「良かったわ。きっととても興味深いはずよ。ところで、こんなにセックスに関する会話をしていたので、私、すごく興奮してしまったわ。ねえ、ブルース? ちょっとお願いがあるんだけど、いい?」
「なんだい?」
「あなたの素敵な舌でいかせて欲しいの。お願い。ここで、いますぐ。いいでしょう?」
「ここで?」 ブルースは呆気に取られた。「人に見られちゃうよ」
「大丈夫よ、もう、こんなに暗いんだから。それに、この毛布を脚の上に広げるつもりだから。その中にもぐりこんでくれたら、誰も、見ようとしても見えないわ」
「でも、どうかなあ・・・」
だが、リンダはこれ以上、この件についてブルースと話し合ったり、駆け引きをしたりする段階は過ぎていた。すでに決め込んで毛布を脚に広げていた。毛布の裾はパティオの床まで届いている。リンダは毛布の裾を手にして、捲りあげた。中では両脚をM字型にぱっくり広げていた。
「さあ、ブルース! 早く!」
ブルースは、こんなに鋭い口調でリンダが言うのを聞いたことがなかった。加えて、彼女が、これ以上、大きな声を上げたら近所の関心を惹いてしまうのではないかと恐れた。しかたなく、彼はリンダの前にひざまずいた。
「わかったよ。落ち着いて」
「急いで!」
ブルースは素早く毛布の中にもぐりこんだ。妻の脚の間を這い上がり、陰部に顔を寄せた。毛布越しにリンダが頭の後ろに両手を当てて、自分に強く引き寄せるのを感じた。すでに濡れきっている肉穴を舐め始める。
「あああ・・・いいわ、その調子」
リンダが声を小さくし、柔らかな声音になるのを聞いて、ブルースは安心し、舌先を硬くして、中に差し込んだ。
リンダは天国にいるような気分だった。たとえこの話しから何の結果も得られずとも、ともかく、ここパティオで夫をひざまずかせ、口で奉仕させている。リンダは甘い声で夫に語りかけた。
「ねえ、あなた? サラと黒人男の話しをしていたら、私、すごく興奮してしまったの。私、いったいどうしてしまったのかしら? もし、サラじゃなくって私だったらって、想像できる?」
リンダは、自分の発した言葉で、脚の間にいる夫の努力が倍化したのに気がついた。こんなにも夫をコントロールしていると感じたことはいままでなかった。
「むむむむ・・・」
毛布の中からは、そんな音しか聞こえてこなかった。ブルースの舌は妻に喜びを与えることに夢中になっていて、実際の言葉に似た音すら発せられないのである。
だが、それはそれでリンダにとっては良かった。夫の言葉が聞こえてきたら、自分の妄想が台無しにされてしまうだろうから。サラに初めて黒人男のことについて聞かされて以来、ずっと頭から離れなくなっている、あの妄想。確かに、今、自分に快感を与えているのは、夫の舌なのだけれども、想像の中では、それはもっと大きくて、もっと黒々とした何かだった。そして、その何かは、本物の男が持っているもの。
その時のリンダが知らなかったことがある。それは、まさに同じイメージをブルースが思い浮かべていて、いくら頑張っても、そのイメージを振り払えずにいたことだった。
突然、リンダは爆発的にオーガズムを迎えた。それに伴って、リンダは下腹部を激しく突き上げ、いまやびしょびしょに濡れたブルースの顔面を激しく打ち据えたのだった。オーガズムが終わった後も、ブルースがまともに呼吸できるまで、しばらくかかったほどだった。
「ありがとう、あなた・・・もう、出てきていいわ」
ブルースはリンダの脚の間からゆっくり身体を引いて、毛布の中から這い出た。熱く濡れた顔に夜のひんやりとした空気が当たり、熱を冷ましてくれた。ブルースは、元のように椅子に座り直したが、どういうわけか、妻の目を見るのが恥ずかしい気持ちに襲われた。何か恥ずかしいこと、屈辱的なことをしたような気持ちになったからである。
リンダは、そんなブルースの不快感に気づいた。そしてわざとまっすぐに彼の顔を見つめた。彼女は、夫が自分に見つめられて、どことなく身を縮ませたようだった。
突然、リンダは、なぜブルースがこんなふうに居心地が悪そうにしているのかを悟った。事実上、たった今、自分は初めて黒人男に影響された形でのオーガズムを味わったのであり、そのことを夫も悟ったのだ。だから困ったような顔をして、私から目を逸らそうとしているのね。これは大きな前進だわ。
リンダは、このことの可能性を思い巡らし、喜んだ。
「ミス・ビクトリア! あなたは、今や有名人ね。たった今、あなたは33,458人の人の前で犯されたところ。その大半が男で、大半が女装好きで、全員あなたを見るためにお金を払った人たち。私たちの通帳には、昨日よりずっとたくさんお金が入ってるはずよ」
パソコンでのメール受信のシグナルがチカチカと光っていた。ドナはパソコンの前に座り、メールソフトを立ち上げた。すでに何百もメッセージが来ていて、さらに刻一刻と新しいメールが届いている。ドナは、最初のメールを開いた。ステフという名前の人からだった。
<<私の人生で、こんなに官能的で美しいものは初めて見ました。持っているもの全部捧げてもいいから、私もビクトリアになりたい。本当にありがとう。いま履いているパンティはもうびちゃびちゃになってしまって、着替えなくちゃいけないわ。それでは、親愛を込めて。ステファニ(スティーブ)より>>
ドナは、さらに何通か開いたが、どのメッセージもこれと似たものだった。僕は、言葉を出せず、ただ呆然と突っ立っていた。本当に、どうしてよいか分からない。ドナは、僕たち二人の間でのちょっとした遊びをポルノの世界に暴露してしまったのだ。しかも、僕に話すこともなければ、僕の同意もなしに。
これは明らかに度が過ぎていると思ったし、ここから踏み出すともう二度と後戻りできなくなると思った。
ドナはメールを読み続けていた。メールのメッセージからパワーを与えられているのだろう。そのパワーの虜になっている。
僕は静かに書斎から出て、寝室に行った。先ほど必死で耐え抜いたレイプで、アヌスが痛い。ドナが何をしているか知っていたら、決してこんなことに参加しなかっただろう。ドレスを脱ぎ捨て、靴も蹴飛ばし、下着を脱ぎ、かつらを外しながら、頬に涙が流れるのを感じた。
シャワーを浴びにバスルームに入った。手には新しいパンティを持っていた。僕の引き出しにあったBVDがなくなっていたからだ。シャワーを浴びると、体毛がちくちくするのを感じた。このまま生えるままにしておくと痒みが出てくる。僕は生えかかった体毛を剃り始めた。
だが、心の底では、この小さな実験はもうおしまいにすべきだと思っていた。あまりに短期間に、あまりに遠くまで来てしまった。
僕はクレンジング・クリームを使って、顔から化粧を落とした。身体を拭き、サテンのパンティを履いた。もちろん、BVDを見つけたらすぐに着替えると心に誓いながら。
寝室に戻り、ジーンズを出そうと僕の引き出しを開けた。だが、ジーンズはなくなっていた。引き出しの中、ズボン類といったら、土曜日にドーナッツ・ショップに行くとき履いた、黒のストレッチ・ジーンズだけだった。
ドナを呼び出そうとしたが、こんなパンティだけを履いた格好でドナと対峙するのは避けたかったので、仕方なく、それを履くことにした。履くときに、どうしても腰を女性っぽくくねらせなければならなかった。何とかしてボタンを留め、ジッパーをあげた。
Tシャツ類の引き出しを開けたが、やはり男物のTシャツはなく、その代わりに女性用のパステルカラーのミドリフ(
参考)が2、3着入っていた。僕は一番上にあったピンク色のミドリフを取り、頭からかぶって、身に着けた。それを着るとき、乳首が擦れて硬くなるのを感じた。アヌスと同じく乳首もヒリヒリと痛み続けていたからだ。
ソックスの引き出しにも、あったのはピンクの縁飾りが付いたアンクレットだけだった。引き出しは開けたままにして、クローゼットに行った。普段、僕の靴が置いてある床には、代わりに、ドナが僕に買ったハイヒールとピンク色の女物のジョギングシューズがあった。僕の足のサイズだと見ただけで分かった。そのジョギングシューズを履き、引き出しからアンクレットを取り出し、足につけた。鏡を見ると、もとの自分の、多少、男性的な姿になっていた。ただ、化粧をしていないにもかかわらず、本来の自分より、柔和で女性的に見える。女物の服や靴などにより、一層、そう見えているのだろう。
僕は書斎に戻った。ドナはまだメールを読むのに夢中になっていた。すでにストラップオンは外していて、それは床に転がっていた。ともかく、この女王様風のコスチュームを着たドナはとてもセクシーだ。僕は、一瞬、気後れしてしまいそうになったが、気を取り直して言った。
「ドナ? ちょっと話しがあるんだが」
マークは私を抱き寄せた。
「ビルもほとんど同じことを言っていたよ。君とビルの間に何が起きたかは分からない。だが、これだけは覚えておくように。つまり、男というのは、時々、言うべきだとは思っていないことを言ってしまうことがあるものなんだ。それに、自分でも怖くなってしまうようなことをしてしまい、他の人がどう思うだろうって悩んでしまうこともあるんだ。君たちの場合、事情が何であれ、君はビルにもう一度チャンスをあげるべきじゃないかと思うよ。ビルは、あの夜から、ほとんど毎日のように君に連絡を取ろうとしてきた。彼は、気にしているのは確かだよ」
マークが言っていることは正しいのは分かっていた。でも、私には、ビルに拒絶されたという感情を拭い去ることができなかった。マークは、そのまま1分ほど私を抱き続けてくれた。ありがたかった。私はマークが仕事をたくさん抱えているのを知っていたので、身体を離して、こう伝えた。
「何か私にお手伝いできることがあったら、何でも言ってください」
「演技ができるTガールがもっと欲しいのが実情なんだ。それ以外はすべて整ったんだが・・・」
マークは、再び、新企画のことを思い浮かべているのが分かった。
マークの書斎を出ながら、私は、どうしてマークは私に演技者として映画に出て欲しいと誘ってくれないのだろうと思った。自惚れかも知れないけれど、私はルックスは良いほうだと思う。それに、私はもう何回もカメラの前でセックスをしてきた。マリアばかりでなく、マークもトレーシーも、カメラの前で演じることにかけては、私は天性のものがあると言ってくれていた。
そのことを考えて没頭していたせいか、気がついたらマリアの真ん前に来て、ぶつかりそうになっていた。マリアは私の表情を見て、尋ねた。
「あらあら、どうしたの? 何かあったの? マークとの話しのことで」
「いえ、大丈夫。マークは、撮影のときにビルが一緒で私が困るかもと心配してくれただけ。マークには、ビルが礼儀正しく振舞う限り、私も礼儀正しくするつもりと答えたわ」
マリアにはそう答えたけど、まだ心の中ではさっきの問題がくすぶっていた。
マリアは優しく私を抱いて、言った。「それじゃ、どうして、そんな悩んだ顔をしているの?」
私はマリアの腰に両腕を回した。「悩んでいるというわけじゃないの。ちょっと考え事をしていて・・・ちょっと訊いてもいい?」
「もちろん、訊きたいこと、何でも訊いていいのよ。答えられるかどうかは別だけど」
マリアはそう言って私から離れて、キッチンテーブルの椅子に腰を降ろした。
私もマリアの隣に腰掛けた。
「ポルノ映画に出るって、どんな感じなのかしら?」
「ポルノ女優になるのがどういう感じかということよね? ・・・まあ、実際のところ、他の人とそんなに違うってわけではないわ。仕事に行って、演技をして、そして帰ってくる。これについては、あなたもすべて知ってるはずよ。本当に訊きたいことは?」
話し出す前に、顔が火照ってくるのを感じた。
「街で、顔がばれたりすることがあった? それに、カメラの前でセックスするのは、カメラがないところでするのと同じ感じなのかしら?」
「顔バレについては、記憶にあるのは2回だけだったかな。でも、回数が少ないのは、私が出ているような映画を見る男たちは、たいてい、そんな映画を見ることを隠そうとするのが普通だからというのが大きな理由ね。トレーシーとマークの場合は、もっと頻繁に顔バレしてるわ。セックスの件については、カメラの前の方はあんまり満足できないわね。気持ちよくなるためじゃなくって、映画を撮るためにしてることというのを忘れてはいけないの。確かに、相手の人が一緒に楽しい人で、気持ちよくなるときもあるわよ。でも、大半は、ただの仕事。・・・でも、どうしてそういうこと訊くの? マークに、ただのエキストラじゃなくって、演技者として映画に出てくれって誘われた?」
「いいえ。マークは誘ってくれなかったわ」
私が気落ちしているのが声に出ていたと思う。マリアはそれに気がついたようだった。