彼は服を脱ぎ始めた。まあ! 完璧な身体をしている。引き締まって強靭そうな筋肉。平らなお腹。大きな胸板。その素敵な胸板には、遊ぶのにちょうど良いほどの体毛。私の目は、ずっと避けようとしていたところへと向かっている。彼のアレ。彼は、あの大きくて怒った代物を小さな私の中に合わせ入れようとしてるの? そんなことできるの? 私は、アンドリューに伝えようとし続けていた。やめて欲しいと、そんなようなこと。だけど彼はやめたくないようだった。
そして、その時、彼はあそこに来ていた。再び彼の両腕に包まれていた。あの怪物が私のあそこの唇に侵入してくるのを感じた。私は気絶してしまうと思った。押してきた。大きすぎる! ぐいぐい押し入ってくる。強く。私も堪えられなくなっていた。私も彼が欲しい。ものすごく。彼のことを知らないけれど、彼のことを愛している。意味をなさないけれど、私たちは同一なのだ。ディ・ディが彼を愛しているのに、私が愛さないことなど、どうしてありえるの?
水曜日の夜から、私はこの瞬間のことを夢に見てきていた。あの大きなものが完全に私の中に納まったときには、すでに私は最初の絶頂に達していた。彼は、それに気づきもしていないよう。私の最初のクライマックスの間、彼はパワー全開で動き続け、私はすでに2回目のオーガズムに近づいていた。こんな感覚は初めて。私は悲鳴を上げていた。私が最後に悲鳴を上げたのは12歳の時。ディ・ディと一緒に映画館で「エイリアン」を見た時。あの怪物が餌食の一人に飛び掛ったとき、二人一緒に血も凍るような悲鳴を上げて、お客さんたちの半分近くを震え上がらせた。
でも、今の悲鳴はあの時の悲鳴とは種類が違う。この悲鳴は、情熱が完全に解放されたときの悲鳴。私が悲鳴を上げて情熱を解き放つたびに、アンドリューは、私にさらに情熱を加えるよう強いた。私に快感をもたらそうと飽くなき追求を続けるアンドリュー。その彼を止めるものは何もないように思えた。
彼は、自分の所有物のように私をむさぼっていた。私を自分のものにしなければいけないかのように、私をむさぼり続けた。私も彼に自由に使ってもらうように彼に自分を捧げていた。彼に私を所有して欲しい。
永遠とも思えるエクスタシーの連続の後、とうとう、私の中の彼が膨張するのを感じた。そして次の瞬間、私は彼の種子液でいっぱいにされていた。すごすぎる! 私はまたも絶頂に達した。あまりの情熱に死んでしまいそうになるほどの強烈な絶頂だった。
昇天した心と身体が地上に戻るのをうっとりと待ちながら、水曜日の夜にディ・ディが言ったことを思い出していた。その言葉が私の唇から漏れた。
「デス・バイ・ファッキングって言ってた」
絶頂の後の至福のひと時の間、アンドリューは私を抱きしめたままでいた。でも、私の意識は私を休ませてはくれなかった。何と恐ろしいふしだらなことをしてしまったのだろうと。この男性に、いまだ、一言も話していないのだ。にもかかわらず自分のすべてを彼に捧げてしまっている。しかも、人違いであることを伝えずに。彼は、私がディ・ディでないことを知らない。たったいま行ったことは悪いことだと知っているのは私だけ。
私は泣き始めた。抑えられなかった。とても恥ずかしい。罪深い。彼をだましてしまった! 私が正直になっていないのに、どうして彼は私を愛せるだろう? ディ・ディは、自分のボーイフレンドとためらいもなくセックスするような妹を、どうして愛せるだろう? 私はとてつもない人でなしだ。
アンドリューはとてつもなく素敵だった。私を抱き、慰めてくれていた。私を愛していると言った。私は、本当のことを説明しようとした。だけど何を言っても彼には関係ないようだった。ずっと昔から私を愛してきたと言っている。最初からからずっと私たちは互いに知り合っていたのだと。彼は愛の詩人だ。彼の腕に包まれて、私は溶けてしまった。
また固くなっている! この人の情熱は限界を知らない! また私の中に滑り込んできた。そして私も抑えられなくなる。突然、火がついたように身体が燃え、淫らな気持ちになる。彼がたった一度、出し入れしただけで、私は再び絶頂に達していた。
その時、彼女の声が聞こえた。
「二人とも、少なくとも、私が紹介するまで待てたはずじゃないの!」
ディ・ディがバスルームのドア先に立っていて私たちを見ていた。
恥ずかしさと罪深さに、私は目を閉じた。死んでしまいそうだった。
「俺は、パリのデザイナーの準備が整うまで、とりあえずの衣類を一揃い用意させ、お前が自由に着てよいようにする」
レオンが小部屋のドアへと歩き進むのを、イサベラは、大きな緑の瞳で追った。レオンはドアに近づくと、一瞬、振り返り、乱れた姿のまま床に座るイサベラを見た。
「この城は、お前が好きなように使ってよい」
レオンはドアをわずかに開けたまま、小部屋を出て行った。イサベラは、くねった石段を降りていくレオンの足音を聞いた。その足音は次第に小さくなって、やがて消えた。
イサベラは呆然と宙空を見つめ、床に座ったままでいた。レオンの行動は何だったのかを理解しようとしていた。
その時、両腕に一杯、可愛いペチコートやガウンを抱えてメイドが入ってきた。イサベラは、そのメイドがミナという名前で、彼女専用のメイドであることを知った。
メイドに服を着せられながら、イサベラは妙に居心地が悪い気持ちだった。
若いミナは、気ままにぺちゃくちゃとおしゃべりをしながら、イサベラの細身の身体にレースのシュミーズを着せ、小さな手で皺を伸ばし、ペチコートを履かせ、腰の周りにリボンを結びつけた。さらに、両腕をガウンに通させ、腕を上げさせて、ガウンの皺を裾まで伸ばした。その間、イサベラは沈黙したままだった。
幽閉されてから、ずっと全裸のままにさせられていたイサベラである。衣類を身につけたのは、もうずっと前のことのように思えた。長い時を経て、ようやく肌に布地をまとうのは、特に、固い乳首が布地に擦られた時に、特別な感覚を彼女に与えた。そして、ずっと自由に素肌を空気にさらしていただけに、衣類で身を包むのは、痛みすら感じるほど窮屈に思われた。
衣類に身を包んだ後、イサベラは初めて幽閉されていた部屋から外へ踏み出した。こんなに頭の中が混乱し、不確かな気持ちになったことはなかった。
レオンは謎の存在だった。実像を掴むための手がかりがいくつも欠けた謎の存在。今までは、少なくともレオンが自分に何を求めているかだけは分かっていたつもりだった。彼は私の処女を奪い、父に対する復讐の手段として、私の体内に彼の忌々しいものを注ぎ込み、植えつけるというたった一つの目的のために、執拗に私の身体を奪い続けたのである。レオンはもうその目的は達成したと思ったのだろうか? それが理由で、私に自由を許す気になったのだろうか? もはや、強引に私を奪う必要を感じなくなったから? 近々、私をここから出すつもりでいるのだろうか?
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