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裏切り 第4章 (11) 


***

チャンタルが言った言葉が耳に響いていた。

「……あなたが必要なのは時間じゃないと思うわ。あなたに必要なのは、一度みっちりセックスされること。それもできるだけ大きなペニスに。ダイアナじゃダメよ。ちゃんとした男にヤラレルことが必要……」

一度、男としての自我を完全にぬぐい去り、心から女になってみなければいけないのかもしれない…。

……彼のことを無視できなかった。背が高く、魅力的で、ギリシャの神のような体つきをしている。彼は、私がこの店に入ってきてからずっとこっちを見続けていた。それにこちらが視線を合わせても、目を背けない、そういった視線の一つ。

少し前、私は笑顔になって、彼にウインクを送った。彼がそれを誘いと受け取ったのは明らかだった。彼が近づいてくると、ダイアナはかなり必死に彼の関心を自分に惹きつけようとしたが、彼はまったく関心を示さなかった。まっすぐに私が座るスツールに近寄ってきて、話しかけてきた。その後は連鎖反応的に…。

「さっきから迷っていたんだが…」 と彼は言葉を考えながら言いだした。「…どうしたら、君のような子をどこか…どこか二人っきりになれるところに連れ出せるんだろう? 僕はもっと君のことを知りたいと思ってるんだが…」

どうする? 逃げるなら今よ!

「というと、どんなことを?」 と私は訊いた。

彼は注意深く私のあごを親指と人差し指で押さえ、顔を近づけてきて、耳にじかに囁きかけてきた。

「君は、とても美しい唇をしている…」 と優しく私の唇の輪郭をもう一方の手の人差し指でなぞった。口紅が乱れないように注意しながら。「…君のその美しい唇で、肉汁たっぷりの美味しいソーセージを食べてもらうには、どのくらい払えば良いのか迷っているんだが…」

明瞭で、簡潔で、ポイントを押さえている。

すでに2時間近く、ダイアナがそういう要求の数々をさばいているのを聞いてきていた。彼女は法外な金額を言って、単に娼婦と遊ぶ妄想を楽しむだけで、実際にコトに及ぶつもりがない男たちを選び、排除していた。本気のプレーヤーは交渉するものであり、高めの直球にひるんだりしない。

「あなたからその話しが出てくるなんて、可笑しい。…私も、今夜はずっとソーセージ・サンドを食べたいと思っていたのよ。私、この近くに、美味しいソーセージ料理を出しているこじんまりとした静かな場所を知ってるわ。…値段は確か75ドルで」

「75ドル?」 と彼はわざと驚いた声を出した。「さぞかし美味しいんだろうな」

「あなたの名前は?」

「ダニエル」

私は息を深く吸って、乳房を見せつけるようにして胸を張り、それから意味ありげに舌舐めずりして見せた。

「本当に? ダニエル?」 呼吸が乱れているのを感じた。「…その値段の価値があると思ってるの?」

彼は改めて私の品定めをし、そしてにっこりと笑った。

「ああ、もちろん。本気でその価値があると思うよ。どこへ行けばいいのかな?」

ダイアナのおかげで、どう答えたらよいか分かっていた。

「まずはおとなしく元のテーブルに戻ること。あなたがそうしたら、すぐに私はこの店を出るわ。一緒に店を出るのを見られるのは、あまり良くないでしょう? 私が出てから10分待って、それから、隣のオフィス・ビルに来て。そこの2-17のブザーを押して、名前を告げて、リサを呼び出すの。そうしたら私がブザーであなたを中に入れるわ。忘れないで。ソーセージ・スペシャルは前金で75ドル。例外なし。分かった?」

「ああ、分かった。了解!」

ダニエルが自分のテーブルに戻って行くのを見ながら、ダイアナに、はにかんだ笑みを見せた。彼女の気持ちを読み取るのは難しかった。

「この子ったら、本当に、本当に成長が早いんだから…」 予想に反して、どこかよそよそしい声でダイアナが言った。

「…たった2時間ほど前までヨチヨチ歩きだったのに、今はもう、男と初めてのデートに行こうとしてる。私が教えたことすべて忘れずに、逞しい男の子と遊んでらっしゃい。ここの持ち主のジムが私たちが使える部屋を用意しているわ。彼はこのクラブだけでなく、このビル全体を所有しているの。前に話したように、彼に忘れずチップをあげること。彼に、ちゃんとフェアに優しく接してあげたら、彼はあなたの一番のファンになるはずよ。さあ、行ってらっしゃい。それからちゃんとコンドームをつけるのよ」

「彼にはフェラをしてあげるだけよ。本番はしないから」

「とにかくコンドームをつけた方がいいわよ」 ダイアナは強情だった。「後で私に感謝すると思うわ」


[2012/02/15] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

誰とやったか知ってるぜ 第7章 (13) 

ふたりでデッキに上がり、引き戸を通って家の中に戻った。ロースト・ビーフの香りを嗅ぎながら、トリスタの母親のそばを通り過ぎた。

「トリスタ? ワインを2本持ってきて」 と彼女の母親はオーブンを開けて料理をチェックしながら言った。

「オーケー、お母さん」 とトリスタは返事し、俺の方を向いて微笑んだ。

「じゃあ、地下室のワインセラーに案内するわね」 と彼女は地下室に通じるドアを開けた。

照明のスイッチを入れ、階段を降りて行く。一緒に降りながら、トリスタの素晴らしい身体から目が離せなず、かなり困った。

「そっちは家族がくつろぐ部屋ね」 と彼女はリビング・ルームを指差した。大画面のテレビが置いてあった。

「うわー、すごいテレビだね」 60インチはありそうなテレビだった。

「お父さんはアメフトが好きなの。だから去年これを買ったのよ」 と彼女は先に進んだ。

「それで、こちらは洗濯する部屋」 と小さな部屋を指差した。洗濯機と乾燥機が置いてあった。

地下室の奥に進むにつれて暗くなっているので、俺はトリスタに身体を寄せるようにして後をついて行った。トリスタは奥のドアのドアノブを回し、引っぱった。古いドアで、開くとき、ギィーっと音が鳴った。

「ここがお父さんの仕事部屋」 

顔を出して中を覗きこんだが、トリスタはすぐに閉めてしまい、その代わりに別のドアのところに俺を案内した。

そこを開けると、先には狭い通路があった。通路の壁に下がっている教会風のガラスに入ったろうそくが灯っていたが、それ以外は照明がなく、薄暗かった。

「ここを通ってワインセラーに行くのよ」 と彼女はさらに別のドアを開けた。

冷たく湿った部屋で、その中に入るとすぐにトリスタはドアを閉めた。ここも、灯りと言えば、ワイン棚の上の壁に下がってるろうそくだけ。正直、俺は驚いていた。四角い部屋のどの壁面もワイン棚になっていて、びっしりワインが並んでいる。

「ワインを痛めないように灯りはつけないの」 とトリスタは部屋の中央にある小さなテーブルへと進んだ。

「お父さんは、世界中からこのワインを取り寄せて集めているのよ」 と部屋を見回す俺を見ながら言った。

「いったい何本あるんだろう? 信じられないや」 と暗闇に目が慣れてくるのを感じながら言った。

「とても古いワインも数本あって、とても珍しいのもあるのよ」 トリスタはそう言いながら俺の後ろに近づいてきて、後ろから俺を抱きしめた。

彼女が俺の背中に顔を当てているのを感じた。両手が俺の腹の周りを擦っている。だが、「はぁー」と小さな溜息が聞こえたかと思ったら、彼女はまたも俺から離れ、引き下がった。

「私、ここから時々ワインを盗んでるの」 

そう言いながらトリスタは部屋の隅にある箱のところに行った。そしてちょっと前屈みになり、中からワインを2本取り出した。それをテーブルに持ってくる。俺も一緒にテーブルに近づき、そこで彼女を抱きしめた。

「お父さんは、時々、ワインが消えてるのを全然知らないの」 と彼女はちょっと背伸びをし、俺に優しくキスをした。

「あのドアはどこに通じているの?」 と俺は部屋の奥の古いドアを指差した。

彼女は振り向いて、ちょっと見て呟いた。「教会に通じてるわ」

俺は、どういうこと? と問うような顔で彼女を見た。

「あのドアの先は地中のトンネルになっていて、礼拝堂の地下室に通じているの。レイチェルの家は、教会の反対側にあるんだけど、うちとまったく同じ作りになっているわ。だから、私がレイチェルの家に行くときは、わざわざ外に出る必要もないのよ」 と彼女は俺の方に向き直りながら言った。


[2012/02/15] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)