「まず最初に、私は、他の男性と付き合おうと自分から決めたわけではなかったの。そういうことをしたいと、自分から思ったことはなかった。・・・もう、今でもなかなか話しづらいことなんだけど・・・」 「・・・ええ、確かに悪いことだとは知っていたわ。でも、そういうことをするとどうなるか・・・どんな犠牲をもたらすかを考えてみることもなかったのも事実。結果については一度も考えなかった。すべて、その時点、その時点で悩んでいたことが何であれ、その悩みに対する精神的サポートを得て、悩みから手っ取り早く立ち直りたいという一心だったの。なぜ、そんなサポートを求めたか、どうしてサポートを与えてくれる人としてあなたがいたのに、あなたのことに目を向けなかったのか。そのことについては、考えるたびに、悩んでしまうわ・・・」 そう言ってバーバラはスティーブの手を握った。最近、このように彼の手を握ることが自由にできるようにバーバラは感じていた。スティーブも抵抗したり、手を引っ込めたりはしなかった。今は、二人で一緒に問題を解決しようとしている。バーバラは、ゆっくりと話しを再開した。 「・・・不倫をしようと自分から決めたことは、一度もなかったの」 バーバラは、意識的に決意してからでないと、自分が行ったことを言い表す「不倫」という言葉を使うことができなかった。この言葉、簡単に使えるようには決してならない。バーバラはこの言葉が嫌いだった。 「・・・あのような結果になるまで、何ヶ月もかかったわ・・・一回、一回についてはほんの少しずつだった・・・でも、その小さな進行が100ほど積み重なって、自分でもどこに向かっているのか分からない方向へ進んでいったの。そして、ある時点になって、自分が行っていることは悪いことだと悟った時が来た。でも、その時には、もう思考が全然はっきりしなくなっていたのよ。すべてがあまりに混沌としていた。1年くらいの間、ずっと混乱していたし・・・道も見失っていた・・・。そして、私は事態がどんどん悪くなっていくのに任せてしまうようになっていたの・・・流産した後は、特に・・・」 「・・・他の男たちが私をちやほやするのを止めようとしなかった。私のことを、まだ綺麗だとか、魅力的だとか、賢いとか、何でもいいけど、そう言って私をおだてるのをそのままにしていた・・・ジミー・ロバーツとラファエル・ポーターは、私がかりそめの間であれ精神的に必要としていたことに気を使ってくれたわ。ジミーの場合は、単に私が彼の口説きの言葉を聞くだけの段階を超えた間違いをしてしまう前に、あなたが彼をピシャリと排除してくれた。レイフについても、あなたがそうすることができていたらと良かったのに・・・」 「・・・でも、これは前にあなたに言ったわね・・・あなたが私にそのようなことを言っていた時、私はあなたに耳を貸さなかった。私は間違っていたわ。バカだから、あなたの話を聞こうとしなかった。頭がおかしくなっていたのか、どういうわけか、私は、あなたは自分のことしか考えていなくて、ああいうことを言っているのだと思い込んでいたの・・・どうして、そう思い込んだのか、今ではさっぱり分からないのよ・・・」 「・・・私は、ずっと未熟だったと思う。あなたが思っていたよりも、それに私が思っていたよりも、ずっと未熟だった。気持ちが不安定だったし、同時に、怠惰でもあった・・・あなたとの関係を改善するために、自分から何とかしなければいけないということすら知らなかった。二人が愛し合ってさえいたら、それだけで『めでたし、めでたし』の状態になると考えていた。あなたと最初に喧嘩をした時、打ちのめされたような気持ちになったわ。ものすごくショックを受けたの。その時の気持ちを話せる人もいなかったし、どう話したらよいかも知らなかった・・・」 「・・・結婚する前に家で見て育ったのは、父と母がいつもとても仲良くしていたこと。二人が愚痴を言ったり喧嘩をしたりするところは一度も見たことがなかった。私は、それが当たり前だと思っていたの。今は、両親が、私やキンバリーが見えないところで口喧嘩を繰り返していたことを知っている。でも、それに気づいた時は、遅かったわ。もう私には参考にならなかった。口喧嘩をしたとして、どうやって、それを乗り越え、夫婦生活を軌道に戻すために努力し続けるべきなのか、それを私は知らずに大人になっていたの」 バーバラは、理解を求めてスティーブの瞳を覗き込んだ。
私が見つけたうちで、激しい反応を引き起こした小説で、最も昔のものは、「コスチューム・パーティ (The Costume Party)」という題の小説である。これはゲイの緊縛・支配を扱った小説で、1989年10月28日にalt.sex.bondageに投稿された。この作品は、それと同時に、匿名の投稿サービス(のちに「匿名再メーラー(anonymous remailer)」と呼ばれるサービス)から発信された、私が見つけたうちで最も古い投稿の一つである。匿名サービスについては、後でもっと触れることにする。 上述したように、異常性愛や反社会的セックスを扱った小説は、システム管理者たちに削除されてきた可能性がある。この件に関しては、1989年末から1990年1月にかけて有名な事件があった。その事件は、「シンディの拷問(Cindy's Torment)」という小説に関するものである。この小説は、ある企業の重役とその秘書が巧みに工作し、若いアジア系女性に対してレイプ、性的拷問、辱めを繰り返すストーリーだった。問題は、この小説がalt.sex.bondageに現れた後、突然、消失するという事件が起きたのである。明らかに、有能なシステム管理者が、あるいは複数のそのような管理者たちが検閲したのだろう。システムからの削除は決して容易な作業ではなかった。と言うのも、ニューズグループへの投稿は単一のサーバに保管されるわけではなく、ニューズグループに加入しているすべてのプロバイダーのサーバに分配されるからである。幸い、「シンディの拷問」の場合は、その後も繰り返し再投稿され、実際、その気になって探し回れば、今日でも見つけることができる。しかし、他の小説の場合は、より巧妙に検閲が行われたし、大学の中には、例えばウォータールー大学のように、alt階層のニューズグループへはアクセスを禁止してしまった大学も現れた。 1989年11月、alt.sex.bondageの投稿者たちの間での趣味や欲望の違いが原因となって、小説に、その内容について読者へ「警告」するためのラベル付けを行うべきかどうかが議論となった。このラベル付けが、今日のいわゆる「ストーリー・コード」である。提案されたラベルは頭文字語であった(例:「女性支配者・男性従属者(female dominant/male submissive)」にはFD/MS、異性間行為(heterosexual)にはhet、同性間行為(homosexual)にはhomなど)。このような略称がすぐに採用されたことを見ると、これらは以前から用いられていたものであったのかもしれない。alt.sex.storiesには、1993年4月という、かなり古い日付の投稿小説で、件名部分にストーリー・コードが付いている。 1990年3月、調整役が付いた官能小説サイトが(レクリエーションを表す)rec階層に設立された。rec.arts.erotica (r.a.e)である。投稿された官能小説を調整役の人物や委員会へ送り、彼らが作品を選別するというのが、その設立の趣旨であった。しかし、rec.arts.eroticaは現在もニューズグループとして残っているものの、その活動は非常に低調であり、alt.sexの階層のように「飛躍的な伸び」を見せることはなかった。その理由の一つは、調整役にとって作品の選別作業が過重であったことが明らかであるし、また、質が低いと判断される作品を排除しようとする気持ちがrec.arts.eroticaにあったことも理由と言える。そのような状況は、alt.sex.storiesの登場で変わるのである。 1992年5月、ニューズグループalt.sex.stories(a.s.s)が設立された。セックスにまつわる議論ではなく、小説投稿に特化したグループとして設立されたのだった。ほぼ同じ時期に、セックス小説やそれに関連した話題について議論する目的で、alt.sex.stories.dが設立された。また、望まぬ広告や誘導である、いわゆる「スパム」なるものが急増したことを受けて、1996年から7年にかけて、alt.sex.stories.moderated (a.s.s.m)も設立された。alt.sex.stories.moderatedも、rec.arts.erotica同様、作品が前もって調整役に選別される形式であった(当初は、最初の真の調整役であるEli the Bearded( 参考)が行っていて、後に、チーム編成になった)。だが、alt.sex.stories.moderatedでは、作品の「質」による選別は行わなかった。それは読者に任せたのである。スパム以外ならどんなものも許容された。したがって、少なくとも仮説上は、セックスにまったく関係のない小説も可能とされていたのである。1997年、これに関連したウェブサイトである Alt.Sex.Stories.Text.Repository (asstr.org)が立ち上げられた。この時点から、セックス小説専門のウェブサイトが、広範囲に登場し始める。(広告で収入を得るサイトもあったが)その大半は無料サイトであった。ただし、購読料を取るEジン(ezines、ネットマガジン)も徐々に増えつつある。
中に入り、奥のテーブルに座ると、ウェイターがやってきて、注文を取った。 「ボストン・クリーム・パイを」 そう言うと、ウェイターは向きを変え、マネジャーのオフィスへ入っていった。俺はどんなテストがあるのだろうと考えながら待つった。ウェイターは戻ってきて、「ケイトさんがお会いになるそうです」と言った。 俺は立ち上がり、ウェイターについてケイトのオフィスに入った。中に入るとウェイターはドアを閉めて立ち去った。 ドキドキしながら立っていると、ケイトはデスクの前の椅子に座るよう手招きし、タバコから長々と時間をかけて一服吸った。 「テストに通ったら、入会を認めるわ」 そう言って、また一服吸い、その後、灰皿にタバコを押しつけて消した。 ケイトは立ち上がった。ラテックス以外の服を着た彼女を見るのは初めてだった。頭からつま先まで、ケイトの姿をじろじろ見ていた。生唾を飲み込む音が彼女に聞かれたかもしれない。 デスクの横を回って歩いてくる。赤のミニスカートだが、腰の部分をぴっちりと包んでいる。前と違いストッキングはなくなっていた。だがセクシーなパンプスのハイヒールは変わらない。上は、布きれ1枚だけと言ってもよくて、白い布きれで体を包み、たわわな胸の前で結びつけただけだ。 「テストの準備はできてる?」 そう言いながら俺に手を差し伸べ、俺の指に指を絡めた。 俺は立ち上がり、この美女に導かれて、クラブに通じるドアへと向かった。ドアを過ぎ、らせん階段を降りていく。昨日、ケイトは「いつも完全にコントロールを保つこと」が重要と言っていた。だから、どんなことを求められても、それを行おうと心に決めた。このクラブ、加入する前にはじき出されるのだけは避けたい。 階段を降り、ステージの方向へ歩いた。ステージに上がるところに3段ほどステップがあるのだが、そこを上がるとき、ケイトは俺の手をぎゅっぎゅっと握り締めていた。 ステージに上がり、その中央に立ってじっとしているように言われた。指示されたとおりにした。ケイトはちょっと引きさがり、俺を見ながらゆっくりと俺の周りを歩き始めた。一周した後、また俺の前に立った。 それから、またゆっくりと歩き始め、俺の真後ろに来たところで立ち止まった。 「ここで待っているのよ」 ケイトはそう囁いて、ステージから降りて行った。 突然、音楽が鳴り始めた。低音の振動で俺の身体もステージ全体もブルブル振動した。決して大音量ではないのだが、特殊な低音のためブルブル震える。 ちょうどその時、スポットライトがつき、俺を照らした。眼が慣れるまで1、2分かかった。コツ、コツ、コツとケイトのハイヒールの音が背後に聞こえた。俺の後ろに来ている。俺たちを照らしているスポットライトが、ぐるぐると円を描くような動きを始めた。ケイトが両腕を俺の脇から差し込み、俺の腹を包むのを感じた。どうやら、テストというのはこのタイプのテストだったのかと、その時になって俺は理解した。 背中にケイトの身体を感じる。首筋から頬にかけて彼女の温かい呼気を感じ、その後、後ろから優しく頬にキスをされた。実に繊細で官能的なキスだ。俺の首筋に沿って、唇を這わせ、舌でちろちろと舐め回る。キスをしながら両手は俺の胸を上下にさすり始めた。さらには、唇で耳を挟み、はぐはぐと食べるような愛撫を始めた。背筋がビリビリと痺れる。 「このテストに合格したら、全権利付きのメンバーにしてあげるわ」 ケイトはそう言いながら、俺の耳穴に舌先を差し入れた。 俺はうめき声を上げることしかできなかった。
もちろん、私は最初から金曜の午後にクリーブランドに行くつもりでいた。姉をこんなにまでのぼせ上がらせた模範的男性とはいったいどんな人なのか、どうしても会う必要がある。 正直、私も彼にのぼせ上がっていた。立て続けに二晩も、私はディ・ディと電話した後、自分で身体の火照りを鎮めなければならなかった。話しからすると、とてもセクシーな人のようだ。アンドリュー・アドキンズという名前に、早く、その持ち主の顔をつけたい。それが待ちきれない気持ちになっていた。 クリーブランド行きの飛行機は問題なく取れた。5時にはホテルに入っていて、ディアドラを待ちながらテレビのニュースを見ていた。ディ・ディは、私を見て、とても興奮した。 「来てくれて、ほんとにありがとう。来れないんじゃないかってすごく心配したの。もう、これ以上、待てなかったわ、ドニー。どんどん自分ではどうしようもなくなってきてて」 私は冷静に振舞おうとしたけれど、ディ・ディの興奮は伝染性がある。 「どういう手はずになってるの? 今夜、その人と会うことになってるの?」 ディ・ディは頷いた。 「彼、7時にここに来るわ。その時までに準備を整えなくちゃ! 私は、ここで彼に事情を打ち明けるのが良いと思ってるの。少なくとも、私たちが双子だと言うのは打ち明けようと。それで、打ち解けあった雰囲気になると思うのね。その後、3人でディナーに行く予定。そうして、彼とあなたが、もっと良く分かり合えるようになるはず。それで、大丈夫だなって感触が得られたら、進行次第だけど、彼にもっと話しても良いと思うの。臨機応変に対処する必要があるわ」 私は懐疑的だった。 「今夜は、その人も含めて全員にとって、とても長くて、気まずい夜になりそうだわ。そういうことになったとして、そのアンドリューって人、どう思うだろうと考えているの?」 「正直、分からないわ、ドニー。彼はものすごく情熱的なの。私がこれまで出会ったどんな男についても全身に持っていた情熱の量よりも多い量を、彼の場合、小指1本に持っているのよ。それに、前にも言ったけど、彼、私のことを抑えきれないほど魅力的だと感じているの。だから、ひょっとすると、運がよければ、あなたのことも抑えきれないほど魅力的だと思うかもしれないわ。もし、そうなったら、私とあなたで、彼のことをこの世で一番幸せな男にしてあげるか、私たちからおあずけを喰らって完全に発狂状態にさせるかの、どちらかになるわね」 それは、両極端な選択肢だ。私の個人的な意見はと言うと、彼は私たち二人を見た途端、一気に逃げ出すだろうということだった。 時間が押し迫っていた。私は、半日、仕事をして、その後、飛行機に乗ってきたのでひどい状態だったので、私が先にバスルームを使うことにした。シャワーを浴び、ローブを羽織って、お化粧を始めた。 バスルームを出るとすぐに、ディ・ディが入り、シャワーを浴び始めた。彼女がシャワーを使い始めた途端、ドアをノックする音が聞こえた。 6時45分だった。彼はまだここに来てないはず。でも、彼なのかも。大変! 私はほとんど裸同然の格好でいる。少なくともお化粧をしなければ。もう、頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。足から力が抜けていく感じ。それに、ドアの向こうにいる人が彼かもしれないと思っただけなのに、あそこが濡れ始めているのも感じた。どうしたらよい? 私は思い切ってドアを開けた。 彼だった! まあ、素敵な人! ディ・ディは、こんなに素敵な人だって言ってなかったわ。あの眼! 彼の瞳を見た。私の魂まで見ているような瞳。自分の身体の中、いろんな感情が沸騰してくる。溜息しか出ない。こんばんはと言うチャンスがなかった。自己紹介するチャンスもなかった。 彼が部屋に入ってきて、次の瞬間、何が起きたか分からなかった。彼の両腕の中にいた。キスされている! 彼の唇は魔法のよう。私はすっかり燃え上がっていた。それでも彼を止めようとした。 気がつくと、素っ裸のまま、初めて会った男の人に抱かれて立っていた。いつの間にかローブが脱げていた。 あの長くて力強い腕で軽々と抱え上げられ、ベッドへと運ばれた。ベッドに降ろされた。やめるように言おうとしたけど、言葉が唇から出るまでに、どこかで消えてしまう。頭を左右に振っていたのは分かる。必死で彼を止めようとしていたのは覚えている。
レオンが、ズボンの腰紐を解くため、イサベラの手首を離した。イサベラは、その束の間の機会を使って、両足を引き寄せ、レオンの肩に両膝を当て、思い切り押し返した。 イサベラの力など、レオンのに比べたら取るに足らないものであり、普通なら、これも無駄なあがきになったはずだった。しかし、この時、レオンはイサベラの抵抗を予期していなかった。 身体が離れた隙に、イサベラは素早く身体を反転し、うつぶせになり、レオンが反応する前に両手を床について身体を起こそうとした。 レオンの腕が、彼女の太ももの間に、蛇のように伸びてきて、股間の柔らかい肉肌を掴んだ。 「いやっ!」 そこをつかまれたまま、レオンの方へと引き戻される。うつ伏せになった身体が引きずられ、床の敷物に身体が擦られる。 イサベラは、股間に手を伸ばし、そこを握るレオンの手にかぶせた。秘所をわしづかみにしている手を解こうと、彼の指を1本1本外そうとした。 レオンのもう一方の腕が伸びてきて、鋼鉄の万力のようにイサベラの腰をがっちりと掴んだ。 「あなたを恨みます」 レオンからもがき逃れようとしながらイサベラは叫んだ。しかし、レオンは、その悪あがきを嘲笑するだけだった。 「本気なのかな?」 イサベラを引き戻し、レオンは彼女の耳元にからかうように囁いた。 レオンの腰の上に乗せられたイサベラは、自分がもがき抵抗したせいで、望まぬ効果を彼に与えてしまったことを感じ、身を強張らせた。 「あなたは・・・あなたはけだものよ!」 そう呟きながら、レオンの太ももを思い切りつねった。だが、もちろん、レオンはたじろぐことすらなかった。 「ちっ! ちっ! 俺の可愛いイサベラは、そのおしとやかな外見の下に、激しい気性を隠しているようだ」 太い指が1本、湿り気を帯びた入り口を探り始めたのを感じ、イサベラはハッと息を呑んだ。 「レオン・・・」 指が中に滑り込んでくる。もう一方の手はイサベラの身体をしっかりレオンの下腹部へ押さえつけたまま、彼女の腹の柔肌を擦り、愛撫した。 「ううぅぅぅ・・・」 間もなく、レオンの指はイサベラの中に出たり入ったりを始めた。その動きは、指とそれを締め付ける彼女の女陰との間に甘美な摩擦を生み、イサベラは否応なくレオンの下腹部の上で身体をくねらせてしまうのだった。 「こんな時ですら、お前の身体は俺に犯して欲しいと願っているようだ」 レオンはそう言って、背後からイサベラのこめかみにキスをした。 「だが、俺は待つこともできるのだ」 と、レオンは指を引き抜いた。 「え?」 レオンは優しくイサベラの身体を床の敷物に降ろし、立ち上がった。イサベラは、激しく身体を動かしたためか、全身の肌が紅潮し薄く汗に覆われていた。困惑した顔でレオンを見上げ、溜息混じりに言った。 「ど、どうして?」 「俺は、お前が自分の意思で俺のもとに来るようになるまで、待つことにする」 イサベラは、息を呑んだ。そのレオンの声はかすれ、かつ、重々しい様子を帯び、その背後にある真剣な心情に満ちていた。 これまでイサベラはレオンの強引な性格は見知っていた。私の無垢の身体を、激しい性的欲望に無理やり従わせた時の、あの強引さ、激しい感情、そして支配欲。だが、彼のこういった側面は初めて見たのだった。火をつけられたままの欲望で理性が眩惑していたものの、イサベラは、レオンに対する印象がどこか変わったのを悟った。彼は、いまだにその眼が欲望で燃えているものの、どこか前より柔和に、獰猛さがより薄くなったように見える。
≪前ページ | HOME |
|