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Acting 「演技」 

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70 Acting 「演技」
誰か知ってる人がいるのかもしれない。疑ってる人がいるのは確かだと思ってる。陰謀論をいくつも見てきた。でも、陰謀論を言う人は傍流にすぎない。あの人たちが、あたしが男として生まれたなんて信じていないと思ってる。

でも、あたしは男として生まれた。今のあたしの姿を見て知っている人はたくさんいる。そして、その人たちは、あたしが女性になるためにどれだけ時間と労力と仕事をしてきたかを、まったく知らない。数えきれないほど手術を受けてきた。あたしの肉体の仕組みは、男性向きにできてるのだから仕方ない。あたしはほとんど食べたいものを食べない。毎日、何時間も、スキンケアに費やしている。大衆はあたしの本当の髪の毛を見たこともない。すべて、彼らがアイドルとあがめる人にあたし自身を変えるための努力。彼らがなりたいと思い願う人になって見せるための努力。端的に言って、スターになるための努力。

でも、あたし自身はそういう気持ちになっていない。これまでも、そんな感じになったことは一度もない。この姿で自分は快適でいられるのか、いつも問い続けている。自分は本当に女性になった気持ちになれるのか、いつも悩んでる。そういう気持ちになりたいと願っているけど、あたしは、心の奥に根付いてる「自分はニセモノだ」という想いに永遠に悩まされるのじゃないかと恐れている。

あたしは、みんながスクリーンで見ている女性ではない。あるいは、少なくともあたしはそう感じていない。スクリーン上の彼女は美しく、自信に溢れ、そしてとても女っぽい。あたしは自分はそのどれにも当てはまらないと思ってる。心の中では、あたしは、いまだ、セラピストの診察室にビクビクしながら座ってる10代の若者のまま。セラピストに、姉のチアリーダーの衣装を盗んで着たことを告白してる若者のまま。

でも、もしかすると、充分長くこのまま女性のフリを続けていたら、あたし自身が、あたしが上手に演じている役柄の女性になるかもしれない。ひょっとすると、自分の過去が示す男か女か分からない不安定な気持ちを払拭でき、現在の自分の美しさを心から受け入れることができるかもしれない。多分、いつの日か、あんなに長い間、なりたいと夢に見続けてきた女性になれるかもしれない。肉体的にも、精神的にも、魂の点でも。

でも、その時までは、あたしは演技を続ける。他にどうしてよいか分からないから。


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Acceptance 「受容」 

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70 Acceptance 「受容」

「いつまで隠していられるか分からない。そもそも、隠せているかどうかも分からないよ。もう、誰か、何かに気づいた人がいるに違いないよ」

「例えば? ブールの清掃員? あなた、もう、ほとんど家にこもったきりになってるんじゃない?」

「先週、友だちと遊びに出たよ。そしたら、フィルがボクのことをずっと変な目で見てたんだよ」

「それはフィルがキモイから。フィルはずっと前からキモかったわ」

「フィルは、ボクに太ったのかと訊いてた。そう訊く理由は分かるよ。ボクは、この体を隠すためにスウェットシャツを2枚着て、その上にジャケットを着てたから」

「マイカ、何て言ってほしいの? 指をパチンと鳴らして、連中を追い払って、って? そんなことできないわ」

「できれば、ボクをお医者さんのところに連れっていって欲しいんだけど。元に戻す方法があるはずだから」

「その方法、あたしにも分からなかったのよ。医学部を出たばっかりの若造に分かるはずがないじゃないの。ごめんなさいね。でも、あなたはこの状態に慣れなきゃダメなのよ。あの事故が起きなかったら良かったのにって、あたしも本当に思ってるわ。事故の時、あなたが研究室にいなかったらよかったのにって。事故があなたの肉体に影響を与えなかったらよかったのにって。でも、こうなってしまった以上、仕方ないの。多分、いつの日か、あたしが方法を見つけることができるかもしれない。だけど、すぐに見つけられるとは思えないのよ。前にも言ったはずよ」

「じゃあ、ボクはこの状態を何とか耐え続けなくちゃいけないと?」

「そう。選択肢はないと思うの。それに加えてだけど……あなたもあたしが貸してあげたビキニ、気に入ってるんじゃない? 多分、他の女性服も気に入るかもしれないわ。その方が、真夏に6着も重ね着して動き回るよりは快適じゃない? それは確かよね?」

「分からないよ、ベッキー。これって……」

「大変なのは分かるわ。でも、それより他に、あなたが普通にしていられるようにする方法が見当たらないのよ」

「ぼ、ボクは……わ、分かったよ。でも、これからも、これを直す方法を研究してくれるんだよね?」

「もちろんよ。絶対に。でも、今のところは、あなたにはドレスを着てもらいたいわ。一緒にお買い物にいけるように。あなたにぜひ試着してもらいたい服があるのよ」


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A turning point 「分岐点」 

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70 A turning point 「分岐点」

「ほら。着たよ。嬉しい?」

「意地悪な言い方、しないで。すごくいいわよ。とてもセクシー」

「キミが着た方が、ずっといいのに」

「そうかしら。あなたに似合ってると思うわ。お化粧も、ウィッグも、なにもかも。超イケてるわ」

「キミがボクを言いくるめて、これをするようにさせたのか分からなくなっているよ。これはボクがキミのために買ったモノなのに。ボクは……これって、おかしいよ」

「どうして?」

「だって、ボクは女じゃないんだ!」

「だから? さっきも言ったけど、すごく似合ってるわ。それ以外、何が問題なの? あたしは、その姿のあなたが好きなの。それに、正直になって? それを着ると、自分が可愛いくなった気持ちになるでしょ? あなたが鏡を見た時、どんな顔をしていたか、ちゃんと見てたわよ」

「あれは、ただ……あれは何の意味もないことだよ。ボクはただエッチな気持ちになっただけ。だって、もう1ヶ月も、キミはボクに指一本触れてくれていないし……」

「じゃあ、あなたも、自分の姿が気に入ったということよね。よく分かったわ。でも、そのおかげでご褒美を得られるわよ?」

「ということは……」

「その通り。今夜、あたしとヤレるわよ。あたしはストラップオンをつけるから……」

「ちょっと待って。ストラップオン? ボクが思ってたのは……」

「時代遅れのやり方でヤルって思ってたの? 言ったはずよ、そんなのもうやめるって。そんなので、あたしはもはや、1ミリも興奮しないの。でも、この新しいやり方だと……約束するわ、あなたも気に入るって。あたしを信じて。一回やったら、もう、昔のやり方に戻りたいと思わなくなるから」

「でも……ボクは……」

「何なら、何もしないってことでもいいわよ。あたしは、どっちでもいいと思ってるから」

「イヤ! わ、分かったよ。するよ。いいね? ただ……ボクが……ボクの方が動くよ」

「いいわ。あなたなら、あたしの考え方が分かる人だと思ってた」


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You 「本当のあなた」 

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You 「本当のあなた」

あなたが前からなりたいと思っていた本当のあなたになればいいの


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Training of a mistress 「女王様になるトレーニング」 

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Training of a mistress 「女王様になるトレーニング」

ミシェルはモニターを見て溜息をついた。「彼、またやってる」

ミシェルの母は、読んでいた本から顔を上げた。「また? 今度のはどこで手に入れたのかしら?」

ミシェルは肩をすくめた。「知らないわよ。あたしのじゃないわよ。多分、ネットとかで買ったんじゃない? それとも、街のお店に買いに行ったのかも」

「お前、何をしなくちゃいけないか、分かってるだろ?」 と彼女の母は、あごで奥の部屋を指した。

「でも、ママ! 彼、アレをやってるだけよ。どうして、あたしたち、そんな彼を止めようとしてるのかも分からないわ。彼は別に自慰をしてるわけじゃない感じだし」

「もう一度、お前に説明しなくちゃいけないのかねえ?」と彼女の母親は立ち上がった。ミシェルの隣に歩みより、モニターに映ってる光景を指さした。「これはお前の責任なんだよ。お前が私に助けを求めてきた時、お前に言っただろう? 忘れたのかい?」

ミシェルは頭を振った。「でも、あたし、こんなに大変なことだと思っていなかったの。ママは、パパの時にはすごく簡単にやっていたように見えてたんだもん」

「乱暴な男を女性化するのは、大変な犠牲が必要なのよ。常時、厳格でなくてはいけないの。男どもが一歩でも一線を踏み越えたら……それが、あそこにいるシーンがしてるように、お前が望んだ方向だとしてもだよ?……その時は、容赦なく、踏みつぶさなきゃいけないの。ちゃんとルールをしっかり決めて、決してそのルールを破らせないこと。どうしてそうしなくちゃいけないか、お前も分かっているだろ?」

「知らないわ」 ミシェルは頭を左右に振った。

「そうしないと、男どもは勝手に考え始めるからよ」と彼女の母親は言った。「彼らは、他のルールについても疑いを持ち始める。あのディルドで遊ぶこと。それについて、今、疑いを持ったら、明日は、どうして自分はこんなことまでするようになったかと考え始めるかもしれない。自分の決定を後悔し始めるかもしれない。そして、今のように、お前が自由にできるシシーになってるより、元のように、お前のボーイフレンドでいた時に戻りたいと思うようになるかもしれない。ミシェル、先のことを考えなくちゃダメ」

ミシェルは溜息をついた。「分かったわ」

「それでいいの」と彼女の母親は笑顔になった。「でも、お前なら、ちゃんとした女王様になれるわよ。さあ、あっちに行って、誰がボスなのか彼にしっかり教えてやりなさい」

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Too much to ask 「要求しすぎ」 

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Too much to ask 「要求しすぎ」
ある人々にとっては、受容されることとは単なる概念にすぎない。そういう人たちは、自分たちが普通であるがゆえに、受容されることを当然のこととして一生を過ごしていく。そういう人々は、世の中でじろじろ見られることを気にする必要がない。自分がどういう人間であるかが理由となって、昇進をパスされてしまうことにならないかを気にする必要がない。将来ロマンティックな関係になる可能性がある人に、いつ、「びっくりさせる事実を明かす」のが適切だろうと思い悩む必要がない。そういう人たちは、政治家や宗教界の指導者や科学者が、まさに自分たちが存在することが合法的か否かを議論するのを耳にすることなど、ほとんど想像すらできないだろう。

これまで私は、数えきれないほど聞かされてきた。「あなたは自分自身になればいい」と。「それさえすれば、すべてがうまくいくから大丈夫」と何度も言われてきた。そうすれば、私の人生は意味のあるものに変わり、社会も突然、私のことを受容するようになる、と。耳には気持ちよい言葉。

時々、人々は本当に理解してるんだろうかと思うことがある。友人や家族の前に立ち、自分はみんなが思っているような人間ではないと言うのがどんなことか、本当にみんな理解しているのだろうか。本当の自分を世の中に明らかにするのが、どれだけ難しいことか、みんなは本当に分かっているのだろうか。ドレスを着たら、誰もが、ドレスを着た男性としか見ないのを知りつつ、カミングアウトをするという第1歩を踏み出すことが、どれだけ難しいことか、みんなは本当に分かっているのだろうか。もちろん、誰も分かっていない。なぜなら、あの人たちにとっては、そんなことは現実的なことではないから。そんなことは、単なる想像上の考えにすぎない。彼らは、共感はするかもしれないが、共感の範囲は、せいぜい、その程度までにしか及ばない。

答えが分かったらどんなに良いだろう。本当に、そう思う。でも、どれだけ私たち人類が進歩しようとも、私たちをありのままに見ようとしない人々がいる。自分たちが私たちはこうあるべきだと思っている姿で私たちを見る人々。多分、その人々は口に出して何かを言うことはないだろう。でも、その人たちは、心の中ではそう思っている。彼らの仲間内だけで、そのことを話し合う。仲間内で、私たちを罵倒しあい、私たちが抱えている問題をあざ笑う。彼らは、私たちを非人間化し、モノ化する。それは人間のサガだから仕方ないと弁解する。私たちは自分たちとは違う存在である。だからこそ、彼らはそれが気に食わないのだ。

また別の人々は、非常に熱心に私たちを受容することを望み、その結果、彼らの反応をあまりにひどく歪めてしまい、その結果として、私たちをヒーローとして祭り上げてしまうほどになってしまう。だが、これは、私たちを罵倒する人々と、ほとんど変わりがない。この手の人々にとっては、私たちは人間ではないのだ。私たちは口実なのである。背広の襟に着ける「進歩的」を表すピンにすぎない。彼らは、自分たちがどれだけ私たちに寛大かを人々に見せたがっている。いや、見せる必要を感じているのだ。なんだかんだ言っても、彼らは私たちのラベルにひれ伏してるのだよね? この人たちにはトランスジェンダーの友人たちがいる、だから、彼らは進歩的に違いない、としたいのだろう。これは、怒るまでもないことだとしたら、それは悲しいことじゃないのかと思う。

結局のところ、私は、ただ、他の人と同じように扱ってほしいだけなのだ。それは本当に要求しすぎのとこなのだろうか?


[2019/02/12] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

The pageant 「ページェント」 

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The Pageant 「ページェント」
「ハハハ!」とジョーイは、彼女の前に立ちながら笑った。「すごく面白いね。で? ボクが本当に着る服を教えてよ」

リジーナは顔をしかめた。「これはジョークじゃないわ」 きっぱりと言い切る言い方だった。彼女はもう少し高くドレスを掲げた。「これ、可愛いと思う」

「か、可愛い?」ジョーイの顔から笑みが消え、彼は前に進んだ。ドレスに触れ、親指と人差し指でシークイン(参考)の生地を擦った。「マジで言ってるの?」

リジーナは頷いた。「あたしたちふたりで、このために時間も労力もずいぶんかけてきたわ。あなたには負けてほしくないの」

「で、でも、これは丈が短すぎるよ。変な動きをしたら、みんなに、丸見えになってしまう」

「まあ、それも一種、重要な点ね。……それに加えて、あなたはプライバシーを保てるかというと、そういうふうにはならないみたいよ。まさか、ビキニ・コンテストのことを忘れたの?」

ジョーイは忘れてはいなかった。もっとも、そのことを頭の奥へ押しやってはいたのは事実だった。とは言え、肌を10センチ平方も覆うことができない小さな水着のことは忘れたくても、忘れられないものだった。

「もっとワクワクした感じにならなくちゃダメ。あなたは審査員たちをアッと言わせることになるの。コンテストに出る他の男たちで、あなたほど素敵な人はいないって。賭けてもいいわ」

ジョーイは後ろを向き、壁の鏡と対面した。この半年間の、体を変える集中トレーニングの結果は、決して否定できない。食事を変え、数えきれないほどの時間をウエスト・トレーナー(参考)をつけてエアロビクスに費やした。そのおかげで、彼は自分にはありえないと思っていた砂時計を思わせるカラダを得たのだった。すべて、バカげているとしか思えない女性が参加しない美人コンテストで勝利するため。彼は、本当にこんなことをする価値があるのだろうかと思わずにはいられなかった。

ジョーイは少し内省した後、口に出した。「これ、ボクは出られないよ」

「そんなことないでしょ。あなたは出るわ」とリジーナは彼の背中に体を寄せた。

「ボクに出させる気? みんなにこんな格好のボクを見られたくないよ」

「誰もあなたに何かを強いたりしないわ。でも、ひとつひとつの選択には、それなりの結果が伴うもの。今ここで、間違った選択をしたら、あたし……あたし、いつまであなたのそばにいられるか分からない……」

「こんなバカげたコンテストのせいで、ボクを捨てるつもり?」

「そんなことないわよ」 と彼女は言い、彼は安堵と言えそうな気持を感じた。だけど、その気持ちは、その後の彼女の言葉を聞いて、急速に消えていった。「でも、あなたがそんな気まぐれな態度で、あたしが費やした時間を無駄にしてしまうなら、あなたを捨てるかもね。どれだけあなたにあたしが労力をつぎ込んだか、それを気にしないようなら、あなたを捨てるわ。心を決めるときにあたしのことを考えないなんて、そんなことが分かったら、あなたを捨てると思う」

「で、でも……」

「でもって言うの止めて、ジョーイ。コンテストに出ないというなら、それが意味してることは、あなたがあたしのことを考えていないと、そういうことよ。あなたは、さっきから、そういうことを言ってるの。そんなにあたしのことを軽んじてる人と一緒に暮らすなんて、あたしにはできない」

ジョーイは当惑してしきりに瞬きした。そして、瞬きを続けながらリジーナの瞳を見つめた。彼女と別れたくない。その気持ちは確かだった。

「分かったよ。でも、これが終わったら、ボクは普通に戻るからね。いい? その後は、パンティはナシ。お化粧もナシ。ウエスト・トレーナーもナシ」

「その時になったら考えましょう? 今は、このドレスを着ること。あたし、シークインの服に包まれたあなたのキュートなお尻が見たいの」


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The other road 「別の道」 

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The other road 「もう一つの別の道」

「こう言って、何か変わるならの話だけど……」 あたしは彼女に目を合わすことができず、床に目を落とした。「ごめんなさい」

顔を上げると、マーガレットは、怒りに燃えた目であたしをにらんでいた。愛する人が怒っている。しかもその怒りは完全に正当な怒り。それよりも少し悪いかもしれない。あたしは、できる限り彼女の怒りに耐えていたけど、彼女に悲しいほど酷いことをしたのは自分だと知っている。それは事実で、あたしはそれから逃れることはできない。

「ごめんなさいって、それがあなたの説明? それとも言い訳かしら?」 と彼女は鼻で笑った。「あなたを見つけたと思ったら、ダリルのペニスを根元までアナルに入れられてたけど、ごめんなさいと言ったから、それでいいと? 最低ね、レズリー。謝るにしても、最低」

「こんなことをするつもりはなかった」とあたしはつぶやいた。

「本当に? あなたはあたしを弄んだのよ。みんなを弄んだ。まあ、今、あなたは欲しかったモノをもらってるところじゃないの? こうなる計画だったんじゃないの? あなたのフェチを賄ってくれるバカな女を見つけて、手術やらホルモンやらのおカネを全部、あたしが払いきったところを見計らって、本性を露わにする。そういうことだったんでしょ? 最低!」

「そんなふうに進んだわけじゃない」 自分が全裸でいることが気になって仕方なかった。ダリルは、すでに部屋の隅に退散していて、勃起を隠すのに必死になっていた。「こういうことになるなんて、全然、思っていなかったの。今日までまったく。あなたが思っていた通りだったの、今日までは」

始まりは、夫婦のベッドの中、軽く女装することだった。ふたりの関係にちょっと味付けをしてみようと思って始めたことだった。でも、あのパンティに脚を通した瞬間、単に「フェチ」というラベルをはるかに超える何かがあることに気がついた。その瞬間から、あたしはどんどん女性化の道を進み始めた。そして、その間、ずっとあたしのそばにいてくれたのがマーガレットだった。まさに、パートナーを献身的に支えるガールフレンドを絵に描いたような存在だった。すべての費用を払ってくれたし、彼女自身、あたしの女性化の過程に熱心に参加してくれた。何より、後になって、ずっと前からあたしの中に隠れていたと分かった、あたしの中の女性の部分。あたしがそういう女性になるのを彼女は手助けしてくれたのだった。でも、彼女に隠れて浮気をすること。それだけは、元々の計画にはなかったことだった。少なくとも意識的には、そんなことは考えていなかった。自分でも、そういうことをしたい気持ちがあるとは思ってもいなかった。長年の友人の前にひざまずき、その太い肉棒を見つめた時。その時まで、まったくそういう気持ちはなかった。

「その時のあなたの顔を見たわ。ずっと見ていた。あなたが、あういうことをするつもりがあったかなかったかなんて、あたしはどうでもいいの。実際に起きたことなんだから。実際にあなたはダリルとやっていたんだから。それに、あなたは、もう前には戻れないでしょ? あなたがこういう方向に進むはずはないって思っていたけど、今は、そんなことを思っていたあたしは何てバカだったんだろうって思ってるわ」

「ほ、本当に、ごめんなさい」 他に言うべき言葉が見つからず、あたしは繰り返した。彼女は正しい。隅から隅まで正しいことを言っている。彼女を傷つけてしまったことを悔やんでいたけれど、彼女に別れないでくれと言い争うつもりもなかった。

「危うく、あなたのことを信じるところだったわ」と彼女は立ち上がった。ドアへと向かいつつ、彼女は振り返った。「あなたがいないときに、あたしの荷物を取りに来るわね。

そして、彼女は出て行った。あたしは彼女が出て行ったドアを見つめていた。

「それじゃあ……」 とダリルが部屋の隅から呼びかけた。「またやりたいんだろ?」


[2019/02/06] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

The Contest 「コンテスト」 

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The Contest 「コンテスト」

コリンはカウンタにもたれかかり、ティーを啜った。妻のフェリシアがキッチンに入ってくるのに気づき、顔を上げた。「ボクは準備ができてないよ」

フェリシアは夫の姿に頭からつま先まで視線を走らせた。そのカラダのひとつひとつの曲線を視線で愛撫するかのように。「いいえ、準備ができてるはずよ。あなたはとても素敵。他の人たちで、あなたほど素敵に見える人はいないって保証するわ。コリン、あなたはそのカラダを手に入れた。すごいわ。あたしは、あなたが勝つって信じているわよ」

コリンは頭を左右に振り、うつむいて、ティーが半分ほどに減ったカップに目を落とした。そして「したくないだ」と呟いた。

「え? なんて言ったの?」 フェリシアは、片手をカウンタに、もう片手を彼の腰に当てた。

「自分でも、これをやりたいか分からないんだよ。本当に。ぼ、ボクは、ただ前のような暮らしに戻りたかっただけ。そもそも、どうして、こういうことをすると同意したのかすら、分からないんだ」

フェリシアは引きつった笑いをした。「あなたが同意した理由なら、2千万個くらいは挙げられるわね」 そして、溜息をつき、いらだたし気に髪を掻いた。「あなたのことが信じられないわ、コリン。本当に。あたしたちが、貧困から抜け出るチャンスなのよ、これは。それとも、あの、ワンルームのアパート生活に戻りたいってこと? 不定期のバイト生活に戻りたいの? それともお金持ちになりたいの?」

「ぼ、ボクは……ボクは……」

「それが、まさに、あなたの問題だわ。優柔不断。そんなわけで、あなたは全然、男らしいところを示すことができなかったのよ。あなたを愛してるわ。本当に。でも、今の姿になってから、あなたはとても裕福な暮らしができてるようになっているの。コンテストに出なくても、そうなっているの」

「え、何? ふざけているんだよね?」

フェリシアは肩をすくめた。「マジかもね」と彼女はコリンの肩に手を添えた。「でも、そんなの関係ないわ。あなたはここまで頑張ってきた。自分の姿を見てみて。他の人たちで、あなたほど素敵に見える人なんか誰もいない。だから、あなたは出るべきなのよ。たくさんのカメラに笑顔を振りまいて、こんな素晴らしい体験はなかったと言わんばかりに胸をはって歩くの。そして、審判員の人たちが審判を下した途端に、あたしたちは、気楽な人生の道を歩き出すことができるようになるのよ」

「単純化しすぎてるよ」

「だって、単純なコトだもの。難しかったのは、今のあなたの姿になるまでだった。それなりの女性のように歩いたり、話したりするのを会得するまでが難しかった。でも、あなたは、その難しいところはちゃんと乗り越えたのよ。これから後は簡単な部分。今は、コンテストに出て優勝し、賞金をもらって、ぜいたくな暮らしを始めることだけ。それが、コンテストに出ると決めた時の計画だったじゃないの。あれから何も変わってない」

コリンはうつむいて、自分の胸を見た。「ずいぶん変わってしまったよ」

「まあね」と彼女はクスリと笑った。「でも、計画は変わってないわ。さあ、グダグダ言うのはやめて、パンティを履いて。コンテストに出て勝つの!」


[2019/02/05] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

The big city 「大都会」 

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The big city 「大都会」

「こ、こんな感じ?」 とアレックスは四つん這いになって不安げに振り返った。「こういう格好になって欲しいの?」

ミシェルは、腕を組みながらベッドから離れた。興奮で叫びだしたくなる。この子、すごく素敵! あたしが求めていたすべてを備えてる。しかも、この子ったら、自分に何が起きてるか知らないでいる。金髪で碧眼で、とても男のものとは思えないようなボディ。まさに、あたしにとって完璧と思えるパートナーを絵に描いたような存在。

それに、この子が信じられないほどウブなのも嬉しい。中西部の田舎町からここに引っ越してきたばかりからか、彼は、必死に、この大都会に馴染んでいるように見られたがってる。だけど、彼に会った人なら誰でも分かるけど、この子は、大都会でどう振る舞ったらいいかも、何を期待すべきかもほとんど知らない。それが痛々しいほどバレバレ。

そして、ミシェルは、そんな彼に大都会での交際の仕方を教えたがっている。

彼女は股間に装着したディルドを握った。「ちょっと痛いかもしれないけど、でも、一度、その痛いところを超えたら、気持ちよくなってくるから。本当よ」

「こ、これ、本当に都会の人たちがセックスするやり方なの? これってちょっと……」

「あたしを信じて」とミシェルはアレックスの言葉をさえぎって、彼に近づいた。ぷっくりした彼のお尻に両手を当て、荒々しく揉みだす。彼はびっくりして、小さな悲鳴をあげた。

「あなたのような子がセックスするときは、こういうふうにするものなの。リラックスして、あたしにされるがままになるのよ。後であたしに感謝することになるはず」



[2019/02/04] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

That defining moment 「あの決定的な瞬間」 

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That defining moment 「あの決定的な瞬間」

その日は、完璧な一日だったはず。あの日のデートは、何か複雑な、充分に計画を練ったデートではなかった。特に取り立てるべきことをしたわけでもなかった。いつものように、サムとあたしは一緒に過ごし、ふたり一緒にいることを楽しんでいた。それが、あたしが望めることのすべて。少なくとも表面的には。でも、本当は違う。彼が言うジョークに大笑いしたり、彼にキスを盗まれ、喜んでいた時ですら、あたしは、ほとんど、自分の秘密のことにしか意識を集中できていなかった。そして、その秘密が明るみに出たら、あたしは死んでしまうかもしれない。

「ちょっと打ち明けたいことがあるの」 あたしのアパートに着いたとき、彼から手を離して、思い切って言った。

「君が連続殺人魔だということ?」 と彼は笑った。「それとも、逃走中のギャングの一員だとか? それとも……」

「真面目な話なの」 あたしは彼の言葉をさえぎった。泣きたい衝動を感じ、あたしは後ろ向きになった。「あたしは、あなたが思ってるような人間じゃないの」

彼はあたしの腕を取り、優しく、向きを直させた。「いや、君は僕が思ってる通りの人だよ……君は賢い。君は綺麗だ。そして、僕はそんな君に恋をしてる」

あたしは彼と目を合わせることができなかった。「あなたは、そもそも、あたしのことを知らないわ」

「充分知ってるよ」 彼はあたしに近づき、あたしはそれに押されて、後ろのブロック塀の壁へと押しやられた。「僕が知りたいことは、ちゃんと知っているから」

顔を上げたら、彼の真剣な瞳が目に入った。それを見て涙が溢れてくるのを感じ、あたしは瞬きをして、涙が流れるのを防いだ。「本当のことを知ったら、多分、今のようには言わないと思う。そう言わないと分かってるの」

彼は溜息をついた。そして引き下がりながら言った。「じゃあ、話してくれ。僕はただ……」

「あたしは女じゃないの」 と囁いた。

「え? 何? 冗談を言ってるんだよね。僕は君が……」

「あたしは女として生まれなかったの」 とあたしはうつむき、コンクリートの床を見つめた。16歳の時に女性化を始めたわ。あたしはトランスジェンダーなの、サム。本当に……本当に、ごめんなさい」

彼は長い間、黙っていた。あたしは彼の顔を見る勇気がなかった。これまでも何回も見てきた、恐怖と嫌悪感で歪んだ顔。それを観たくなかった。嘘つきと呼ばれたいわけじゃないし、変人と呼ばれたいわけでもない。ただ、普通の関係を得たいだけ。

「じゃあ、証明して」と彼は言った。

「え、何んて?」 あたしは顔を上げた。彼は好奇心に満ちた顔をしていた。あたしは、彼がそのような顔をするとは予想していなかった。

「完全に女性化したところまではいっていないんだよね?」 あたしは左右に首を振って、まだ、手術を受けていないと伝えた。「じゃあ、アレを見せてみて」

「あたしをからかっているのね」

「いや、そんなつもりじゃないよ。見てみたいだけ」

あたしはどうしたらよいか分からなかった。これまでいろんな反応を経験してきたけど、好奇心というのは予想した反応にはなかったから。でも、その意味を頭の中で整理するより前に、あたしの両手は、無意識的に、ショーツの腰バンドへと這っていた。両手の指がタイトな青い生地へ掛かり、引き下げていく。そして、あたしの体の中、唯一残ってる男らしらを露わにした。あたしは息を止め、彼の反応を待った。

そして、彼は、声に出して笑い出したのだった。

あたしは彼を睨み付け、素早くショーツを元に戻した。「ひどいわ、サム。あなただけは違うと思っていたのに! あなただけは……」

「僕は君のことを笑ったんじゃないよ」と彼はあたしの言葉をさえぎった。「取るに足らない問題だから、笑ったんだ。2年くらい前に、この問題は困るかって訊かれたら、自分の彼女がおちんちんをもってるかどうかは、確かに気にしたことだと思う。だけど、今だよ? これだけ君と付き合ってきた今は、それって何の問題もないように思うけど。君の脚の間に何があるかは、どうでもいいよ。君のことを愛しているんだから」

「ど、どういうこと?」

「君を愛している」と彼は近寄ってきて、あたしを壁に押しつけてキスをした。そして、キスを解いた後、彼は言った。「そして、これからも、君を愛すると思う。君が以前、どんな人だったかは気にしない。君の脚の間にあるモノも気にしない。今の君がどんな人なのかは気にする。僕が愛してる女性がどんな人なのかは気にする。それだけだよ。付則事項はなし。但し書きもなし。ただ、愛してるかどうかだけ」

あたしは唖然としていた。長い間、唖然として彼を見つめることしかできなかった。そして、長い沈黙の後、あたしはようやく口にすることができた。「あたしもあなたを愛している」


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Soon 「もうすぐ」 

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Soon 「もうすぐ」

「ふたりとも、その調子! いいわよ!」 あたしは、双頭ディルドをベッド面に平行に掲げながら言った。「あなたたちのどっちが、可愛いおしゃぶり娘なのか、あたしに見せてちょうだい!」

女性化したふたりとも、一切、ためらいを見せなかった。ふたりとも即座に四つん這いになった。肩に垂れる長いブロンドの髪の毛。ウブっぽい愛らしい顔のお化粧も完璧。ふたりとも、紅を塗った唇を開き、前に顔を突き出し、シリコンのおもちゃを唇で包み込んだ。早速、顔を前後に動かし始める。唾液たっぷりの湿った、吸うような音が部屋を満たす。あたしは、ふたりを見ながら、思わず笑顔になっていた。まるで、宝くじでも引き当てたような気持ち。

ふたりはあたしのためならどんなことでもする。でも、それ自体は、そんなにびっくりするようなことじゃない。男というものは……女の子の気を引くために競い合ってる場合は、特に……すごく簡単に操れるものなのだ。ちょっとだけ性的にイイことをしてあげると約束してあげるだけでいい。そうすれば、男はあたしが何を頼んでも喜んでするようになる。

「いいこと? 一番上手におしゃぶりできた方が、今夜、あたしを舐められるの」

猫なで声で言ったら、ふたりはさらに頑張り始めた。このライバル同士のふたりが、あたしを口唇愛撫する権利を競い合っている。あたしは、いっそう大きな笑顔になった。

今はこの程度だけど、もうすぐ、ふたりは今とは反対向きの姿勢になるときが来るはず。逆向きになって、このディルドをお尻に入れあうようになるはず。あたしのおもちゃで貫かれたふたりが、互いにお尻を突き上げあって、ぶつかり合うお尻がピタピタ音を立てる。そんなことを思い浮かべただけで、あたしはあそこが濡れてくる。

さらにある時点になると、ふたりは互いに愛し合うようにもなるだろう。レズビアンのシシー。完全にあたしに身を捧げたレズのシシー。でも、それはまだ先の話。もうすぐだろうけど、まだ、ふたりはそこに至る準備はできていない。だけど、そうなるのは、もうすぐ。本当に、もうすぐ。


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Scholarship 「奨学金」 

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Scholarship 「奨学金」

「あなたがこれをしたいと言ったのよ。忘れてないと思うけど、あたしはやめるように言ったわ」 とケイリーが言った。

「覚えているよ」とケーシーは答えた。「でも、だからって、何も楽にならないよ。それに『だから言ったでしょ』って言われても、何の助けにもならない」

「あたしがやめるように言ったのは覚えてるってわけね。宿命かなんかなら別だろうけど、これって、じきに手に負えなくなるって知ってるべきだったのよ。あなたは、本物のトランスジェンダーの女性から奨学金をもらってるの。それ、気にならないの?」

「ボクを見てよ」とケーシーは髪を掻き上げた。「今はボクも立派なトランスジェンダーの女だよ。おっぱいもある。ボクのヒップは君のよりも大きいよ」

「あなたが女の子のように見えるからといって、あなたがトランスジェンダーだということにならないわ。そのカラダになることがあなたにどんな影響を与えてるのか、あたしにははっきりしないけれど、でも、トランスジェンダーになるっていうのは、身体的なことと同じくらい精神的なことでもあるんじゃない?」

「ああ、まるでヒル先生みたいなこと言ってるよ。ボクは、ただ、これを早く済ませてしまいたいだけなんだよ。できるだけ早く学位を取って、元のボクに戻りたいだけなんだよ」

「じゃあ、それって、そんなに簡単にできると思ってるわけ? これを始めて1年しか経っていないのに、あなたはあたしが想像してたよりずっと先に進んでしまってるわよ。ベストなシナリオだと、2年で終了できる。でもそれは、夏を2回、フル稼働状態で女性化を経験するならば、ってころなの。正直に言って? それだけの時間を経た後でも男に戻れると、本当に思っているの?」

「あのバカな医者のところに行く必要がなければ、そんなに悪いことにならないんじゃない? あのホルモンを摂取する必要がなければ、多分、元に戻れるんじゃ……」

「ドレスを着たり、ウィッグを被ったりするだけ。そうすれば学費を払ってもらえると?あたし、あのホルモン云々って、まさにそれを阻止するためにあるんだと確信しているわ。それに、あなたも分かってると思うけど、あれは、性変換途上のトランスジェンダー女を助けるためにあるモノなのよ」

「ああ、でも……ボクはやめないよ。今はやめない。全部が終わるまでやめるつもりはないよ」

「大学の学費を払うにも、もっと簡単な方法があるわ」

「ああ、だけど、それはボクには向いてないよ。この方法だけなんだよ、ケイリー。これがボクにとって最善策なんだし、これを台無しにするつもりはないんだよ、ボクは」


[2019/02/04] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)