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デス・バイ・ファッキング 第7章 (7:終) 

「人間の場合の種分化についてはどう思う?」 とドニーが訊いた。

「僕が読んだものによると、人類の場合、自然に発生する進化は終わったと論じてる人が多い。人類は地球という惑星の全域を生活範囲に収めている。非常にすぐれた移動手段を持っているので、今日はニューヨークにいても、明日はバンコクにいることができるようになっている。もはや隔離された集団というのが存在してないので、種分化が起こるような場所はなくなったと。これからの進化は、遺伝子操作を行う科学者たちによって引き起こされるものしかないだろうと」

ドニーは笑った。「アハハ… あなた、本当にいろんなことについていろいろ知ってるのね」

ディ・ディが話しを続けた。

「アンドリューはシナリオに基づく話しが好きよね? じゃあ、このシナリオを考えてみて? 15万年前、ある新種が生まれた。この種は長い進化論上の時間をたどるとホミニッドと呼ばれる動物種を先祖として持っている。ホニミッドというのは、当時、地球上でおそらく最も知的な動物種だった。だけど、この新種のホミニッドは、それまでのホニミッドが持っていなかった能力を備えていた。それは、シンボル操作を伴う論理を使えるという生得的能力。この能力を使用するために、ついに、言語が発達し、突如として、この新種はもはや単なる動物ではなくなった。この新種が人類… すなわちホモサピエンス…」

「…答えてほしいのは、次のことなの。つまり、それに続く14万年間、人類は地球上にどんどん拡大してきた。人間は一連の道具を改良し、技術を開発し、少なからざる賞賛すべきものを作り出してきた。それでも、人間は、それまでのホミニッドと同じく、狩猟採集生活をしていたわ。なのに、突然、すべてが変わった。それはどうして?…」

「…この1万年間、人類は、ゼロから始めて、とうとう地球を征服したわ。農業を発明し、科学を発明し、政府を作り、月に降り立った。でも、本当に進歩といえる、主要な前進は過去600年間にあったと言えるわ。考え方によれば、大半の進歩はこの200年ほどにあったとも言える。15万年のうちの200年よ? これは驚くべきことだわ。どうして、こんなに急速な変化が起きたの?」

彼女たちの意図が少しずつ分かってきた。これまでの質問でどこに話を持っていこうとしてるのか分かったと思った。

「君たちが言おうとしてることは、こういうこと? 人類自身、変わったのだと。我々は15万年前のホモサピエンスではないと、そう言いたいの?」

ドニーが話を引き継いだ。

「近いわ、アンドリュー。人類すべてというわけじゃないのよ。でも、ホモサピエンスが種文化を試み続け、新種に進化しようと試み続けてきたと思うの。何度も繰り返し、さまざまなタイプの人類が生まれてきたと。通常のホモサピエンスの才能を超えることができるタイプの人類が生まれてきたと。人間社会の変化をするための動機となった力を発揮した人は、まさに、このような不適応種族だったと。プラトン、アリストテレス、イエス、レオナルド・ダ・ビンチ、トーマス・ジェファーソン、ベンジャミン・フランクリン、エレノア・ルーズベルト、ウィリアム・シェークスピア、ボルテール、アインシュタイン、エジソン… こういった人たちはいったい何者なの?」

僕は頭を振った。「ちょっと待って。そういう人たちがみんな『新しい世代』の人類だったと言ってるの? ちょっとそれは飛躍しすぎだと思うよ」

ディ・ディが言った。「いいえ、正確には、そういうことじゃないの。そうい人たちは、人類が次の段階に進もうとする試みの兆候だったのではないかということ。彼らは、これから生まれてくる者たちのプロトタイプだったのではないかと。彼らはあまりに数が少なかったので、一つのムーブメントは作り出せなかった。確かに、偉大な人であったから、歴史の流れに影響を与えることはできたけど、でも彼らは、人類全体からすれば、突発的に出現したようなもので、種全体と再び同化して、集団に飲み込まれてしまったのよ。あなたがさっき話してた、主流の集団に再融合する少数の新種と似てなくもないわ」

「で、君たちは何者と言うわけ?」

ドニーが答えた。「私たちは、この、これまで突発的に繰り返されてきた種分化の営みを最終的なものにする試みの最初の人間だと思うの。私たちや、私たちと同類の者たちは、子孫を生んで、次の種へと引き継ぎを行おうとしている。実際、さっきも言ったように、比較的短時間に私たちは大きな進歩を見せてきたわ。私たちは依然としてホモサピエンスだけど、ほぼ別の新種になっているのよ」

「それはどういう意味なんだ? どうして、そうだと分かるのかな? この話し、さっきまではちょっと信じられない話だったけど、今は、かなり信じられない話になってるよ」

「アンドリュー? 私が、『あなたの緊張をほぐす』ことに決めた時のこと覚えてる? 避妊のことは気にしなくていいと言ったわよね?」

「ああ、覚えているよ、ディ・ディ。どうしてかなと不思議だった。ピルを飲んでいるのか、そういうことかと」

「いいえ、アンドリュー。私たちは、普通のホモサピエンスが相手では、妊娠するのが非常に難しいの。母は、父と何年もかかって、ようやく私たちを妊娠したのよ」

「二つの個体について、両者が同一種に属してるならば、適切に子孫を残すことができ、その子孫も適切に子孫を残すことができる。ほぼ言えることとして、私もドニーも、この年齢だし、普通のホモサピエンスとは子孫を残せないと言っていい状態。だから、たった一夜では、あなたとも受精の可能性はないと確信していたのよ」

突然、ドニーがハッと息をのんだ。

「でも、ディ・ディ! もし彼が私たちと同類だったらどうなるの? それでも受精は難しいまま? 私たち、すでに妊娠してるかも?」

パニックになってディ・ディが立ち上がった。

「アンドリュー! ここのお金、払って! 私たち今すぐ薬屋に行かなきゃ!」

つづく


[2010/03/22] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

ジャッキー 第1章 (3) 


アンジーはふざけ気味に僕の腕を軽く叩いて、「仕事の続きがあるんでしょ?」 と言い、立ち去りかけたが、ふと振り向いて、続きを言った。

「ちょっと待って。あなた、ここで何をしてるの? あなたたち週末は休みのはずと思ったけど? 週40時間以上働いたら、それ以上は無給のはずよ」

「スタントンさんに、この仕事を早急にしてくれと言われたんですが、昨日中に仕上げるのが無理と分かったので、今日もしようと思ったんです」

「それじゃあ、自分の時間を使って仕事をしているわけね。とても誠実なのね」

そう言って彼女は振り返り、仕事をしていた書棚の列へ戻っていった。僕はどうしても、彼女のセクシーなお尻に目を引かれた。左右に悩ましく振りながら歩いて行く。

それを見ながら、彼女と愛し合えるとしたら、どんな感じなのだろうと思った。だが、僕には彼女に近づけるチャンスなどまったくないのも分かっていた。第一に、僕が耳にした噂が本当なら、アンジーは男が好きではないらしい。他の人から、彼女はレスビアンで男嫌いなのだと聞かされたことが何度もある。それに、アンジーは、会社の女王様のような存在でもあった。数多くの訴訟で勝利をおさめてきたので、今は、彼女が望むことを何でもできる力を持っている。

もうひとつ、僕が彼女と釣り合わない点として、僕の容姿があった。僕は彼女より背が低い。ものすごく低いというわけではないが、低いことには変わりない。それに僕はとても痩せている。何を食べても全然太れない人がいるが、僕もそういう人間だ。ずいぶん、がんばってもっと立派な体になろうとしてるんだが、無理だった。

あーあ、と羨望のため息をつき、僕は仕事を仕上げるため、コピー機に向かった。

正午前、僕は仕事を終え、帰る準備に入っていた。使用した本を元の書架に戻し、戻ってくるとき、再びマクドナルドさんとすれ違った。彼女はこの暑さにずいぶん参っているのが見て取れた。シャツが汗でびっしょりになっている。まるで誰かにホースで水をかけられたみたいに。それに、何か分からないけど、すっかり途方に暮れているようにも見えたので、僕は訊いてみた。

「マクドナルドさん、何か探しものですか? 手伝いましょうか?」

彼女は笑顔になって答えた。魅力的な笑顔だった。

「どうやら、私、途方に暮れた顔をしているみたいね。この暑さのせいか、私の頭が混乱してるせいか分からないけど、探し物が見つからないのよ。でも、あなたは今日は無給でここにいるのは分かってるわ。だから、自分の仕事を仕上げて」

「僕はもう終了しました。それに今日は、もうどこかに行く予定もないし。お手伝いしても、ほんとうに構わないんですよ?」

考えてみれば、上司におべっかを使ってもまずいことはないと言えたが、正直、その時は、そういうことは考えていなかった。

「本当に大丈夫なら、手伝ってくれると本当に助かるわ」 

彼女はそう言って、僕に何を探しているか伝えた。

コンピュータをチェックし、彼女が求めているものの参照文献を検索したら、すぐに、目的の文書を見つけることができた。それに、彼女が調べている判例に関係がありそうだったので、参考までにと、他の判例集を3つ教えてあげた。午後の4時には、彼女は必要なものをすべて揃え、僕たちは二人とも作業を終了した。



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