「うわあ、もう、それを考えただけで濡れてきちゃったわ! あっ、そういえば、あのパーティでジェイムズと寝室から出た時、あなたの旦那を見たわよ。顔をあげて私を見ることすらしなかった。ずっと目を伏せたまま」 「もちろんよ、おバカねえ。あれは『寝取られの礼儀』の問題だから。あなたはジェイムズといたわけだから、ビルはあなたと親しい行動を取ってはいけないと分かってるのよ」 「私のことを奥様って呼んでたわ」 「あのね、あの家では旦那は私のことも奥様って呼ぶわよ。あれって、とても大好き! ビルは私のことを喜ばせて、私の承認を得るのに必死なの。だから、今は、私とセックスする喜びを黒人男性に譲ったの。今は別の方法で自分の必要性をアピールしようとしているわ」 「そうなの… 今度、確かめてみるわね。あっ、もう行かなくちゃ。サラは、今夜はリロイとお楽しみなのね。羨ましいわ!」 「あなたも、すぐに宅配を受けられるようになるから、大丈夫。旦那をうまく操縦すること。それだけ。じゃあまたね…」 それから2週間後の土曜の夜、ブルースとリンダは車に乗っていた。再び、あの輪のグループのパーティに向かっていた。 ブルースは、リンダの脚をちらちら盗み見していた。かなり丈の短いドレスなので、脚がずいぶん露出していた。彼女の見事な脚線美を誇示するのにうってつけのようなドレスだった。 今日は黒いストッキングを履いている。靴には、持ってる中で一番派手な、「やってよ」と言わんばかりの黒いスティレット・ハイヒール( 参考)。ブルースは、今夜、このリンダの身体を楽しめる男になれるなら、どんなものでも与えるつもりになっただろう。それほどリンダはブルースを興奮させていた。 しかし、前回と異なり今回は、ブルースは彼女がドレスの下に何を着ているか知らなかった。その日の午後、リンダは一人でショッピングに出かけ、ビクトリアズ・シークレット( 参考)のショッピング・バッグをいっぱいにして帰ってきた。だが、リンダは買って来たものをブルースに見せなかったのである。 その謎とリンダの焦らしのせいで、一層、ブルースは興奮を募らせ、リンダを欲しくてたまらない気持ちになっていた。 …分かってる。今夜、ある時、そのドレスがするりと床に舞い落ち、誰か自分以外の男が、あらわになった妻の身体を見ることになるのだろう。しかも、可能な限り最も誘惑的な下着に包まれた身体を… 「あなた、私の脚を見てるの?」 突然リンダが話しかけ、ブルースのエロティックな思考を遮った。 「あっ、ああ… まあな… お前、今夜はとても綺麗だよ」 「ありがとう。でも、ちゃんと道路を見て運転してね。私のためを思うなら」 「もちろん。すまない。ちょっと…」 「それに加えて、知ってると思うけど、この脚も、この脚につながってるすべてのものも、今夜はあなたのためにあるのではないの。分かってる?」 「もちろん。ただ…」 「だったら、どうしてそんなに欲求不満の状態になってるの? 今夜、あなたがちゃんと行儀よく振舞ったなら、後であなたに買ったものを全部、間近に見せてあげると約束できるかもしれないわ。私の言ってる意味が分かるかどうか知らないけど」 楽しい時間を約束してくれるかもしれないというリンダのヒントに、ブルースは一層勃起を固くさせた。居心地が悪くなり、運転席で座る位置を変えたが、もちろんリンダの方を見ないように気を使った。なかなか難しいことではあったが。 「今夜、あなた、私と同じくらい興奮してるのかしら?」 「正直、多分、それほどではない。理由もある。今夜は、俺にあまり早く首輪をかけないようにしてくれるかなあ。多少は他の人と談笑したいんだが」 「約束はできないわね。どういうふうな流れになるかによるわ。何が起きるか誰にもわからないもの。私と過ごしたいと思う人が全然いないかもしれないし」 「はっは! そういうことが起きるといいな」 「ともあれ、あなたはパティオに出て他の旦那さんたちとお話したらいいんじゃない? 興味深いと思うわよ」 「多分、そうするよ。連中はこのクラブについてずいぶん熱中してるんだ。あの興奮してる様子を見たら、エッチしてもらうのは奥さんじゃなくって、あの旦那たちの方じゃないかって勘違いしそうになるよ」 「その人たちからいろいろ教訓を得られるかも知れないわよ。夫が、妻の幸せと喜びのことについてそれほど気を回すことって、尊敬すべきことだと思わない?」 「もちろん、俺もそう思うよ。お前も知ってると思うが」 「じゃあ、そう振舞ってね。私に恥ずかしい思いをさせないように」 「もちろん。適切な振舞いを!」 ブルースは自慢げに言った。 「私たちまだ会員になっていないので、あなたの適切な振舞いに掛ってるの。もう一回、パーティに出たら、誰かが私たちを支援してくれない限り、出席できなくなるわ」 「約束するよ。そうなった場合、サラや、ビルや他の人たちとしてた昔のパーティに戻ることも考えてる?」 「あなた、みんな黒に染まった人ばっかりじゃないの。分からないの? どうして、今更、サラが交換できるって…あれと 分かるでしょ?」 ブルースが返事をする前に、二人の乗った車は邸宅の駐車場に入っていた。ブルースはすぐに車から飛び出し、リンダのためにドアを開けてあげた。彼はリンダが降りるとき、露出した太ももにどうしても視線を吸い寄せられてしまうのだった。 「ブルース? さっきあなたに何て言ったかしら?!」 「ごめんよ」 リンダは返事もせず、すたすたと玄関へ歩いて行った。その後をすまなそうについて行くブルースだった。
「そうだなあ… 哺乳類と子育てか… 基本的に、哺乳類は、子供を自立できない段階で出産する唯一の動物種だ。もちろんどんな法則にも例外があるけど。一般に、哺乳類の母親は子供の養育に従事する。母と子の関係がどれくらい続くかは、子供が教えられなければならない学習すべき行動の量と相関してるのが普通だ。学習すべき行動が多ければ多いほど、子供時代は長くなる。分からないなあ。この話に、他にどんな狙いがあるんだろう?」 ドニーが言った。「人間の子供時代について話して」 「そうだなあ、初期の人類では、子供時代は、だいたい思春期に入るまでの時間だと考えてよいと思うけど。ホモ・ハビリスでは子供時代がどのくらいだったか、僕には全然わからない。他の哺乳類のパターンに従うと仮定すると、たぶん、今の人類より2、3年早く思春期に入ったんじゃないかと思う。ホモ・ハビリスの平均寿命は現代の人類よりかなり短かったのは確かだからね…」 「…人類は進化するにつれて、子供時代も長くしなければいけなかった。学習すべきことが増えたから。ホモ・サピエンスについては、明らかに、身体の方が精神よりも早く成熟していると思う。子供はだいたい11歳から14歳までに思春期に入るけど、もうちょっと年上になるまで、依然として子供とみなされてるからね。どのくらい年上になると成熟したとみなされるかは、社会によるけど…」 「…現代の人間では18歳までに成人に達するといえると思う。いや、ちょっと待って! 特定の社会の慣行を見るのではなく、人類という種を全体的に見るなら、思春期になってすぐに成人に達してると言うべきなのかもしれないね。13歳から15歳までで達すると。女性は思春期に入って間もなく出産可能になるのは確かだ。だから、ある観点からすれば、それはもう成人になってると言えるかもしれない。でも、これで答えになってる?」 ディ・ディが言った。「まあ、せっかちに喋ったわりには悪くないわね。私の言ってる意味が分かればのことだけど。で、アンドリュー、最後にもうひとつ、関連したことを訊くわ。あなた自身の子供時代の長さについては、どう評価してるか、教えてくれる?」 ちぇっ! 僕に2と2を足して、5にしてみせろということか? 「君たちは、僕が成長期に抱えていた問題は、僕の成熟時期と、同年齢の他の子供たちの成熟時期との相対的違いによるのだと僕に言わせようとしてるんだね? 僕の子供時代は他の子供たちの子供時代より長いと、それゆえ、僕は成熟度合いが低いと言いたいんだね? 僕は大学に入ってようやく子供時代を終えたのだと。19歳か20歳まで子供だったと。そういうことを言いたいの?」 彼女たちは僕の答えに満足したような顔をしていた。だが、これは一体どんな話しなんだ? こういう話から何らかの結論を引き出させようとしているのだろうか? ドニーが言った。「オーケー、アンドリュー。今までの、ちょっとした課題から得られる論理的帰結を話してみて?」 「おい、おい、ドニー! 僕はいやだよ。君たちが僕に何を言わせようとしてるか分かってるよ。でも、もっとうまいやり方をすべきじゃないのかなあ。思ってることをズバリと言ったらどうなのかなあ?」 ディ・ディが口を挟んだ。「アンドリュー、もうひとつだけお願い。これだけにするから。種分化について説明してみて」 「ああ、またか… 種分化は、ある生物種が別の生物種に進化するときに起きる。それがどういうふうに起きるかについてはいろんな説明が提案されてきた。一般的に、種分化は、ある生物種の中の小さな集団が、何らかの形で主流の集団と隔離されていて、独自の遺伝伝達を行ったときに起きるとされている。たとえば、小集団と主集団の間に川があったとか、そういう形の隔離だね。でも、もし、何らかの理由で、そういう隔離条件が失われたら、小集団は、種分化の過程が完了してない場合、簡単に主集団に再び飲み込まれてすぐに平均化してしまうものだ。僕が思うに、種分化というのは非常に起きにくいのじゃないかと思う。でも、いつでも発生してることでもあるのは事実。矛盾してるように聞こえるけど。たぶん、自分で何を話してるか分かっていないんだろうな」
高校までは、父の命令で、髪の毛を短くしていた。だが、大学に入ってからは、僕は髪を切るのをやめてしまった。「暗黒の戦士 ハイランダー」シリーズ( 参考)のせいである。僕は、あの剣技や主人公のダンカンの長髪に魅せられるようになっていたのである。僕もダンカンを真似て長髪になり、ポニーテールにしていたし、同じくダンカンを真似て耳にピアスをしていた。ピアスは小さなものだったが、それでも目立つのは変わりなく、僕の上司のロバートソン女史はそれが気に食わなかったのである。 僕は、髪を切ったり、イヤリングを外したりせずに、ロバートソンさんを納得させる唯一の方法は、他の誰よりも一生懸命働くことだと考えた。 そんなわけで、あの7月中旬のある日、僕は法律関係の資料室にいたのだった。運命の日である。あの日以降、僕の人生は永遠に変わってしまうのである。 金曜日、一日の仕事が終わりそうな時間になってから、僕は仕事を命じられた。できるだけ迅速に完成せよと言われた。その日、数時間、その仕事に取り組んだけれど、どうしても仕上げるのが不可能なのが分かり、土曜日にも事務所にきて、仕上げようと思った。土曜日なら、誰もいないはずで、邪魔も入らないだろうと思ってた。 エアコンは金曜夜から日曜の夜まで切られることになっていた。だから、土曜日の資料室はかなり蒸し暑いだろう。そこでランニング・パンツとTシャツ、ジョギング・シューズの格好で事務所に行った。朝7時に事務所に入った。正午までに仕事が終わればよいなと思っていた。天気予報では35度くらいになると言っていたから、暑くなる前に資料室を出たかった。 探してる判例は資料室の奥にあると知っていたので、そこで懸命に文書を読み、目的の資料を探し回った。ようやく10時近くになって目的の文書を見つけた。そこで、その資料を抱えて、表のコピー機が置いてあるところへ歩いていた時だった。誰かにつまずいて、床に大の字になって転んでしまったのだった。 誰につまずいたのだろうと振り返ってびっくりした。とても綺麗な女の人がいたからだ。ストロベリー・ブロンド( 参考)と言うのか、赤みがかったブロンドの髪の毛。縦にカールして肩まで掛っている。瞳は鋭く、青い色で、海を映してるように見えた。肌は透き通るように白く、象牙を思わせた。顔や肩にそばかすが点在してる。 ショート・パンツを履いていたが、彼女には小さすぎるように見えた。上はタンクトップでかろうじて胸を隠してるような感じ。はっきりとは分からなかったが、ブラジャーはしていないようだった。というのも、タンクトップに乳首がツンと立っているのが見えたから。靴は履いていなかった。ここに入る時は履いていたはずとは思ったが。 彼女はにっこり微笑んだ。パッと顔が明るくなる。そして、ちょっとくすくす笑いながら言った。 「ごめんなさい。こんな通路に座っていたらいけないわよね。大丈夫?」 僕も微笑み返した。他にどうしていいか分からなかったからというのもある。ともかく彼女の笑顔は伝染性があった。 「ああ、大丈夫。僕の方が悪かったと思うよ。ちゃんと前を見て歩くべきだった。でも、ここに誰かいるなんて思っていなかったから」 と僕は立ち上がりながら言った。 「あ、資料を散らかしちゃったわね。拾うの手伝わせて」 彼女は僕が落してしまった本を拾い始めた。それを僕に手渡しながら自己紹介した。 「ちなみに、私の名前はアンジー・マクドナルド」 「はい、マクドナルドさんのことは存じてます。繰り返しになりますが、つまずいてしまって申し訳ございません。僕の名前はジャック・アンダーソンです。ここで調査員をしてます」 マクドナルドさんは僕より5センチくらい背が高い。僕は168センチの小柄な体格だった。僕の見たところ、彼女はとても痩せているけど、見事なプロポーションをしていた。ウエストは細く、それに比べると胸は大きすぎると言ってよいほどだった。もっとも、そのアンバランスに文句を言う男はいないだろう。 アンジーはまた微笑んだ。「もし、もう一度でも、そんな敬語で話したら、私、あなたのことひっぱたいちゃうわよ。まるで、私があなたのお母様と同じ歳みたいじゃない?」 彼女が冗談で言ってるのは分かっていた。「すみません。僕は年上の人には敬意を払うように育てられたので…」 実際のところ、彼女は僕より2つほど年上だった。
ジョージは悪くはなかった… まあ、それなりに家事をこなそうと努力はしていたし、食費については分担してくれて、その点では貢献してくれた。それでも、私はこういう状況にどこか居心地の悪さを感じていた。 だけど、その後、春学期が始まるとすぐに、ダイアンとジョージは大喧嘩をしてしまったのだった。それがあってから数日間、ダイアンはアパートの中、ふさぎこんでぶらぶらしていたけれど、その後、突然、彼女は、学校をやめて故郷に帰ると宣言したのだった。 「もう我慢が出来ないの!」 私が説得しようとしたら、彼女が言った。 「だめよ、ダイアン! 私、どうしたらいいの?」 「あなたはとてもいい人だわ」 「でも、ダイアンがいなくなったら、どうやって家賃を払ったらいいか分からないわ」 私ひとりでは家賃は払えなかった。 「ここに引っ越した時は、半分、払えてていたじゃない?」 「でも、ここに私だけになるでしょう? 誰かほかの人を探さなくちゃいけないわ」 「いいえ、そうはならないわ… ジョージは引っ越さないもの」 「えっ、そんな、ダイアン! ジョージはいられないはず」 でも、実際、ジョージは残ることになってしまった。私は愕然とした。大学を卒業するまで、ここでずっとジョージとアパートをシェアしていかなければいけないとは! ジョージは、こんな遅い時期になってしまっては他の住処を探すのは不可能だと言っていた。そして、私も新しいルームメイトを探すのはものすごく大変だろうとも知っていた。ジョージは、決して私の邪魔をしないし、食器洗いとかいろいろ、もっとうまく手伝えるよう努力するからと言っていた。なんとなく、うまく丸めこまれたような感じがした。けど、すべてを考え直し、ひょっとしたら、これでやっていけるかなと思った。 というわけで、毎晩、ジョージと顔を突き合わせて夕食を食べる生活になった。ダイアンがいたころから、私とジョージはあまり会話していなかった。だから、夕食のテーブルも、まったく無言で居心地が悪いほど。やがて、私たちは食事をしながら本や雑誌を読むようになった。 ある晩、ダイアンから電話が来た。ジョージがアパートにいるときだった。ダイアンは、私がジョージとうまくやってるか知りたかったらしい。私は、これまでのところは、問題は起きてないわと答えた。 ダイアンは、ジョージの様子も聞きたがった。そこで私は、彼なら今アパートにいるわよと答えようとしたのだけど、ダイアンは私が誰と話してるかジョージにバレないようにしてと頼んだ。でも、実際、それは遅すぎたと思う。 それから、なんとダイアンは、もし私がジョージと仲良くなっても、彼女は全然気にしないわよと言った。私は、まあ、それは考えておくわと答えたけど、皮肉っぽい声になっていなかったかどうか、自信がない。 電話の後、ジョージが言った。 「今のダイアンだろ?」 思ったとおり、ジョージは電話の相手が分かっていた。 「ええ」 「彼女、どうだった?」 「元気そうだったわ」 「それは良かった」 その後、ジョージは何も言わなかった。どうしてか分からないけど、その時の私は、この話題をやり過ごさなかった。 「ダイアンがいなくてさみしいの?」 「ああ、時々、そう思う」 「ジョージもデートを始めるべきよ」 そう言った後、まるで私を誘ってほしいと持ちかけてるように聞こえたかもと思った。でも、そんな意味じゃないと訂正しようにも、どう言って良いか… どう言っても失礼になりそうで、結局、黙ったままでいた。 「ああ、そうだなあ…」 と彼は言って、何か考え事をしてるような感じで座っていた。 私は無頓着の様子を装って、また本を読み始めたけど、実際は、ジョージが私をデートに誘うのではないかと内心びくびくしていた。 するとジョージは、まるで独り言を言うように、話した。 「しばらくは不特定に遊びまわることにしようかな…」 それを聞いて私は心の中でほっと安堵のため息をついた。
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