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報復 第10章 (3) 

「まず最初に、私は、他の男性と付き合おうと自分から決めたわけではなかったの。そういうことをしたいと、自分から思ったことはなかった。・・・もう、今でもなかなか話しづらいことなんだけど・・・」

「・・・ええ、確かに悪いことだとは知っていたわ。でも、そういうことをするとどうなるか・・・どんな犠牲をもたらすかを考えてみることもなかったのも事実。結果については一度も考えなかった。すべて、その時点、その時点で悩んでいたことが何であれ、その悩みに対する精神的サポートを得て、悩みから手っ取り早く立ち直りたいという一心だったの。なぜ、そんなサポートを求めたか、どうしてサポートを与えてくれる人としてあなたがいたのに、あなたのことに目を向けなかったのか。そのことについては、考えるたびに、悩んでしまうわ・・・」

そう言ってバーバラはスティーブの手を握った。最近、このように彼の手を握ることが自由にできるようにバーバラは感じていた。スティーブも抵抗したり、手を引っ込めたりはしなかった。今は、二人で一緒に問題を解決しようとしている。バーバラは、ゆっくりと話しを再開した。

「・・・不倫をしようと自分から決めたことは、一度もなかったの」

バーバラは、意識的に決意してからでないと、自分が行ったことを言い表す「不倫」という言葉を使うことができなかった。この言葉、簡単に使えるようには決してならない。バーバラはこの言葉が嫌いだった。

「・・・あのような結果になるまで、何ヶ月もかかったわ・・・一回、一回についてはほんの少しずつだった・・・でも、その小さな進行が100ほど積み重なって、自分でもどこに向かっているのか分からない方向へ進んでいったの。そして、ある時点になって、自分が行っていることは悪いことだと悟った時が来た。でも、その時には、もう思考が全然はっきりしなくなっていたのよ。すべてがあまりに混沌としていた。1年くらいの間、ずっと混乱していたし・・・道も見失っていた・・・。そして、私は事態がどんどん悪くなっていくのに任せてしまうようになっていたの・・・流産した後は、特に・・・」

「・・・他の男たちが私をちやほやするのを止めようとしなかった。私のことを、まだ綺麗だとか、魅力的だとか、賢いとか、何でもいいけど、そう言って私をおだてるのをそのままにしていた・・・ジミー・ロバーツとラファエル・ポーターは、私がかりそめの間であれ精神的に必要としていたことに気を使ってくれたわ。ジミーの場合は、単に私が彼の口説きの言葉を聞くだけの段階を超えた間違いをしてしまう前に、あなたが彼をピシャリと排除してくれた。レイフについても、あなたがそうすることができていたらと良かったのに・・・」

「・・・でも、これは前にあなたに言ったわね・・・あなたが私にそのようなことを言っていた時、私はあなたに耳を貸さなかった。私は間違っていたわ。バカだから、あなたの話を聞こうとしなかった。頭がおかしくなっていたのか、どういうわけか、私は、あなたは自分のことしか考えていなくて、ああいうことを言っているのだと思い込んでいたの・・・どうして、そう思い込んだのか、今ではさっぱり分からないのよ・・・」

「・・・私は、ずっと未熟だったと思う。あなたが思っていたよりも、それに私が思っていたよりも、ずっと未熟だった。気持ちが不安定だったし、同時に、怠惰でもあった・・・あなたとの関係を改善するために、自分から何とかしなければいけないということすら知らなかった。二人が愛し合ってさえいたら、それだけで『めでたし、めでたし』の状態になると考えていた。あなたと最初に喧嘩をした時、打ちのめされたような気持ちになったわ。ものすごくショックを受けたの。その時の気持ちを話せる人もいなかったし、どう話したらよいかも知らなかった・・・」

「・・・結婚する前に家で見て育ったのは、父と母がいつもとても仲良くしていたこと。二人が愚痴を言ったり喧嘩をしたりするところは一度も見たことがなかった。私は、それが当たり前だと思っていたの。今は、両親が、私やキンバリーが見えないところで口喧嘩を繰り返していたことを知っている。でも、それに気づいた時は、遅かったわ。もう私には参考にならなかった。口喧嘩をしたとして、どうやって、それを乗り越え、夫婦生活を軌道に戻すために努力し続けるべきなのか、それを私は知らずに大人になっていたの」

バーバラは、理解を求めてスティーブの瞳を覗き込んだ。


[2009/10/06] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)