昼食の後、キッチンで洗い物をしてるとき、トミーが入ってきた。
「ママ、なに作ってるの?」
「何も… ただちょっと洗い物をしてるだけよ」
振り返ると、息子がわたしに近づいてくる。わたしのすぐ横に来て止まった。ズボンの前をわたしの腰に擦りつけてる。
わたしは息子の目を見つめてた。どうして逃げなかったのか分からない… まるで、わたしは息子がそばにくると自動的に興奮してしまうみたい。
息子の手がわたしの腰のところに触れてるのを感じた。これって息子が母親に触るような触り方じゃないわ。
「ねえ… ママ? パパは出かけたし… ちょっと考えてるんだけど… できないかなあ? … 分かるよね?…」
真面目な顔して、わたしを見つめてる。息子の手がお尻の方に降りてくのを感じた。
わたしは返事をせずに、ただ息子を見つめていた。手がお尻に来て、お尻の肉をつかんだ。広げたり、丸くさすったりしてる。
「ママ? 僕、さみしかったよ」
息子が顔を寄せて、唇にキスをした。唇を開かせて、舌を差し込んでくる。
気がついたら、わたしも舌を出して、絡ませてた。ねっとりしたキスをしてる。息子の手がスカートの裾へ降りて、めくり上げた。お尻の上までめくられてる。
ふとクリスティが二階にいるのを思い出し、怖くなって少し震えた。優しくキスを解いて、トミーに囁いた。
「トミー… お願い… クリスティが二階にいるの…」
でも息子はスカートをめくりあげたまま、今度はショーツを引っ張って、お尻の割れ目に食い込ませた。
お尻の頬を外に出されてるわ。生肌になったお尻の頬を撫でながら、首筋にキスをしてくる…
ちょっと前のめりになって廊下の方を見た。足音がしないかと聞き耳をたてたけど、何も聞こえない。…よかった。少し安心して、息子に、そのまましたいようにさせていた。わたしのお尻をいじったり、首にキスをしたりを… しばらくしたら、ショーツの中に指を入れて、わたしの穴をいじり始めた。
ああ、もう… どうしてわたしは息子にこんなことさせてるんだろう? …でも、いいか… ママのこと、そんなに好きなら、させてあげても…
「あんっ!」
指があそこに入ってきたのを感じて、思わず声を出してしまった。もう濡れてる。
「うわあ、ママ、すごく濡れてるよ」
ああ、ダメよ… ちょっとやり過ぎになってるわ。クリスティが二階にいるのよ。息子の指が入ってる。何本なの? 3本か4本入れられてるような感じ。あそこがゆるくなってるし、すごく濡れているので、簡単に指を出し入れできるのかしら。
まだ首筋をチュウチュウ吸ってる。ママは首筋も弱いの。
自分でも知らないうちに、腰を振りはじめてた。小さな声だけど、ああん、ああんっと声も出ていた。でも、その時、何か音が聞こえた。ドアの音? それから… 足音も! 階段を降りてくる!
「トミー! トミー、ママから離れて!」 そう言って息子を押した。
息子が離れて、スカートを元に戻したときに、ちょうど娘がキッチンに入ってきた。
「ねえ… 何してたの?」
無邪気な訊き方だったけど、わたしはビクッとなってしまった。
「な、何も… どうしたの?」 何とか普通の声で返事した。
「今夜、ジェシカと遊ぼうと思ったんだけど、ダメなんだって。だから、今夜はどこにも行かないで、家にいるわ。それに… ジェシカから借りてる観たいと思ってた映画があるから」
息子を見たら、ズボンの前が大きく膨らませていた。大きなおちんちんの輪郭が見えてる。それにすごくがっかりした顔をしてる。トミーは、今夜クリスティが出かけると思っていたみたい。まあ、何てこと? 息子は今夜わたしに何をするつもりだったのかしら。
クリスティは冷蔵庫から飲み物を出して、それを飲みながら、わたしのことを変な顔をして見ていた。
「うふふ… パパはママにずいぶん頑張ったみたいね」
「え、何? …何のこと言ってるのか分からないわよ」 わけが分からず、娘の顔を見た。
すると娘は指でわたしの首筋を指した。「ここが赤くなってるわ」
あ、いけない… 首… トミーがずいぶん長く首を吸っていた。キスマークをつけちゃったんだわ! でも、その時点では、そのキスマークができたてで、湿った感じになってることに気づかなかった。
クリスティは不自然に長い間、わたしの首筋を見ていた。それから、何か途方もないことを考えたか、疑ったかしたみたいに、だんだんと目を丸くしていった。トミーを見て、またわたしを見てる。
わたしもトミーも、ばれるのを恐れて、クリスティから目を背けた。それからわたしはゆっくり向きを変え、何気ない感じを装って、キッチンから廊下へ出た。廊下に出て、すぐに壁に背をあててキッチンの中の様子をうかがった。ハラハラしててお腹が波打ってる。
「トミー、あのキスマーク、新しいんじゃない? …」
「え、何? 知らないよ… なんで僕が知ってるんだ」
「まさか…」
「バカ言うなよ、クリスティ!」 トミーが叫んだ。
わたしは、すこし震えながら階段に向かった。頭の中は、娘に秘密がばれてしまったかも知れないと、それでいっぱいだった。娘は主人に言うかもしれない。
寝室に入って鏡を見た。首筋に大きな赤いマークがついてた。まだ湿ってるのが分かる。
ベッドに仰向けになって考えた。なんてことになってしまったの? これから、どうしたらいいの?
その時、ドアが開くのが聞こえた。見ると息子が入ってくる。息子は、横になってるわたしの隣に腰を降ろした。
「ママ、大丈夫?」
その時、イサベラは恐怖にひきつって目を見開いた。のしかかる父の背後にレオンがそびえ立ったからだ。怒りに満ちた恐ろしい形相をしている。
レオンは、もぎ取るように父の身体をイサベラから離し、ベッドから突き落とした。父はよろめき、床に尻もちをついた。こんなにも長い間、求め続けてきたイサベラの身体から、よくもわしを離したなと見上げ、その瞬間、信じられんと言わんばかりの恐怖の表情を顔に浮かべた。
「ドゥ・アンジェ!」
「この腐った卑劣漢が! こともあろうに自分の娘を!」 レオンは険しい顔で怒鳴り、床にすくむ父に突進した。
「この女は淫乱なのだ」 父はしゃがれ声で答えた。ドアへと後ずさりながら、レオンから目を離さない。「わしの城に来たその日に、すぐに股を広げて、わしにやってくれとねだるものでな」
その瞬間、レオンが父に飛びかかり、二人ともども床に倒れ込んだ。
イサベラは、二人の男が床のうえ、もがきあい、格闘するのをかろうじて見続けた。衛兵に、この音が聞こえないようにと必死に祈りながら。彼女は、父親が、彼女の悲鳴を聞かれて噂話を広めるかもしれないと、衛兵たちを城外に送り出していたことを知らなかった。
イサベラは、父がブーツの中から何かを出そうとしているのを見て、レオンに叫んだ。父は身体を反転させ、レオンにのしかかり、彼の胸に短剣を突き降ろした。レオンは両手で父の手首をつかみ、かろうじて剣を受け止める。首に腱の筋が浮き出ていた。
イサベラは、震えながらも近くにあった重々しい銀の燭台を手にし、二人のところに近づいた。燭台を振りかざし、息を止め、一気にそれを父の後頭部に打ちおろした。ずしんと鈍い衝撃が腕を伝わるのを感じた。
父はイサベラの攻撃に唸り声をあげ、振り返った。手を伸ばし、イサベラの破れかけたガウンを掴みかかろうとした。だがイサベラは身をかわし、同時に固い銀の道具を全力で振りまわした。
その一撃は父のこめかみを強打した。父は一瞬、驚いた表情を浮かべたかと思うと、横にばったりと倒れた。短剣がかちゃっと音を立てて床に落ちた。
レオンは、ぐったりとなった父の身体を押しのけ、立ち上がった。そして、今にも倒れそうにふらついているイサベラの身体を受け止め、しっかりと抱き寄せた。
「死んだの?」
イサベラはレオンの広い胸板に顔を埋めながら呟いた。手にしていた血糊がついた燭台を石の床に落とし、両腕を彼の腰へ絡め、抱きついた。
レオンは抱き寄せる腕に力を込めながら、彼女の額にキスをした。
「死んだ」
イサベラは、事実そのものというような彼の声の調子に身体を震わせた。だが、あの怪物がようやく死んだことに安堵を感じたのも事実だった。
「なぜ、こいつの邪心のことを俺に言わなかったのだ?」
レオンはイサベラを軽くゆすって、尋ねた。胸に顔を埋めるイサベラのあごに指を当て、顔を上げさせた。燃えるような金色の瞳でイサベラを見つめる。
「なぜだ、イサベラ!」
「一度もお聞きにならなかったから…」 と、イサベラは小さな声で答えた。そしてレオンの腕から辛そうに逃れ、彼の胸を押して囁いた。「行って! …あなたがここにいるのを衛兵に見つかったら、殺されてしまうわ」
イサベラはレオンに目を向けることができなかった。再び自分の元から離れて行くレオンを見るなんて、心臓が張り裂けそうになる。父が死んだ今となっては、今後、二度とレオンとは逢えないだろう。
イサベラはレオンに背中を向けた。父があつらえた破れたガウンを脱ぎ、汚れたものを見るように、床に捨てた。
「俺と一緒に来てくれ。衛兵たちから俺を守ってくれないか?」
レオンは落ち着いた声で尋ねた。イサベラは驚いて動きを止めた。
どうしてそんなことを訊くの? 私があなたのことをどう思ってるか知らないの?
レオンはイサベラの返事を待ち続けた。長い沈黙が続いた。
突然、レオンは大股でイサベラに近寄り、両腕で彼女を抱え上げた。彼女の悲鳴も気にせず、肩の上に抱え上げた。そしてイサベラの尻をぴしゃりと叩いた。
「言うことを聞かぬと、今度はもっと強く叩くぞ! その必要を感じたら、いつでもお前から返事を引き出してみせる」
中に入ると、人の集まりは、この前と比べてずいぶん多くなっていた。人々が話しあう声や、カチャカチャとグラスを当てあう音で賑やかだった。
ブルースはパティオへのドアの先を覗き、今のところ誰も輪の中に座ってる者はいないのを確認した。それからリンダのところに追いつこうとしたが、パーティの主催者につかまり、今日はバーテンダーの仕事をしてもらうと言われた。
一分も経たないうちに、ブルースはバーの中にいて、飲み物を作る仕事をしていた。カップルや男たちが長い行列を作って、飲み物を待っている。まだパーティが始まったばかりだったので、この行列はいつまでもなくならないように思われた。
その行列にはリンダも並んでいた。彼女の隣には黒人男がいた。この前のパーティでは見かけなかった男だった。30代中ごろの歳で、背が高く、魅力的で、逞しそうな体格をしている。彼は腕をリンダの腰に絡ませ、抱き寄せながら順番を待っていた。やがて、リンダとその男が列の先頭になり、ブルースの前に来た。
「何にいたしましょうか?」 と、ブルースは男を見ながら言った。
「私はシャンパンをいただくわ」 とリンダが言った。
「かしこまりました、奥様」 ブルースはリンダの顔を見ずに、言いにくそうに答えた。自分の返事にリンダが笑っているだろうとは思ったが、その顔を見たくなかった。
「俺はスコッチをロックでもらおう」 とリンダの連れが言った。
「はい、かしこまりました。直ちに」
1時間後、サラの夫のビルが交代に来て、ようやくブルースは解放された。飲み物を手に、メイン・ホールに出た。部屋の隅に立ち、人々を観察した。何人か、昔のスウィング・グループにいた知り合いの顔もあった。リンダは例の黒人とお喋りをしている。
サラは他の妻たちと何か話していた。いつ見てもそうだが、サラは本当にセクシーだな、とブルースは思った。かつては、あのサラと定期的にセックスできていたのに、今は… そう思うと本当に悲しくなる。今は、サラに話しかけることすら怖くてできない。自分はすっかり部外者になっているから。
ほどなくして、ブルースはリンダが近づいてくるのを見た。ブルースは立ち上がり、作り笑いをして迎えた。リンダが来た理由は、だいたい想像がついていた。
「やあ、楽しんでいるかい?」
「楽しむのはこれからよ、うふふ… 私が来た理由は分かってると思うけど?」
「首輪だろ?」 とブルースは諦めた顔をして言った。
「そんなに悲しそうな顔をしないで。首輪をつけると、それは自分の妻が楽しんでいることを意味するのよ。私を喜ばせたくないの?」
「いや、もちろん、楽しんでほしいよ」
「だったら、さあ。後ろを向いて!」
ブルースは言われたとおりに後ろ向きになった。首の回りに首輪が付けられるのを感じた。首筋に触れるリンダの手がとても温かく感じた。自分の妻でありながら、リンダは自分にとって、もはや手に入れられない性の女神になってしまったようだと悟るブルースだった。
「これでどうかな?」 と、リンダは首輪をちょっと引っ張って位置を整えた。
ブルースは前向きに戻った。自分でBCとあるメダルを表向きに変えながら、情けなさそうな顔でリンダを見た。
「そのBCって、何の意味なの?」
「まあ、いろいろ説があるけど…」
「意味だけ言って」
「『黒人に寝取られ中』(Black-Cuckolded)を意味するんだよ」
「そう… まさに意味が通るわね?」
「確かに…」
「さあ、これで良しと。じゃあ、外に出た方がいいわよ。行儀よくしてね!」
「はい、奥様… そう言うべきなんだよね?」
「ええ、そうよ。そう言うことで、あなたがクラブの精神に従ってることが分かるから。さあ、もう行って!」
「はい、奥様」
リンダは、パティオへの出口へとゆっくり歩いて行く夫を見送った。外の輪にはすでに二人、他の男が座っていた。たった一週間だけど、ずいぶん劇的に変わったものね、と彼女は思った。これから、どうやってブルースの忠誠心を試したらいいかしら… と、そう思うリンダだった。