アンドリューの話おい、おい、おい… 裸の女神が二人、それぞれのベッドに横たわって、こんな僕が来るのを待っている。それに、二人がまだ妊娠していないとしても、妊娠したがっているように振舞ってる。
自分が、再びあの危険ゾーンに入りつつある感じがした。本能が、僕に、思う存分、略奪しまくり、とことんやり抜けと命令する、あの危険ゾーンだ。今から、この二人を奪う。完全に自分のモノにするまで奪い尽くす。
普段の僕は、決してこういう人間ではない。人間は自由だし、男女は平等なのだ。どんな人も他人をモノにすることなどあってはいけない。ここにいる二人の女性は、あらゆる点で僕より優れている。だが、僕は、どうしても、この二人とも自分の所有するモノにしてしまいたいという気持ちに駆られるのだ。今度は、子種を注ぎ込み、それは二人の体内で成長を始めるのだ。この思いは、僕の魂のあまりにも深いところから湧き上がってくる思いだ。そのため、意識的な思考はまったくかかわっていない。
体中のあらゆる細胞が叫んでいた。繁殖せよと。
ドニーがベッドに来るよう誘ってる。始めるにしても、ともかく、どちらかから始めなければならない。どちらかと言えば、ディ・ディと始める方に傾いていたと認めざるを得ない。二人の間でどちらが好きかということではなかった。ただ、最初に受胎させるべきなのはディ・ディの方が正しいという感覚があった。
「受胎させる」という言葉は、「セックスする」という言葉をまったく新しいレベルに押し上げる言葉だ。特に、この二人を前にしての状況ではそうだ。ここにいる二人の女性は、僕の世界の中心になっている。他の女性に対するあらゆる感情が、この素晴らしい二匹の生き物のことを思うといつも体内に湧き上がってくる信じられないほど強烈な感情に比べると、すっかり色あせ、弱々しく感じられる。そのような状況では、いっそう「受胎させる」という言葉が大きな意味を持つと感じられる。
この二人は、僕の頭脳からあらゆる他の思考を追い出してしまう。二人に触れるたび、いつも、胸が情熱でいっぱいになる。二人を受胎させることは、僕にとって名誉なことだろうし、そうするのが義務でもある。それに、もちろん、そのついでに二人に完膚なきまでセックスするつもりでもあるが。
僕はドニーのベッドに向かった。ドニーは手を差し伸べた。あの丸みを帯びて柔らかな素晴らしい乳房が、触ってほしいと僕を招いている。だが、彼女は慎み深いキスをしただけで、僕の耳元に囁いた。
「アンドリュー… ディ・ディから始めて。今夜の最初は彼女でなくちゃいけないわ。ディ・ディがあなたを見つけたのだし、ディ・ディがあなたと最初に愛し合ったのだから。ディ・ディのところに行って、彼女を奪って。それから私のところに戻ってきて」
僕はドニーを抱きしめ、彼女が求めているようにキスをした。つまり、情熱的に、ディープなキスを。彼女の瞳を覗き込み、微笑みかけた後、僕は最初の相手となる人に向き直った。
ディ・ディは僕が向き直るのを見て、驚いたような顔をした。彼女も、ドニーがしたように両手を差しのべた。彼女の胸も、ドニーのと同じく丸く、対称的で、そして柔らかい。恐怖を感じるほど魅惑的な乳房。
その美しい球体を愛撫しながら、一度ディープキスをし、ベッドの中、彼女の横に滑り込んだ。そして、彼女の中に滑り込んだ。
ディ・ディは濡れて、準備が整っていた。僕の固いものに中を満たされ、悩ましい声をあげた。僕は気が狂わんばかりになっていて、優しくすることなどできなかった。彼女の愛らしい陰部に自分が完全に収まったと感じるや否や、夢中になって動き始めた。
まるで何かの機械になったような感じだった。彼女のシリンダーに繰り返し打ち込むピストンのようだった。徐々に、速度と力を増していく。彼女は受胎するために僕のモノになっていて、僕も子種で彼女を孕ませたいと思ってる。ディ・ディは情熱にうなされ、叫び声をあげていた。自分の卵子を求め僕の精子たちが突進してくるのを感じたがっている。僕には彼女の気持ちが分かる。
彼女の美しい脚を肩の上に抱えあげた。ディ・ディの子宮に直接、深く接することができるようにだ。彼女の両膝は乳房にくっつき、押しつぶしていた。脚が淫らなほど大きく広げられている。顔には、情熱と快楽と苦痛が混じった表情が浮かんでいる。
睾丸から今にも噴出しそうになってくるのを感じた。まるでディ・ディを奪うのは、これが初めてのような感覚が浮かんだ。僕のモノだ。それを奪っているのだ。彼女には僕しかいない。二人の子供、いや子供たちが今夜、生命を得るのだ。
激しく打ち込んでいた。ディ・ディの身体は強烈なオーガズムで痙攣を繰り返していた。叫び声が部屋に轟いていた。淫楽に曇った目ではあったが、僕はドニーが隣のベッドで僕たちを見ているのに気づいた。圧倒的に官能的な女体が見える。片手で突起した乳首を優しくつねり、もう片手で濡れた股間をゆっくりさすっている。
だが、ドニーに気を取られている時間はなかった。今はディ・ディだけが欲しい。ディ・ディは僕の名前を呼び、射精を求めていた。
「ああ!! 私の中に、アンドリュー! お願い、子供を授けて! あなたの子供が欲しい! やって! アンドリュー! 中に!」
爆発的な噴流となって彼女の子宮に噴射した。何発も繰り返し撃ち出しつつ、僕は狂ったように動き続けた。そして最後にできる限り奥へと押し込み、そこで留まった。僕の亀頭がディ・ディの子宮口に嵌まる。最後の一発が撃ち出され、二人の交接の終わりを示す印となった。それは、ディ・ディを僕のものにした印でもあった。
完璧な愛の交歓だった。ディ・ディはいまや僕のものになった。そしてこれから永遠にそうだ。僕は決して他の女性に目を向けない。この二人は僕のものだし、僕は二人のものだ。
ディ・ディはがっくりと身体を崩した。泣いているし笑ってもいる。愛の言葉を囁き、僕をきつく抱きしめ、じっと動かなくなった。
ようやく落ち着きを見せ始め、最後に一度、僕にキスをして言った。「いつまでも愛してるわ」
僕も彼女を抱きしめ、囁いた。「僕たちはそうなるように生まれてきたのだから。これは化学的な誘引なのだから」
あの土曜日にしたようなキスは、繰り返されることがなかった。しかし、僕が何度も、繰り返されたらいいのにと思ったのは事実だった。
ヒール高7センチのハイヒールを履き、穏当なミニスカートのビジネススーツに身を包んで、陪審員の前を颯爽と歩くアンジー。そんな彼女を見ながら、僕は、もう一度、彼女を両腕で抱き、あの唇にキスをしたらどんな感じだろうと思うのだった。だが、アンジーは、そういう側面では僕にまったく興味がないようだった。
ただ、僕がアンジーの扱う裁判に役立ちそうな別の判例を説明するとき、彼女が僕の脇に立って説明を聞くことが何度もあった。そういう時、彼女は僕の肩に手を置き、何気なく僕のポニーテールをいじったり、長い爪で僕の肩を軽く引っかいたりした。僕たちの間で親密な行いがあったとすれば、それくらいだった。
前にも言ったように、3か月の見習い期間はあっという間に過ぎ、気がついた時には、もう10月下旬になっていた。アンジーは、手に白い封筒を持って、まるで扇であおぐようにそれを振りながらオフィスに入ってきた。その時の彼女の笑顔は、息を飲むような美しさだった。
その封筒を僕に渡しながら彼女は言った。「私の計算が正しければ、これは良い知らせのはずよ。すぐに開けて見せて」
僕は、この三か月、ずっと忙しく過ごしてきていたので期間のことは忘れていた。だから封筒を開け、中に、副調査士への昇進の知らせと、三か月分遡っての給与差額の小切手が入ってるのを見て、僕は驚いた。差額はわりとかなりの額になっていて、僕は、早速それをどう使うかを考え始めた。
アンジーは、そんな僕よりもその通知に満足しているようだった。
「おめでとう! 今夜、一緒に出かけて、あなたの昇進のお祝いをしなければいけないわね、ハニー?」
アンジーは、僕が彼女のもとで働き始めた時から、僕のことを「ハニー」と呼んで話しをしてきていた。最初は、何か意味があるかもしれないと思ったけれど、一週間ほどしょっちゅう聞き続けていたら、僕が期待しているような意味はないと分かった。
「オーケー、でも今夜は僕に払わせてください。アンジーにはいつも払ってもらってるので」と僕は言った。
アンジーはにっこり笑って言った。「それはこの次ね。今夜は私が払うわ。この三ヶ月間のあなたの働きぶりに対して私が感謝している気持ちを伝えたいの」
僕は、アンジーの言うことに反論することは、自分の頭を壁に打ちつけるのと似たようなものだと分かっていた。結局は、彼女は自分の言ったとおりにしてしまう。それに内心、アンジーがそう言ってくれて助かったと喜んでもいた。二人で行ったレストランはかなり高級なところだったからである。
ランチにせよディナーにせよ、アンジーが支払いをするときには、僕はできるだけ安く済むようにしていた。メニューから選ぶとき、価格帯の一番下にある料理を選んだ。でも、このときは彼女は僕にメニューを選ばせなかった
。彼女はサーフ・アンド・ターフ(
参考)を注文した。これはメニューに載っている中で一番高い料理だった。それに加えて、1本50ドルもするワインを注文し、何ともないような顔をしていた。
このときも、僕たちは食事をしながらいろいろな話をした。これまでも一緒に食事をするときはおしゃべりをしながら食べるのが普通だったが、このときはちょっと違っていた。
いつもは仕事とかアンジーが担当している裁判のことが話題になるのだったが、このときは、個人的なことが話題で、自分の家族のこととか、過去の恋愛のこととかが話題になった。アンジーは僕に比べるとかなり恋愛経験が豊富だった。もっと言えば、彼女の豊富な経験に比べれば、僕はバージン同然だった。
僕の興味を惹いたのは、彼女が口にした人の大半が男の名前のように聞こえたことだった。ふたつかみっつ、女の名前としても通じる名前があったし、ひとつははっきりしないのがあったが、大半は男の名前だった。もし、彼女に関する噂が本当なら、これは奇妙なことだった。もちろん、僕は改めて問いただすことはしなかった。それは失礼なことになるから。
ディナーを終え、アンジーが支払いを済ませた後、アンジーは僕の左腕に両腕を絡めて抱きついてきた。その格好でお互いの車まで歩いた。アンジーがこんなふうに抱きついてきたことに僕は驚いた。三か月前にしたキス以来、彼女が親密な行動に出たのは、このときが初めてだった。