ドニーの話し私はアンドリューと子供たちと一緒に過ごす時間が大好き。子供たちがそばにいる時は、アンドリューはあまりしゃべらない。彼の代わりに、子供たちが彼の言葉をしゃべってくれる。これがとても笑える。アンドリューは、もうあきらめたみたい。
子供たちは18カ月ごろにちゃんとした話しをし始めたが、最初から、完全な文で話しをしていた。この子たちが自分たちが話していることをどこまで理解しているのか分からないけど、ともかく、たくさん喋っている。
ある日曜日の午後、私たちは小部屋でくつろいでいた。アンドリューはいつもの通り、ビッグマックとビールを手にアメフト試合を見ていた。彼は、ビッグマックに関連して彼が欠点を持っていることは自覚している。あれを食べるべきではないと知っている。だけど、それは伝統だからと。彼は自分の伝統を重視しているのだ。
子供たちは床に座って、レゴで遊んでいた。4人ともとても可愛い。ブロンドの髪、青みがかった緑の瞳、それにえくぼ。声はとても愛らしい。その声でアンドリューの考えてる言葉が出てくる。ほとんど卒倒しそうな言葉が。
心配しているのは、エマがドリスの前で4文字言葉を使ってしまい、ドリスを唖然とさせたことがあるのじゃないかということ。子供たちの中でエマが一番のトラブルメーカー。エマは何を言ってよくって、何は言ってはいけないか、ちゃんと分かっているはず。エマは、私たちの反応を見るのが好きなのだ。私が4人の中からエマを選び出すことができるのは、エマがそういうことを言う時だけ。エマの顔かたちでは分からない。どんなことを言うかでしか分からない。
アンドリューはとうとうファルコンズの試合を見始めた。それまでブラウンズにご執心だったのだが、それは自己崩壊に瀕していた。
というわけで、小部屋の中、アンドリューはテレビで試合を見ていて、子供たちは遊んでいて、私はみんなのことを見ていた。
エマがレゴのピースを二つくっつけようとしていた時、突然、叫んだ。
「マイケル! その馬鹿ボールを投げろよ!」
すると別の子が言った。「どうして、マイケルは馬鹿ボールを投げなくちゃいけないの?」
また別の子が答えた。「体当たりされたら、怪我するかもしれないから。そうなったら、ファルコンズは、馬鹿ブラウンズと同じレベルになってしまうから」
アンドリューは一度も口を開かなかった。じっとテレビ画面を見たまま。まるで私たちがそばにいるのに気づいていないように振舞ってる。
ひとりが私に訊いた。「ママ? ハーフタイムになったら何をするつもり?」
私はその子を見つめた。何と答えるべきかしら?
「ママは、パパがハーフタイムにしたいと思ってることなら何でもするつもりよ。いつもの通り」
エマが自信を持って言った。「ママとパパは一緒にヤルつもりなの」
とうとうアンドリューが口を開いた。
「エマ? 君はママに恥ずかしい思いをさせているよ。そのことは前にも言ったはず。パたちに気を使ってくれないかな? ハーフタイムの時はパパとドニーママの邪魔をしないでくれないか。その代わり、ディ・ディママのところに行って邪魔をするといいよ。ディ・ディママは4人のいたずら娘がやってきて、30分間、とことん邪魔をしまくるのをとっても嬉しいと思ってくれるはずだよ。その30分の後だったら、戻ってきて、パパの邪魔をしてもいいから」
エマが答えた。「でもパパ? 私たちパパの邪魔はしないわ。パパは、私たちのこと面白いと思っているもの」
「でもハーフタイムの時、ドニーママとパパだけにしてくれないと、パパを邪魔してることになるんだよ。だからお願いだよ」
エマはにっこりほほ笑んだ。「心配しないで、パパ。私たちはディ・ディママのことをお世話するわ。その間、パパはドニーママのお世話ができでしょ」
エマは、本当にマセたいたずら娘。この子が10代の娘になって、デートを始める頃が待ち遠しいわ。その時は、思いっきり恥ずかしい思いをさせてあげるから! その時が来るまでは、私は苦笑いして、我慢するしかなさそうね。
ようやく、ハーフタイムになった。試合は接戦だったので、30分しか余裕がないのが分かっていた。アンドリューは、接戦の場合、セコンド・ハーフを見そびれるのをとても嫌がるのである。
子供たちはキッチンに入って行った。キッチンではディ・ディがだらだらと夕食を作っているところだった。キッチンには、ドリスが気分転換のために彼女の洞窟のような居場所から出てきていて、キッチンテーブルのところに座って、時々、ディアドラの料理のやり方に批評を加えていたところだった。
だが、子供たちがキッチンに走って入ってくると、とたんにドリスはいそいそと退却した。多分、ディ・ディはほっとしたことだろう。ドリスは、私たちが何かをするとき、それが間違ってると思うと、ちょっとだけ口やかましくなるのである。
父親の後ろをついて、スクリーンドアを出た。バタンと玄関ドアが閉まる音を背に、新車のキャラバン(
参考)へと向かった。
父親がドライバー席側のロックを外し、続いて助手席側も開け、俺たちは乗り込んだ。早速、父親はエンジンをかけた。
「すごい!」 と明らかに手の込んだインテリアを見回しながら、俺は声を上げた。
レザーのシーツはとても柔らかく、エアコンも最高だ。俺は手を伸ばして、ラジオのスイッチを入れた。まだ何もセットされていないようだったので、父親のために俺がセットした。ボリュームを上げたが、その音量に俺自身も腰を抜かしそうになった。
「ひゅーッ!」 と声を上げ、笑って父親を見た。
父親は耳を塞いで、「聞こえないよ!」と叫んでいたが、顔は笑顔のままだ。
後部座席をチェックしてる間に、父親はラジオの音量を下げていた。そしてエアコンを切ってから、エンジンを切った。
「で、どうだ?」 と父親はイグニッションからキーを抜き、俺に訊いた。
「前のよりずっといいよ」 俺はドアを開け、そう答えた。
新しいバンから降りると、父親はすぐに車にロックした。俺はポケットに手を入れ、ついさっき、譲ってもらったばかりのバンのキーを取りだした。
「ああそういえば、あの車、今日、プロの人に清掃してもらったぞ」 と家に戻りながら父親が言った。
「ありがとう」 と興奮しながら答えた。
「それに満タンにもしておいたから」と父親は付け加え、玄関ドアを開け、家に入っていった。
俺は早速、譲ってもらったバンのロックを開け、運転席に乗り込んだ。とたんに、ワクワクするようないろんなアイデアが頭の中を駆けめぐった。特に、荷台部分の両サイドにある鉄製の柱を見て、興奮した。本来は荷物がずれないようにロープで結えつけるための鉄柱だが、他にも使えそうだ。このバンにはいろんなことをしたい。だが、それにはカネがかかる。かなりのカネが。
すぐにステファニのことが頭に浮かんだ。分かっていようがいまいが、ステファニは俺の新しいバンの経費を賄うことになるのだ。そして、もし手ぶらでやってきたら、ステファニこそが、このバンの荷台に乗ることになる最初の女になるのだ。
バンの中がとてもきれいになっているのを見て驚いた。座席の布地も清潔だし、ダッシュボードも染み一つない。荷台の方をもう一度見た。こっちはいろいろ装飾を加えなくちゃいけないなと思った。
ここにブラッドの母親が乗った姿が想像できた。両手首、両足首に拘束具をつけ、バンの左右に結び付けられている姿。脚を大きく広げ、その付け根でおまんこがぱっくり口を開けている。カネが必要になったら、どこかにこの車を止め、その気がある若い男に声をかけ、奉仕の代金をいただくというわけだ。そんなことを思い、思わず顔がほころんだ。
だが、それはまだ先の話しだ。妄想はそのくらいにして、俺は車から降り、家に戻った。夜が近づいてきてるので、とりあえず、一度仮眠をしておきたかった。家に入り、リビングルームに入ると、父親は椅子に座って眠っていた。俺は静かに横を通り抜け、自分の部屋に戻った。
続く20分のうちに、左右の耳に繰り返し何かをチクチク刺された。どこか蜂の群れが耳のそばで静かに飛んでるような感じだった。いくつも手が伸びてきて、耳にできた針穴を消毒水に浸した綿棒でトントンと叩いていた。その後、両耳に何かを繰り返し取り付けてる感じで、どんどん重さが増していった。
「髪をつけなくちゃいけないわね。誰かヘアを持ってる?」
一斉に声が上がり、部屋中に轟いた。
「私、持ってるわよー」 ステージドアに通じる階段の方から、やかましい声が聞こえてきた。「どうやら、ヘアのところには間に合ったようね。お手伝いできてうれしいわ」
「ミミ、あなたは本当に可愛いわ」 イアナは、いかにも感謝してるようで、お世辞を言った。「手助けして欲しいの。あなたはヘア関係については何でも知ってるでしょう? スペシャルな感じにしてほしいのよ」
「スペシャルね、オーケーだわ。『ショーガール・デラックス』のブリーチ・バニー・ブロンドで行くわよ。彼女の瞳はベビー・ブルーだから、すごくマッチして、最高になるはず!」
椅子がくるりと回されて、上向きに傾けられた。今は鏡が見えない方向を向かされている。僕の長い髪は後ろ側にブラシをかけられ、その後、まとめられて網のネットをかぶされ、ぴっちりと押さえられた。その上からブロンドの長い髪のかつらを被せられた。それから、ボビーピンがいくつか出てきて、パチン、パチンと音がして、かつらと僕自身の髪の毛をつなげた後、きちんと固定された。一度、仕上げに頭を後ろに強く振られたが、髪はしっかりと固定されていて、まったくズレることはなかった。
ある種のチョーカーのようなものが首に巻きつけられ、首の後ろで固定された。かなり幅のあるチョーカーで、首がすっくと伸びる感じだった。左右の手首にはたくさんの腕輪がつけられた。さらに手の指にも足の指にも指輪がはめられた。無毛の脚にに再びストッキングがするすると登ってきて、履かされた。
その後、両側から助けられて、椅子から立たされた。左右の二人から手が伸びてきて、ストッキングのしわを伸ばし、ちゃんと揃えた後、ガーターの留め具に装着。左の足首に鎖状のアンクレットを二重に巻かれ、留められるのを感じた。
それから、足を片方ずつ持ち上げられ、ダイアナの素敵なラベンダー色のスエード・ミュールを履かせられた。ずいぶんヒールを履いて歩いた経験は積んだものの、このハイヒールのミュールでは足の親指の付け根だけで歩くわけで、ふらふらしてしまい、バランスを取るだけでも本当に大変だった。
最後の仕上げとして、香水をふんだんに振りかけられた。シェリーによると「オブセッション」(
参考)という名の香水だった。この香り、クラブで出会った女の子たちがしていたのを思い出す。「妄執」という名のその香水は、男たちに引き起こす反応からすれば、まったく適切な命名だ。
僕を見て、称賛する「うー」とか「あー」とかの声が一斉に上がった。
「完成!」 とダイアナが勝ち誇って宣言した。「ほんとに見事だわ。さあ、あなたの究極の改造のデビューよ、準備はいい?」
そういうなり、ダイアナは優しく僕の両肩に手を乗せ、ゆっくりと椅子を回し、僕を初めて鏡の方に向かわせた。ダイアナは少なくともある1点については大成功を収めたと言える。鏡の中、赤い口紅を塗った口をあんぐりと開けて僕を見つめている過剰すぎるセクシーな女。僕の母親ですら分からないだろう。それは確実だ。
「過剰すぎる」と言ったのは、毎日普通に職場や街で見かける女性たちと比べての話しだ。舞台に上がるショーガールの化粧は、僕を取り囲んでいる彼女たちの嬉しそうにニコニコしている顔と完全にマッチしていたと言える。