく僕の胸から口を離した。でも、股間のあのボタンへのゆっくりと円を描くような指の動きは止めてくれなかった。

「すごく濡れてるみたいね、アンバー」

僕は息が乱れていた。「君もすごく固くなってるよ! 僕がそれを何とかしてあげなくちゃいけないと思うんだ。さもないと、君は、本番になってもあっという間に終わってしまうと思う」

カレンはちょっと考えた後、頷いた。「それもその通りね。ちょっと休ませて」

彼女は僕の脚の間から手を引っ込めた。ヌルヌルになった指。それを自分の口に持っていき、ちょっと舐めて、ぬめりを取った後、引きちぎるようにして自分の服を脱ぎ始めた。切羽詰まってるように、あわてて脱いでいる。完璧な状況なら、僕たちはもっとロマンティックに互いの服を脱がしあったと思うけれど、カレンの体内にある短期版のWイェックスに含まれているものが何であれ、それによって彼女は極度な性的興奮状態にあるのだった。ゆっくり行いたいといった気持ちは彼女の中には存在していない。

僕も、濡れたパンティを脱いでベッドに座った。いわば最前列の席に座って、妻の新しい持ち物を鑑賞する構えだ。

とうとう、それが姿を現した。巨大だった。自分自身の体が小さくなっているので、長さを推定する能力はあてにならなくなっていたけれども、それは少なくとも17センチ、いや20センチ近くあったし、相応の太さで、彼女のつるつるの恥丘から突っ立っていた。しかも、亀頭が驚くほど丸々と太っていて、カリも高い。先端部からプレカムが1滴、今にも落ちそうに糸を引いて垂れていた。

まさに美形と言って良かった。気づいたら、僕はそれを見つめながら、口の中を涎れでいっぱいにしていた。そのまま視線を上に向け、妻の目を見た。彼女は両手を腰にあてて、自慢げに微笑みながら僕を見下ろしていた。あそこの筋肉を収縮させたのだろう。ペニスがピクン、ピクンと跳ねた。


[2020/08/10] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

浮浪者 (10) 

マギーを抱っこしながらちょっと後ろを見て、あることに気づいた。

「バンが1台、僕たちをつけているよ」

「ええ、あたしたちのスタッフが乗っているの」とブリイが答えた。

僕は怪訝そうに片眉を上げた。

「ええ、分かってるわ。あたしがいろんなことを当然とみなして進めてるってことはね」と彼女はにんまりした。「マギー、ストークリイ? マックがイエスって言ったわよ。あたしたち、また夫婦になって、あなたたちの親になるのよ」

ふたりは息をのみ、そして絶叫した。「ほんと、マック?」とマギーが言った。「ブリイは本当に嫌な女じゃなかった。マックの言う通りだったよ。あたしたちブリイが大好き。とても優しくしてくれてるし。たくさん新しい服を買ってもらったんだ。それに、この素敵な学校にも入れてくれたんだよ! あたしたち、ふたりにとってものすごく自慢できる子になって見せるからね! 絶対がっかりさせないって約束するわ」

「あなたならそうなるって、あたしもマックも分かってるわ。気にしなくていいのよ」とブリイが言った。

僕はちょっとショック状態だった。何か言おうとしたが、何も言葉が出てこなかった。

「マック、大丈夫?」とストークリイが訊いてきた。

ブリイがアハハと笑った。「大丈夫じゃないわね。彼、完全にパニック状態になるはず。彼がこれまで注意深く秩序づけてきた世界が、どんどん崩されていくんだから。今の彼の家は、何もかもピカピカで、何もかも正しい場所に整理されている。でも、これからは、シャワーには女の子のパンティがぶら下がることになるし、持っている本は勝手に動かされるし、コーヒーテーブルには飲み干したペットボトルが放置されるでしょうね。彼はカンカンになると。正直言って、彼がどうやってグランビルと仲良く暮らせているのか分からないの。あたしたち、マックがカウンターにパンくずが散らかっていても気にしなくなるよう、彼のことを愛してあげなくちゃダメみたいよ。あたしたち、それできるかしら?」

「あたしはできるよ」とマギーが笑った。「あたしたち、となると、分からないけど」

「あ、彼は可愛い女の子には目がないの」とブリイはふたりを安心させた。「あなたたちは、彼に向けて、愛らしく瞬きして見せるだけでいいわ。そうすれば、彼、とろとろに蕩けちゃうから。でも、あたしには怒りをぶつけてくるかも。そうなると、あたしも彼に腹を立ててしまうの。あなたたちふたりは、そういうことになっても、あたしとマックのことを愛さなくちゃいけないのよ。大丈夫?」

僕は唸り声をあげた。

「いいかな。僕は実際にはこの件について何も同意していないんだよ。ブリイは、いつもの通り、台風のようにコトを進めていて、僕たち皆を巻き添えにしているんだ」

「マックはブリイのことを愛している?」とストークリイが訊いた。

「愛しているよ。彼女が町の向こう側に住んでる限りは」 僕は何とか分かってもらおうとした。

「ええ、でも、あたしたちみんな、一緒になるためには、一緒でいる必要があるの」とマギーが言った。

その可笑しな言葉に、皆が一斉に噴き出したし、僕も笑わずにはいられなかった。その考えは馬鹿げていた。僕はどうして、こんなふうにコントロールを失ってしまったのだろう。いつもの通りだけど、ブリアナは支配権を握ってしまった。みなしごになっていた女の子たちを助けてあげようとちょっと力を貸したつもりが、あれよあれよという間に、元妻との再婚と養子縁組の話しへとつながってしまった。あんなに小さなことだったのに、気づかぬ間に人生のレールが自分の関わっていないところで大きく変わってしまっている!


[2020/08/09] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Wイェックス:妊娠 (9) 


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僕は家にいて、腰を下ろし、新しい免許証を何度もひっくり返して見比べていた。一方の面には昔の自分が出ている。タイラー・レジナルド・ジョンソン。29歳。178センチ。84キロ。ブロンド髪。瞳は青。もう一方の面には、新しい自分。アンバー・メアリ・ジョンソン。29歳。178センチ。84キロ。ブロンド髪。瞳は青。いまだ、現実とは思えない。

再び、胸の位置を整えた。どう見てもトリプルD(参考)よりも大きいのだけど、いま身に着けているブラはそのサイズだ。購入したサマードレス(参考)はローカット(参考)で、胸の谷間がかなり見える。そして、僕は、胸の肌をこんなに露出させることにいまだ慣れきっていない状態だった。

ただ、露出したデザインの方が涼しいのは確かだった。これまで一度も考えたことがなかったのだけど、乳房の皮膚部分を寄せ付けていると、かなりの熱が発せられるのだった。実際に乳房を持つまで、知らなかった。

ほんの些細なことでも、あらゆることが慣れるのに時間がかかった。化粧をした時の顔面の皮膚感覚から、乳房の重さによりブラのストラップが肩に食い込む感覚、さらに、スカートが腰とお尻を包み込む感じである一方、何と言われてるのか知らないけど、スカートの中、脚の部分は裸でいるような奇妙な感覚に至るまで、いろんなことに慣れる必要があった。

いちばん慣れにくいと感じたのは、体が揺れることだ。自慢してるように思われたくないけれども、男としての僕は剛直な肉体をしていた。週に6日は運動をしていたし、食事にも気を付けていた。だが、今は、体のすべての部分が揺れている。特に乳房とお尻がぶるんぶるんと動く。どんなときにも。

玄関が開いて、カレンが帰ってきた。不透明の黒いプラスチックのバッグを片手に持っている。彼女は僕の姿を見ると、特に僕の露わな胸を見つめて、にんまり笑った。

「あたしの美しい妻がここにいる!」と大げさに言う。

僕は顔が赤くなるのを感じ、うつむいて自分の胸を見た。「おかえりなさい」

彼女に妻と呼ばれて、どう感じたか、自分でもよく分からない。でも……今の自分は確かに彼女の「妻」の存在なのだろうとは思った。

カレンは立ち止まることもせず、まっすぐに僕のところに進んできて、片手を僕のあごにあて、顔を上げさせ、舌を僕の口に入れてきた。両腕で僕の体を包み込むようにして、僕を抱きしめ、ふたりのカラダを密着させた。彼女のお腹のあたり、固いものが膨らんでくるような気がした。

名残惜しくて嫌々だったけれど、僕からキスを解いた。乳首がほとんど痛みを感じるほど固くなっているし、パンティが湿ってくるのを感じた。女の身で性的に興奮するのは、男の身で興奮するのとは大きく違う。それほどの刺激的なキスだったということか?

「カレン?」 僕ははにかみながら、お腹を彼女の股間辺りに擦りつけるように動かした。「何か僕に教えたいことがあるんじゃ?」

カレンはイタズラそうにニヤリとした。「待てなかったの。ポルノショップの駐車場で自分で注入しちゃったわ。今のあたしはものすごくムラムラしてるのよ。こんなになったの初めてだと思う」

「Wイェックスでバイセクシュアルになる」という話しには、どこか真実の部分があるのだろうと思った。と言うのも、彼女の勃起が押し付けられるのを感じ、僕自身、興奮してきていたから……これまで思ったこともない種類のイヤラシい考えが頭に浮かんでくるから。僕は、大胆にも、ズボンの上から彼女の長い勃起を握った。それを受けて彼女はハッと息をのんだ。

自分の乳房やお尻がこんなに大きく感じたり、彼女の新しいペニスがありえないほど太くて長く感じる理由は、一部には、自分の手も体も以前に比べてはるかに小さくなったからだというのは、確実だ。小さくなったので、相対的に大きく感じるのだろう。でも、それにしても、カレンのペニスの太さは恐ろしいほどだった。僕は下唇を噛みながら、優しくそれを撫で続けた。

「ああ、もう我慢できない……」 そう妻はうめき声をあげ、僕の乳房を痛いほど強く揉み始めた。「アンバー、どうしてもあなたをヤラせて。今すぐ、ヤらせて!」

僕は自分の初体験の時のことを思い出した。あっという間に果ててしまった思い出。あの時の優しいあの娘は、素早く「いいのよ」と言って僕をなだめてくれたけれど、あれはとても恥ずかし出来事だった。あのような気持ちをカレンに味わわせたくない。本番の前に、別のことをして彼女の切羽詰まった欲望を鎮めてあげられるかもしれない。というか、正直言って、妻のペニスにフェラをするという状況を想像したら、自分も、居ても立っても居られない気持ちになっていた。僕は、いつまでも僕の乳房を揉み続ける彼女の手を払うようにして、その手を握り、寝室へと彼女を引き連れた。


[2020/08/07] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

浮浪者 (9) 


僕たちのところにつくなりマギーが「早く行こう」と言った。「男があたしたちを付けてくるの。グラニーは、そいつが嫌いみたい。唸り声をあげていた」

歩道の先に目をやった。若い男が近づいてくる。170センチくらいの身長で、タトゥがあり、顔面からは金属物がプチプチと出ている。スキー帽を被り、服はフード付きのパーカーで、スウェット・パンツは今にもずり落ちそうに腰にくっついてる。自ら街のダニとの印象を受けたがっていると言ってよい服装。「リアル・スリム・シェイディ」(参考)の真似をしてるつもりなのだろうけど、みっともない。

「お前、なに見てんだよ?」と男が僕を睨み付けた。

「いや、別に。僕たちは出発しようとしてるだけだよ」

「おめえ、自分はかっこいいと思ってるな。いいジャケットに、きれいな女とデカい車か。カネが余ってるような身振りじゃねえか」

この男は頭が悪い。僕は彼より20センチは背が高いし、多分、20キロは体重が多いだろう。とは言え、僕は別に腹が出ているわけではない。

「僕たちに構わず、通り過ぎた方がいいだろう。僕のイヌはあんたのことを嫌いな様子だし」

男は僕の1メートルあたりまで近寄ってきた。

「しょぼいイヌなんか怖くねえよ。あんた、カネ、いくら持ってるんだ?」

男はコートの中に手を入れ、ズボンの腰へと近づけた。金属製のモノがきらりと光るのが見えた。僕は男の胸の真ん中を蹴った。男は後ろ向きに吹っ飛んだ。男のズボンから銃が落ちた。マギーがグラニーからリードを外すと、グラニーは飛ぶようにして男にのしかかった。男は腕で顔を守るだけの意識はあったようだ。だが、グラニーがその腕の骨を砕く音が響いた。男は叫び声をあげ、グラニーは男の服の袖を引きちぎった。

「グランビル、お座り」と僕は命じた。

グラニーは咥えた袖を落とし、僕の隣に座った。男は苦痛に地面をのたうち回っていた。僕はグラニーと共に、男の隣にひざまずいた。

「グラニー、首を!」

グラニーはすぐに飛び出て、大きな口を開け、上下のあごで男の首を挟んだ。男は身をこわばらせた。

「僕は君をバカ者だと思うが。君は本当にバカ者なのか?」

男は小さく頷いた。恐怖で顔が引きつっている。

「じゃあ、そう言ってみてくれ」

男は反応しなかった。

「グラニー、噛め!」

男は小さい叫び声をあげた。大きな牙が皮膚を貫くのに合わせて血が滴り流れるのが見えた。グラニーの鼻で空気が激しく出入りする音が聞こえる。獣の鼻息だ。

「言うんだ」

「俺はバカ者だよ」

「君はいくらカネを持っている? 僕に出すんだ」

男はポケットに手を入れた。男が動いたと思ったのか、グラニーが噛む力を強めたようだ。男はまたものたうち回った。

「ゆっくりとだよ」

男はポケットから紙幣を丸く巻いた塊を出して、僕に渡した。

「グラニー、離してやれ」

グラニーが名残惜しそうに男の首から離れた。男は慌てた様子で後ずさりした。

「君には60メートル分は先に行かせてやろう。その後、この犬に追いかけさせる。速く走った方がいいかな。僕からのアドバイスだ」

男は短距離走者のように駆けだした。10メートルくらい走ったところで、ズボンが脱げ始め、彼はみっともなく転倒した。しかし、素早く立ち上がり、ズボンを引っ張り上げ、傷んでない方の手で押さえながら走っていった。

「ベルトを買った方がいいな」と僕は声をかけた。

男の姿が見えなくなった後、僕は振り向いた。ブリイとふたりの女の子の3人とも、唖然と口をあんぐりさせ、身をこわばらせながら突っ立っていた。

僕は落ちていた銃を蹴って、排水溝に落とした。「あれ? どうかした?」

最初に元に戻ったのはブリイだった。「マック。あなたって、ちょっかいだしたらヤバいヤツなのね。あなたを怒らせないよう注意しなきゃ」

女の子たちが勢いよく僕に飛びついてきた。僕はふたりを抱きしめた。

「ああ、マック」とストークリイが僕の胸に顔を埋めた。「あたし、あの男は恐ろしい人だと思ってたけど、マックはぶちのめして……いや、やっつけてくれた。ありがとう。あたしたちのためにしてくれたのよね?」

「まあね。僕の娘たちだ。僕は誰にも手を出させない。でも、彼は君たちの学資のためにちょっとだけ寄付してくれたよ」と僕は彼女に紙幣の巻いたものを渡した。ストークリイは紙幣を数え、700ドルあると言った。あの男は他にもゆすりをしてきたに違いない。ストークリイはそのおカネをマギーと山分けした。そして、僕たちは車に乗り込んだ。


[2020/08/07] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Wイェックス:妊娠 (8) 

カレンは後ろから僕に抱き着き、ぎゅっとしてきた。「ビキニは持ってきた? それとスウェットとサンダルも?」

「ああ。でも、どうしてそれがいるのか分かってないんだけど……」

彼女は部屋に持ち込んでいたバックパックを漁り始め、彼女が前夜に買った白いストリング・ビキニ(参考)を取り出した。サイズを調節可能な下着っていうと、ストリング・ビキニが一番近いのよ。変身してからじゃないとどのサイズになるか分からなかったから」

ビキニを身に着け、彼女に手伝ってもらって紐を結んだ。もっと大きなサイズのを持ってくるべきだった。というのも、ビキニのトップの方、三角布の部分が僕の拡大した乳輪を完全には隠せていないのだ。どう見てもポルノっぽい姿だ。

ビキニの上に、病院に来る時に着ていたTシャツを着た。胸のところがキツクて居心地が悪い。それに、裾は腰の先まで行ってるけれど、お尻までは隠しきれていなくて、極端にミニのドレスを着たような感じだった。カレンからスウェットパンツを借りて履いたが、お尻が合わない。仕方なく、自分が履いてきたスウェットを履いて、足裾をまくり上げた。それでも、お尻や太もものところがかなりキツく、その他の部分は、逆にダブダブになってる感じだった。サンダルはちょっと大きかったが、とりあえず、履くのに問題はなかった。

「それで……これからどうすれば?」

「まずは衣類が必要ね。たいていのお店ではあなたに合うブラは売ってないので、プラスサイズのお店でインナーを買うこと。アウターはその後で買うといいわ。あまり買いすぎないように。後で、ショッピングであなたを手伝おうと計画しているから。ヘアとお化粧のために美容室に11時で予約を入れておいたわ。その後で、ちょっと遠出して免許局に行くこと。そして代わりの免許証を取得するといいと思う」

かなり忙しいことになりそうだと思った。「でもどうやって……というか、自分の服のサイズすら分からないんだよ!」 と僕は不平を漏らした。

妻は優しそうな笑顔で僕を見た。「売り子さんたちが助けてくれると思う。大丈夫。で、あたしは帰宅が少し遅れると思うの。仕事が終わったらすぐに、あたし自身もWイェックスの注入を受けるから。夕食にはピザか何かを注文しましょう」

僕は新しい肉体に慣れていなくてふらふらしていた。「分かった。……オーケイ。できると思う」

妻に言うというより自分に言い聞かせる感じだった。

カレンは手短に僕の唇にキスをした。そのキスを受けるために、顔を上向きにしたが、ちょっと変な感じだった。

「すぐに看護師が来て、免許更新のために必要な書類を渡してくれるはず。じゃあ、今夜、お家でね。愛してる」

「僕も愛してるよ」


[2020/08/03] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

浮浪者 (8) 


「あなたについて、一番腹が立つのは、細かいことを求めすぎる点」と彼女は言った。「あたしがしてることすべてについて、ありえないほど細かいところまで知りたがる。どこに行ったのかとか、誰と一緒だったのかとか、何をしているのかとか、いつ家に帰ってくるのかとか。一種、嫉妬深い強迫性障害みたいになるんだもの。あたしをコントロールするのをやめて、あたしのことをほったらかしにしておこうとさえしてくれたら、今もあなたと夫婦でいたと思うわ。ああいうふうに根掘り葉掘りされると、あたし、気が変になってしまうの。今では、あたしが興味を持ってる男性はあなただけというのは、あなたにもはっきり分かっているはず。そうでしょ、マック?」

「ああ、多分。前は、その件で死ぬほど悩んだ。君が他の男を見つけて僕を捨てるんじゃないかと心配していた」

「そんなことは起きないわ。あなたに初めて出会った日から、他の男のことを思ったことは一度もないもの。顧客や同僚とディナーに行くわよ。男性、女性含めてグループで踊りに行くこともあるわ。いろんな人におもてなしをする。だって、それが仕事なんだもの。でも、あなたと出会った瞬間から、他の男も女も誰もあたしに親密に触れた人はいないし、これからも、それは同じ。信じてくれる?」

「ああ、信じるよ。僕の場合も同じだ。ブリイ、僕は君を信頼している。君が僕を傷つけることなどないのは分かっている。ただ、君はとても気ままで自由な人なのだというだけのこと。僕は君と結婚した第1日目と同じくらい今も君のことを愛しているよ。君も同じ感覚でいると思うし、今までの僕たちの関係は居心地よかったと思ってるんだが……なのに?」

「まあ、今のあたしは違うわ。家族を求めてる女の子がふたりいる。あの子たちのこと、あなたと同じくらい愛してるの。仕事より愛してるのは確かだわ。あたしはあの子たちの人生の記憶の中に残りたいけど、それを実現するためには、あたしとあなたとで、協力して事に当たる他ないと思っているの。だから、チャンスをくれない、マック? あたしと結婚してくれない? ふたりでこの家族を一緒に維持していけるように、あたしを愛そうと頑張ってみてくれない? あたし自身は子供を産むことはないと思う。それをするには、あたしはあまりに自信過剰だし、利己的な人間だから。でも、あなたとなら、あの子たちの親になれるはず。結婚して、マック。そうしたら、あなたをこの上なく幸せにするようベストを尽くすから。いいでしょう?」

「どうやら、この件について、ずいぶん考えてきたようだね。なら、僕にも、多少時間をくれてもいいよね?」

カレンは時計に目をやった。「20分あげるわ」

「おいおい、締め切りがあることなのか?」

「ええ。20分後で、あの子たち店の外であたしたちと会うことになってるの。あと10分で、この店の前に来るはず。それから10分間、グラニーの散歩をさせる。その後、車で、あたしたち4人はあなたの家に行く段取り」

僕たちは急いで食事を済ませ、店の外に出た。そこにはリムジンが待っていたが、女の子たちはいなかった。ふたりは犬の散歩に行ったと運転手が言う。彼は「あの犬」のことが気に食わない様子だった。多分、車の内装に涎れを垂らされて嫌だったのだろう。数分待っていたら、向こうからふたりが僕たちのところに駆けてくるのが見えた。


[2020/08/02] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Wイェックス:妊娠 (7) 


「どのくらいかかるのかなあ。僕が女性に……」

途中まで言いかけてやめた。体毛がみるみる肌の中に吸い込まれていくのを見たし、感じたから。注射したへその下の地点を中点として、緩やかな波となって同心円状に広がっていく。1分くらいした後、頭に変な感じがした。髪の毛が伸び始めている。

「血清が体毛をむしゃむしゃ食べてるの。その代わりに頭部の髪の毛を伸ばしてくれる。すべて順調に進んでいるわ」

カレンに説得されてストリッパーの仕事を辞めてから、僕は体の毛を剃っていなかった。8年位前だ。体毛の量がこんなにあったとは知らなかった。みるみる髪の毛が伸びて、濃いブロンドの毛の塊が顔に覆いかぶさり、視界をふさぎはじめた。手で払いのけないと、前が見えない。

「次は柔らかい組織の形成が始まるわ。これはちょっと気持ち悪いかも」

胸が徐々に膨らみ、ウエストが細くなっていくのが見えた。体の筋肉がしぼんでいく。その分、乳房の形成に供給されているのだろう。股間がぐいぐいせり上がってきた。お尻や太ももが膨らんできたせいだろう。

「女性は男性より体内脂肪の割合が高いの。あなたの筋肉細胞の大半が『あなたたち、本当は脂肪細胞なのよ』と言われて説得されているところね。まだ、すべて順調よ」

起きていることをカレンに説明してもらって、ありがたかった。彼女はWイェックスの注入を受ける患者たちに同じことを言ってるのだろうけど。でも、まるで自分が特別に賢い妻に見守ってもらっているようなふりをすることができて、ありがたかった。変化が股間部分と顔に移り始めるのを感じ、僕は固く目を閉じた。

「もうすぐ終わりよ。最後は骨。これはすごく気持ち悪いかも。大丈夫?」

確かに。体の中、骨格が変化していくのを感じる。肋骨と肩がすぼまっていくのを感じた。同時に腰の周辺が広がっていくのも感じる。それに、背が縮んでるのも感じた。診察台に乗ってるおかげか、自分がじわじわと縮んでいくのが分かる。

変化がゆっくりとなり、やがて止まったように感じたが、僕は目を閉じたままでいた。乳房がずしりと胸を圧迫しているのを感じるし、臀部が膨らんだせいと思うけれど、尻の下に新しくクッションを入れたような感じがする。

「終わったようね、タイ。新しい自分の姿を見たい?」

不安感を払しょくしようと、深く息を吸ってゆっくりと吐き出した。体を起こしたけれど、大変な苦労だった。僕はダンスのために勤勉に運動を行っていたが、こんなに体に力が出ない状態は記憶にない。

ようやく目を開け、下を見た。乳房があった。驚くほど大きい!

ぎこちない動きだったが、やっと立ち上がって直立した。その時に初めて、妻と目を合わせようと顔を上げた。顔にかかる髪を払って、彼女はどう思ってるのか、妻の目を探った。結婚指輪が指から抜けそうになるのを感じた。指がはるかに細くなっている。落ちないようにこぶしを握らなければならなかった。

カレンは笑顔で僕を見ていた。壁の鏡を見てみてはと合図を送っている。僕は体をこわばらせながら、壁の方に移動し、鏡に映る姿を見た。

正確には太っているとは言えないけれど、重量感があるのは確かだ。どこを見ても……ずっしりしてる。乳房はカレンのよりも大きかったし、ヒップも大きかった。太ももも太くなっていたが、腕はどちらかと言うと細くなっている。顔は女性的だったが、化粧してないからか、可愛い顔なのかどうか判断は難しい。髪は長く、肩にとどきそうだった。

「どう思う?」と妻が訊いた。

「わ、分からないよ」 口ごもった。新しい声は甲高く、自分の声に驚いた。手を胸に上げ、片方の乳房を持ち上げてみた。「何と言うか……分からないけど。子だくさんのカラダ?」 巨大な乳房と安産型の腰。これを表す、より適切な言葉が思い当たらなかった。

「うふふ。あたしたちの赤ちゃんが十分おっぱいを吸えそうなのは確かね。ちょっと触ってもいい?」 と彼女は僕のバストを指さした。

「あ……ああ、いいよ」

妻は両手で僕の乳房に触れ、持ち上げるようにしてみた後、ぶるんぶるん振り始めた。そうしながら、ずっと12歳くらいの女の子のようにくすくす笑い続けた。

「これってすごいわ。仕事が終わるのが待ちきれない!」

胸をぶるんぶるん振り回される。こんな感覚は初めてだった。僕は彼女に胸をいじられ、遊ばれるままにさせていたが、その後、彼女は僕の後ろに手を回し、彼女のよりずっと大きなお尻の肉を揉み始めた。

「ああ、大丈夫。あなた、あたしがあなたに魅力を感じなくなるんじゃないかって心配していたけど、その心配は不要よ、タイ。ほんとに。女性としての名前については、考えてみた?」

考えていたけど、鏡の中の姿を見ると、「ティナ」とか「テレサ」は似合わないと思っていた。

「似合う名前は何も……。何か考えてた?」

カレンは頭を傾げ、僕の顔を見つめた。手を伸ばして、僕のブロンド髪の毛の房を優しく束ねた。「ちょっとアンバー(琥珀)を思わせるわね。アンバーっていう名は、どんな感じ?」

僕は、もう一度鏡を見るため、彼女の手を優しく払いのけた。カレンはずっと僕を触っていたいらしく、彼女の手から逃れるのが難しくなっていた。ああ、確かにアンバーはいいかもしれない。

「確かに。いい感じ」


[2020/08/02] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

浮浪者 (7) 


ようやくブリイが口を開いた。「マック、あたしがあなたを愛してることは分かってるわよね?」

「ああ。僕も君を愛している」

「あなたのお母さんを愛してるとか、そういう意味ではない。男女の関係で、あなたを愛しているの。あのシダー・ポイントでの一日以来、ずっとあなたを愛してる。あたしが愛したのは、そしてこれからも愛するのはあなただけ。口には出さなくても、あなたを信頼している。あたしと結婚したことを別にすれば、あなたについてのすべてを愛してる。あたしがどういう人間かは分かってるわよね。あたしは自由でいるのが好き。責任も重荷もない、あたしを縛り付けるものがない状態が好き。あたしは仕事も人生も愛してる。あなた以上に愛してるわけではないけど、別に使途ごとあなたのどちらかを選択しなければならないことでもない。あなたはグラニーと同じくらい誠実。あたしたちは互いに理解しあっている。あたしはあなた以外の男とはセックスしないし、したこともない。それはあなたも知ってるはず。あなたはいつもあたしのことを理解してきた。だからこそ、これから言うことは、とてつもなく変なことに聞こえるかもしれないの」

「おおっと! まるでこれからイヤラシイことを言われて驚かされそうな気配だな」と僕は笑った。

彼女は「あんたってバカね」と言いたげな顔をした。

「ええ、多分そう思うかも。あのね、あたしと結婚してくれない、マック?」

飲みかけのワインを気管支に誤飲して死ぬかと思った。しばらくむせた後、直ったものの、僕は口をあんぐり開けたまま座っていた。

「間抜けのふりをするのはやめて、返事を聞かせて!」

「ありえない!」 ようやく僕は返事した。「どうしてだ、ブリイ? またお互いをみじめにしあうのか? 1ヶ月も経たないうちに、互いにいがみ合うことになるぞ。今の僕たちの関係のどこが問題なんだ?」

「何も問題はないわ。これはあたしたちとは関係ないこと。これは、あの可愛い、地球上で最も愛らしい女の子たちに関係することなの、マック。あたしはあのふたりがすっかり大好きになったわ。あなたがあたしを招待したあの夜に、あなたはあたしの人生を完全にひっくり返してしまったの。ふたりはあなたに会いたがってるわよ。ふたりとも、毎晩、あたしに泣いて懇願するの。あなたに会わせてって。問題はというと、あたしもふたりを手放したくないということ。ふたりと一緒に暮らしてから、いろんな楽しいことや腹立たしいことがあったけど、こんなに気持ちが揺れ動いたことは、これまでの人生で一度もなかった。で、あたしもあなたも、安定した家庭環境を作ってはいないでしょ。正常な心を持った判事なら、あたしたちのどちらにもあの子たちを預けることはないわ。でも、もしあたしたちが夫婦なら、速攻でふたりを預ける判断をすると思うの。だから、あたしがあの子たちと暮らしたいと思ったら、あなたを巻き込まないわけにはいかないのよ。あなたも、あの子たちと暮らしたかったら、あたしに我慢しなければならない。それ、あたしたちにできないことかしら、マック? あたしたちはセックスフレンドとしては最高のカップルだし、あたしはあなたを死ぬほど愛している。だから、あたしをイライラさせるのを避けることはできない?」

「どうかなあ。僕も嫌な人間だけど、君も同じくらい嫌な人間だよ。酔っぱらって帰ってくる。仕事以外のことについては、いつも時間を守らない。それに、そもそも家に帰ってこないし、電話の連絡もしない。ねえ、ブリイ、僕たちはそういう生活をしてきてて、その件については、もう済んだことになっているんだよ」

「ええ、分かってる。でも、重要なのは、今は違ってるとしたらどうなのかということ。今のあたしは、早く家に帰りたくて待っていられないほどなの。遅くなる時は、いつもふたりに電話を入れているし、ふたりを預かってからは、一杯もワインを飲んでいない。自分がこんな気持ちになるとは夢にも思っていなかったわ。だから、あたしと結婚して、マック。あたしにチャンスを与えて。あたしもあなたにチャンスを与えるから」

「いろんなことを話し合わなくちゃいけないと思う」

「だから、話し合ってよ。あたしたち、いま何をしていると? あたしは意味もないことをべらべらしゃべっているだけと思ってるの? 何をしなくちゃいけないかを言ってみて。あたしから言ってほしい?」

僕は残ってたワインをぐいっと飲み干し、ウェイターにお替りの合図をした。

「ああ、言ってみて」と僕は彼女に言った。


[2020/07/29] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Wイェックス:妊娠 (6)  


物欲しげな目をしていたと思うけれど、僕は目の前で次第に裸体を見せていく妻の姿をにんまりしながら堪能していた。豊かな乳房が張りを保って胸に盛り上がっている様子、平らな腹部と細いウエスト、少し大きめのヒップと涎れが出そうになるお尻。ポルノスターでも彼女の体を羨ましく思うことだろう。

「今度は君の番だよ」と僕は自分の顔面を指さした。「君の可愛い子猫ちゃんをここに連れてきてはどうかな?」

でも、彼女はイヤラシイ笑みを浮かべながら首を左右に振った。「いいえ、いけません、ご主人様! 今夜はあなただけのもの。ただ、くつろいでいて。一度だけでいいから、あなたに思う存分、ご奉仕させて」

僕は自分の萎えたペニスに目をやった。こいつはしばらくの間、言うことを聞いてくれない状態だ。「うーん、その思いは感謝してるんだけど、本当に……でも、僕はもう18歳じゃないし。次の出番が来るまで、ちょっと時間がかかるよ」

「大丈夫。あたしもいろいろすることがあるから。だから気を揉まないで。今は、ただ、くつろいでいて」

そう言って彼女は僕の足から官能的にマッサージし始めた。足から徐々に上へと移動してくる。

「いずれ、今の僕の姿が見れなくて寂しくなる時が来ると思う?」と僕は小さな声で訊いてみた。彼女は申し訳なさそうな顔を見せた。

「あたし、そんなに顔に出てしまってる?」

「いや。ただ、僕は君のことをよく知ってるから。君が今の僕のすべてを記憶にとどめようとしてるのが見えるんだ。……いずれ、それがすっかり変わってしまうだろうから」

彼女はエロティックなマッサージの手を止めなかった。「ということは、もう決心したということ?」

「君は間違っているなんて、いつ言ったかな? 君がこれがベストだと思ったなら……僕は、君の思う通り、これがベストだと思うよ」

妻の目に涙があふれてくるのが見えた。「あたしは……あなたに無理強いされてると思ってほしくないの。あなたが普段からあたしの思うとおりにさせてくれているのは分かってる。でも、あなたがみじめに感じると思うなら、その場合は……やらないと言ってもいいのよ? ノーと言ってくれていいのよ?」

「僕は君を信頼している。君があらゆる角度から考え抜いたことだと信じているんだ。君の方がはるかに賢いから、僕は君を信頼するほかないじゃないか。そもそも、僕は何かしようとするといつも失敗してるわけだし。カレン、僕は子供が欲しいんだ。君の子供が欲しいんだよ」

今や彼女は僕の上にまたがった姿勢になっていた。両手の爪を僕の胸肉に立てるようにしながら、僕の瞳を見つめていた。30センチも離れていない。「分かったわ。病院に予約を入れるわね」

不安はあった。それは間違いない。でも、子供が持てるという魅力は、そんな不安に打ち勝つだけの力があった。「だから、僕を捨てたりしないと約束してくれ」

彼女は僕の唇に唇を押し付けてきた。彼女の涙が僕の顔に滴り落ちてきた。「約束する。あなたを愛してるの。とても……今度はうつ伏せになって。背中もしてあげるから」

あまりにリラックスしすぎたのか、背中のマッサージをされてる間に僕は眠ってしまった。翌朝、目が覚めると、ベッドに彼女の姿はなく、伝言だけがあった。僕を愛してるというメッセージだった。

そして、キッチンにはたくさんの洗い物が僕を待っていた。

******

病院のガウンは着心地が悪い。僕は診察台の上に座って、辛抱強く待っていた。お尻が出てるのを気にしないよう努めていた。

ストリッパーとして何年も裸を他人目にさらしてきたんだ。これくらい何てことない。

診察室のドアが開き、妻が入ってきて、ドアを閉めた。「ジョンソンさん、おはよう」と彼女はあいさつした。

「おはようございます、ジョンソン先生」と僕も挨拶を返した。だが、笑いを完全に押し込めることはできなかった。

とはいえ、職場にいる妻を見るのは、この時が初めてだった。たいていは、メディカルスクラブの姿で家に帰ってくる妻しか見ていない。いま、白衣をまとい、首に聴音機をかけ、手に僕のカルテを持ってる妻の姿を見て、僕はちょっと畏敬の念に打たれていた。彼女がどうして僕の担当になったのか分からないけれど、多分、彼女はそのお願いを何度かしなくちゃいけなかったのだろうと思う。

「準備はいい、タイ?」と妻は心配そうに訊いた。

僕は肩をすくめた。「どうかなあ。でも、結局はこれに慣れなくちゃいけないとは思うけど?」

彼女は優しそうに微笑み、コンピュータ制御の装置に重たそうな金属製のシリンダを設置した。「それでは、今から、インフォームドコンセント関係の質問をします。いいですか?」

「もちろん。どうぞ」

「あなたは、今回のWイェックス注入により、あなたのジェンダーを完全に女性に変えること、及び、期間はほぼ1年間で、誤差により8日の前後があることを理解しています?」

「分かっています」

「よろしい。あなたは、これが魔法のように思えようとも、そうではないことも理解している。あなたは84キロの男性であり、84キロの女性になるということを理解している」

「分かっています。君が太った可愛い子ちゃんが好きだといいけど」

カレンは刺すような目で睨み付けた。だが、その目つきの裏で笑ってるのも見て取れた。「あなたは、最終的な体形や特徴を決めるのは、あなた自身のX染色体に隠れている遺伝情報であることも理解している」

僕は目をぱちくりさせた。これは聞いてなかった。「分かりました」

「ジョンソンさん、大変よろしい。あなたは、変身剤の注入に同意されますか?」

「同意します」

これで決まりだ……女性側への旅立ちの時間だ!

カレンはシリンダを取り、底部を回してふたを開け、中の物を抜き出した。実際の注入器は透明の保護ケースに入っていた。注入器をらせん状にチューブが巻き付いていて、そのチューブの中にはピンク色の液体が満たされていた。

「この注入器には底辺部に7本針がついています。7本同時にあなたの肌を刺します。ですが、ほぼ瞬時に刺された跡は消えます。刺された痛みが続くのは数秒間だけですので、動かないようお願いします。注入する場所は、あなたの恥骨の上の部分ですので、今からローブを脱いでいただく必要があります。私がいることが気になるようでしたら、代わりの男性医師を呼びますが、どうしましょうか?」

僕はジョンソン先生は好きじゃなくなっていた。あまりに医療関係者的すぎる。妻に戻ってほしい。

「先生、僕の妻がいてくれると気が落ち着くんですが」

そう言って僕はガウンの前をはだけ、診察台の上、股間をさらした。

「いいわ、あなた。じゃあ、深呼吸して」

深呼吸して、そこで息を止めた。カレンは冷たいシリンダーを僕のお腹に押し付けた。ペニスとおへその間の中間地点あたりの場所に。

そこで妻はシリンダーの上部を外した。同時にチクリと痛みが走り、細い針が僕の中に入ってくるのを感じた。チクリとした痛みは1秒もしないうちに消えた。目の前で、シリンダー内のピンクの液体がチューブを進み、僕の体内に入ってくるのが見える。


[2020/07/28] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

浮浪者 (6) 


ブリアナは背が高い、ゴージャスと言われる赤毛の美人だ。匂い立つような色気を放っているのに、自分ではまったく分かっていない。彼女が家に入ってきた時、マギーとストークリイは、彼女のオーラに唖然としていた。ブリアナは僕に全身が搾られるようなキスをし、その後、ふたりの女の子たちをハグした。

「あたしの替わりを入れたってわけね」と彼女は僕にウインクした。

「いや違うよ、ブリイ。君の代わりになる人なんかいないよ。知ってるくせに」と、僕は冗談っぽく言った。

でも、ブリイの代わりがいないのは本当だ。マギーたちには、僕がブリイと友だちだと言ったし、その通りだ。僕とブリイは相互に利益が得られる友人関係にある。離婚後も素晴らしいセックスを楽しんでるし、時には週に一回かそれ以上している。彼女が僕のところに来て1週間くらい泊まっていくときもある。そういう時は、僕たちはサカリのついた動物のようにセックスしまくる。離婚したのは、単に、彼女の生活には夫のための時間が作れないということだけだったし、これからもそれは続くと思う。ブリイはブリイのやり方で僕を愛してくれているし、僕も僕なりに彼女を愛している。単に、僕たちふたりは夫婦関係でいることができないということだけ。僕たちはセックスパートナーとしてなら完璧にうまく付き合えるけど、夫婦でいた時は犬と猫のようにケンカばかりしていた。

「で、あなたの新しい彼女のお名前は?」 とブリイはふたりに微笑みかけた。あの笑顔を見てマギーもストークリイもまぶしく思ったのではないだろうか。

「あたしはマギー。それにこの子はストークリイ」

「会えてうれしいわ。あなたたち、この男が危険なヤツだというのは知ってるわよね?」

「あたしたちには、そうじゃないよ」とストークリイが言った。「敵としている人にはそうなのかもしれないと思うけど。棍棒を持ってるし、すごく大きな犬も飼ってるから」

ブリイはグランビルのところに忍び足で近寄った。するとグラニーは不審げに唸り声をあげた。

「ねえ、大男さん?」と彼女はひざまずいてグラニーにハグをした。「あたしに会えなくて寂しかった?」 グラニーは目を剥いては見せたが、頭をもたげることすらしなかった。

「で、どういうこと、マック? あたしと何を離したいのかしら。別にディナーに招待してくれたことは気にしてないけど。……おふたりさん、この男、料理の腕はたいしたもんなのよ。やる気を出させられればの話しだけど」

「マックは、ラムチョップ(参考)を作ったと思う」とマギーが答えた。「それ、あたしたち、食べたことないんだ」

「そう。だったら、ごちそうにありつけるわよ。でも、何があったの?」とブリイは再び訊いた。

4人でディナーを楽しみ、僕は説明をした。

「ブリイ、君の助けがほしい。僕は法的なことについては何も知らないからね。この子たちは孤児なんだ。まあ、父親は生きてるかもしれないが、どこにいるか誰も知らない。父親は彼女たちを捨ててどこかに行ってしまったし、母親は殺されてしまった。その後、里親施設にいたが、その施設の誰かバカ者がふたりに手を出し始めたため、ふたりは施設を逃げ、路上生活をしていたんだ。ふたりは、食べ物を求めて、僕の家のゴミ缶を漁っていてね、そこを捕まえたわけ。そこで相談なんだが、何か、この子たちを路上生活に戻さなくても済む方法を探しているところなんだ」

ブリイはしばらく黙ったまま僕を見つめていた。「あなた、この子たちが欲しいのね? 驚いたわ、マック! あなたはずっと子供を欲しがっていたものね。でも、あたしが断っていたので、この子たちが欲しいと。そうでしょ?」

僕は顔を赤らめた。「ああ。そう言ってもいい。そうするためには、どうすればいいと思う、ブリイ?」

「無理だと思う」と彼女は言った。「どの家庭裁判所も、あなたにこの幼い女の子たちを預けるのを許可しないでしょうね。あなたは独身の男性。そこに幼い女の子ふたりを預けるなんて、悲惨な結末を準備するようなもの。絶対に許可されない」

僕はマギーたちに目をやった。ふたりとも目を皿のようにして僕を見つめていた。「ん? どうした?」と僕は訊いた。

ふたりは互いに見合い、突然泣き出した。一緒に僕のところに駆け寄り、しがみついてきた。「あたしたちをもらいたいって?」とストークリイがすすり泣きながら言った。「信じられない。あたしたち、養ってくれる人なんか誰も……誰も……」 ストークリイは先を続けることができなかった。

僕はふたりをしっかりと抱きしめた。「ああ、そうだよ。それを考えていたんだ。君たちは、見守ってくれる人が必要だ。僕も見守ってくれる人が必要なんだ。だから、君たちと僕とで互いに互いを見守ることができるんじゃないかと思ったんだよ。それにグラニーも僕たち3人を見守ってくれるだろうし」

ふたりの小さな体が震えていた。ぐいぐいと、抱き着く力が強くなってくる。

僕はどうしてよいか分からず、助けを求めようとブリイを見た。ブリイの頬には涙が流れていた。彼女は子供たちから僕へ視線を移した。

「もう、マックったら。見てよ、あたしに何てことをしてくれたの! いつも、あなたのことは分かってると思ってる時に限って、こうやってあたしを驚かせるんだから。あたしはどうしたらいいのよ?」

彼女は変な表情をしていた。まるで初めて僕に会ったような顔だった。

「にさん日、考えさせてくれる? 娘さんたち? あなたたちはあたしと一緒に来るの。ここでマックと一緒にいることはできないわ。それが明るみに出ちゃうと、すべてが台無しになってしまうかもしれないから。マック? あたし、この子たちと一緒にグラニーも連れて行くわよ。あたしは一日中家にいることはできないけど、グラニーがいればふたりの安全を見てくれるだろうから」

ブリイはまるで竜巻のように家の中を忙しく歩き回り、マギーとストークリイ、そしてグラニーを家から連れ出し、彼女のメルセデスへと押し込んだ。「後で電話するわ」

実際、ブリイはそれからの2週間の間に、3回、それぞれ30秒ほど電話をしてきた。その期間、ふたりの娘たちの姿は影も形も見なかった。そして金曜日の朝、ブリイが電話をしてきて、アルフォンソの店で夕食がてら僕に会えないかと言ってきた。この店はポンティアック(デトロイト圏内の小都市)にあるイタリア料理の良い店で、僕たちは何度も行っている。

僕が店に入ったときには、彼女はすでに来ていて、カウンターのところに座っていた。彼女の周りには男たちが群がっていた。ブリイは僕を見かけると飛び上がるようにして立ち、涎れを垂らす周りの男たちを置き去りにした。彼女と僕は空いているブースに移動した。彼女は僕を押すようにしてブース内に座らせ、自分は僕の隣に座った。普通はブリイは僕の対面席に座りたがるので、隣に座ったということは何か特別なことがあるのだろうなと思った。注文を済ませるまでの間、彼女はほとんど口をきかなかった。


[2020/07/28] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Wイェックス:妊娠 (5)  


カレンは熱情の化身そのものになった。それが、とうとう子供が持てるという思いによるのか、僕に何度も劣等感を感じなくてもいいと宥めようとしてのことなのかは分からない。でも、どんな理由であれ、その夜の彼女はこれまでにないほど積極的だった。

ベッドに座る僕に挑みかかるように彼女は唇を寄せ、舌で淫らに僕の口の中を探りまわり、その後、僕の胸に両手を当て、そして僕を押し倒した。ベッドの上、僕は膝から上の部分、仰向けになっていた。

カレンは自分が服を着ていることなど気にせず、素早く僕のズボンと下着を引きずり降ろした。最後まで脱がすのももどかしかったのか、僕の左右の足首は途中まで脱がされたズボンや下着が丸まって、縛り付けられているような形になっていた。そんな姿の僕の勃起を、彼女はパクリと咥えこんだ。

たいていの男たちはどうなのだろう? たいていはフェラチオが好きなのだろう。でも、僕は、10代のころだったと思うけれど、繰り返しセックスできる相手を得るには、愛し合う場面において、与えられる側ではなく、与える側になるのことだと考えるようになっていた。その考え方は僕の本質部分に染み込み、いつしか僕の人間性の一部になっていた。だから、僕は、いかに気持ち良いことでも、単に快楽を与えられるだけでは、居心地が悪く感じる。どうしても、そのお返しをせずにはいられなくなる。

カレンは僕のそんなところも良く知っている。

僕はなんとかしてシャツを脱いだ。「き、君も……うわっ! 君も服を脱いだら?」

カレンは、僕の固くなったペニスから口を離し、僕の目を見てにんまりした。床に正座する格好で僕の脚の間にいて、片手でしごき続けながら、こっちを見ている。

「まだダメ。今はあたしにあなたを気持ちよくさせてて。今夜は、最後まであなたを主人公にするつもりなんだから。あたしにとってあなたがどれだけ大切な人か、どれだけ愛しているか、示したいと思うの」

彼女が卓越したフェラチオを再開するのを受けて、僕はもたげていた首から力を抜いて、頭をマットレスに倒した。彼女が特に求めた場合を除いて、僕は両手を彼女の頭に添えることはしない。だけど、セックスの場面では、僕はとてもこまめに手を動かすタイプだ。触れたり、擦ったり、愛撫するのが好きなのだ。だから、この時は、決して触るまいと、精いっぱいの意志の力を使って、両手を体の両脇に保ち続けた。

普通は、僕も同時に彼女のアソコを舐めるので、妻は気が散り、能力を十分に発揮できないのだけれども、実際、彼女は口唇愛撫について言えば、大変なスキルの持ち主だ。どう吸って、どこを舐めるかをちゃんと知っている。短時間で僕をイカせたいと思ったら、数分で僕をそこに至らせることができる。でも、今夜の妻は、そこに至る時間を長引かせようとしていた。

彼女はとても長い時間、ねっとりと愛してくれた。ゆっくりと吸い込んでは出していく動き。時々休んでは、唇で挟み込むようにしてペニスの底辺部を上下に擦ったり、睾丸を優しく吸ったり舐めたりした。

献身的な愛撫を受けながら、ふと、思った。カレンは意図的に今夜のこの経験を堪能しているのではないか、と。僕の分身が消えた時のために、思い出作りをしているのではないか、と。僕はまだWイェックスを服用すると明言はしていなかったが、彼女には分かったのだろう。もう結論はとっくに出ていると。いったん彼女が何かについて決心をした後は、僕がそれに異を唱えることは滅多にない。実際、彼女の方が僕よりはるかに賢いし、僕は、ずいぶん前から、彼女が十分検討した場合は、どんなことでも、たいてい彼女の方が正しいという事実を受け入れていた。加えて、僕は本当に子どもが欲しかったし、Wイェックスしか僕たちにはそのチャンスがないと思われた。

しかし、妻が僕の射精をさらに先延ばしさせるには、長い時間、頑張りすぎていて、その瞬間は差し迫っていた。

「カレン、もう、いきそうだよ!」

彼女は、僕の勃起の先端部分3センチくらいだけを口に咥え、頭を上下に振り始めた。小さく「んー、んー」とハミングし、僕を見つめながら。その表情は淫らな性欲の顔ではなかった。そうではなく溢れ出る愛情の顔だった。こんな格好で、こんな行為をしているのに、その顔の表情は、それにふさわしい顔つきじゃないと言ってもおかしくなかった。

僕は声を立てず、射精した。10代のころから、自慰をしても声を出さないでいたせいか、セックスの時も僕はほとんど声を出さなくなっていた。これがカレンには理解できなかったようで、分かってもらうまでずいぶん時間がかかった。単に、たわごとや下品な言葉を言ったり叫んだりしなかったからと言って、楽しんでなかったということにはならないのだと。

僕は彼女に出せるものはすべて出し、彼女もそのすべてを受け止め、飲み込んだ。そして唇と舌を使って、過剰なほど敏感になっていた僕のペニスをすっかりきれいにしてくれた。

少し休んだ後、僕は足からズボンを蹴り飛ばした後、ベッドの上、普通に横たわる姿勢になるべく、ベッドヘッドへとずり上がった。その間、彼女は服を脱いでいた。妻の着ているメディカル・スクラブは、彼女の目を見張るボディを覆って隠してしまう点で、人類に対する犯罪と言ってよい。


[2020/07/27] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

浮浪者 (5) 

「すごく大きいね」ストークリイは笑いながら、グラニーの頭をトントンと叩いた。「何て種類の犬? ちょっとトラみたいに縞模様がある」

「ブル・マスティフという種類。こういう柄をしてるので縞柄種と呼ばれているんだ」

「まるであたしたちの顔を食いちぎれそうな感じだよ?」とマギーが言った。

「ああ、やろうと思えばできるよ。でも、グラニーは大丈夫。彼は僕の友達にはフレンドリーなんだ。君たちが家のソファに座って、私と仲良くしてるのを見て、君たちを好きになったんだろうな。もし君たちが僕に好戦的な態度を示していたら、彼も警戒して、とても攻撃的になっていたかもしれないね。もう彼は君たちのことが分かったから、今度は誰にも君たちに好戦的な態度を取らせないようにすると思うよ。もし僕が君たちを怒鳴ったら、それも気に食わないと思うんじゃないかな。彼は、愛する人を守る気持ちがとても強いんだ」

ストークリイは跳ねるようにしてソファから降り、グラニーの上に覆いかぶさって首のところに腕を回して抱きついた。グラニーも彼女の腕をぺろぺろと舐めた。「グラニー、大好き! しわくちゃ顔でキュート! グラニーはガレージに住んでるの?」

「いや、家の中だよ。昨日はちょっと体の具合が悪かったので、家じゅうに吐かれると困るから、ガレージに出していたんだ」

「どうして具合が悪くなったの?」

「グラニーは、よく、食べちゃいけない物を食べてしまうんだよ。棒をしゃぶったり、虫を食べたり、何とは言わないけど、死んだものを見つけては食べたりとかね。でも、今日は大丈夫みたいだ」

「キモっ!」とマギーが叫んだ。「あたし、さっき、顔を舐められたんだった!」

「ああ、彼は可愛いけど、ちょっと汚くなる時もあるんだ。でも、グラニーは僕の友だちだ。だから僕は我慢してる。彼は、君たちが認めるなら、君たちの友だちにもなるよ。そろそろ、みんなで彼の散歩に連れて行った方が良いかな」

グラニーのリードを持ってくると、マギーが彼をリードしたがった。たいてい、グラニーはリードを持つ人を引っ張っていく。だから、マギーは彼に引っ張られて、僕とストークリイの2メートルくらい前を歩いていた。ストークリイは歩きながら、小さな手で僕の手を握った。彼女を見降ろすと、彼女は笑顔で僕を見上げた。ああ、何て綺麗な子なんだろう! 

「こうしても構わない?」

「もちろんだよ。可愛い女の子と手をつなぐのは大好きだから」

ストークリイはちょっと顔を染めたが、僕の手を離すことはなかった。僕たちは3キロほど歩き、家に戻ったときには、グラニーはハアハアと息を荒げ、涎れを垂らしていた。この犬は、この日のように寒い日でも、こうなる。

その日の午後、僕たちは、コーヒーを飲みながらおしゃべりをした。そして、ようやく僕は、ふたりに助けてあげてもよいだろうかと訊いた。

「どういうことをしてくれるの?」とマギーが訊いた。

「正直分からない。ブリアナに話しても良いかなと思う。専門外とは言え、彼女は法律家だ。多分、何か方法を考えてくれるかもしれない」

「その人って、例のビッチ?」とマギーが訊いた。

「マギー、ブリアナはビッチじゃないよ。そう言うふうに呼ぶのはやめてくれ。僕を信頼してくれるかな?」

ふたりは顔を見合わせ、その後、僕の方を向いた。「ええ、まあね」とストークリイが言った。「あんたはあたしたちにとても優しくしてくれているよ」

「じゃあ、彼女に電話して、こっちに来れるか訊いてみよう」と僕は言った。「君たちも彼女が気に入ると思う。彼女にチャンスを与えてあげてくれ」

ブリアナは忙しかったが、夕食にはこっちに来れると言った。


[2020/07/25] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Wイェックス:妊娠 (4)  


「そう。いい? セックス玩具としてのWイェックスはいろいろあるけど、そのひとつは主要な性器だけを変えるの。まさかと思うだろうけど。それはWイェックス・ライトっていう名前。あたしのアイデアはというと、それをあたし自身に使うということ。あたしが仕事を続けられるように、あなたが妊娠するまで週に1回、服用する。職場ではカレンのままでいなくちゃいけないでしょ? あなたの方は体全体を変える強化版を1年間、服用し続けなくちゃいけないわ。すぐに妊娠しなかったら、もっと長くなるかもしれない。妊娠から出産まで9ヶ月半から10ヶ月はかかるし、加えて授乳もあるから」

これは大ごとだった。単に長い期間自分に影響を及ぼすだけのことなどではなく、少なくとも1年間は僕の生活を変えることになることだった。子供をひとり以上求めるならもっと長い期間になる。

「ちょっと考えなくなければ。って言うか、そうなっている間、僕たちの性生活はどうなるのかな? どのくらいの期間が必要か分からないけど、その間、単に君の妊娠した同居人だけになるというのは嫌なんだけど」

その期間、僕たちがそもそも夫婦とすら言えなくなるような感じになるかもしれない。その状況をどう言葉にして説明したらよいか分からなかった。

カレンはカウチの上、僕のところにすり寄ってきて両腕で僕を包んだ。「あなた、そういうふうには全然ならないわよ。あたし……言いづらくて一度も言ってなかったんだけど……あのね……あたし、少し女の人にも惹かれるの。男性に惹かれる時ほどじゃないけど。もちろんあなたは別格」 妻は素早く僕を安心させた。「でも、ちょっとだけよ。こう言うだけじゃ足りなかったら、あたしもあなたに合わせて毎週服薬するわ。そうすればあなたはあたしを離すわけにはいかなくなるでしょう? さっきも言ったけど、短期版のWイェックスだと性欲が増進するし、完全にバイになった気持ちになるわけ……」

そこまで話してカレンは突然笑い出した。

「いずれにせよ、あたしはするかも。まる1年間生理を気にせずにいられるのよ? それっていい話に思うもの」

理論上は、健全なアイデアだと思った。僕は子供が欲しいのか? とてもとても欲しい。 僕はカレンの子供が欲しいのか? 何よりもそれを望む。彼女は子供を産めるのか? いや、産めない。時間はどんどん進んでいる。僕たちは年老いていくのは確かだ。

「その費用は僕たちに賄えるの?」 僕はチェックを入れた。

カレンはさらに強く僕を抱きしめた。「ええ、大丈夫。それって、その気になっているということ?」 と彼女は期待している顔になった。

「そちらの方向に傾いているところ」と僕は白状した。「でも、一晩考えさせてくれる?」

「もちろん! でも、今夜はあなたと寝室に入って、あなたがへとへとになるまでエッチするつもり。だって、そうじゃない? それが、しばらくの間は、あなたのおちんちんを入れてもらえる最後のチャンスになるのかもしれないんだから」

僕は元気を取り戻した。僕もそうしたい気持ちだったから。立ち上がって、洗い物が残ってるキッチンに目をやった……「ちょっとその前にキッチンをきれいにしてからね」

カレンは顔を左右に振って僕の手を掴み、ぐいぐい寝室へと歩き出した。「後からでもいいんじゃない? 今は、あたし、あたしの愛するオトコに抱かれたくて溜まらない気持ちなの」


[2020/07/25] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

浮浪者 (4) 


「ところで、マギーとストークリイについて話を聞かせてくれないかな? 君たちに何が起きてるんだ? なんで食べ物を求めて他の人のゴミ箱を漁るようなことをしてるんだ?」

3人でコーヒーの入ったマグカップを手にリビングに移動し、そこでふたりは嘆かずにはいられない話しをしてくれた。彼女たちの父親は自動車工場の作業員だったが、ふたりが幼い時に失業し、それがきっかけで、アルコールを飲んではふたりに暴力を振るうようになってしまった。母親は彼と離婚し、その後は父親とは会ったことがない。デトロイトの経済は最悪だった。いや経済に限らず、何もかもデトロイトは最悪だったが、とりわけ職に就くのが難しい。ふたりの母親はタクシー運転手をしていたが、ある夜、悪い客を乗せてしまったらしい。その客は彼女たちの母親が持っていたなけなしのカネを求めて、彼女を刺し、置き去りにした。彼女たちの母親は出血多量で亡くなってしまった。

ふたりは養育施設に入れられたが、その施設の男がふたりに淫らなことをし始めた。そこでこの姉妹は施設を逃げ出し、路上生活になった。この生活を始めて3ヶ月になるという。苗字はスティールという。凍死しないか、レイプされたりしないか、殺されるんじゃないか、次の食事はどうやったら手に入れることができるかとか、そう言うことばかり心配し毎日を生きてきたという。

ふたりが話し終えた後も、僕はしばらく黙って座っていることしかできなかった。何てことだ、胸が押しつぶされそうな気持になった。この子たちのような生活を送っている子供たちはいったいどのくらいいるのだろう? おそらく、僕が想像するよりもありふれた話なのかもしれない。この子たちを助けたいが、ふたりはそれをさせてくれるだろうか? どうやって助けたらよいのだろう? 児童保護で役所に相談したら、彼女たちが僕の家で暮らすことを認めるとは思えない。独身男が若い娘ふたりを預かるなどというのは、変態が夢見ることのように聞こえるし、そんなことを公的機関が許すことはないと確信できる。ひとりいろいろ思案していたが、ふたりに遮られた。

「マック、あんた結婚しているの?」とストークリイが訊いた、

「していたよ。僕の元の奥さんは、僕のことを野心的じゃないと思ったんだ。彼女は一流の法律家で、いろんなところに出張に出かけていた。彼女の人生には、夫婦生活をする余地はなかったんだよ」

「ひどい女だね」とマギーが言った。

僕は笑い出した。「いやいや、彼女はとてもいい人だよ。別に浮気をしたとかそういうことはなかったし、今でも僕とは大親友でいる。お互いの合意で決めたんだよ。ふたりはそもそも結婚すべきじゃなかったのだとね。結婚した時、ふたりともとても若くて、とても愚かだったからね」

ストークリイが不思議そうな顔で訊いた。「おじさんは何歳なの?」

「28歳だよ。君たちは?」

「あたしは11で、マギーは13。あたしたち今日は何をするの?」

「『僕たち』今日は何をするか」

「そう、あなたが言った通り」

「おしゃべりをしよう。……でも、その前に、ある人に君たちを紹介しようと思う」

僕はガレージのドアを開けた。ドアの向こうから毛むくじゃらのブルブル震える物体が飛び出してきた。彼は客たちの姿に気づくと、彼女たちが座るソファへ突進し、飛び乗って、ふたりの膝の上に横になった。早速ピンク色の大きな舌をだして、ふたりを舐め始めた。

「彼はグランビルというんだ。僕はグラニーと呼んでいる」

ふたりは、彼の舌にべろべろ舐められ、引きつったような笑い声をあげていた。グラニーは55キロはあるので、ふたりとも彼に膝に乗られて立ち上がれなかった。彼がふたりよりも重いのは確かだ。

「お座り、グラニー」 と言うと、彼は嫌そうに彼女たちから降り、ふたりの足元に伏せた。


[2020/07/24] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)