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67 Competitive 「恋敵」 

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67 Competitive 「恋敵」

「さあ、おふたり。前に出て。真ん中に立って。彼氏のジェロームがすぐにここに来るから。あんたたちふたりを彼に見せびらかしたいの」

「か、彼氏?」

「あら? 言ってなかったっけ? あたし、地元に彼氏がいたってこと? 彼とは長距離恋愛みたいなことをやってたけど、あたしたち女の子同士でしてたら、ちょっと、あたしイライラしてきちゃってて。あんたたちふたりが、もう2週間ほど張り合い続けてていたら、あたしも諦めてたかもしれないけど。あ、彼が来たみたいよ」

「やあ、遅くなってごめん」

「全然。ねえ見て。あなたにあたしの特別のお友達を紹介したいの。ねえ、おふたりさん? こちらがジェローム。ジェローム? これがクロエとクラリス」

「クロエとクラリス? おいおい、こいつら男じゃねえか」

「ええ、そう。かつてはカールとロブだったの。でも、ふたりとも、あたしが女の子の方が好きかもと思ったみたいなのよ。どこでそんな考えを吹き込まれたのか知らないけど、いつの間にか、ふたりとも競い合ってドレスを着たり、振る舞い方もどんどん女っぽくなっていって。あたし、ふたりに本当のことを言う勇気がなくって、ずっと黙っていたけど。ほんの1週間前まで、ふたりとも、まだ、あたしに対してチャンスがあると思っていたみたいなの。ほんと哀れね」

「でも、ふたりとも嬉しそうな顔をしてるじゃねえか」

「あら、違うわ。ほんとに違うわよ。ふたりとも互いに嫌っているの。でも、安心して。あなたがここにいる間は、ふたりとも良い娘でいると誓わせたから」

「良い娘ねえ。ふーん。それってどういう意味だ?」

「そうねえ、まずは、ふたりに、あたしたちのためにちょっとしたショーをしてもらうことができるわね。興味ある? ふたりのあのちっちゃいモノは、もう勃起しないの。でも、ふたりが使えるディルドなら、たくさんコレクションしてるわ」

「そうか、面白そうだな。早速、見せてもらおうか」

「ええ、あと、もしふたりとも上手にできたら、ふたりに後始末の仕事をさせてもいいんじゃない? あなたとあたしの……再会のご挨拶をした後の後始末だけど」



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67 Committed 「本気の仕事」 

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67 Committed 「本気の仕事」

「自分のミッションを理解してるか?」 とエージェント・マイケルズが訊いた。

ルイスは腰に手を当て答えた。「バカか、サム。俺は自分の仕事を分かってる」

「エージェント・マイケルズと呼べ。ここから1歩外に出たら、お前はルイス・ロドリゲスではない。お前はローラだ。ローラは俺の相棒ではない。ローラは俺とため口を聞く間柄ではない」

「俺がすべきことは分かってる。いいから、服をよこせよ」

エージェント・マイケルズは衣類の山をルイスに放り投げた。「潜入しろ。そして仕事をするんだ。捕まるなよ。お前を助ける余裕はないからな」

「分かってる。それとも何か? お前、俺が失敗するかもしれないと思ってこれをヤルとでも思っているのか? 神に誓うぜ。俺を子ども扱いするのはやめろ。何が重要かは分かってる。自分の仕事も分かってるんだ」

ルイスは内心イライラしてるのを隠さなかった。イライラの原因は、大半が、思考に染み込んでくる不安感だった。あれだけ準備をしたものの、あれだけたくさんの訓練をしたものの、自分がこの役割を相手に納得してもらえるように演じ切ることができるか、自信がなかった。ほぼ3ヶ月にわたる綿密なプログラムの結果、彼には、ほんの小さな痕跡を除いて、男性性のほとんどすべてを失っていた。にもかかわらず、依然として、自分が成り済まそうとしている存在として、あの連中に納得してもらえるかどうか、分からなかった。

だが、仕事は仕事だ。これは必要なことだ。

「お前ならうまくできる。その姿、大したものだと思う。今のお前はトンプソンの好みのタイプそのものだ。お前が違うなんて、あいつは微塵も思わないだろう」

「違うって、シシーとは違うとかか? それとも娼婦と違うとかか?」

「考え直してるんじゃないだろうな?」 とマイケルズが訊いた。

「もちろん、考え直しているさ! 1度ばかりか、2度、3度と考え直してる。だが、俺は何が問題か知っている。俺は仕事を完遂する。これが終わったら、元の自分に戻る」

「ああ、俺は理解してるよ」

「本当か? 俺はこれから、ウチの隊の半分を殺した男のちんぽをしゃぶることになるんだぞ。あいつに抱かれることになるんだぞ。俺はこれからあいつの完璧なセックス玩具のふりをすることになるんだぞ。しかもお前は俺はもう……」

「もう後戻りはできないんだ」とマイケルズは元相棒の言葉をさえぎった。「書類は中に入ってる。かかわっている人間全員に関して、お前はローラだ。ルイスは死んだ」

「分かってる」ローラは気持ちを落ち着かせようとしながら答えた。「そして俺は俺の仕事をやる。だから、せめてお前には俺がこれを喜んでやるとは思わないでほしいんだ」




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67 Close 「あと一息」 

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67 Close 「あと一息」

別に、あたしは、最初からセクシー女になるつもりでいたわけではない。誰でもそうだとは言えないけど。でも、だからと言って、あたしがセクシー女そのものだという事実は変わらない。

ちょっといい? あたしには分かる。あなたはあたしを見て、こういう姿になるのを望まなかったならどうして、こういう姿になったのか分からないと言うと思う。多分、あなたは、あたしがずっと前からこうなることを夢見てきたのだと思うだろう。子供の頃にバービー人形を見て、「こんなふうになりたい!」と言っていたと、そう思うだろう。

まあ、こう言っては大変申し訳ないけど、あなたは完全に間違っている。あたしは、他のたいていの男の子と同じように育ってきた。当時なら、あなたも、あたしと他の男子との違いが分からなかっただろう。もっと言えば、あたし自身、思春期に差し掛かるまで、自分には他と違うところがあることに気づいていなかった。

その時のことをはっきり覚えている。姉のパンティがそこにあって、誰も見ていなかった。正直、自分でもなぜなのか分からないけど、あたしはそれをポケットにしまった。あの時まで、あたしは、女物の服を着るなど一度も考えたことがなかった。でも、あの夜に、すべてが変わった。

自分の部屋に入って、ドアにカギをかけ、そのパンティに脚を通した。その下着でぴっちりと下半身を包んだ瞬間、あたしの中の何かが目覚め、そして、その結果、あたしは生まれて初めての射精をしたのだった。あの時、パンティを履いたあたしは、他に何をしてよいか分からなかったので、ベッドに飛び込み、掛け布団の中に潜った。でも、うつ伏せになったとき、その圧力がとても気持ちいいのに気づいたのである。特に、シーツとシルクのように滑らかなパンティが擦れる感覚にうっとりとなった。

本能的に、あたしは腰を上下に振り始め、その動きによって、ゾクゾクするような快感が股間に広がってくるのを感じた。たった数回、腰を振っただけで、あたしは、あの生まれて初めての射精に至った。そしてあの瞬間から、あたしは完全にこれにハマったのだった。

でも、あたしは、この行為を隠し続けた。あたしと同じことをする人が世の中には何千人もいるのを知ったときでも、あたしは隠し続けた。自分と同じような男子についての話しを読んだ。美しい女性になるためにホルモンを摂取したり、整形を受けたりする人の話しも読んだ。ペニスがついた美しい女性たちのビデオを何本も見た。そして最後には、自分が何を求めているか、自分のために何をしたいかを悟ったのだった。

そして、高校を卒業すると同時に、あたしは自分がしたいと思ってきたことを開始した。そのためのお金をどうやって都合したかを自慢するつもりはない。カメラの前でアソコをいじって見せるのは屈辱的だったけれど、整形手術やホルモンは高価だった。それに、ホルモンや手術の結果を見るたびに、もっと多くを求めるようになっていった。もっと大きくしたい、もっと女性的になりたい、もっとセクシーになりたい、と。完璧になりたかった。

あたしの変身が、女性の肉体を得るだけでは終わったと言えないのは知っていた。肉体の特定部分が異様に巨大化することで達成されると。手術を受けるたびに、完璧さの目標には近づいたけれど、同時に、欠点も浮き彫りにされることにもなった。そして今は? 今、あたしは、さらに良い姿を求めるという永遠に続く自己改善の循環を繰り返している。

そういうわけで、今のあたしの姿がある。あなたはあたしを見て、整形ありありのセクシー女と思うだろう。自分でもそう思う。でも、あたしは、もう1回だけ整形手術を受ければ完璧になると思っている。毎回思っている。実際は1回で終わるわけではないと分かっているのに。もうやめたいと思っているけど、どうしてもやめられない。本当にやめたいと思ってるのに。でも、もう少しで完璧になれるのだ。あと一息なのだ。


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67 A secret 「秘密」 

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67 A secret 「秘密」

「まあ、これってちょっと恥ずかしいわ」とライリーが言った。

この言葉、今の状況を表す言葉では全然ない。カイルの言葉に詰まった反応を見ても、それは明らかだった。「で、でも……えーっと、君は……」

ライリーはにやりと笑い、下を向いて自分の体を見た。「ちょっとショックだったかも。隣に住む女の子にはおちんちんがついていたなんて、思ってもいなかったものね?」

「ぼ、ボクは……」

「ちょっといい?」 と彼女は体を屈め、つるつるの脚に沿ってパンティを引き上げた。「この土地が先進的な地域じゃないのは知っているの。それに、あなたがすごくビックリしてるのははっきり分かる。でも、このこと、他の人に言わないでもらえると、すごくありがたいんだけど。新しく引っ越してきた女の子ってだけでも、いろいろ嫌なことがあるの。それが、ましてや新しく引っ越してきた男の子だったと分かったら、もっと嫌なことがあるのよ。言ってる意味が分かると思うけど」

彼女は、タンクトップを着て、裸体を隠しながら、この男の子、いつになったら開いた口を塞ぐのかしらと思った。この男の子はあたしと同じ年だ。自分と同じ高校3年生。それに、この男子はちょっとぎこちない感じはあるけど、そこがまたキュートだと思った。ブロンドの髪、青い瞳、そして、自分はうまく慣れられない中西部の人間らしい無邪気そうな性格。彼女はそう思った。

「君は男なんだよ」とカイルが言った。

「目はいいのね」とライリーは答えた。「でも、違うわ。正確には違う」

「でも、君には……あの……」

「ちんぽがついている。そうよ、その点は1分前にも話したと思うけど。いい、聞いて、カイル……カイルって名前でいいのよね? いい? だからこそ、取引なの。誰にもこのことを言わない。いい? 体を変えるとき、そのせいで、もう3回も転校しなきゃいけなかったんだから。もう転校はこりごりなのよ」

話す様子は平然としているけれども、この何年かはライリーにとって信じられないほど辛い日々だった。女性化には結果として様々な恥ずかしい状況に対処する必要がある。ライリーは、そういった女性化の現実に対処しなければならなかったのに加えて、彼女が男子ではないという理由で彼女を嫌い、イジメをする数多くの群れをなす者たちと対決する必要もあった。もちろん、彼らはライリーが女性的な男の子であった時も彼女をイジメたが、彼女が女性化を始めると、そのイジメはいっそう激しくなった。それは身体的な暴力を受けるという形で頂点を迎え、彼女は3日間、入院することになった。その事件の後、彼女の両親は転居することが最善と考えたのだった。

でも、今、ライリーは、それを過去のこととして前に進んでいる。いや、前に進もうとしていると言った方が正確だろう。

「だから、お願い。あなたはこういう状況に巻き込まれる筋合いじゃないのは分かってるわ。そもそも、あたしのこと、まだ知らないわけだし。でも、あたしを信じて。この秘密は絶対に守ってほしいって本気で言ってるの」

カイルはしばらく沈黙していたが、ようやく口を開いた。「分かった。誰にも言わない。君が言ってほしいと言うまでは、決して」


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67 A new life 「ニューライフ」 

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67 A new life 「ニューライフ」

目が覚め、まばたきをした。一瞬、何が起きたのか思い出せなかった。だが、分からない状態はすぐに終わった。バスルームの中、見回したが、何もなかった。パニックになりかかり、過呼吸状態になった。苦しく呼吸をしつつ、何が起きたのか理解しようとした。

ボクは誘拐されたのだ。寮から共用施設に行く途中、ふたりの黒服を着た男たちに待ち伏せされたのだった。気がつくと、外から見えないようにされたバンの後部座席にいた。体を縛られていた。殺されると思った。その時、男のひとりがボクに睡眠薬の注射をし、何秒も経たないうちに、ボクは意識を失った。

「よろしい」と聞き慣れない声がし、パニック状態のボクの思考を中断させた。顔を上げたら、裸の女性がいた。少なくともボクには裸の女性と見えた。豊かな胸。柔らかそうな体つき。そしてペニス。彼女にはペニスがあった。「目が覚めたようね」

「こ、ここはどこだ?」 声がかすれていた。口の中が乾いていた。「お前は誰だ?」

彼女は微笑んだ。「落ち着きなさい」と彼女はボクの横にひざまずいた。ボクの頬に手を伸ばし、優しく撫でた。「可愛いわね。どうしてあなたを選んだか分かるわ」

ボクは彼女から離れたい衝動を感じた。「な、何が起きてるんだ?」

「そうよねえ。新しい女の子にとって、これがすごくビックリすることだってこと、時々、忘れちゃうのよ」

「ぼ、ボクは女の子じゃない」

「今はまだ、ね。でも、いずれそうなるわ。どこで拉致されたの?」

ボクは彼女に話しをした。少なくとも記憶がある部分は話した。そして尋ねた。「ボクはどうなるんだ? ボクの親は、身代金なんか払える余裕がないよ」

「身代金? あら、違うわよ。そんなのが目的じゃないの」

「じゃあ、何が目的なのか言ってくれ!」 ボクは大きな声を出そうとしたが、出てきた声は、かすれてて、半分囁き声のようなものだった。涙が溢れてくるのを感じた。「何が起きてるのか教えてくれ。お願いだ」

彼女は立ち上がった。「この役目、嫌い。説明する役になるのって大嫌い」 彼女は溜息をつき、ボクに背中を向けた。目に手を当てていた。ようやくこちらに向き直ったが、心配そうな表情をしていた。「あなたが知っている人生は、もう終わったの。まず最初に理解しなくちゃいけないことは、その点。どこに住んでいたとしても、自分をどう認識していたにしても、それはもうお終い。これからは、あなたは、彼らが命ずるものにしかなれないの」

「彼らって誰なんだ?」 彼らが何を望んでいるのか、それをまず訊きたかったが、訊く衝動を抑えて尋ねた。

彼女は肩をすくめた。「正直、あたしも知らないのよ。あたしはここに来て、もう3年になるわ。彼らが誰か、いまだに分からない。彼らがどうしてあなたみたいな男の子を連れてくるのかも分からない。彼らが欲しがるような可愛いトランスジェンダーの女の子たちなんか、この世の中、たくさんいるのに。でも、うちのクライアントたちは……クライアントたちは、強制的に女の子にされる男の子を求めてたくさんおカネを出すの。一種の変態的なフェチなんだろうけど」

「クライアント?」

「あなた、娼婦になるのよ」彼女はまったく間を置かず即答した。「おカネをもらって男たちと寝るの。でも、その前に、あなたは変わらなくちゃいけないわ。たくさん変わる。彼らがあなたを仕事に就かせるようになる頃には、あなた、本当に女のような体になってるし、女のように感じるし、振る舞うようになってるでしょうね。ただ、一か所だけ違うわ。あなたの脚の間についているモノは例外。彼らは、ソコだけは残してくれるのよ。正直、それって残酷なジョークだと思うけど。どうせ役に立たなくなるんだもの。あたしたちが何を失ったかを思い出させるためのモノとして、ただぶら下がってるだけ」

ボクは再びパニックになるのを感じた。彼女が言ってることはありえないと思いつつも、彼女自身が、その言葉の生き証人になっているように思えた。「ぼ、ボクたちはここから逃げなくちゃ」と言葉を詰まらせながら言った。「そうだよ、逃げなくちゃ。ここから逃げなくちゃ!」

彼女の鋭い笑い声が、ボクのパニック状態をナイフのように切り裂いた。「逃げる?」と顔に手を当てながら言う。「不可能よ。たとえ、この建物から逃げられたとしても、外は南米のどこか知らない場所なのよ。アメリカに戻れるとでも思う? 無理よ。あたしたち、ここに居続けなくちゃいけないの」と彼女はボクの横にひざまずいた。「でも、ここの生活、そんなに悪くもないのよ。少し経てば、あなたも仕事を楽しむようになるわ。そして、あなたが上手になったら、ちゃんとご褒美も出してもらえるから。この状況を最大限に活用できるかもしれないの。でも、今は、逃げることは忘れなきゃダメ。逃げるなんて話してるのがバレたら、彼ら、あなたを見せしめにするでしょうね」

「み、見せしめ?」

「あなたの両目をえぐり取る。あなたの舌を抜く。そんな姿にしてから、勝手に生きていけって街に放り出す。そんなことされた人、見たことあるわ。あたしなら、最悪の敵に対して、そんなこと絶対に望まない。だから、諦めた方がいいの。言われたとおりにすること。そうしたら、あなたの新しい人生を、最大限にいい人生にできるわよ」


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67 A changed man 「変えられた男」 

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67 A changed man 「変えられた男」

ボクはため息をついた。「カレン、そんな目でボクを見るのやめてくれない?」

「どうしても見てしまうのよ」と彼女は目に涙を浮かべた。「あたしは、ただ……あたしはどうしたらいいの?」

「別に何も。ボクは依然として君の夫だよ。分かってるだろ?」

「あたしの夫? こんな夫? 本気で言ってるの? ドニ―、自分の体を見てみなさいよ! 信じられない」 と彼女は頭を左右に振った。「これがあなたが悪いわけじゃないのは分かってるけど、だからと言って、あたしがこれでOKだなんて思ってほしくないわ。あなたがこんな姿になっているのに、あたしたちが以前の状態に戻れるなんて思えるわけがないでしょ」

「それは分かってるけど、でも、ボクたちは依然として……」

「何よ? あたしとあなたは何だっていうの? 夫と妻? あんた、どう見たって女じゃないの、ドニー! 女よ! さらに悪いのは、今のあなたがあたしよりもずっと綺麗になってること。あなた、まるでモデルのように綺麗じゃないの!」

「それは分かってる。でも……」

「でも、何よ! あなた、そのカラダでスーツを着て、前のような男に戻るつもりなの?」 カレンは両手で顔を覆い、さめざめと泣き始めた。ようやく顔を上げたら、マスカラは乱れ、両目が赤く縁どられていた。「あの時、あなたは行くべきじゃなかったのよ。あたし、何か悪いことが起きると思っていたのに」

「実験室で爆発があったのは知ってるよね? ボクのDNAも突然変異を起こしたのを知ってるよね? それでボクはこうなってしまった。お願いだよ、カレン。こんなことになるなんて、誰も予測できていなかったんだよ」

「ええ、あなたがこういう姿になってしまうのは誰も分からなかったわ。でも、あたしは、あなたが行くべきではないと分かっていたの。……行かないでって言ったのに。なのに、あなたは行ってしまった。どうしても行かなくちゃって」

「ボクには選択肢はなかったんだ」とボクはつぶやいた。

「いいえ、もちろん別の選択はあったわ。それに、正確にどんなことが起きるかは予測できなかったかもしれないけれど、それでも、ひどく悪いことになる可能性があることは分かっていたはず。危険があるのを知っていた。なのにあなたは実験室に行ったのよ。そして、1年近くもあたしを置き去りにして。連絡も一切なし。あたしは、ずっと、ただここに座ってあなたが帰ってくるのを待っていた。期待しながら。悪いことが起きませんようにと祈りながら。そして、結果はと言うと、その悪いことが起きてしまって、あたしの夫はいなくなってしまったと知らされたのよ」

「ボクはまだ君の……」

「違うわよ! 違う! あたしの夫は男なの! ドニ―、今のあなたが何者か、あたしには分からないけど、あたしの愛する夫じゃないのは確かだわ。あなたは、あたしが一緒になった男性じゃないわ!」

「な、何を言ってるのか……」 ボクは声がかすれていた。

「出て行ってって言ってるの。何か服を着て、出て行って。こんなこと、あたし、耐えられない!」


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67 A bigger fish 「より大きな魚」 

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67 A bigger fish 「より大きな魚」

「よーし、お前ら」とジミーはあたしの腕をつかみ、引っ張って横に立たせた。あたしも、この大男に逆らおうと思うほどバカではない。すでに、逆らったらどうなるかは身に染みて知っているし、それを繰り返すつもりもない。「よーく、聞け」

部屋の中、男たちは、ぶつぶつと呟いていたが、一斉に沈黙した。そして、あたしの方へ眼を向けた。だが、彼らの視線はというと、直接あたしに向けた視線はない。あたしの後ろの方とか、足元とか、ちょっと横の方とか。誰もがあたしに目を向けているが、微妙に視線を外していた。彼らは、あたしがどういう運命をたどったか、改めて知りたいとは思っていないのである。だが、ジミーは逆のことを考えていた。

「お前ら、このオンナ見えるよな?」 ジミーはどすの効いた声で唸った。図太い声が部屋に響く。あたしはうつむき、磨かれたコンクリートの床に目を落とした。「よーく見ろ。このデカいおっぱい」と彼は荒々しくあたしの胸を握った。「この丸々とした尻」と今度はあたしの尻頬をピシャリと平手打ちした。「そして、この可愛い顔」とあたしの顎をつかみ、ぐいぐい握る。

男たちは一瞬、ざわめいた。その理由は知っている。ここにいる男たちが最後にあたしを見た時、あたしが彼らのボスだったのだ。あれから1年半しか経っていないが、ずいぶん前のことのように感じる。自分では、あの頃の自分と今の自分は違った人間とは感じていない。同じ自分と感じているのだ。だが……。

ジミーは乱暴にあたしを近くのカウチへと突き飛ばした。そしてフランキーを指さした。フランキーはあたしの一番古い友人だ。「フランキー! このオンナをヤレ。この場でだ。今すぐにだ」

フランキーは、ジミーの命令にためらうことすらしなかった。フランキーは、あたしが子供の頃に初めて強盗をやったとき以来の相棒だ。あたしと一緒に、この街の犯罪の大半にかかわり、あたしの真の相棒であることを行動で示してきた男だった。だが、そのフランキーが、直ちにズボンを脱ぎ、あたしの脚を大きく広げ、使いこなれたあたしのアヌスに太いペニスを突き入れた。それを受けて体が自動的に反応し、娼婦らしいヨガリ声が口から洩れた。その間もジミーは話しをつづけた。

「これがお前たちの元ボスだ」と顎であたしを指した。「よく見ろ。喜んでるのが見えるだろう。こいつは、これから俺のクラブで働くときも、こうやって喜びまくるだろう。すでに壊れたからな。完全に。後戻りは不可能だ」

そこまで言って、ジミーはため息をついた。「俺もこんなことはしたくはなかったんだ。もっと平和的にシマを渡してもらいたかったんだよ。ジョニーにはシノギを払ってはどうかと言ったんだ。そうすれば手下たちも、そのままでいいとな。小さいだろうが自分の王国を持てて、仕切り続けることができたし、誰も傷つくことはなかった。だが、こいつは、自分が実際より強いと思ったらしいんだな。俺に歯向かえると思ったんだ。ダメだったけれどな」 ジミーは指を伸ばし、男たちに向け、ひとりひとりの顔をゆっくりと指さした。「お前たちもだ。俺に歯向かうことはできねえぞ」

ジミーは最後に指先を、親友に犯されているあたしに向けた。フランキーの下腹があたしの尻頬を叩く音と、あたしの喜びに狂うヨガリ声が部屋に響いている。「俺に歯向かったらどうなるか、これがその代償だ。誰であれ、俺のカネに手をつけたら、こういうことになる。こいつはお前たちの中でも一番の男だった。だが、俺には、その一番の男ですらこんなエロ女に変えることができる。当然、こいつよりも弱いお前らなら、こんなふうにするのはもっと簡単だ。忘れるなよ。お前たちが俺の言うことを聞かなかったら、俺のクラブには新入りのエロ女がいくらでも増えて、繁盛することになるからな」

ジミーはそう言って部屋から出て行こうとしたとき、「ボス!」と男たちのひとりから声がかかった。ジミーは振り向いた。「俺たち、このオンナをどうすれば?」

ジミーは肩をすくめた。「こいつは、明日までお前たちが好きにすればいい。楽しめ!」

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