「ライジング・サン&モーニング・カーム」 第4章 The Rising Sun & The Morning Calm Ch. 04 byvinkb
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これまでのあらすじ
1587年、釜山。地元の娘ジウンは日本から来た偵察のノボルと知り合い、ふたりは結ばれた。しかし翌朝、ノボルの弟三郎たちにジウンは強姦され、彼女は自害した。ノボルは怒りに兵を殺すが拘束され、秀吉に不死の刑を科される。ある山奥でノボルは狐使いの美女と交わり、その結果、自分が人間ではなくなるのを見つつ意識を失った。時代は変わり現代。シカゴ。女医のアンジェラはたまたま入ったレストランで不思議な魅力があるノブ(ノボル)と知り合い、デートに誘われた。
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こんなにドキドキするのはしばらくなかったわ…。
そう思いながらアンジェラはノブの家のドアをノックした。両手でスカートを軽く払った。猫の毛がスカートのマット・ジャージ(
参考)の生地にしつこくくっついているのを見て、顔をしかめた。…あ、そうだ。彼に猫アレルギーかどうか訊くのを忘れていたわ。
だが、アンジェラが困った顔をする前に、ドアが開き、ノブが歓迎の表情をして彼女を迎えた。アンジェラは、一時ではあったが、この時も彼の眼の色に驚き茫然としてしまった。
「あっ、こんばんは」 ふと気がついて、彼女は思わず甲高い声になっていた。
ノブは横によけ、彼女に中に入るよう手招きした。
「オハイリナサイ[原文Okari nasai]…」 温かい声で言う。「その意味は…」
「ようこそ、ね」 とアンジェラが代わりに答えた。
アンジェラは、今度は彼が驚く顔をする番になったことを喜び、もう一手、攻めることにした。「シツレイシマス[Shistore-shimase]」
「どうして日本語を知ってるのですか?」 とノブは驚いた顔で彼女を見た。
アンジェラは、彼の驚きを面白がりながら、笑い出すのをこらえた。
「さっき言ったでしょう? 私は黒澤映画をたくさん見ているの。アニメも。あ、それからゲームもたくさんするわ」
そう言って、ちょっと黙り、ハイヒールを脱ぐために腰をかがめた。アンジェラはノブの視線を感じた。
「キレイデス[Kirei-desho]」 と彼は褒め、うっとりするような眼でアンジェラを見た。
「ドモ[Domo]、ノブさん」
彼女はノブにそう言われて、ドキドキするのを感じた。そして、落ち着きを取り戻そうと、彼のコンドミニアムの中を見回した。広いスペースで二層になっている。床から天井までの大きな窓があり、ミシガン湖とミレニアム・パーク(
参考)の素晴らしい眺めを提供している。
部屋は趣味がよく、ミニマリスト的(
参考)日本風装飾がなされていた。注文で作らせたと思われる大理石製の滝があり、そこからの柔らかな音のおかげで、部屋の雰囲気がとても癒される。
アンジェラはこの部屋に招かれ、とても特別扱いされている感じがした。
「お天気のいい日には、ここからの眺めはさぞかし素晴らしいでしょうね」
「ええ、とても美しいですよ」 とノブは彼女を見つめたまま返事した。「是非、もっと天気の良い日にも来てください。ご自分で見てみるといいですよ」