最初に問いただしたのは息子だった。
「ママ、ようやくか。なんでこんなに時間がかかったんだ?」
「道に迷っちゃったの。ここ、迷路みたいになってるから。みんな、ごめんね。待たせすぎちゃったかも」
「いいよ、気にしないで。僕たちは準備万端だよ、ケイト。…じゃあ、その車両の前に立って、ポーズを取ってみせて」
ポーズを取る前からカメラのシャッター音が鳴り続けていた。この子たち、本当にもう待てなくなっているみたい。チラリとフランクを見たら、ちょっと笑いながらわたしを見ていた。余裕があるみたいな様子で。
わたしはフランクの方は向かず、他の子たちのためにポーズを取った。写真を撮られれば撮られるほど、だんだん、気持ちも落ち着いてきた。
そんなことをしてるうちに、元の自分に戻ってきた感じで、わたしはちょっとスカートを捲って、長い脚を見せたりして、焦らすようなポーズを取っていた。そんな感じでしばらく時間が過ぎた。
その後、あの子たちは、わたしにもうちょっと脚を広げてとか、ちょっと前屈みになってとか言い始めた。でも、それも悪い感じではなく、ちょっとした焦らしポーズだったので、安心。
息子はわたしのスカートの中を撮ろうとはしなかったけど、他の子たちは全員、地面に這いつくばるような格好になって、写真を撮っていた。そういう時はスカートをめくったりせず、普通の姿勢になって、勝手に写真を撮らせた。
だいたい20分ほどして、ようやく撮影が終わった。
「オーケー! これでおしまいにしよう!」 ティムがまるでプロのカメラマンのように終了を告げた。
「素晴らしい写真が撮れたよ、ケイト。今すぐパソコンで確かめてみたくて、待ちきれないよ。本当に魅力的だったし、カメラに愛されている感じだったね。天性のものがあるんじゃないのかな。本当に、モデルの経験がないの?」
ジェイソンは、早速カメラで写真を見ながらわたしに訊いた。
「いいえ、ジェイソン。本当にモデルなんてしたことないのよ。でも、わたしもちょっと楽しかったわ。良い写真が撮れたかどうか分からないけど、ポーズを取って楽しんだのは本当よ」 と微笑みながら彼に答えた。
ティムとジェイソンは本当に良い子。行儀正しいし、敬意を持った応対をする。この子たちといるのは気が落ち着くわ。それにひきかえ、フランクは、傲慢で、怖い。それに、ズルをしてあんなふうにわたしを犯すなんて、本当に最低! あの出来事だけでも、フランクには絶対に顔を向ける気になれない。でも、幸い、あいつの方もわたしに話しかけようとしなかった。
息子が歩み寄ってきて、わたしの手を握って、ありがとうママって囁いた。わたしも手を握り返して微笑んだ。
みんなが撮影道具を片づけている間、ちょっとだけフランクのところに近づいた。少し不安な気持ちだった。
「フランク? あなたが撮った写真…、あれはダメだからね…。お願いだから消去して…」
フランクは訳知り顔でニヤリと笑って、わたしを見た。またすぐわたしの身体をじろじろ見ている。それを受けて、また緊張してしまった。
「うーむ、どうするかなあ? 俺の持ってる中でベストの写真なんだぜ? どうして消去なんかできる?」
「フランク、お願い…。わたし…、わたし、させてはいけないことをあなたにさせてしまったの…。とても、とても間違ったことを…」
「間違ったこと? お前の方がずいぶん楽しんでいたように見えたぜ」
「そ、それは…、どうにもできなくなって…。ねえ、分かってよ」
「いや、頼まれたからって、俺は消去なんかするつもりはないね。お願いする前に、お前のほうが俺に何かしなくちゃいけないんじゃねえの?」
「何ということを。あれで充分じゃないっていうの!」 わたしはショックを受けてフランクを睨んだ。
「当たり前だ! ともかく、今はその件について話し合う時じゃないな。何がどうなってるのか、すべてを調べてみないとな。すべてが分かったら電話するぜ」
フランクが小声でそう言ったとき、息子が近づいてきた。
憎しみのこもった眼でフランクを睨み続けた。この、最低男! わたしもこんなやつにセックスさせたなんて、なんてバカだったのかしら! それに写真も撮られるなんて!
「ママ? もう帰るよ?」
振り向いて、息子の前を通り過ぎ、車に向かった。本当に腹立たしかったし、怖くもあった。フランクは、あの写真を消去すると言って、わたしにどんなことをさせるつもりなのか、それが怖かった。
家に帰る車の中、息子は何度かわたしに話しかけていたけど、わたしは一言も言葉が出なかった。話したかったけど、息子の助けを必要としていたけど、それができなかった。わたしが彼の友だちとやってしまったと知ったら、息子はわたしのことをどう思うだろう? それが怖かった。
つづく
僕はくすくすと笑った。「本当に驚いたわ。誰か男がここに入ってきたのかと思ったくらい。どんな形をしているのか見せてくれる?」
ええいいわよ、と言うのを聞いて、僕は身体を起こし、アンジーの脚の間を覗いた。そして、その姿を見て、かなりショックを受けた。
アンジーの女性的な丸みを帯びた腰の中央、股間からにょっきりとディルドが突き出していた。ベルトが1本ウエストに巻かれていて、別のベルトが1本脚の間に伸びていた。その2本のベルトが交差する部分に三角形の革製のものがあって、そこにディルドが装着されていた。
後で知ったことだけど、そのディルドは双頭型で、アンジーは長い方を僕に使い、短い方を自分の身体に入れていたと言う。短い方には茎の部分に突起がついていて、それが彼女のクリトリスを刺激するようにできている。その刺激がアンジーにオーガズムを与えていたのだった。ディルドは輪のような仕組みでストラップオンに固定されていた。それを使えば、ディルドを洗浄するために取り外したり、別のディルドに交換することもすことも容易になるのだった。
だけど、本当に驚いたのは、そのディルドの大きさだった。少なくとも20センチはあって、僕のペニスのほぼ2倍に近かった。それに太さも2倍近く。こんなのを傷つけずに僕のアヌスに使ったことが信じられなかった。
一通り見せてもらった後、再び横になり、アンジーの腕の中に包まれた。
「それで? どう思った?」
「恐ろしいわ。あんなのを私の中に入れてたなんて信じられない」 と彼女のすがりつきながら答えた。
アンジーは僕の額にキスをした。
「そういうわけで、使う前は、あなたに見せなかったのよ。見せてたら、あなた、たぶん怖がって、身体を強張らせていたと思うから。私がした方法がベストだったと思うけど、どう?」
「そうだと思う。でも、まだ怖いわ」
アンジーは僕の声に恐怖の色がついているのを察知したと思う。僕を強く抱きしめて、言った。「心配しないの、大丈夫だから。あなたをわざと傷つけるようなことは絶対にしないから」 と僕にできる限りの情熱的なキスをした。
キスを終えた後、アンジーは僕の衣類を脱がし、ふたりでシャワーを浴びにバスルームに入った。バスルームの中、アンジーは僕にディルドを抜いてくれるように頼んだ。多分、そうすることで僕が怖がらなくなると思ってのことだろう。
それでも、それが本当に大きいのを見て、やはり少し怖かった。それに、このような本物に近いペニスを両手に持って、ちょっと変な感じもしていた。そういうことをそれまでしたことがなかったから。
ディルドを装着具から外した後、それを洗うのは僕の役目とされた。その時になって、アンジーが僕に事前にアヌスを洗浄しておくように求めた理由が分かった。洗っておかなかったら、それは僕の汚物で汚れていたことだろう。
それを洗浄した後、アンジーと一緒にシャワーを浴びた。それからふたりでパンティを履き、ナイトガウンを羽織って、ベッドに横になった。少し抱き合ってキスをした後、ふたりとも眠りに落ちた。
翌日の日曜日は、アンジーの指示で、身体を休める日となった。彼女は、ゆったりとした茶色のスウェット・パンツと白のTシャツ、白のソックスという装いを選んだ。僕はピンク色のスウェット・スーツとピンクのTシャツを着せられた。そのTシャツは丈が短く、お腹のところが露出するものだった。足にはピンク色のスリッパを履かされた。日曜日なので、コルセットやウェスト・シンチャーは着る必要はなかった。ただ、スウェット・スーツの中には、もちろん、パンティとブラジャーをつけていなければならなかった。
その日はずいぶん気温が下がった。それまでで一年のうち最も寒い日になった。朝食を済ませ、少し家の掃除をした後、アンジーと僕はカウチに寝そべって、テレビを見ていた。もちろん、テレビを見るだけではなく、時々毛布にくるまってキスしたり、抱き合ったりもした。
それにソファの上で愛し合ったりもした。僕がアンジーの乳房を吸って、彼女に絶頂の声を上げさせたのが2回か、3回。彼女が僕のペニスを舐めて、彼女の口に射精させたのが2回。僕たちは、僕が彼女の口に出した後はいつも、ふたりでそれを口移しで分け合うことにしている。
その夜、僕は初めてアンジーにアナルセックスをした。あそこに比べアナルの方が締まりがあるのを知り、こちらの方が気持ちいいと思った。アンジーもアナルの方が好きだと言っていた。行為をされながら、肛門筋で僕のペニスを締めつけられるからと、そのおかげでふたりとも快感を感じられるからと。
僕がアンジーのアヌスにセックスするのも、彼女のディルド・ペニスが僕のアヌスにセックスするのも、その週末が最後ではないだろう。
つづく
「生まれつきの女たちも私たちを見に来るのよ」とダイアナは打ち明けた。「あの女たち、私たちのパフォーマンスや完璧な見栄えを食い入るように見ていくの。私たちがあの人たちの男に手を出したりしたら別だけど。あの大人数のグループはバースディ・パーティか、結婚式前の女だけのパーティで来た人たちだと思うわ。たいてい、ここで遊んだ後は、街に行って男性ストリップを見に行くのよ」
「彼女たち、何というか…」 僕はためらいがちに訊き始めた。
「デートするか、って?」 ダイアナは僕が言おうとした言葉を言い、意味ありげに微笑んだ。「時々、そういう人いるわね。数は少ないけど、隠れレズビアンの女性たち。ここの女の子は実際は男なんだから、女とセックスするわけではないって自分を納得させてる人たち。あとは、ここに来てる男性客とおなじで、ペニスを持ってる女にそそられる女性客かな」
「君もデートしたことがあるの?」と僕は純粋に好奇心から訊いた。
「もちろん」 とダイアナは嬉しそうに答えた。「あの人たちも、男性客とおなじくらいカネ払いがいいから。それに加えて…」
ダイアナは、そう言いながら、今やかなり魅力的な形になっている僕の尻頬を撫でた。
「…私も女の子が好きだし。セクシーで、オンナオンナしてたら、もっと好き。あなたも今は理解できると思ってるけど?」
彼女に触られ、僕はお尻をくねらせた。
「私もセクシーかしら?」 とわざと女の子が甘えるような声で訊いた。
「ああ、知らないのはあなただけ」 と彼女は僕の耳元に囁いた。
そんなポジティブな応援を受けて、僕もこの遊びに夢中になり始めていた。
カウンターバーを見て驚いた。不思議なことに、カウンターの前に二つだけ並んでスツールの椅子が空いていたからだ。そこに近づくにつれて、どうしてその椅子が空いていたか理由が分かった。それぞれのスツールの上に、白いプラカードが置いてあり、流れるような筆跡で「予約済み」と書いてあったのだった。
ダイアナはスツールの一つに近寄り、プラカードを取り、シートと背もたれに毛皮のコートをかけた。そして、玉座に座る女王のように堂々と腰かけた。それからもう一つのスツールからもプラカードを取り、僕に座るよう合図した。そしてプラカードをバーテンダーに渡し、カペジオのバッグをバーの上に置いた。
「リッチー、ありがとう」 ダイアナはとても心のこもった笑顔をしながらバーテンダーに言った。「私のために、このバッグを預かっていてくれない? それから、私のガールフレンドがカミング・アウトしたお祝に、何か特別な飲み物を探してきてくれない?」
僕は、こっそりとバッグからお札を二枚取り出して、その手をリッチーにしかみえないように背中にまわした。彼は差し出された紙幣を目立たないように受け取った。紙幣にベンジャミン・フランクリンの肖像画がある(つまり100ドル紙幣である)のを見て、僕にウインクをした。
「うちには特別な時のために、テタンジェ・ブラン・ド・ブラン(
参考)のボトルを用意してあるんですよ。この機会にお勧めできると思うのですが、ミス…」
「リサです」 純粋に感謝の気持ちから、僕は甘い声で答えた。女性の声にするのを忘れなかった。「リサ・レイン。とても素敵だわ、リッチー。ありがとう」
「あなたにご奉仕できて光栄です、ミス・リサ」
正面を向いてリッチーと対面し、彼の手に軽く手を乗せた。そして、できる限りまぶしく明るい笑顔をして見せた。
「あなたにご奉仕していただいて私も嬉しいわ、リッチー」
リッチーは顔を真っ赤にさせ、うつむき、何か心からの感謝の言葉を呟いた。そして、そそくさとシャンパンを探しに駆けて行った。ダイアナは、感心した面持ちで僕に微笑みかけていた。
「とても上手なあしらい方だったわよ」とうっとりした声で言う。「でも、おカネの使い方は勉強しなきゃダメね。今夜は一晩中、私たち、男たちにおごられるわよ。待ってればすぐ分かるから。ところで、さっき、リッチーがあなたにご奉仕できて光栄だと言ったけど、あの言葉、文字通り受け取るべき。彼、すごくMっぽいところがあるの。それにあなたにぞっこんになってるみたいだったし。どうやら、あなた、最初の征服を成し遂げたようね。自分専用の可愛い奴隷男を使って何をしようか、ちゃんと考えてある?」
そんなこと考えてもいなかったので愕然としてしまった。僕は実際、何もしなかったのに。こんなに簡単なわけがないじゃないか? 男性の時は、女の人に僕に関心を持ってもらうことは、まるで錆びたペンチで歯を抜くような大変なことだった。男というものはすべて、美しい女性にはこんなに簡単に操られてしまうものなのか? それに、僕はいったいいつから、自分のことを「美しい女性」と思い始めていたのか?