翌朝、ブリイは目を覚ました。体は筋肉痛で痛み、頭の中はぼんやりとしていた。アパートの部屋の中、誰かいないかと、辺りを見回した。向こうのベッドでいびきをかきながら眠るジャックの姿を見つける。ブリイは、最初、その男が誰だか分からなかったが、徐々に記憶が戻ってきた。猛烈な勢いで昨夜の光景が戻ってきた。ブリイは、啜り泣きを始めた。 ジャックは、女の泣き声に驚いて目を覚ました。あの女が起きたか、と思いながら体を起こした。 起き上がったジャックは、すべての有能なポン引きが行うことをしに、自分がモノにした娼婦の元に近づいた。最大限に優しく彼女をなだめ、ベッドの元に連れて行き、そこに横にならせた。そして、非常に優しく愛撫を始めながら、落ち着いた低音の声で、彼女の心を落ち着かせようとする。 「お前は、このジャックと一緒なら何も心配することはねえんだ。・・・・大丈夫なんだぜ? 何の心配もねえ・・・俺が精一杯、お前の面倒を見てやるんだから・・・」 涙で濡れたブリイの頬に優しくキスをする。それから、ゆっくりと、その唇を彼女の唇へと移動させていき、心がこもったキスをした。同時に手を彼女の背中にあて、優しく撫で続ける。愛情を込めて背中を擦りながら、次第にキスに力を込めていき、より情熱的なものへと変えていく。 やがてブリイも、そのキスに応え始めた。ジャックの両手が、裸のままのブリイの乳房へと動き、同時に、彼の舌はブリイの舌を弄びはじめる。しばらくブリイの胸を撫でた後、片方の手が彼女の茂みへと降りて行った。 ブリイの両脚は、ジャックを迎えるように左右に開き、両腕も、彼の首に絡まり、抱き寄る。ブリイ自ら、ジャックの唇へ自分の唇を強く押し付けた。ブリイの股間に降りたジャックの手は、そこに驚くほど濡れた入り口を発見した。ブリイがその気になっていることが分かる。 ジャックは、ブリイの足の間に体を割り入れ、その大きく、太い肉棒を彼女の若い女陰へと挿入した。深々と挿し入れられるのに合わせて、ブリイの体は反応し、両脚がジャックの腰に絡まり、しっかりと羽交い絞めにした。 二人は、それから1時間近くも、互いの体をゆっくりと擦りつけあった。その間、ジャックは、ブリイに3回、強烈なオルガスムを与え、ブリイもジャックから2回、ミルクを搾り取った。一度目は子宮の奥に、2度目は喉の奥に。ブリイにとって、ジャックとのセックスは、それまでで最高のセックスだった。 体の交わりを終えた後、ジャックはブリイに、これから自分のために街に出て働くように伝えた。彼には、もう一人、ベティという名の売春婦がいる。ブリイには、ベティが仕事の仕方を教えるだろう。今夜は、テスト走行になる。2、3人客を取った後は、ジャックの知り合いが開くパーティに加わるようにと彼は言った。 ベティはブリイに、夜の仕事のための服を貸した。真っ赤なレザーのドレスで、下着はなかった。それに赤いパンプスを履き、黒い網目のストッキングを履いた。古典的な娼婦の服装である。ブリイは、大変な売れっ子になった。街に出た途端、客が飛びついた。ジャックが言っていたパーティに出かける頃までに、ブリイはすでに5人の客とセックスをしていた。二人客が二組、一人客が一人である。その上がりとして、彼女は200ドルを手にしていた。 ジャックはブリイの仕事振りに満足し、もっと高い金で仕事をするように決めた。ブリイも、ジャックの喜びように気持ちが高ぶり、もっとやってみたいと思うようになっていた。彼女は、次の仕事まで長く待つ必要はなかった。そのパーティでもブリイは大変な人気者になったのである。そこには3人しか女がいなかったが、これほど売れた女はブリイだけだった。 ある男が、ブリイとの極上のセックスにすっかり夢中になり、ジャックに2000ドルでブリイを譲ってくれと持ちかけた。そしてジャックはその申し出を受け入れたのだった。男の名前はストーン。ニューオリンズに住んでいる。ブリイは、ジャックが自分を売り飛ばしたと知って怖がった。ジャックは、これはビジネスなんだよと彼女に言った。 ストーンは、3人の手下と一緒に、ブリイをパーティ会場から連れ出した。彼らのホテルに行く。ホテルでは、ストーンたちはブリイをひどく酷使した。4人とも、ブリイのキュートなお尻に集中しているようで、彼女は繰り返し、アナル・ファックを受け続けた。男たちは決してブリイの体に傷をつけるようなことはなかったが、執拗に何度も繰り返しセックスを続け、最後には、ブリイも、もうやめてと懇願していた。だが、ストーンたちはやめることはなかった。間もなく、ブリイは気を失ってしまったが、それでも彼らは彼女に突っ込み続けた。 翌朝、ブリイは誰かに頭をひっぱたかれて目を覚ました。厳しい現実を思い知らされる。服を着ろ、とストーンの命令が飛んできた。ブリイは、辺りを見回して服を見つけたものの、すでに、それはぼろぼろに破かれていた。それをストーンに見せても、彼は肩をすくめて見せるだけだった。 少し経ち、ブリイに男物の着古したアンダーシャツが投げつけられた。ブリイが、シャワーを浴びたいと頼むと、ストーンは、10分間だけなら浴室に入っても良いと答えた。ストーンは、汚れきったブリイの姿を見て、この女はぼろぼろだと考え、こんな容姿では、全然、金にならないと思ったのである。
「・・・結婚式の後、お父さんは大学に戻って、勉強を続けた。本当は、故郷に留まって、お母さんやお前の世話を見ていたかったんだが、お母さんの両親にも、お父さんの両親にも、学校に戻るべきだと強く言われてね。ともかく、最善のことは、お父さんが、家族を養えるように学位を取るべきだと言われたんだ。お父さんが大学に行っている間、お父さんやお母さんの両親がお母さんやお前の面倒を見るからと・・・」 「・・・今から思うと、大学に戻ったことは、多分、悪いことだったと思う。だけど、いま分かっていることも、あの時は分からなかったわけだからね。それに、大学に戻らなくても、いずれいつかは、ああいうことが起きただろうなって、思っているんだ・・・」 私は、何が起きたか、分かっていたけれど、ともかく、父に話しをさせることにした。 「・・・大学1年になって半年位した頃だったと思う。その時、お父さんはルームメイトと一緒におしゃべりをしていた。大学についての不満とか、セックスについての欲求不満とかを喋っていた。二人ともかなりお酒を飲んでいてね・・・まあ、その後、どんなことになったか、お前にも想像できると思う・・・」 「・・・お父さんは、その時は知らなかったんだが、お父さんのルームメイトはゲイだったんだよ。そして、その人としたセックスは夢のようだったんだ。お母さんとのセックスよりもずっと良かった。・・・なんだか、いま大変なことを話しているね・・・それは、お父さんも分かっているよ。でも、それが事実だったんだ。休みになるたび、お父さんはお母さんのところに戻って、何も変わっていないように振舞っていた。でも、お父さんの心の中では、早くルームメイトのところに戻りたいなあって思っていたんだよ・・・」 私には、このことが父を心から苦しめていたことが理解できていた。父の目には苦悩の表情が見て取れた。この後、父が何を言うのか、私にははっきり分かっていた。だから、最後まで話してもらう必要はなくなっていた。私は父の手を握った。 「お父さん、話しを続けなくても良いんだよ。お父さんがどんな気持ちでいたか、理解したから」 父は涙を手で拭った。 「多分、分かってくれるとは思う。だけど、お父さんに、ちゃんと説明させておくれ。どうしてお前が、お父さんがお前のことを愛していないように感じてしまったか。そのわけを・・・」 「・・・お前も分かってる通り、お父さんは、大学を出た後、ここロサンジェルスで仕事を得た。そして、お前とお母さんをこっちに呼び、本当の家族のように、一緒に生活を始めた。お父さんは、男の人に近づくようなことさえしなければ、多分、大丈夫だと思ったんだよ・・・」 「だいたい1年くらいは、それで完全にうまくいっていた。だけど、以前の衝動が、時々、戻って来ることも続いていたんだ。それから、間もなくして、やっぱりお父さんは他の男の人と会い始めてしまったんだ。このような状態がばれてしまうんじゃないかと、お父さんはいつも不安に悩まされることになってしまった。そして、とうとう、お母さんに、本当のことを告白したんだ・・・」 「・・・お母さんはかんかんに怒ると思っていたし、お父さんと離婚したがるだろうなと思っていた。でも、お母さんは、離婚は望んでいなかったよ。お前が、父親のいない子供として成長するのを、望んでいなかったんだ。お母さんは、秘密の状態にしておく限り、お父さんが、誰と何をしようと構わないと言ってくれた。ただ、条件が3つあると言った。一つは、決して、外の交際を家の中に持ち込まないこと。2つ目は、お金を全部、外の交際相手に使ったりしないこと。そして3つ目は、お前をお父さんのようなホモにしないこと・・・」 「・・・お母さんは、同性愛嗜好というのは遺伝すると考えていたんだ。お母さんが、どうしてそう考えたのか、お父さんには分からない。でも、お母さんは、そう信じていた。そして、お母さんは、お父さんがお前に過剰に愛情を注ぎ込むと、お前も私のようなゲイになってしまうと考えたんだ・・・」 「・・・だから、お父さんは、お母さんの願いを聞き入れて、お前と距離を保った。確かに、お母さんが事故で死んでしまった後、お前にもっと愛情を示してあげることもできたけれど、お父さんは、そうしないよう、自分に条件を課してしまった。いま思うと、そうしていたらと思っているよ。そうしたら、多分、お前との間にあんなに問題は起きなかったと思う」 父は、話しの間ずっと、私の両手を握り続けていたし、私も父の手を握っていた。 「お父さん、私、あんな生意気で、聞き分けのない子供でいて、ごめんなさい。お父さんが怒るのを知っていて、わざとああいうことばかりしていた。そうすれば、少なくともお父さんが私のことを振り向いてくれると思って」 私の目から涙が溢れ出すのを見て、父は私の横に席を替わった。そして、まったく躊躇することなく、私を両腕で抱きしめてくれた。この時こそ、私のそれまでの人生で一番の瞬間だった。そして私の涙は、すぐに、嬉し涙に変わっていた。 しばし、そうやって父と抱き合っていると、トレーシーの声が聞こえた。 「どうやら、何もかも、大丈夫のようね?」 私は顔を上げた。 「ええ、すべて、嬉しいことばかりなの」 それから父に向かって、「お父さん、こちらのお二人は、マーク・モーガンとトレーシー。私の友達で、雇い主でもあるの」と二人を紹介した。 父は立ち上がり、マークと握手をし、私たちと同席するように誘った。私たちは、それから飲み物を飲みながらおしゃべりをした。しばらく経ち、父は、そろそろ、おいとまする時間が来たと言った。トレーシーは父の手を取り、言った。 「明日、私たち、ステフィーのためにパーティを開く予定なんですよ。ぜひ、あなたにも来て欲しいわ」 「ぜひ、そうしたいです」 父はそう言ったけれど、私は、父は、多分、その言葉に続けて、来れない理由を話すだろうと思った。 だけど、トレーシーは、すぐに父に名刺を渡し、断る隙を与えなかった。 「それは良かったわ。これが私たちの住所です。パーティは7時から。道が分からなかったら、ご遠慮なさらずに電話をくださいね」 「7時ちょうどに窺えるかは分かりませんが、必ず、出ることにしましょう」 父はそう言って立ち上がった。 トレーシーとマーク、それに私も立ち上がった。父はマークともう一度、握手をし、トレーシーとも握手をした。トレーシーは、ただの握手だけでは満足できなかったようで、父に近づき、頬にキスをした。 その後、父は私の方を向いた。最初、父は私とも握手をしようとしてるのだろうと思ったけれど、次の瞬間、私は父の両腕に包まれ、きつく抱きしめられていた。それから、私たちは、互いの頬にキスをしあい、二人とも相手を愛していることを伝え合った。ハグを解く前に、またも私の目から涙が溢れ出ていた。 3人で父を見送った後、トレーシーが言った。「結局、良い思いつきだったみたいね。あなたがお父様に会うことは」 「素晴らしいことだったわ。否応なく父と会うようにさせられて、今となっては、とてもよかったと思ってるの」 トレーシーは腕を回して私を抱き寄せた。 「それで、お父様は、誰か決まった人がいらっしゃるのかしら? もしいなかったら、お父様がここに滞在している間に、ちょっとしたお楽しみを味わえると良いんだけど」 私はくすくす笑った。「多分ね。父とマークは仲良くなるかしら?」 「バカね。私は、あなたのお父様と私のことを話しているのよ」 トレーシーは、そう言ってから、ふと気がついたように、続けて言った。「あら! ひょっとして、それって、驚くようなことなの?」 車へと向かいながら私はトレーシーに答えた。 「そうかも。それに、父は、いまも、その点は変わらないみたいだったから」 家へ戻る車の中、私は、マークとトレーシーに、父から話しを語った。すべてを語ったわけではなかったけれど、二人とも事情が分かったようだった。 家に着くとすぐ、私はマリアに、今日起きたことをすべて話した。マリアは、私と同じくらい興奮して喜んでくれた。その夜、私とマリアは、トレーシーとマークのベッドに呼ばれ、4人で素晴らしいセックスをした。私が中心となって、3人に喜ばされていたのが大半だったけれど、私以外の人もそれぞれ楽しんだのは間違いない。
スティーブは、固いベンチシートの上、背中を背もたれに預けながら、注意深く妻の顔を観察した。彼女の目に、嘘を言っているような表情はない・・・だが、これまでも騙されてきたのは事実だ。スティーブは話しを始めようとして、一旦、やめた。一度、小さく咳払いをした。それからようやく話し始めた。 「いや、分からない。どんなことについても、もはや、あまりはっきり分からなくなっているんだ。ただ、確かなのは、僕は、君が他の男と一緒にいるの想像するのは、もう耐えられないということだけだ。セックスだけについて言ってるわけではないよ、バーバラ。セックスは、僕にとっては、かなり・・・よそ事というか・・・何と言うか、興味がないこと、と言うのが一番適切な言葉だと思う・・・」 「セックスのことだけじゃなくて、毎晩、君がうわの空でソファの向こう端に座っていた時のことを話しているんだよ。毎晩、君は、ラファエルだか誰だか知らないが、他の男のことを考えながら、上の空で、あてのない方をぼんやりと見ていたね。それに、僕は、僕にはしてもらえなかったキスのことや、小さな微笑や、触れ合いのことを話しているんだよ・・・僕に対してできたはずなのに、他の男に対してしていた、あらゆる小さなことごとのこと。それについて話しているんだよ」 バーバラの眼に涙が溢れ、輝いた。前屈みになって、床に置いたハンドバッグを取り上げ、あらゆる女性がバッグの中に持っていると思われるもの、つまりティッシュを取り出して、目の隅に当てた。 「分かってるわ・・・」 彼女はかすれ声だった。「私はバカだったわ。そういうことをあなたと一緒にするのが好きだったのに。心から、そういうふうにしたいと思っているの。でも、この何ヶ月か、あなたは私から離れてしまっていた。だから、今は、そういう他愛ないキスとか、微笑とか触れ合いとか・・・それを不可能にしているのは、あなたの方なのよ。でも、スティーブ? 今は、私たちが平等な関係になっているかどうかには、私は興味がないの。ただ、そういう時代に戻りたいということだけ。私にチャンスをくれるだけで良いのよ」 スティーブはバーバラがティッシュをしまうのを見ていた。彼女は、今度はバッグを横の椅子の上に置いた。 「ああ・・・でも、バーバラ、どうかなあ・・・僕は・・・」 「あなたには、これから何か失うものがあるの?」 バーバラは、スティーブの言葉を遮った。落ち着いた声だった。 スティーブは、怪訝そうな顔でバーバラを見た。今夜、困惑させられ、バランスを崩されるは、これで何度目なのだろう。 彼はコーヒーを啜った。だが、コーヒーはまだ熱すぎで、彼は舌をやけどしてしまった。カップを慌てて元に戻したが、そのためにテーブルに少しこぼしてしまった。彼はナプキンを取り、こぼれたコーヒーを拭った。 「どうなの?」 バーバラは、スティーブが動作を終えるのを待って、もう一度、問いかけた。スティーブがコーヒーを飲んだり、こぼしたりしてる間、彼女は筋肉一つ動かさず、彼を見つめていた。 スティーブは静かに溜息をついた。一体、男はこういう状況で何をすべきなのだ? 物事が、あまりにも急速に進行している。頭がくらくらする思いだった。今日は、最終的に妻との離婚が決まると期待して来たのだ。あのことで、彼女は、今は、自分のことを嫌悪しているはずだと確信していたし、それが決定的な要因となって、自分を解放してくれるはずだと思っていたのだ。だが、その1時間後、バーバラは、彼がこの数日行ってきたことをすべて脇に置くから、彼女が行ったことを脇に置いてくれ、少なくとも、家に戻ることを許せと言ってきている。 彼の理性では、バーバラは正しいことを言っていると分かっていた。だが、彼の本能では、妻は自分をからかっているような気がしていた。スティーブは混乱していた。こんなふうになるはずじゃなかったのだ。バーバラが、戻りたいなど、言うはずがなかったのだ・・・ スティーブは、認めた。確かにバーバラは正しい。すべてを考慮しても、彼は、いまさら失うものは何もない。バーバラが帰るのを許したからといって、何も変わらないじゃないか。それに、自分はすでに一度バーバラを追い出しいている。その気になれば、もう一度、追い出すこともできるだろう。実質的には、何も変わらないだろう。 「分かったよ」 スティーブは注意深く返答した。 バーバラは、長い間、じっとしたままでいた。それから、あまりにも長い間、止め続けていた息を吐き出した。そして、ぎこちない笑みを見せた。スティーブが提案を受け入れてくれたことに、鎧が脱げた思いがしたのだろうか、ちょっとレストランの店内を見回した。 「お腹がすいたわ」 スティーブは目をぱちくりさせた。彼は、今夜、起きた忌々しいことを想定することができなかった。その一方で・・・ 「ああ、僕も食べても構わないよ」と彼はバーバラに同意した。 ******** 遅くなってからの軽い夕食を食べ終えたあと、二人はしばらくおしゃべりをした。二人とも、話題が中立的なものであり続けるよう、注意を払った。今の二人の状況、先週に起きた出来事、そして今夜の出来事があったにもかかわらず、二人とも、自分たちが、どこか、このおしゃべりを楽しんでいるところがあることに気づいていた。でも、かなり夜も遅くなっている。二人とも、翌日、仕事に行かなければならなかった。 レストランの外に出ながら、スティーブは、「タクシーを呼んでやろうか?」 と言った。夜の空気は、寒すぎるでもなく、むしろ爽やかな冷たさがあった。 バーバラはスティーブの方を振り返った。「私は、家に帰りたいといったはずよ。そして、あなたも、それでいいと言ったはず」 「ということは・・・」 スティーブは反論しようとしかかったが、声に出す前に諦めた。今夜は、裏をかかれっぱなしに思えた。今、反論したからといって、何も変わりはしないだろう。夕方の時は、あんなに希望に溢れた気持ちだったのに。 ピックアップ・トラックに近づきながらスティーブは訊いた。「服はどうするんだ?・・・着替えないわけには?・・・」 バーバラは助手席の中を指差していた。スティーブは中を覗きこんだ。幅広のシートの上に、大きなスーツケースが2つ鎮座していた。彼は、溜息をつき、ドアのロックを解除した。 「ずいぶん自信があったんだな?」 スティーブはそう唸り、荷物を取り上げた。車高の高いピックアップから大きなスーツケースを持ち上げ、後ろのトランクへ置き換えるのは、簡単なことではなかった。忌々しいほど、重い。 「いえ、違うわ」 バーバラは可愛らしい声で答えた。「だけど、おばあちゃんのノニーは、あなたのことに自信があるみたいよ」 スティーブは驚いた顔で彼女に顔を向けた。2つ目のカバンをあやうく落としそうになりそうだった。何とか、そのスーツケースを持ち上げ、後部座席の方へ回し、最初のカバンの隣に置いた。それから、何も言わぬまま、前向きに戻りかけた。だが、向き直る途中、助手席の方を向いたところで、動きを止めた。 「あっ、おい!・・・ああぁ!」 スティーブは、自分で声に出す前に、自分の抱いた疑問に答えを出していた。 「あなた、私の持ってたキーは取り上げなかったでしょ?」 バーバラは、答えるまでもないといった風情で説明した。そして、慎重な面持ちで付け加えた。「でも、家の新しい鍵はちょうだいね」 「なるほどね」 スティーブは肩をすくめた。確かに、何ヶ月か前、ピックアップのキーを交換することを考えたことはあったが、その時は重要なことには思えなかったのだ。だが、バーバラが戻ってくるのを許した以上、新しい家の鍵は渡さなければならないことになったのは事実だ。 「リディアは、君が僕を操縦できると自信があったわけだね?」 スティーブは、半ば憤然としながら訊き、助手席のドアを開け、高い座席にバーバラが上がるのに手を貸してあげた。 スティーブが運転席に乗り込み、ドアを閉めるのを待って、バーバラは答えた。「いいえ、違うわ。でも、ノニーは、あなたが不合理な態度をするのも、ある一定のところまでで、それを超えてしまうことは自分自身が許さないと、そういう人だと言ったわ。自分が翼を広げて飛べるところまでは許容するけど、それ以上は度を越えることはできない人だと。ノニーは、あなたにとても信頼を置いているの。それは知っているはずよ。ノニーは、あなたが素晴らしい人( 参考)だと、とても確信しているんだから」 スティーブは運転席の窓を開け、冷たい夜の外気を入れた。 「ノニーは、またも、神様の役を演じるわけか」 彼は、そう呟いて、エンジンをかけた。 ********
家に着き、自転車を家の横に置いた。これなら、後でグラフ先生の家に行くとき、音を立てずに済む。 両親はすでに帰宅していた。お父さんはテレビでニュースを見ていて、お母さんはテーブルについていた。俺は手を洗って、食卓に着いた。夕食を食べながら、その日にあったことをおしゃべりし、食事後、俺は自分の部屋に引き下がった。 早速、パソコンをつけて、メールをチェックした。案の定、先生からのメールが来ていた。 「本当にお願いなのよ。家に来るのはやめて。夫がいるのよ。危険すぎるの。夫にばれたら、何をするか分からないわ。二人とも大変なことになるのよ。分かってるの? お願いだから、今回はやめにして」 俺は素早く返事を書いた。 「残念だが、グラフ先生、今夜も、お前は俺の指示を守らなければならないのだよ。先生には選択の余地はないのだよ。守らなかったら、先生が去年の夏、誰とやったか、今年の夏もどんなことをしたか、みんなに知れ渡ることになるんだ。リビングの明かりをつけて待っていることだな。これが最後だ。命令を守るんだぞ。ご主人様より」 メールを送信した後、シャワーを浴びにいった。ゆっくり時間をかけてシャワーを浴びたが、今夜のことを想像してしまい、なかなか勃起が収まらない。シャワーを終え、部屋に戻って、着替えをし、そのままちょっとベッドに横になった。 ふと顔を上げて時計を見たら、かなり時間が過ぎているのに気がついた。途中、アダルト・ストアに立ち寄る予定だったので、素早く起き上がり、こっそりと家から外に出た。自転車に乗り、アダルトショップに向かう。 ショップの前につき、あたりを見回し、誰も見ていないことを確かめ、素早く店内に入った。中には、男が数名と女が二人ほどいて、品物を見ていた。いろんな商品があってびっくりしたが、ともかく目的のものを捜すことにする。 最初のアイテムは、ビーズが数珠繋ぎになっているヤツだ。ビーズは一番大きなサイズのを選んだ。直径2センチ半はあるやつで、その銀色の球が7つほどナイロンの紐で数珠繋ぎになっている。 次の商品棚では、いろんなスタイルのがあって迷ってしまったが、ようやく望んでいたものを見つけた。電動式の道具で、「遠距離恋愛の彼氏」と名付けてある。リモコン式の卵型バイブだ。箱の裏には「どんなケータイにも合うよう容易にプログラム可能」とか「世界中のどこにいても彼女をイカせられる」と書いてある。俺はにんまり笑いながらレジに行き、支払いを済ませて、外に出た。 自転車に乗り、グラフ先生の家に向かった。この日も、先生の家の隣の通りに行き、ステファニーの相手の男の家の横に止めた。今日は、家じゅう真っ暗で静かだったので、誰もいないんだろう。グラフ先生の家には明かりが煌々とついていた。 早速、買ったばかりのリモコン・バイブを開け、指示に従って操作した。確かに箱に書いてあった通り、簡単にケータイにコードを入力できた。やっておかなくてはいけないことで残っているのは、後でグラフ先生のケータイを見つけ、そいつに同じコードを入力することだけだ。リモコン部分を取り出し、俺のケータイの充電口に差し込んでみた。こうやって発信するわけだ。パッケージの中には、黒ベルベッドの箱があった。そいつの中に銀色の卵型バイブを入れ、他のものもしまった。後は、ひたすら時間が来るのを待つだけだ。 時間が止まっているように長く感じられた。やがて近所の家々の明かりがひとつひとつ消え始めた。かなり夜も更けてきている。すっかり明かりが消えた家々も多くなってきた。俺は、家の間の茂みにずっと身を潜め続けた。 じっとしながら、あのクラブのことを考えていた。あのクラブの会員になって、グラフ先生をあそこに連れ込むことができないだろうか? だがどうやって金を作ったらよいんだ? 俺は、グラフ先生が、あのクラブのステージの上、椅子に拘束されているのを想像していた。両脚をぱっくり広げて縛り付けられ、両手首は頭の上に吊るされている。そんな姿のグラフ先生。そんなことを想像していたら、ズボンの中、勃起が猛り狂っていた。痛いほどだ。 グラフ先生の家に注意を戻した。いつの間にか、1階部分の明かりが消えていた。今は、一階のところは真っ暗になっている。もうすぐ、グラフ先生の、あの熟れた体を味わえると思い、心臓がどきどきし始めた。 2階の方をじっと見続ける。やがて、一つ明かりが消えた。そしてまた一つ。最後の一箇所だけ、まだ明かりがついている。そこだけを睨みつけながら、ひたすら待った。だが、なかなか消えない。辛抱強く待ち続けた。体中の血管が狂ったように脈打つのを感じた。「早く消えろ! 早く消えろ! 早く消えろ!」と小声で呟いていた。 ふと、後ろの方から車が一台走ってきた。振り向くと、パトカーだった。ちくしょう、警察に通報したのか、と思った。もう一度、家の方を見た。そして、最後の明かりが、ぷつんと音を立てるように消えるのを見た。 もう一度、振り返ったが、さっきのパトカーはただ巡視をしていただけで、あれが走り去った後は、何も来ない。他の車も通行人もいない。自転車のところに戻り、それを引っ張って、家の間の陰へと向かった。それから、もう一度、辺りに誰もいないことを確かめ、その後、自転車に乗り。ゆっくりとペダルを漕ぎ始めた。 通りに出て、グラフ先生の家の前を通り過ぎ、3軒ほど先まで走った。やはりグラフ先生の家は真っ暗になっている。先生の隣の家の庭に何本か樹が立っていて、陰ができてるのを見た。そこへと自転車を押して行き、静かに自転車を倒し、俺も地面に腰を降ろした。後は、リビングの明かりが灯るのを待つだけだ。 かなり遅い時間になっていた。いつ点くとも知れない明かりが点くのを待つのは苦痛以外の何物でもなかった。「さっさと点けよ。もう、旦那は寝たんだろ?」 そう独り言を言いながら待ち続けた。気分をリラックスさせようと目を閉じて、じっと黙想してみた。また、あのクラブのことが頭に浮かんでくる。 何分経っただろう。おもむろに目を開けた。そして、リビングの明かりが点くのが見えたのだった。
そして、突然、アンドリューは、充分、おしゃべりはしたと感じたようで、私にキスをしてきた。顔中にキスの雨を降らせてくる。それから私の首筋にキスを始めた。男の人に首筋の肌を吸われることには、何か、とてもセクシーなところがある。高校生時代のことを思い出させるからかもしれない。高校生の時は、女の子たちは、首筋に残されたキスマークを隠さなければならないから。胸にキスマークを残されたこともあったけれど、ドニー以外には誰にも見せなかった。 アンドリューは、そういった高校生っぽいキスを丹念に首筋にしてくれていた。そのキスに、背筋に沿ってぞくぞくと興奮が走る。 その後、彼は首筋を離れ、胸へと向かった。ああ、アンドリューは、まるで、私の公式乳房検査官のよう。しかも、その検査をすべて唇で行っている。こんなにもすみずみまで胸を他の人に調べてもらったことは一度もない。彼の舌はじれったい感じだった。いや、私の言いたいことが分かってもらえるとすれば、この状況なら、多分、くすぐったくじわじわ興奮させる動きだったと言うべきかも知れない。 この愛撫の間ずっと、私は完全に受身のままでいた。ただ横たわって、彼に愛されるがままになっていた。アンドリューは私を愛することにかけてはエキスパートと言える。いや、彼こそ、私を愛することにかけての唯一のエキスパートのように思える。 ようやく彼の口は私の乳房から離れて、おへそへと降りていった。舌先でおへそを突かれいじめられる。とても官能的な感覚。どんどん興奮が高められてきていたし、その頂点へと近づいていた。 私は、自分がどうしてこんなにもうぶなのか、自分でも分からない。その時まで私はアンドリューがどこに向かっているか気づかなかったのだ。ああ、何てことを! 彼は私のあそこに口をつけようとしている。私にそれをしてくれた人は、誰もいなかったのに。しかも、さっき愛し合ったばかりのあの部分なのに! まだ、私が出した愛液でびちゃびちゃだったし、彼の出した体液も残っているのに。多分、私のあそこはとんでもない状態になっているに違いない。 ええ、そう。正直に言って、私は、誰かが私にそれをしてくれることを前から夢見ていた。でも、アンドリューはそれをしたいのだったら、前もって言ってくれたらよかったのに。そうしたら、ちゃんとその準備をしたのに。シャワーを浴びて、あそこをきれいにしたり、香水をつけたりできたのに。あそこにリボンを結んでおくこともできたのに。なのに、愛し合ったすぐ後というのだけは、困る! でもアンドリューがすべてを仕切っていた。私は、全責任を放棄してしまっていたのだから、もし彼がそれをしたいのなら、私にはそれに反対することはできなかった。そういうふうに自分に言い聞かせた。これはもう私の手を離れたこと。だから、どうしようもできない。私の手を離れたことであって、ほんとに良かった。 彼の指があそこをいじっている。どんどん私を狂わせて行く。 そして突然、彼の唇があそこに触れた! 彼の舌が、陰唇の中心部の小道を這い、舐め始めている。これは、私の人生で最も驚くべき官能的な感覚だったかもしれない。彼の舌が私に素晴らしいことをしてくれている。彼は、歴史を専攻したと言っていたけど、学位はクンニリングスで取得したのではと思う。どうしても彼の顔を見てみたい。 顔をあげ、彼の方に目をやると、彼も私の顔を見ていた。このときのアンドリューほど、自分がしている行為を楽しんでいる人を見たことがなかった。彼の瞳を見れば、それが分かる。あの美しい濃茶色の瞳。二人の視線がぴったりと合い、見つめあっていた。そして私ははっきりと分かった。彼は私を愛してくれている。彼は私の体を崇拝してくれている。私に悦びを与えることを喜んでくれている。男性が女性のあそこを舐める行為なのに、それが、どうしてこんなにもロマンティックになれるのだろう? アンドリューは、口でも、手でも、そして瞳でも、私のことを愛してくれている。 確かに、さっき私たちは性交を行った。だが、それはただのセックスで、原初的で動物的な交尾に過ぎなかった。でも今は愛し合っている。とても官能的で、とても優しい気持ち。私は両手を降ろし、彼の頭を包んだ。どうしても彼に触れたくなったから。アンドリューは、とてもくつろいでいて、まったく先を急ぐ様子ではなかった。彼は、まさにしていたいと思ってることをしている様子で、私が許せば、いつまでもその場から離れずにいる様子だった。
「無垢の人質」 第4章 Innocent Pawn Ch. 04 by wishfulthinking 彼女は、鋼鉄のドアの陰に立ちながら、おののき震える呼気を鎮めようと努めていた。震える手に太いロウソク立てを握り締め、頭上高く掲げていた。 あの男が自分の体内に子種を仕込み、自分を餌として使い、父を隠れ家からおびき寄せる計画を持っている。いまや、その事実を知った以上、彼女にはたった一つしか選択肢はなかった。あの男から逃れなければならない。 不注意な召使が置き忘れていった小さなスプーンを使って窓の鍵を外そうとしたが、それも無駄だと知り、見切りをつけていた。この塔の滑りやすい石壁を無事に這い降りことなど彼女には不可能だった。それに、たとえ、それができたとしても、見つからずにそれを成し遂げるチャンスはほとんどなかった。 それを諦めた後は、召使たちのことへ思考を向けた。召使は二人いる。朝と昼は年老いた女がいて、夕方は年少の若者がいる。男である若者の方が、体格的に、打ち負かすのが難しいかもしれないが、それでも、彼の方が最善の選択肢だった。女の方は、召使であるにもかかわらず、自由な時間にこの邸宅を出入りしているのを目撃している。あまりにも謎が多すぎる。 そこで、空が暗くなるのを待って、彼女はドアの陰で固唾を飲みながら待ち続けたのだった。そして、とうとう、かんぬきが引き外される音を聞いた。その時が来たのだと分かる。 ぎしぎしと音を立ててドアが開らき、食べ物を乗せた円皿がドアの向こう側から現れるくのを見て、彼女は心臓は高鳴り、喉から飛び出そうになっていた。彼女は、若者が、いつものように、前屈みになって、ドアのそばにある小さなスタンドに食料を置くのをじっと待っていた。疑いを知らぬ若者は、彼女がいる部屋の内側に背中を向けるはずだった。その時こそ、ろうそく立てを打ち降ろすつもりだった。 ただ一つ、普段と違っていることがあった。いつもの召使ではなかったのである。大きなブーツでドアを蹴って閉め、振り向いた顔に、あの燃えるような琥珀色の眼があったのである。その眼は、全裸のまま、間に合わせの武器を頭の上に掲げ、震える彼女の姿を捉え、険悪そうに細まった。彼女は、立ち尽くし、凍りついていた。モスグリーンの瞳は見開いたまま、恐怖の表情を湛えている。 彼は、注意深く顔の向きを変え、円皿をスタンドに置いた。そして彼女は恐怖に満ちたまま、ろうそく立てを降ろし、胸に抱きしめた。彼がゆっくりと体の向きを変え、彼女と対面すると、しっかりと握り締めたままの彼女の指からろうそく立てをいとも容易く奪い取り、無造作に床に投げ捨てた。そして彼女の前にそびえ立ち、見下ろした。 二人の間に沈黙が続いた。その間、レオンの琥珀色の眼は猛々しい表情を増しつつ、イサベラの裸体を我が物のように彷徨い続けた。 「はっ!」 イサベラは息を飲んだ。突然、レオンに担がれたからである。まるで体重などないかのように、軽々と彼女の裸体を肩に担ぎ上げた。イサベラの赤い長髪が滝のように流れ、彼のかかとに届く。それとは反対に、ピンク色の秘肉もクリーム色の尻頬も、高々と宙に上がった。 レオンは、イサベラを担いだまま、部屋を出て、らせん状に延々と続く石段を降り始めた。毅然とした面持ちで、無言のままだった。見張りの役務についている兵士たちを唖然とさせつつ、その前を通り過ぎ、好奇の目で見る召使たちが詰めている厨房の中を進む。だが、誰も主人であり王であるレオンに問いかけようとするものはいなかった。 イサベラは、レオンが歩み進むのにあわせて体を揺さぶられながら、その恥辱に涙を流し、逆さに垂れ下がる髪を濡らしていた。頭を逆さにされ、レオンがどしどしと歩むたびに、めまいも感じていた。彼女にとって永遠とも思える恥辱の時間の後、ようやく、レオンは歩みを止めた。堅牢な鋼鉄の扉の前だった。イサベラは、鍵を鍵穴に指し込むような金属がこすれあう音が聞き、レオンの足が扉を蹴り開けるのを見た。 扉の向こう、細く続く階段が見えた。だが、すぐにレオンは扉を蹴って閉めてしまい、その後は、まったくの暗闇になってしまった。レオンは、片方の肩を壁に擦らせながら、それを頼りに、ゆっくりと階段を降り始めた。 階段を降り切り、歩みが一定になると、くぐもった啜り泣きの声がイサベラから漏れ始めた。レオンの歩みはゆっくりとしており、まるで頭の中の地図にしたがっているように目的地がはっきりしているようだった。 突然、レオンがイサベラを肩から降ろし、何か棚かテーブルのようなものに座らせた。熱を帯びた彼女の裸の尻肉が、突然、冷たい石の台に当てられ、びっくりしたイサベラは悲鳴を上げた。
ジェニーは僕が目をキラキラさせているのを見て、ゲイルに笑顔を見せた。 「ゲイル? 彼女、あなたのお仕事が気に入ったようよ」 僕は鏡を見ながら言った。「自分を見ているなんて、本当に信じられない」 ゲイルもコメントをした。「私、あなたは素敵な顔立ちをしているって、いつも思っていたの。でも、女性の顔だとは思ってもいなかった。本当に美人の顔立ちをしてるし、体で愛してあげる相手としても、とても楽しくて素敵な人。女同士愛し合うような点で変わったことだというのは全然、問題にならないわ。だって、あなたは実際は、立派な男性なんだから」 ジェニーは僕のパンティの上から股間を掴んだ。「私も、全部ひっくるめて楽しんでるわ。あなたの中にいる女も大好きだけど、男の部分も大好きなの。実際、男と女の2つの世界でも一番良いところを兼ね備えている感じだわよ」 そう言って、素早く僕にキスをし、股間から手を離してくれた。 僕たちは3人揃って、部屋へと戻った。ジェニーとゲイルを両脇にして歩く。スカートが脚に絡まり、さわさわと揺れていた。部屋の中にはドナがいて、すでに身だしなみを元通りに整えた姿でソファに座っていた。そして僕を見つめている。 「まあ、何て素敵なの、ミス・ビッキー」 それに応じて僕も返事した。「ありがとう、ミス・ドナ」 吐息混じりの高めの声で優しく答えた。気づかぬうちに、僕は、話しをするときには男性っぽい声を出さないように意識するようになっていた。いかにも女、というような言葉使いは真似たくなかったが、声の調子や発声の仕方については女性っぽくなるようにしていた。自分の女性としてのイメージは幻想なのは知っているので、むしろ、その幻想を完璧なものにしたいと思っていた。 ドナは、僕の返事に満足して、にっこりと微笑んだ。「本当に素敵よ、ビクトリア」 それからドナはゲイルの方を向いた。「ゲイル? 家に入ってくるときバッグを持っていたのを見たけど、何を持ってきたの?」 ゲイルは少し顔を赤らめた。「私、ちょっと、この前のプレーのときに起きたことが再現されるのかと期待していて、それにふさわしいおもちゃを持ってきちゃったの」 それを聞いて、ジェニーは好奇心に満ちた目つきをし、ドナは、驚いたように目を見開いた。 「まあ、持ってきたものを見せてくれる?」 ドナは、ソファの上、姿勢を正して座りなおした。 ゲイルはバッグのところに行き、持ち帰ってきた。チャックを開け、中から道具を出し始める。手錠、各種の鎖、首輪、何かディルドのように見えるが、サイズが小さいものがいろいろ、黒の目隠し2つ、鎖付きの小さなクリップ。他にもバックから出さなかったアイテムもいくつかあった。 ドナは、興味深そうにアイテムを見ながら、鼻を少し膨らませた。 「それで? このアイテムを誰に使いたいと思っていたの?」 にやりと笑いながら、からかうような口調で尋ねた。 「どなたでも、志願したら・・・」 ゲイルも微笑を返しながら、慎ましく返事した。 4人とも互いの顔を見あった。僕は、痛みを感じるのは良さそうとは思えなかったが、これまでの経験であったような、軽い程度に、人に支配されることについては、とてもエロティックだと思った。それと同時に、支配する方に回るのも興奮しそうだとも。 ドナが口を開いた。「ジェニーと私が支配側で、あなたとビクトリアが受けて側というのはどう?」 ゲイルはにっこりと笑った。「まさに、そう想像していたわ。想像の時にはジェニーはいなかったけど。でも、ジェニーが加わるともっと良さそう。どうかしら、ミス・ビッキー?」 正直、ここで、あまり興奮していないなどとは言えなかった。だが、この美しい3人の女たちと、もっとセクシーなプレーができるという期待は、決して不快なことではない。 前に使った、「私は皆さんになされるがまま」といった表情を使って、それを顔に浮かべながら、返事をした。 「こんなに支配的な女性二人に盾突こうとしても、何かできることはあるの?」 僕の返事を聞くとすぐに、ドナはおもちゃを集め、バッグに戻し、僕たち全員を寝室へと引き連れた。
ブリイは背中を押され、大きな車の後部座席に押し込められた。右にはジャックがいて、左には彼の手下の一人が座り、ブリイは二人に挟まれる形になる。もう一人の手下と運転手が前の座席に座った。ジャックはブリイの向こう側に座る男を見て、言った。 「やってやれ」 夜の闇の中、車が走り出し、スピードを上げていく。その間、男はズボンの中から一物を取り出した。ブリイはそれを一瞥し、恐怖の表情で男の顔を見た。 「しゃぶれ!」 男にそう言われても、ブリイは動こうとしなかった。 ジャックはすかさずブリイのあごに手をやり、顔を上げさせた。 「おい、言われた通りにするんだよ!」 ジャックの凄みに気おされ、ブリイはいやいやながら、ゆっくりと男の肉棒へと頭を下げた。すでにプレカムを垂れ流している。ブリイは、ためらいがちに舌を伸ばし、そのぬらぬらした頭部に触れた。すると男は、いきなり両手でブリイの頭を押さえつけ、分身を彼女の口の中に突き立てた。そして、力ずくで、ぐいぐいと頭を上下に揺さぶり始めた。やがて、男の手によらずとも、ブリイ自からが同じ動きをし始めるまで、それが続けられた。何分か経ち、男は頭を後ろに倒して、深い溜息をついた。先にブリイがジャックにしたのと同じもてなしを、その男にも行ったからである。 その頃、バーでは、ビリーが男たちにブリイはどこに行ったのかと尋ねまわっていた。誰も答えないと、ビリーは、次第に、荒れ狂い始めた。ようやく、奥の事務室からジョーンズが出てきてビリーに告げた。 「お前の奥さんなら、ここにはいねえぜ。さっき、1000ドルで売り飛ばしたところだ。金儲けするのは俺の自由だろ?」 ビリーはジョーンズの胸倉を掴んだ。「彼女はどこだ?」 男が二人出てきて、ビリーをジョーンズから引き離した。「もう今だと、ずいぶん遠くに行っちまってるんじゃねえか」 「月曜には自由にするって言ったじゃないか!」 ビリーが叫んだ。 「嘘だよ。俺がお前なら、もう、可愛いブリイのことは忘れることにするな。多分、彼女には二度と会えないだろうぜ。俺とビリヤードをすると、こういうことになるんだ。良い教訓になっただろう?」 ビリーはジョーンズに挑みかかろうとしたが、それよりも先に男たちに押さえつけられてしまった。男の一人に、みぞおちにパンチを食らい、バーから引きずり出された。ビリーは、それでも反撃しようとしたが、それも虚しく、さらにもう一発、みぞおちを殴られる結果に終わった。男たち二人が、ビリーをバーの外に放り投げた。腹をやられ、呼吸に苦しみながら、ビリーは泥の中、もがいた。どうすればブリイを見つけられるんだ? ジャックたちは東のアラバマ州モビールに向かっていた。この都市はジャックの縄張りで、そこでジャックはポン引きをしている。彼は新人集めの旅に出ていたところだったのである。そして、この旅は大成功だった。このブリイという女は、上玉の獲物であり、驚くほどフェラが上手い。彼の26センチ砲をたった5分で射精に導いた女は多くない。 今ジャックは、ブリイがフレッドのペニスをしゃぶり、勃起させているところを見ていた。フレッドは勃起するとブリイの頭を上げて、ペニスから離し、彼女の体を持ち上げ、女陰に突っ込んだ。 この女、生まれつきの淫乱女のようだ。これほどあどけない美女であるにもかかわらず、ブリイがたいていの女たちよりもセックスに乗り気になってるのを知り、ジャックは驚いていた。ブリイはフレッドの股間の上、体内に射精される最後まで激しく動き続けた。 次は俺だとジャックが言うと、ブリイは嬉しそうに、それに応じた。車がモビールに着く頃には、ブリイは車内のすべての男とセックスしていた。さすがのブリイも、その時点ですっかり疲れてしまった。ジャックはブリイを自分のアパートに連れて行き、ソファの上に転がした。ブリイは崩れるように横たわり、眠ってしまった。 ビリーは、ブリイを探すにも、どこから始めてよいか分からなかった。車に乗り込み、ともかく、ある方向を選び、道を走った。ブリイを見つけ出せる可能性はゼロに近かったが、それでも探し回った。すべてのガソリンスタンドに立ち寄り、ブリイの写真を見せて、目撃しなかったか尋ねまわった。その夜は疲れきるまで探し続けた。限界が来ると、道脇に車を止め、そこで眠った。
父が腰を降ろすと、ウェイターが来て、メニューを出し、飲み物の注文を聞いた。バーボンのダブルをオンザロックで、と父が言い、私はダイエット・コーラを頼んだ。 ウェイターが去ると、父はメニューを眺め始めた。私は、しばらく黙っていたが、持ちきれなくなって、話しを切り出した。 「お父さん、食事を始める前に、話し合っておいた方が良いかと思うんだけど・・・」 「いや、まずは食事を済ませてしまおう。その後、どこか静かなところに行って、話そう。お前には、話すことがかなりありそうなのは分かっているよ。私もお前に話さなくちゃいけないことが2、3あるし。会話を他人に聞かれたくないんだ。お前にも分かると思うが」 父はメニューを見ながら、そう言った。 二人とも何を食べるか決め、注文をした。その間、父が私の挙動を逐一見ていることに、どうしても気づかずにはいられなかった。私がコーラを啜るところをじっくり見ているし、食事が届いた後も、私が食べ物を一口サイズに切り、口に運ぶところを、しっかり見つめていた。だんだんと、自分が何かの科学的な実験対象になっているような気持ちになっていた。 食事が済み、私は満腹になっていたので、デザートは断った。すると父はレストランのバーの方の客席に移動して、話しをしようと提案した。私は、その提案に乗り、立ち上がったが、すると父は素早く私の後ろに来て、私の椅子を引いてくれた。 レストランを出るとき、振り返ってトレーシーとマークを探した。二人とも立ち上がるのが見えた。それに、私たちがバーの方へ入っていくと、二人もついてくるのが見えた。 父と私は、一番奥のブースに腰を降ろした。そこだと、他のお客さんから離れて二人だけになれるところだった。父は、お酒のお代わりをし、私は、ダイエット・コーラのお代わりをした。 「どうやら、お酒はやらないようだね」 注文を受けたウェイトレスが、トレーシーたちの方へと注文を取りに去った後、父が言った。 「まだ、その年になっていないから」 「アハハ・・・だけど、以前は、そんなことお構いなしだったじゃないか?」 私もつられて笑っていた。と言うのも、私は、自分が16歳になってからは、いつものようにアルコールに手を出していたことを思い出したから。 「お父さんが前に言ってたよね。『歳とともに思慮が深くなってくる』って。・・・それに、私は、もう、ああいう子供っぽいことはやめちゃったんです」 父は、急に真顔に戻って言った。 「さっき食事をしていたときに、お前の変化については気づいたよ。前は、お前のテーブル・マナーに、私はいつも恥ずかしい思いをしたものだ。でも、今夜、それがまるで変わったことに気がついたよ。変わったといえば、いつから、お前は、こういうふうに変わったんだい?」 「トレーシーとマークのところに住むようになってから。トレーシーに言われたのだけど、彼女、私が食堂で働いていた時に、私の中にそういう兆候があるのに気づいたらしいの。生まれて初めて、こういう服装をした時、私は、まさに女の子の服装になっているのが本来の自分にふさわしいような感じがしたんです・・・」 父によく分かってもらおうと、こう言った後、少し沈黙して間を置いた。 「・・・でも、変わったことと言えば、お父さんも、私の格好にあまり驚いていないように思うわ。もっとも、それは、それで当たり前だとは思うけど・・・」 それを言った途端、父の顔が急に変わった。まるで私が父の頬をひっぱたいてしまったような表情をしている。父は、どもるような口調で言った。 「それはそれで当たり前だって、それは、ど、どういう意味なんだ?」 「あ、ごめんなさい。そんなことを言うべきじゃなかった。とても仲良くできていたのに。私、いつも、こうやって、お父さんとの関係を台無しにしてしまう」 「謝ることはないよ。ただ、どうして、そう言ったかを話して欲しい。ああいうふうに言った理由があるはずだから」 今夜は、父と私が一緒に過ごした時間の中でも、最高に友好的な時になりそうな夜だったし、私は、本心から、このひと時を台無しにしたくなかった。だけど、どうして父は私を愛してくれなかったのか、そのわけも知りたかった。 父になだめられて、それに促されるように、私は話し始めた。 「何と言うか・・・お父さんは、いつも、とてもよそよそしくて、私のことを好きじゃないように見えたわ。子供の頃も私を抱きしめてくれたことが一度もなかったし、お母さんが死んでからは、ただ握手するとか、背中を軽く叩くとか、それだけ。私は、お父さんがどうして私を嫌っているのか分からなかった」 「お前のお母さんの言うことを聞くべきじゃなかったのは分かっているよ・・・」 父は、そう言い始めた。何のことを言っているのか、私が訊く前に、父は続きを語っていた。 「・・・少しずつ話そうと思っていたけど、お前も、訊いてくれたことだし、一度に全部、話してしまわなければならないようだね・・・」 「・・・お父さんが、お前のことを愛していないなんて、絶対にそう思わないで欲しい。私はお前のことはとっても愛しているんだよ。だが、お母さんは、私にお前へ私の愛情を示さないようにして欲しがったんだ。お父さんが、お前に多大に愛情を注ぎ込むと、お前がゲイになるのではないかと心配したんだよ・・・」 父は私の手を握りながら語った。 「・・・お父さんとお母さんが高校時代からデートしていたのは知ってるよね? お父さんとお母さんは、同じ教会に通っていて、そこで恋に落ちたんだ。高校時代は、一度もセックスをしなかった。確かに、ちょっとはヘビーなペッティングとかはしたけど、それ以上は決してしなかった。それはお父さんたちが信じていた信仰に反することだったから、禁欲を守っていたんだよ・・・」 「・・・お父さんが、大学に上がり、別の町に出て行くことになった前の夜、お父さんもお母さんも、本当に悲しくなってしまった。そして、いろんなことが連鎖して行って、気がついたら、お父さんとお母さんは愛し合っていたんだよ。でも、そのことに二人とも罪悪感を感じてしまって、結婚するまでは待つことにしようと、お母さんと二人で誓い合ったんだ・・・」 「・・・3ヵ月後、お母さんから電話が来て、子供ができたと告げられた。何も考えずに、直ちに故郷に戻って、お前のお母さんと結婚したよ。勘違いしないで欲しいが、お父さんは、決してそれを後悔していない。お前のお母さんのことを本当に愛していたし、いずれ、結婚することになると思っていたから。・・・少なくとも、あの時は、そう思っていたから・・・」
建物の外、駐車場のところで、スティーブは呼び止められた。 「スティーブ! 待って!」 バーバラだった。スティーブのことを追いかけてきたのだった。彼は驚いたが、バーバラがカウンセリングに現れたこと自体に比べれば、驚きの度合いは小さかった。 スティーブは、バーバラが建物の1階から駐車場に通じる二重ドアを足早に歩いてくるのを見た。バーバラは、何か意を決したような表情を顔に浮かべていた。それに、少なからず、怒っているような表情も。バーバラは、スティーブに追いつくと、彼の腕をぎゅっと掴んだ。 「あなた、本当に、今は、自分を哀れむ気持ちからは抜け出ているのよね? どうなの?」 強い語調だった。 一瞬、スティーブは、バーバラの怒りを、そのまま彼女に返してやろうという誘惑に駆られた。だが、ぐっと堪えて、黙ったまま、怒りが鎮まるのを待った。それから、曖昧な笑みを浮かべながら、返事をした。 「ああ・・・もう大丈夫だと思うが」 落ち着いた口調だった。 だが、実際は、つい、この日の午後まで、スティーブは、自分の中にそういう感情があるのに気づき、困惑していたのである。だが、彼は、何とか、その「可哀相な自分」といった自己憐憫の感情を押し潰し、深く鬱屈した感情のあまり衝動的にキンバリーと行為をしてしまった事実と直面するよう、気持ちを立て直したところだった。 彼は、自分がやってしまったことを少なからず悲しいことだと思っていた。キムが持っていると思われる様々な性感染症に自分を晒してしまうという、そんな無謀なことをしなければ良かったと後悔していた。だが、すでにこんなに時間が経っている。彼にできることは何もなかった。 バーバラは、スティーブの顔に浮かぶ表情を逃すまいと、彼の顔を見つめた。夫の心は安定しているという、何か安心させるような証拠を求めて、表情を探っていた。夫は自殺を考えていたと聞いて・・・いや、事実上、すでに自殺をしてしまっているのかもしれないけれど・・・それを聞いて、彼女はひどく心を乱していた。このことに、どう対処してよいか、バーバラには分からなかった。そういうことを前もって考慮していなかったし、対処する心積もりも、もちろんなかった。ただ、前進すべきとは思い、とにかく、以前から、今夜しようと計画していたことをすることに決めたのだった。 「コーヒー!」 バーバラは強い口調で、そう言い、通りの向こう側にあるデニーズを指差した。 スティーブは、煌々と明かりが灯るレストランに目をやり、肩をすくめて見せた。バーバラとコーヒーを飲むことには、何ら問題はない。ただ、ふと、そういうことをバーバラと3週間前にできていたら、どうだったろうと思った。キムと無防備なセックスをすることによって、いわば、もやもやを晴らし、そうすることによって自分を・・・そんなことをする前にバーバラと話していたら・・・まあ、だが、あの時の自分には、キムとのセックスはどうしても必要なことだったのかもしれない。何と言うか・・・ スティーブは、先のカウンセリングが始まった時のような、奥深い平安の感情は消えていたが、それでも再び、落ち着いた気持ちになった。内心、自分のことに驚いていた。どこか、ある時点で、永遠に失われたとばかり思っていた自信が、再び、自己主張を始めていた。彼は、バーバラと話しをしてやっても良いという気持ちになっていた。 ******** 「家に戻りたいわ」 何の前触れもなく、バーバラはいきなりスティーブに言った。 二人とも隅にあるブースに腰掛けたばかりだった。スティーブは、いきなり、そう言われて驚いた。まるで流行になってるのか、今日は驚かされっぱなしだ。 沈黙の後、ようやくスティーブは口を開いた。 「それは、いい考えだとは思わないね。何も変わっていないんだよ、バーバラ」 「何を言ってるのよ、変わったわよ! スティーブ、あなたは日曜日から妹に6回はセックスしたわ。それで、私がラファエル氏や誰それにしたみみっちい手仕事は帳消しよ。今こそ、私たちが、いくつかの事柄について再検討するのに絶好の時期だわ。そう思わない?」 ウェイトレスが二人に熱いコーヒーを持ってきた。スティーブは彼女に微笑んで、ありがとうと言った。彼は、砂糖をふた匙入れ、ゆっくりと時間をかけてかき回した。だが、やがて、時間を延ばす方法が思いつかなくなる。彼は顔を上げて、バーバラを見た。 「そうはならないよ。僕がしたことは、君がしたことが何であれ、それを帳消しにすることにはならない。僕が君の妹と一緒になったとき、君はすでに僕たちの結婚の誓いを破ってしまっていたんだ。僕にしてみれば、君が、あの野郎と二人っきりになった、その最初の瞬間に、僕たちの夫婦関係は空虚なものに変わってしまったんだよ」 バーバラはテーブルに覆いかぶさるように前のめりになって、顔をスティーブに近づけた。囁き声での返事だったが、スティーブには問題なく聞き取れる声だった。 「そのことについては、すでに何千回も謝罪したわ・・・」 硬質のプラスチックのテーブル板を爪でカチカチと叩きながらバーバラは答えた。 「・・・悪いことをしたと分かってると、もう数え切れないほど、あなたに言ったはず。それに自分が愚かだったことも認めたし、あのことについては、一切、言い訳できないとも認めたわ・・・」 「・・・これ以上考えられないほど、悲しくて悔しい気持ちなのよ、スティーブ。ものすごく、深く後悔の気持ちに沈んでるの。私たちの人生の最後まで、あなたが望むような女になって、ずっとあなたに償いをしたいって、あなたに伝えたかったの。そのために、考えられることをすべてしてきたわ。私にはそれしかできないの、スティーブ! 分かってくれる?」 バーバラは、そこで話しを中断した。彼女は、スティーブの顔に、何か決めかねているような表情が浮かんでいるのを見た。 「何で、分かってくれないのよ、スティーブ! 私たち、一緒になって、楽しかった時もあったじゃない?!」 声には怒りがこもっていた。「あの、忌々しくて、つまらないことのために、すべてを放り投げてしまっていいと思ってるの? どうして、そんなに頑固なのよ! あのことは、今でも、思い出すだけで吐き気がしてくるっていうのに! どんなに無理強いされたって、あんなことは2度とできないって、私がそういう気持ちになっているのが、どうして分からないのよ!?」
朝になり、俺は、起きるとすぐにパソコンに電源を入れた。立ち上がるまで、どうしてこんなに時間が掛かるんだとイライラする。ようやく立ち上がり、ネットに入って、メールのサイトに行った。案の状、先生からの返事が来てる。 「これが最後のチャンスだわよ! 指輪を返して! さもなければ警察を呼ぶわ! 指輪を返して、私に関わらなくなったら、何も困ったことにはさせないから。でも、そうしなかったら、最悪の事態になるでしょうね!」 俺は、即、返事を書いた。 「いや、こっちこそ、これが最後の警告だよ。言われた通りにすれば、誰も傷つかずに済むんだ。忘れたのかな。俺はお前が去年の夏、誰とやったか知ってるんだ。それに、今は、教室で俺にやられてよがり狂ってるお前のビデオも持っている。本気で、俺がみんなにバラしても良いと思ってるのかな? 何人かに証拠を送ろうか? そうなったらお前の回りの世界は一気に崩れてしまうぜ、グラフ先生? お前は、今夜、ベッドからすり抜けて俺を出迎えるだけで良いんだぜ? 必ず、そうしろよ! 楽しみにしてるぜ! ご主人様より」 メールを送った後、俺はブラッドの家に行くことにした。着替えをし、朝食を取り、部屋を片付けて出かける。自転車でブラッドの家に向かいながら、ブラッドの母親が家にいるかなと思い続けた。ブラッドの母親をあの秘密クラブに連れて行くことも考え始めたが、多分、そいつは夢にしかならないだろうと分かっていた。5000ドルを用意するなんてとてもできっこないから。 ブラッドの家の前に着た。ブラッドの車はあったが、母親の車はなかった。多分、仕事に出てしまったのだろう。玄関をノックすると、中からブラッドが、おう、入って来いよ、と言う声が聞こえた。 居間に行き、ブラッドとテレビを見ながら、最後に会ったときからどんなことがあったか、おしゃべりした。ブラッドは、新車に女の子を乗せるまではいったが、2塁ベースにすら辿りつけなかったと言っていた。俺は、父親の仕事を手伝ってたと、話しをでっちあげた。 だらだらとブラッドと日中を過ごしたが、早くブラッドの母親が帰ってこないかと待ち遠しかった。ようやく、5時ごろ、ブラッドの母親の車が家の前に来た。何秒か過ぎ、玄関が開いて、ステファニが入ってきた。 「あら、お二人さん、ただいま」 ビジネススーツの姿でそう言い、俺たちの前を通り過ぎて、寝室に入って行った。その何分か後、ピチピチのジーンズと丈の短いTシャツ姿で出てきた。おへその辺りが露出している。 ステファニは俺の向かい側のソファに座った。彼女がどんなことを考えているか、想像しながら、何分か一緒におしゃべりをした。Tシャツを通して、ちょっと乳首っぽい突起が見えたので、多分、ノーブラなのだろう。 ステファニが、よそで男とやりまくっているのを俺が知っていることを知ったら、彼女、どうするだろう? どんな反応をするだろう? と考えた。それに、実際、ブラッドの母親が男とやってるところの写真も撮ってあるんだ。 ステファニは夕食の支度をすると言って、席を外した。俺にも「一緒に食べる?」 と訊いたが、俺は、家で両親が待っているからと断った。そしてブラッドに、またな、と言い、あいつの家を出た。
「それじゃあ、別の娘を見せてあげるわ」 マイケルズ先生はそう言って、他の女の子を引き起こし、足の拘束と猿轡を外した。この子は、私が憧れている人ではない。 この子は不思議なほどおとなしくて、先生に引きずられるがままに部屋に入っていった。中に入って、何秒も経たない内に先生が戻ってきて言った。 「さあ、どういうふうにするか見せてあげるわ」 そして先生は、私に嵌めた手錠の片方をパイプから外して、先生自身の手首に嵌めた。先生と手錠でつながれたまま、その部屋に入っていく。さっきの女の子は椅子に縛り付けられていた。周りには、いろいろ装置類がある。そこで、また先生は手錠を外し、近くにある鉄パイプに嵌め、それから彼女のところに行った。 「適切な道具を使えば、とても簡単にできることなの」 先生は、そう言いながら、皮下注射器を出して、彼女に何か注入した。 「これは、彼女の学習能力を高めるためのちょっとしたものね」 それから先生は、その子の下着を降ろし、指でバギナや胸を愛撫し始めた。同時に、彼女の顔の前に私の写真を置いて見せている。先生が彼女に繰り返し囁きかけるのが聞こえた。 「彼女が大好き、彼女が大好き、彼女が大好き・・・」 すると、全然、時間が経っていないのに、その子がイってしまっていた! そして、その後、先生が、「彼女のこと嫌い? 彼女に従わないの?」という声が聞こえ、と同時に、その子が悲鳴を上げ始めたのだった。 先生は、足のところにあるペダルを踏んでいて、先生がそこから足を上げるまで、ずっと彼女は悲鳴を上げ続けていた。 それから、また、先生は指で彼女を愛撫し始め、「彼女が大好き、彼女が大好き、・・・」と続ける。再び彼女が絶頂に達するまで、それを続ける。 先生は、これを何度も繰り返した。常に彼女に声をかけながら、愛撫をしていかせるのと、足のペダルを踏むのを交互に繰り返しながら。 数分、これを続けた後、先生はようやく止めて、彼女の拘束を解いた。彼女は私の方を見たけど、顔の表情が前と変わったのに気がついた。 私のところに駆け寄ってきて、私を見つめ、そして囁きかけてきたのだ。 「お願い、あなたを愛させて」 とても真剣そうな顔をして言っている。 マイケルズ先生は私の手錠をパイプから外し、元の部屋へと引き連れ、そこで、またパイプにつなげた。あの女の子も私たちの後について来て、パイプにつながれた私の前に膝をついてしゃがんだ。 「お願い。舐めさせて。ねえ、お願い。いいでしょう? できる限り頑張るから!」 先生は、「彼女に、静かにするように命令した方が良いわね」 と口を挟んだ。私は、その通りに彼女に命令し、さっきの最初の女の子の隣に行って、腰を降ろすように命令した。そして、マイケルズ先生の方を向いて、顔を見つめた。 「ええ、そうよ。私には、本当にできるの・・・」 私は、例の憧れのチアリーダが私におねだりするところを想像し始めていた。 「・・・私はね、この秘密を誰かと分かち合いたいと思っているのよ。もう私には、コントロールした女の子がたくさんいるわ。私が、気まぐれで何を言っても、それに従う女の子たちを見て、あなた、ショックを受けるかもしれないけど・・・」 あの可愛くて、しなやかなチアリーダの子! 彼女が私におねだりしたら! 「・・・私が、この時をどんなに待っていたか分からないでしょうね。私、あなたがこの大学に来た時から見ていたのよ。あなたは、まさに私が欲していたタイプの人なの。今日、あなたにここに来てもらうために、私、いろんなことをしたわ。それを知ったら、ショックを受けるかもしれないけど・・・」 実際、先生は哀れに見えた。 「・・・ねえ、お願いよ? 私、そんなに見た目が悪い?・・・」 いや、本当のところ、先生はかなり魅力的な女性だと思う。 「・・・私を喜ばせることも、そんなに悪いことじゃないと思うの。代わりに、あなたに与えるものを考えたら・・・そうじゃない?」 先生は後ろにいるチアリーダを指差した。彼女は、まだ縛り付けられたままだった。あの子が私のものになるかもしれない! 先生は、彼女のところに近づき、足の拘束を解き、立たせた。先生は、私を納得させようと思っているようだった。そして、彼女の猿轡も外した。 「お願い、私にあんなことをしないで!」 彼女は、猿轡を解かれた途端、叫びだし、赤ん坊のように泣き出した。「私の心をいじらないで! お願い!」 「彼女の魅力、拒み切れないわよね?」 先生が私に言った。私は、凍りついたようになって、ただ、あの子を見つめていた。 「お願い、私の心を変えないで! お願いです・・・どんな・・・どんなことでもしますから・・・あれを私にする必要なんてないんです!・・・だから、お願い?」 「あなた、何をするつもり?」 先生は、ちょっと興味を持ったようだった。 「私・・・私、彼女を舐めます。彼女が望むだけ、舐めます」 「彼女が、あなたに鞭を使いたいと言ったら?」 先生の質問に、あの子は、驚いた表情を浮かべて、沈黙してしまった。それを見て、マイケルズ先生は、彼女を引っ張り、別の部屋の方へと向かい始めた。私は、ただ、じっとそれを見つめているだけだった。 「分かったわ! もし彼女が望むなら、私に鞭を使っても良いわ! だから、お願い、あんなふうに私の心を変えるのだけはやめて!」 「どうやら、あなたに選択権があるようね」 先生がかすかに笑みを浮かべて私に言った。「あなたを愛させてくれる? あなたのあそこを舐めて、とても気持ちよくさせてあげたいの。お願い。そうさせてくれたら、彼女をどっちでも好きにしていいわ。あなたの望むとおりに! だから、お願い、私にあなたを舐めさせて!」 マイケルズ先生の声に、突然、必死になってる雰囲気が入ってきて、私は驚いた。それでも、私はただじっと見つめているだけだった。 「お願い!」 と先生の切羽詰った声がした。 チアリーダの子は、どうしてよいのか分からず、頭が混乱しているようだった。彼女を私のものにできるかもしれない・・・もし、マイケルズ先生に、それを許したら・・・たった、それだけのことで・・・ 「分かったわ。ただ、条件が一つ」 私は落ち着いた声で答えた。先生は、黙ったまま、じっと私を見ていた。 「私に先生の心を変えさせること」 先生は、私の顔を見つめたままだったが、驚いたように、口をあんぐりと開けていた。私は続けた。 「先生に、あの子たちのようになって欲しいわ」と言って、他の女の子たちを指差した。「先生が本当に私を愛したくなるように先生のことを変えたら、その後は、私を愛させてあげる」 「いや!」 マイケルズ先生は叫んだ。チアリーダの子は私と先生を見つめるだけだった。 「先生に私のあそこを舐めさせてあげるのよ?」 私は繰り返して言い、その後、先生を見つめたまま、じっと待った。多分、私は少し笑みを浮かべていたと思う。 先生は小さく囁いた。「分かったわ」 おわり
正直、私は、これまでのどの交際の場合も、付き合っている男性の要求に合わせてきた女だった。どんなことについても、私が何か意見を言っても、彼らに大きな影響を与えたことがあったことは一度もなかったと思う。大半、私が話しを合わせていたし、彼らが私の意見を求める時は、彼らが用意していた意見を私に言わせるのが、たいていだった。 でも、私は頭が良い人間なの。そう言って、全然恥ずかしくなんかない。デューク大学からMBAを取得したし、博士号取得にも手が届く状態。なのに、男性との交際においては、いつも、私は、自分がまるで知的に劣っているような存在として扱われてきた。南部だったからというのもあるかもしれない。付き合ってた男の2倍は稼いでいても、いつも、子供のように扱われてた。私がそういう交際をやめてしまうのも、全然、驚くべきことじゃないと思うのだけど。どうかしら? 私は、そういう環境で生きていくのは得意じゃない。 そして、今、ここにいるアンドリューは、彼の男女交際が、まさに正反対の理由で破綻してきたと私に語っている。この人は、完全なパートナーを求めているのだ。彼が付き合ってきた女性は、みな、伝統的な男性優位の関係を求めていたのだろう。アンドリューは、まさに、それが不満なのだ。この人は、とても優しくて、とても思慮深くて、とても賢くて、そして、完全なパートナーを希求している。 私は怖くなってきた。彼は、完璧すぎる。こんな完璧な人って、ありえるのかしら? どうして、私たちは、こんなぴったりの関係になっているのだろう? 私と彼は、まるで、互いの人生のジグソー・パズルにぴったりと嵌まりあって、お互いを完全なものにしあう、そんなパズルのピースのよう。 どうしても妹のドニーに話さなくてはいけないと思った。アンドリューは、私のことを全部、明かしてくれることを求めている。彼は、誠実さだけを求めている。それ以外は何も求めていない。正直、私は彼に完全に正直になっているわけではなかった。意図的に嘘をついているということではなくて、話していないことがあるということだけど、それでも、誠実になっていないという点では変わりがない。 ドニーと話し合った後で、全部、明かすかどうか決めよう。うちの家族は変わっているから。アンドリューが、あの事実に対処できるかどうか分からないから。でも、これまでの私の人生で出会ってきた男性の中で、アンドリューこそ、あるがままの私を、あるがままの私たちの家族を受け入れてくれる可能性が一番高い男性のように思えた。 怖くなってきた。彼が私たちを受け入れられないと感じて怖くなっているのか、彼が受け入れられそうだと感じて怖くなっているのか、自分でも分からない。 私たちは、しばらく、笑ったりおしゃべりをしたりしていた。アンドリューは笑うのが大好きのよう。どんなことにも、ユーモラスな点を見つけ出す人だ。私たち二人は、この夜を一緒に過ごし、いつも笑っているか、愛し合っているかのどちらかだった。彼は、一緒にいる時間をすべて、楽しいことだけで埋め尽くすことができる人だ。
「バースデイ・プレゼント」 第12章 僕は化粧台の前に座っていた。秘書のゲイルは僕の顔に化粧を直していて、隣に立つジェニーは、彼女に化粧用具を渡しながら、こうした方がもっと良いわなどと、いろいろ指示を与えていた。二人とも自分のパンティを拾い、履いていた。そして僕をここに座らせ、僕の化粧を始めたのである。 ゲイルが、愛しげに僕の顔のあちこちを触りながら、先ほどの性行為のために乱れた僕の化粧を器用に直してくれている間、僕は、このたった2、3日の間に、彼女との関係がこんなにも変わってしまったことを考えていた。つい数日前までは、僕とは完全に適切な間柄の秘書と上役という関係だったのに、いまや、彼女は、僕とドナとの間で始まった性的ゲームに仲間入りし、見ず知らずだったジェニーと一緒に、僕とドナの両方と親密な肉体関係を結んでしまっている。いや、性的な関係ばかりでない。僕の女性化にも積極的に加わっているのだ。こんな風になるのを許してしまっている自分に、ただ驚くほかできない。 僕はこれまでずっと自分の人生を自分でコントロールしてきた。今の職業を選んだのも自分だし、ドナと出会い、彼女と付き合い、しっかりと意思を固めてプロポーズした。ドナとのセックスで実験的にいろいろと試みてきたが、それも僕が始めたが大半ことだった。それが今はこうなっている。自分で始めたことでもなければ、自分にはコントロールすることもできないと思われる性的実験にはまり込んでいる自分。妻と、秘書と、女店員の命令に従順に従っている自分。多分、その他の女性でも、僕に命令を下す人がいれば、僕はその人の言うことに従うことだろう。僕は、全然、僕にふさわしくない行動をしている。これを説明できるのは、ありきたりな言い方だけだろう。つまり、僕の小さな頭(亀頭)が大きな頭(大脳)を引きずり回している、と。( 参考) 問題は、僕自身がすっかりハマっているということだ。このセックスをこの上なく楽しんでしまっているということ。行為の回数的にも、質の強烈さの点でも、これまで経験してきたセックスを遥かに凌駕していて、もう、やめられなくなっているということ。それに、自分の場合、コントロールをすっかり奪われてしまう感覚が、自分でコントロールできている時より、遥かに快感の点で高いことにも気がついたのだった。 この数日、僕はセクシャルな感情の高まりと強烈な快感の嵐に揺れ動かされてきた。こんな短期間であるにもかかわらず、これまでの人生で味わってきたよりも多くの興奮と絶頂を味わってきたと思う。女性たちに僕を支配させ、僕を使ってもらう快感によって、僕の中のある種の何かが解き放たれたようだった。その何かとは何なのかは、全然分からない。だがそれは、僕を刺激し、占領し、以前の自分であったら夢にも行うことなど考えなかったような行為をしているのである。 体毛を剃ったすべすべの脚に滑らせるようにしてパンティを履いていく時の、ぞくぞく震えるような興奮は、どんなに言葉を費やしても説明できない。そのシルクの生地に優しくペニスと睾丸を押さえられ、愛撫される感覚に、僕は強烈な幸福感に包まれてしまう。両脚がストッキングのナイロンに優しく包み込まれ、腰を美しいガーターベルトにキュッと抱きしめられると、ゾクゾクとした電流が背筋を駆け巡り、両腕の肌に鳥肌が立つ。乳首も、そこにシルクのブラジャーがそっと触れただけで、そして、ホックを止めて、ぴっちりと締め付けられるただけで、固く勃起するのが分かる。 こんなことを思いながら、僕は、夢見心地で、太腿の前、美しいドレスの裾をなでて、整えた。それから、ストッキングとハイヒールに包まれた自分の脚が見えるようにと、洗練された女性のように優雅に脚を組んでみた。確かにいえることは、僕は、恋に落ちてしまったということだ。その相手は、まさに、僕自身の中の、この女性であり、その女性的なセクシュアリティである。 ゲイルとジェニーが僕の化粧を終えたのを受けて、僕はくるりと向きを変えて、鏡と対面した。すでに何度か見てて慣れていたはずなのに、いまも、自分自身の変身に驚嘆してしまう。僕をまっすぐに見つめ返してくる、この美しい女性に釘付けになってしまうのだ。自分が、この女性だとは、こんなに素敵な女性になれるとは、いまだに信じられない。
ブリイは2本のペニスに奉仕を続け、やがて二人とも彼女の上の口と下の口に濃厚な樹液をたっぷりと注ぎ込んだ。 行為が終わるとすぐに、さらに、もう二人、男たちがブリイに近づく。そのうちの一人は、ビリヤード台の上に仰向けになった。その男の上にブリイがまたがる。もう一人の男は、彼女の前に立ちはだかり、ペニスを食わせた。 この体勢で何分か行為を続けていたが、さらに第3の男が現れ、ブリイの後ろについた。仰向けの男の上に腰を降ろし、上下に動き続けるブリイの尻を押さえ、尻頬を左右に広げ、薔薇の蕾のようにすぼまった肛門に舌を突き入れる。 この行為が、男のぶっくりと太った男根で彼女の未踏のアヌスを串刺しにするための下準備に過ぎないことは明らかだった。 ブリイは、肛門を唾液たっぷりに舐められ、ほじられた後、肉塊が侵入してくるのを感じ、痛々しい悲鳴を上げた。だが、多少なりとも、巨根によって、その部分の筋肉がほぐされ、広がったのだろう。しばらくすると、その苦痛に慣れた様子に変わった。 それから3時間ほど、夜の10時になるまで延々と、これに似た様々な光景がビリーの目の前で展開された。この頃には、すでに、ジョーンズの仲間たちは全員、ブリイの3つの肉穴のいずれか一つか、それ以上の味見を終えていた。 数時間前まで、まったく男を知らなかったブリイ。それが、いまは、数え切れぬほどの男たちの汗臭い肉塊に体を許していた。男たちは、若く美しい女体を賞味させてもらったお礼として、ブリイの肉穴に、そして顔面や乳房に、惜しみなく濃密な白濁を注ぎ込み、振りかけた。 長時間にわたるブリイにとっての過酷な行為の後、ジョーンズは、ようやく。彼女に洗面室に行き、汚れを落とすことを許した。服を着てもいいぜ、とジョーンズは言ったものの、ブリイはブラジャーとパンティしか見つけられなかった。トップもショートパンツも、男たちがお土産として持って行っていたからである。何とか下着を回収できただけでも不思議と言えた。 ブリイは、洗面室に行き、10分ほどかけて、男たちにさんざんに荒らされた女陰とアヌスを洗い清めた。顔面と乳房の2箇所は、男たちの多くが好んで射精した場所だった。そこはたっぷりと精液がかけられ、すでに乾いてごわごわにこびりついていた。ある程度、化粧を直せるようにとハンドバックは渡されていた。ブラとパンティを身につけたが、あれだけの数の男たちの前でずっと素っ裸になっていた後だけに、この2つを身につけただけでも服を着たような感覚だった。 洗面室から出るとすぐに、外で待ち構えていたジョーンズの仲間二人に捕まり、裏部屋からバーの事務室へと引き連れられた。事務室にはジョーンズがいたが、彼と並んで、非常に卑しい人相の黒人男と、その男の手下と思われる二人の男がいた。 「これが、例の女だ」 ジョーンズが黒人に言った。 「おお、いい女だな」 「じゃあ、取引は成立だな?」 とジョーンズ。 ブリイは、ジョーンズの顔を振り向き、説明があるかと睨みつけた。だが、何も説明されない。 黒人男は、うんうんと頷きながら、ゆっくりとブリイの周囲を歩いた。そして、どすの利いた声で、「まずはテストだ」 と唸った。 ジョーンズはブリイに近づき、耳元に囁いた。 「この人に、これまでで最高のおしゃぶりをしてやるんだな。さもないと、二度と旦那には会えなくなるぜ」 ブリイは恐怖にひきつった顔でジョーンズを見た。 「お前は、18人の男たちとやったばかりだが、これからもっと数が増えていくと思うぜ・・・さあ、しゃぶってやるんだな」 ブリイは、いかつい顔の黒人男を見上げた。愛する夫とセックスしていると思い込むことができる限り、これもやり過ごすことができると自分をなだめ、男のところに近づき、その前にひざまずいた。すぐに男のズボンの中からペニスを取り出し、咥え込んだ。ビリーのペニスよりも遥かに巨大だったが、扱えないほどではない。唾液を使って黒い皮膚全体にぬめりを与えた後、自分から顔を突き出し、長大な男根を喉奥へ入れ、ふんふんと鼻を鳴らして吸い始めた。 男は口唇奉仕を受けながら唸った。「うーん・・・ずいぶんエロ好きな女だな、こいつは」 フェラチオが始まって5分後、ブリイはまたも多量の子種液を胃袋の中に収めていた。 「よし、取引成立だ」 黒人男は、息を荒げて、そう言った。直ちに巨額の金がジョーンズに渡され、3人の黒人男はブリイを引き連れて、事務室からバーの裏門へと向かった。連行される間、ブリイはずっと抵抗を続けたが、二人の男にがっちりと抑えられていたので、逃げることができない。 「どこに連れて行こうとしているの!? 夫に会わせて!!」 「俺の名前はジャックだ。今は、俺がお前の夫なんだよ。たった今、お前の体を1000ドルで買ったのさ」 1000ドル。それがジョーンズが彼女に対してつけた値段だった。そのやり取りを思い出し、ブリイは屈辱に顔をゆがめた。その1000ドルを払ってくれたのがビリーだったら良かったのに。だが、不幸にも、ビリーは、このようなことが起きていることを知らなかった。彼は、ブリイはどこに行ったのだろうと思いながら、まだバーの店内にいたのである。
案内されたテーブルは壁際のところだったけれど、他のテーブルが見渡せるところにあった。マークとトレーシーはアルコール飲料を注文した。私もとても飲みたかったけれども、今の格好だと21歳としては通らないのは知っていたし、実際、まだ、その年齢になっていないので、ウェイターに年齢を吹っかけるのはやめにした。もっと言えば、そんな時間はなかったのが事実。ウェイターが注文を取って立ち去るとすぐに、父が入ってきたから。 ボーイ長の後につきながらテーブルに向かう父を見ながら、私の心臓は高鳴っていた。父は、上質な仕立て服と思われるグレーのスーツを着ていて、ブリーフ・ケースを持っていた。と言うことは、仕事から直接ここに来たのだろう。どうしてか分からなかったけれど、父は40歳には思えないほど若々しく見えたし、客観的に見て、とても魅力的な男性だったのだとも気がついた。 ウエストラインも細く、少しも太っている印象はない。胸板も、いつもバーベルを上げているかのように、立派だった。だが私は、父が運動をしているのは見たことがなかった。背丈も、私より15センチ以上は高く、肩幅も広い。正直言って、自分の父でなかったら、その魅力に惹かれていたことだろう。 トレーシーは、私がどこを見ているのか見ていたに違いない。彼女は私の脇を肘でつつきながら訊いてきた。 「あの人?」 私は、どうしても父から目を離せず、答えなかった。ただ、頭を縦に振るだけ。 「彼、なかなか素敵な人じゃない? どうして、お父様がハンサムだって言ってくれなかったの?」 父から目を離さぬまま、できるだけ小さな声で返事をした。 「今まで、そのことに気がつかなかったんです」 トレーシーはビデオカメラをテーブルに置いて、父へと焦点を合わせた。準備を整え、録画ボタンを押すとすぐに彼女は言った。 「オーケー。そろそろ、あなたのお父様が、新しくできた娘に会う時間が来たようね」 トレーシーが言うことも分かっていたけれど、どうしても足を動かすことができなかった。足を動かすだけでも、とてつもない勇気が必要だった。 私が立ち上がるとすぐに、父が私に視線を向けたように感じた。私は父が座っている方に顔を向けた。やっぱり、本当に、父は私を見ている! 父が私を見ていると知った後は、もう、どんなことになっても、最後まで乗り切らなければならないと悟った。父の顔を見つめながら、彼の座るテーブルへと歩いていった。父の顔からどんどん血の気がうせていくのが見えた。まるでショックを受けたかのように、口をあんぐりと開けている。 ようやく、父のテーブルまでの12メートルほどを進みきり、父の前に立った。 「座っても構いませんか? それとも、消えた方が良いですか?」 父は紳士的に立ち上がり、答えた。 「私は息子が来るのを待っているんですよ・・でも、・・・」 父の声は次第に小さくなり、その後、認識したらしい表情が顔に浮かんだ。 「まさか、スティービー?」 このときになって初めて、私は、父が私のことを認識していなかったのだと気がついた。でも、父が青ざめた顔になったのはどうしてなのか、なぜショックを受けたような顔になったのか、分からなかった。でも、その時点で私が考えていたことは、そのことではなかった。 「ええ、お父さん。私です。でも、今はステファニという名前で通っています」 「ああ、そうか。それなら訳が分かるね。あ、そうだな。座った方がいいな。このままだと、みんなの注目を浴びることになりそうだから」 父はたどたどしい口調で言った。 いまだに父は自分がしたことを分かっているとは思えないのだけれども、この時、父は、私のために椅子を引いて、私が腰を降ろすのを待っててくれたのだった。私は、腰を降ろしながら、どうしてもにっこりと微笑んでしまった。
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