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イサベラはゆっくりと眠りから覚めた。眠たげに長いまつげをまばたかせながら、横に寝がえりをうった。縦長の窓から差し込む陽の光がベッドを照らしていた。そして、彼女の視線はゆっくりと男の姿に焦点が定まって行った。背の高い裸の男は、窓の外を見ており、振り向いて彼女に顔を向けた。
イサベラはシーツで胸を隠し、身体を起こした。自分がまだシュミーズを着ていることを知り、安心する。羽毛のマットレスの彼女の隣のところは、多少へこんだままで、少し前まで彼の身体がそこにあったことを示していた。
レオンが彼女と一夜を明かすのはこれが初めてだった。そのことを思い、イサベラは頬を赤らめた。それに、眠っている間、二人の身体が意識せずに親密なことをしていたのでははないかと、心が騒いだ。
「あいつはお前を犯したのか?」 レオンは優しい声で尋ねた。
イサベラはレオンの燃えるような金色の瞳と視線を合わせることができず、うつむきならが頭を左右に振った。
「だが、あいつはそうしたかった」 レオンはイサベラに近づいた。
イサベラは答えなかった。神経質そうにシーツを握りしめた。
「お前は、たとえ俺のところから逃げたとしても、あいつの元には帰ることができなかったのだな」
レオンは怒りを込めて言い、イサベラの横、ベッドに腰を降ろした。重みでベッドがくぼんだ。
「他にはどんな秘密があるんだ? 教えてくれ」
イサベラは目を閉じ頭を振った。答えたくなかった。
レオンがシーツを優しく捲り始めるのを感じ、イサベラは唇を震わせた。胸元でシーツをしっかり握りしめてもレオンの力にはほとんど敵わない。やがてシーツは奪われてしまった。むき出しになった腕を、レオンの指が優しくたどり、レオンは彼女の手首を握った。そして、その手を持ち上げ、手の甲に唇で触れた。
「イサベラ、お前に無理やり白状させるようなことはしたくないのだ」 レオンは彼女の手首を握ったまま、体を傾け、イサベラの肩と首の合わさるところに柔らかくキスをした。
「抵抗しても決して勝つことなどできぬのは分かってるはず。お前の身体はあまりに甘美に反応豊かで、俺が求めるものを決して拒否できないのだ」
「いやっ」
イサベラはそう呟き、レオンから逃れようとしたが、逆にかえってベッドに仰向けになってしまい、驚き、レオンを見上げた。
「返事ができるということは、猫に舌を奪われたわけではないようだな(
参考)」
レオンは優しく言い、彼女の口元にキスをした。