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ジャッキー 第10章 (6) 


アンナは僕の前に進み、僕はその後に続いた。彼女は、過剰に腰を振りながら歩いていた。意識的に腰を振っているようにすら見えた。僕には、アンナは実にいいお尻の形をしていると思われたし、その長い脚も相まって、後ろをついて行く僕には素晴らしい眺めだった。

皮製品のコーナーを過ぎ、多数のメイド服が置いてあるコーナーへと入った。アンナは、そこで止まり、僕の方を振りむいた。

「御覧の通り、うちにはメイド服を多数セレクトしてあります。それで、あなたの…、あ、いや、あなたのガールフレンドの服のサイズをお教えいただけますか?」

「ええ、彼女はたいていの服ではサイズ5を着てるんです」 もちろん、そのサイズは僕の服のサイズだった。

アンナは笑顔で言った。「ということは、あなたと同じサイズなんですか?」 

僕は頷いた。

「何か特別なスタイルのものをお探しなのでしょうか? それともバレンタインデーのためのものでしょうか?」

「バレンタインデーのためです。彼女はたぶんその日限りで、後は着ないと思うから」

「まあ、お優しいのね。たまたま、バレンタインデーにぴったりの可愛い服が入ったところなんですよ」

アンナは、コスチュームの棚を探し、中から一着、取りだした。

「これです。それにサイズも、ちょうどお求めのサイズ5」

そのメイド服は、さくらんぼ色のサテンでできていた。白いレース製のハート形のエプロンがついている。襟の周りと短い袖のそで口にレース飾りがついていた。スカートはミニというより、マイクロと言ったほうが正確で、スカートの中には固いクリノリン(参考)が数層、備わっている。とてもセクシーそうに見え、僕はただちにそれを買うと伝えた。

アンナはまた笑顔になった。

「お好きになると思っていましたわ。では、ちょっと試着してみませんか? あ、そうでした。ごめんなさい、あなたのガールフレンドのためのものでしたね? うちには、ご自分のために可愛い服を買っていかれる男性のお客様もたくさんいらっしゃるものですから、つい。ごめんなさいね。うちが異性装関係を扱っているのを、ご存じでしょう?」

「それは聞いたことがあります。でも僕はそれとは違いますから」 と言ったものの、アンナはこのメイド服は僕のためのものとすでに知っているような気がしてきていた。

彼女は訳を知ってるような笑みを浮かべた。

「もちろん、お客様は違いますわよね」

そしてメイド服を見て続けた。「私なら、福に125ドル払う前に、一度試着してみたいと言うと思いますわ。だって、バレンタインデーのサプライズとして用意したのに、全然似合わなかったら最悪ですもの。そうなったら、せっかくのバレンタインデーが台無しになってしまうと思いませんか?」

もちろんアンナが言うことは正しかった。家に持ち帰った後になって、服が似合わず、アンジーを驚かすことができないとなったら困る。どうして、ギリギリの前日まで先延ばししてしまったのだろうと、自分を罵った。もう数日前にこの店に来ていたら、家に持ち帰って試着し、似合うかどうか試せたのに。もちろん、そのことはアンナには話さなかった。

アンナは、まるでたった今、思いついたかのように、こう言った。

「どうやらあなたとあなたのガールフレンドは全く同じサイズのように思いますわ。うちにはたくさん男性客もいらっしゃいますので、私はそのサイズ調節がとても得意なんです。あなたとあなたのガールフレンドは、同じ服を着れると思いますよ。たとえば、ガールフレンドさんのジーンズを自分のジーンズ代わりに履いたこととかありませんか?」

僕は、メイド服を試着する方法として、彼女のアイデアに飛びついた。「ええ、何度かあります」

アンナは再び満面の笑顔になった。「それなら、サイズ的には合うかどうか確かめられますわよ」

僕が頷いた。

「良かった。では、そのメイド服を試着室に持って行って、試着してみてください。ちゃんと合うようでしたら、お客様のガールフレンドにも合うこと、請け合いです」

「どうかなあ…。誰かに見られたらどうなるの?」 と不安げな声で訊いた。だけど、内心では、ぜひアンナが言うとおりに試着してみたいと思っていた。

アンナは服を僕に渡しながら言った。「ぜひ、試着してみください。もっと言えば、試着していただくまでは、売るつもりはございませんから」

僕がコスチュームを受け取ると、アンナは僕の背中を押すようにして試着室に連れて行った。


[2012/02/25] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)