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無垢の人質 第6章 (9) 

レオンがイサベラに城内を自由に行き来する許可を与えてから2週間が経った。

この2週間は、イサベラにとって苦悩に満ちた2週間でもあった。イサベラは身体の奥からあふれ出る欲望を抑え込もうと苦闘していたのだった。だが、それもむなしく日増しに不満が高まっていた。夜毎に寂しさが募っていく。ベッドに横たわりながら、暗闇を見つめ、またレオンに激しく身体を奪われたいと切なく願う夜が続いた。時には、拒否する自由を奪われ、否応なしに犯されたいと思うことすらあった。そして、その度、そんなことを思う自分をただちに嫌悪するのだった。

イサベラは自分からレオンの元に行くことは、かたくなに拒み続けた。彼の寝床に行くことを拒むのは、誇りと自尊心からだとイサベラは思い込みたがってはいたが、実際は、彼女の腹中に灯り、育ちつつある小さな生命が、彼女に決意を新たにさせていたのだった。

生まれてくる赤子のためにも、私を自由の身にするよう、何としてもレオンを説得しなければならない。レオンが私を目的のための手段としてしか気にかけていないのならば、万が一、彼が真実を知ったとしても、赤子のことは気にかけないだろう。自分も赤子も、ともに、彼の復讐を目的とした嫌悪すべき企みにおける単なる人質という立場にしかならないだろう。

レオンは、欲情に負けてイサベラを暗い小部屋に引き込んだものの、自制心を求めて必死に戦ったあの日以来、イサベラと二人きりになるのを避け続けてきた。

一方、イサベラは、夜ベッドに横たわりながら、あの緊張に満ちた数分間のことを思い出しては、妖しい興奮に身体を震わせるのだった。あの時、レオンはもう少しのところで自制心を失いそうになっていたのを彼女は知っていたからである。

レオンはかたくなに自制しようとしている。それを知っていたので、彼女はメイドの一人が優雅な筆跡で中庭に出てくるようにと伝えるメッセージを持ってきたとき、驚きを隠せなかった。

早速、庭に出て、敷石に立ち、何事だろうかと不思議そうに見回したイサベラだったが、レオンが大きな黒い雄馬に乗って庭の向こうから速足で駆けてくるのを見て驚いた。彼のそのような姿を見るとは思っていなかったからだった。

レオンがたくみに馬を操り自分の横につけるのを、イサベラは畏敬のまなざしで見上げた。同時に、下腹部のあの場所がきゅっと収縮するのも感じた。

レオンは馬に乗ったまま、優雅でゆったりとした動きで体を斜め下へ傾け、彼女の腰に腕を回した。イサベラは、はっと息を呑んだ。まるでイサベラが鳥の羽ほどの体重であるかのように、レオンが軽々と彼女を持ち上げ、鞍の上、自分の前に乗せたからである。

「片脚を回して、またがるんだ」

レオンは後ろから彼女の耳元に囁いた。イサベラはスカートが邪魔になるものの、脚を上げ、鞍にまたがった。そしてスカートの裾を片側に寄せ集め、垂らした。あぶみには足が届かなかったので、素早く鞍の取っ手をしっかりと握り、左右の太ももで鞍を挟み、体を安定させた。

後ろからレオンの力強い腕が伸びてきて、彼女の腰を我が物のように抱えた。彼女が安定するのを確かめ、レオンは巧みな操縦で馬を走らせ始めた。ゆっくりとした足取りで城外の家屋や納屋を通り抜け、広々とした草原に出る。その間、イサベラは彼の逞しい胸に背中を預け、その体温のぬくもりを感じていた。

[2010/01/14] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)