30分後。マリイとジムはすでに帰っていた。リンダとブルースはパティオに戻って、寝酒代わりのお酒を飲むことにした。グラスを持ってブルースが腰を降ろそうとした時、リンダが頼みごとをした。
「ねえ、あなた? 昨日の夜ここで使った、あの毛布、持ってきてくれる? ちょっと、肌寒いの」
リンダは、あの毛布のことを言うと、ブルースが顔を赤らめるのを見逃さなかった。この人、寝取られの輪の中に入った後は、どんなふうに変わるんだろう?
両膝を毛布で覆うと、リンダはグラスの縁を舌で舐めながら、夫の顔を見つめた。ブルースは、意味深な顔で妻に見つめられ、落ち着かない顔になった。リンダが何を考えているのか分からず、目を逸らし、伏せ目になった。その反応に、リンダは内心、満足した。
「それで、ジムとのおしゃべりは楽しかった?」
「あ、ああ」 ブルースは、何気なさをつくろって、返事をした。
「何について?」
「知ってるだろ・・・輪のパーティのことだよ」
「それで?」
「何が?」
「ブルース! からかうのはやめなさいよ! どう思ったか訊いてるの!」
ブルースは妻の声の調子に、驚き、たじろいだ。
「あ、ごめんよ・・・うう・・ああ、興味深かったよ。ジムは、あれでOKなようだった」
「で、あなたはどうなの?」
「どういう意味だ?」
リンダは肩眉をちょっと吊り上げて彼を見た。それだけで、ブルースには、リンダが彼の言い逃れを気に入っていないことが分かった。
「あ、ああ・・・分からない。本当に普通と違うし・・・」
「ええ、もちろん、そうね。ジムは、自分の妻が黒人男たちにやられるのを、どう感じたのかしら?」
「リンダ! そういう言葉使いをしなければいけないのか?」
「質問に答えればいいのよ!」
ブルースはしばらく黙っていたが、ようやく口を開いた。
「まあ・・・雰囲気としては、ジムは・・・ほとんどマリイを誇りに思ってるようだったよ」
「そもそも、そこの男の人たち、私なんかに興味を持ってくれるかしら?」
「お前、冗談を言ってるんだろう?」
リンダは脚を組んだ。ブルースを刺激するためである。
「マリイが言っていたけど、そのパーティに来る黒人の男性たちって、最高クラスに逞しい身体をしているばかりでなく、とてもハンサムらしいのよ。彼らの方が女性を選べる立場にあるんですって!」
「お、お前、まさか?」
「とにかく・・・」 リンダはブルースの言葉を遮った。
「とにかく、どういう人たちが来るのかを見るためだけでも、一度、そのパーティに行った方がいいと思うわ。面白そうだし。パーティに出ても、何もする必要はないのよ。ただ、飲み物を飲んで、このパーティが私たちに合っているいるかどうかを決めればいいんだから。でしょう?」
「まあな・・・」
「輪のことについてはジムは言っていた?」
「ああ」
「私は面白いアイデアだと思うわ!」
「まあ、そうだな。もちろん、お前は輪の方には出ないだろうけど」
「ええ、出ないわ。だって、そのパーティの方は、白人の人妻と黒人男性に特化ものだし。でも、ジムやビルはとっても素敵よね。自分の妻のマリイやサラをしっかりサポートして、自ら進んで輪のパーティに連れて行ってるんですもの。本当の意味で、妻に献身してると思うわ。それに、自信に溢れた行為だとも思う。男性としての自信がなければ、できないことだもの。素敵だわ」
「多分、お前の言うとおりだとは思うが・・・」
「で、どうする? ちょっと顔を出して、どんな感じか見てくる? もしつまらなくて、飽きちゃったら、早々に切り上げて、映画を見に行ってもいいし」
「ああ、そうするか。まあ、映画も楽しそうだが」
「あなた、本当に大丈夫ね? パーティについて? もし、心づもりができてないとしても、私は理解できるわよ」
「いや、いや、大丈夫だよ。ジムやビルが大丈夫だと言ってるんだから、大丈夫なはずさ」