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A long day 「大変な一日」 

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56_a long day  「大変な一日」

溜息をつきながら、フェアウェイの真ん中を歩く。今日は、朝からいやらしいクラブのメンバーたちに体をまさぐられたり、じろじろ見られたり、いじめられたりで大変な一日だった。夜はもっと侮辱されたり下品な真似をさせられたりするのは確実。これがあたしの毎日だ。

あたしは作り笑いをした。明るくハッピーなホステスじゃない顔をして見せても、何の役にも立たない。この役を演じるほか、あたしには道がない。

ニコニコと作り笑いを顔に浮かべながら、とうとう、目的地である第6ホールに着いた。ここであたしは服を脱ぎ捨てる。そういう段取りだから。その振る舞いがいかに品位を落とすことであっても、あたしは、あるメンバーの要求を拒むことはできない。最初に宣告された時から、それは知っていた。

こんな懲罰を受けると知っていたら、決して、昔の友人や仲間や相棒たちに詐欺を働いたりしなかっただろう。悲しいことに、あたしは、どんな結果になるか考えもせず行動してしまった。そして、予想されるように、あたしは秘密の計画で不正手段で手に入れた売上金を持ち逃げする前に捕まってしまったのだった。

もちろん、彼らは激怒した。あたしは、連中の信頼を勝ち取ったうえで、後にそれを利用したのだ。そのような行動は罰を受けずに済むわけがない。とはいえ、あたしは、最悪のケースでも、横領くらいの罪で短期間投獄されるくらいだろうと思っていた。それはとんでもない勘違いだった。

連中に殺されなかっただけでも自分は運が良かったと思うべきなのかもしれない。連中なら、あたしを殺すこともできたはずだし、それを誰にも知られずにしたことだろう。あの人たちなら、いとも簡単にそういう隠ぺいができただろうと確信している。だが、事情が何であれ、彼らにはそんな隠ぺいは不必要だった。

クラブのメンバーに遺伝子工学会社の設立者がいた。その人があたしを女体化する手段を提供したのだった。どうして、あたしを完全に女性にせずに、中途半端なモノを残してしまったのか、それはあたしには分からない。おそらく、そうすることであたしの恥辱のレベルを増すのが目的だろう。あるいは、科学的に不可能だったのかも。いまとなっては、それはどうでもよい。ダメージは与えられたわけで、あたしは自分の役割を担わされているわけだから。

この懲罰がいつまで続くのか分からない。願うのは、彼らがいつの日かこのゲームに飽きて、あたしを解放する日が来ることだけ。昔の生活を取り戻すことはできない。新しく何かを建設的に始めることができるよう、あたしを完全に自由にしてくれる日が来ること。それだけが今の願い。

多分、本当に多分だけど、その時が来たら、こっちが復讐に取り掛かることができる。


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Window dressing 「外見上の装飾」 

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64_Window dressing 「外見上の装飾」

人があたしの体のことをバカにするのを耳にする。あたしに面と向って何か言う人はいないけれど、侮辱はいつも向けられているのは知っている。肥満の女性でいることには、そういうことが当然のように付きまとってくる。

それよりも頻繁に、あたしは人があたしを扱う態度の違いに気づかされてきた。あからさまにイヤらしい態度をされたりはしないけれど、あたしが痩せていた時は、部屋に入ると、単なる無関心とは明確に異なる反応をされたものだった。当時、あたしは注目の的だった。みんなの世界の中心になっていた。そして、そんな自分があたしは好きだった。

それにあたしは、そういうふうに注目の的になることが当然とみなしていた。あの感じ……あの感じを味わえるなら、何でも差し出してしまうのに。

鏡の前に立ち、裸の姿を見る。だぶついた肉が見える。たるみのしわも見える。そして、この脂肪の塊。あたしは、この鏡に映っている怪物じゃないのよ、本当は。でも、みんなに、あたしは理想的な体をしていると納得させることはできないわね(デブ専の人になら別だろうけど)。

でも、あたしは幸せ。満足している。どうしてか、分かる? あたしが見ずに済んでることがあるから幸せなの。人があたしを見て、太った女性を見るから幸せなの。人が、あたしを見て、女の子のふりをしている太った男を見るわけじゃないから幸せなの。男性性の最後の部分のところにほとんど気が付かないから幸せなの。

結局は、あたしは自分が女性であるから幸せだと言える。それ以外の点は、ただの外見上の装飾にすぎない、と。


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Utopia 「ユートピア」 

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64_Utopia 「ユートピア」
「自分が本当に家に帰りたいと思っているのか分からない」とキンバリーが言った。今は、ボクたちが現実の世界に帰る予定の前夜。ボクは彼女が後ろにいて、ボクの裸のお尻を見ているのかを、振り返って確かめる必要はなかった。彼女の瞳に浮かぶ欲望の表情を想像するまでもなかった。彼女のあの飢えた表情を想像する必要もない。このバケーションの間、ボクは彼女のあの表情を数えきれないほど見てきたから。

「男女逆転のユートピア」という宣伝文句に乗せられて、ボクたちはこの旅行を予約した。一種のジョークだと思っていた。妻を逞しい男性と思い、ボクを女性と思うなんて、バカバカしいことのように思えた。正直、ボクはウィッグをかぶり、ドレスに身を包み、ちゃらちゃらと歩き回り、一方、妻は偽の口ひげをつけて堂々と振る舞うと、そんなことだろうと予想していた。ふたりで大笑いして終わるだろうと予想していた。

だけど、驚いたことに、この地に到着してすぐに、ボクたちは別々のプログラムに送り込まれたのだった。そのプログラムは、表面的には「トレーニング」と称されていて、このリゾート地への滞在期間の半分も続くプログラムだった。その時点でも、ボクは、ちょっと化粧のレッスンを受けることとか、そんなところだろうと思っていた。こんな大きな勘違いはそうあるものではない。

トレーニングそれ自体、厳しく、震えだすほど効果的なものだった。1週間のうちに、ボクは、歩き方も話し方も、生まれてからずっとスカートを履いてきた人のようになっていた。彼らがどのようにして、このような変化を、これほど急速にもたらすことができたのか、ボクには分からない。だけど、トレーニング期間が終わるころには、ボクは、自分を無理に強いてすら、以前のボクのように振る舞うことがほとんどできなくなっていた。

大きな変化と思う部分は、鏡を見ると、それまでいつも見てきた自分という男の姿がすっかり消えていることにあった。本当に、男の姿が消えていたのである。ウィッグによる繊細なヘアスタイルとエキスパートの手によるお化粧のおかげで、ほとんど、自分とは思えない姿が鏡の中に映っていた。だけど、本当の魔法と言える部分は、彼らがどういう方法でか、ボクの体の線をすっかり変えていたことだった。どうやってそれを実現したのかボクには分からない。だけど、最初の1週間を過ぎたころには、ボクはまさに砂時計のプロポーションに近い体つきになっていた。

そして、その自分の姿が、とても素敵だったのである。本当に魅力的な体になっていた。そして、その体を見ながら、ボクは、1度ならず、この世界での自分の位置付けについて疑問に思ったのだった。これまでの人生、ボクは長年、嘘の人生を生きてきたのではないか? 本当は、ボクは、これまで生きてきた人生とは異なる人生のために生きる運命にあるのではないか? ボクがこんなに簡単に変身を遂げたということは、何か特別な意味を持っているのではないか?

ようやくキンバリーと再会し、ボクは彼女の変身はボクのに比べて微妙と言えるものだったけれど、それでも、同じ程度の効果を持っていることに気づいた。彼女は、ボクが恋に落ちた、あのキュートで内気な本の虫の女の子ではなくなっていた。もっと力強くなったように見えた。自信に溢れている。どことなしか肩幅が広がり、顔つきも角ばっているように見えた。妻の新しい外見が信じられないほど魅力的に映ったことを、ボクは否定できなかった。

新しい自分たちのことについて、互いに知り合うようになるにつれて、ボクはこの変化が純粋に外見的なものにはとどまらないことを知った。妻はためらわずに場を仕切るようになったし、ボクは彼女のリードに従うことしか考えないようになっていた。そして、ボクたちはふたりが借りたスイート・ルームに戻ったのだが、そこでさらに多くの変化が待ち構えていることを知ったのだった。

バスルームから出てきた妻の姿を初めて見たとき、ボクはこれから何が起きるかはっきりと自覚したのだった。彼女の股間にはストラップオンが隆々とそびえ立っていた。そして、ボク自身、それを見て、それが欲しくなったのだった。もちろん、痛みはあった。それまで、そういうことをするなど、ボクたちは考えたことすらなかったわけで、経験がなかったのだから当然だった。しかし、この時、ボクの方が彼女にハンマーのように打ち込むなどということは、明らかに間違ったことのように思えていた。それとは対照的に、自分が彼女にストラップオンを叩きつけられることの方が、この上なく、正しいことと思えていた。

そして、そんな調子で、その週はすぎていった。ふたりともそれぞれの役割に馴染んでいた。そして、ふたりともそれまでの人生で最高の時間を過ごしたとボクは間違いなく言える。

「分かってるわ」とボクは振り向かずに言った。

「帰らなかったらどうなる?」と彼女は訊いた。「つまり、女として生きることをやめたら。それは不可能。だけど、もし、昔の自分たちに戻らないとしたら? このままの関係でいたとしたら? あなたは私の妻になり、私はあなたの夫になる」

「そうしたいの?」 とボクは訊いた。彼女に何て答えてほしいか、自分では知っていた。

「ああ」

ボクは笑顔で振り返った。「あたしもよ。これまでの人生で、こんなに、そうしたいと思ったことはないわ、あなた」


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Unwarranted hesitation 「意味のない躊躇」 

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64_Unwarranted hesitation 「意味のない躊躇」

「わーお、ジェイミー。これって……俺……わーお!」

「その『わーお』って、良いわーおと悪いわーおの、どっちだよ? バカみたいに見えるだろ? ほんと、バカだよ。分かってるんだ。だから、中止にしようよ。いいだろ? こんなこと、もうこれ以上、やりたくないよ。ほんと、バカだとしか……」

「ジェイミー、確実に良い意味の『わーお』だよ。お前、すごいよ。本当にお前だって分からないよ。それに、その姿を見たら、俺、100万年かかってもお前が…その、何と言うか……男だって思えないから」

「それが良いことか悪いことか分からないよ、AJ」

「そこが肝心なところじゃねえのか?」

「そうは言っても……」

「お前、俺を助けてくれるって約束してくれただろ? ちゃんと言ってたよな……」

「ああ、君に言ったことは覚えているよ。でも、これって、ボクにとってはある意味、大変なことなんだって分かってくれなきゃ。ボクはこんな格好して外に出たことなんかないんだから。それに、分かるだろ? ましてや、こんな格好でパーティに行くなんて」

「でも、コスプレ・パーティなんだぜ。それに、そこにいる人はみんなお前のことを知らない人ばかりなんだ」

「ああ、分かってるよ。でも……」

「それにだよ。たとえ、どういう形か、お前の正体がバレたとして、その時は、ジョークだったってふりをすればいいんじゃないか? そういう計画だっただろ?」

「そして、バレなかったら、ボクは君のガールフレンドだってふりを続けなくちゃいけないんだろ? いや、分かってるよ。ボクたちが何をしようとしているか、理解しているよ。でも、サラにヤキモチを焼かせるためなんだったら、どうして本物の女の子を用意できなかったんだ? つまり、なんでボクを……」

「俺を信じてくれよ、ジェイミー。お前は本当に完璧なんだよ。すっごく可愛く見える」

「でも……ちょっと待って? 本当にボク、可愛い?」

「嘘じゃない。お前、パーティではそこにいる中で一番、可愛い女の子になるぞ」

「ボクは女の子じゃないよ」

「いや、今夜はお前は女の子だ。まだ、居心地悪い気持ちなら別だけどな。ともかく、お前がやりたくないことを何か無理やりやらせるつもりはないから安心してくれ」

「ああ、分かったよ。じゃあ、行こう」


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Two sides 「ふたつの面」 

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64_Two sides 「ふたつの面」
どうしても見せびらかしたくなってしまう。たとえ、この写真の1枚でも露呈したら、同僚とか友人がそれを見たとしたら、山ほど説明しなくてはならないことになってしまうと分かっていても。だけど、私はこういう人になるために、本当にたくさん努力してきたのだ。たくさん犠牲にしてきたのだ。私は、ネットで写真を投稿したときに得られる肯定的な注目を心から欲しているのである。

自分の姿を恥ずかしく思ったりはしない。本当にそんな感情はない。だけど、私の決断を支持しないかもしれない人々に、私のこれまでの行いを説明しなければならないとなると……それは、ウジ虫がいっぱい詰まった缶詰みたいなもの。私には、そんな缶詰を開ける心の準備が完全に整っているわけではない。みんなは、私が思っているような人間ではないと知ったとき、どのような反応を示すだろうか? 普段の私とは違った私を見たとき、どんな反応を示すだろうか? 私の脚の間にあるモノが問題になる。そうはならないと何度、自分に言い聞かせようとしても、それが問題になるのは見えている。人々は、私がペニスを持っていることを気にするものなのだ。そして、人々は、それを知った瞬間、私を違ったふうに扱うだろう。

すべての人にありのままの姿を投げつけ見せつける自信満々のトランスジェンダーの女の子たちがいるけれど、本当に、ああいう人になれたらいいなと憧れる。全部オープンにできたら、どんなに良いだろうと思う。だけど、一番の恐怖は、人々が私のことを一種の奇形人間だと見ること。私の秘密をすべて探り出し、かつての私と今の私を比較して見るだろうということ。

私の人生は、偽善についての研究と言ってよい。それは分かっている。私はありのままの自分を誇りに思っているけれど、誇りに思えるのは、私を受け入れてくれる人々に囲まれている時だけである。そういうわけで、私はネットに自分の写真を投稿している。ネットでは、人々は私を受け入れてくれるから。私のことを称賛してくれるから。おだててくれるから。それが私は嬉しいから。

確かに、現実の生活でも人から褒められることがある。だけど、そういう誉め言葉を言う人たちも、私の真実を知った瞬間、ぱったりと言わなくなるというのも知っている。私たちが生きている世界とは、そういうところなのだ。

いつの日か、もっと状況が改善する日が来るかもしれない。そうなれば、私も気にしなくなるだろう。だが、その時が来るまでは、私は自分を隠し続けるだろう。うわべだけ取り繕い演技している架空の人物の陰に隠れて生き続けることだろう。



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Trade in value 「価値の取引」 

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64_Trade in value 「価値の取引」

「彼、どうしてこんなふうになっているの?」

「このためにお金を払っていただいたのですよ、グラハム様。変化の次元か何かに問題がありましたら……」

「いいえ、これは良いの。もっと言えば、『良い』を超える良さだわ。あたしから盗み続けていたあのチビがこんなふうになるなんて信じられない気持ち。彼の父親が亡くなった後、あたしは誓ったのよ……」

「あなたの義理の息子さんの悪事については存じております」

「ええ。もちろん、そうでしょうね。いえね、あたしが尋ねているのは、彼の顔の表情のこと。この表情はどういうことなのかしら?」

「ああ、それですか。彼は依然として催眠効果の状態にいるのです。処置により、被検者はちょっと……頭が空っぽの状態になるのです」

「ということは、今の彼は痴呆状態にあると言うこと? それって、あたしが頼んだこととは……」

「いいえ。条件付けの大半は、彼をお届けする時までには消えているでしょう。後まで残るのは、ここで過ごした時間の無意識の効果だけです。服従の気持ち。女性的な立ち振る舞い。お化粧などの身だしなみ。その種のことです。彼は、私どもの施設を離れたら2週間ほどで霧から抜け出た状態になるでしょう」

「もし、そうならなかったら?」

「そのようなことはめったに起きません」

「でも、完全に起きないというわけではないんでしょう?」

「まあ、時々は。万が一、そのような発生しにくい事態になった場合には、あなた様がお支払いになった金額の倍額で、彼を買い戻し致します。ご満足していただけるよう、完全保証ですよ、グラハム様。それが私どものモットーであります」

「その保証は、これから1年は有効なの?」

「どのような意味でしょうか?」

「例えば、あたしが彼に飽きてしまった場合とか」

「飽きることはないでしょう。彼は完璧に……」

「ええ、それは分かっているけど。ちょっと先のことを考えていて。もし、2年位して、彼がそばにいることに飽きてしまった場合、どうなるのかなと思って。その時も、彼を買い戻してくれるの?」

「もちろん、買い戻し価格は変わります。それに、その場合は彼を調べる必要もあるでしょう。ですが、ええ、買い戻しますよ。市場には、彼のような人間への需要は常に存在しますから」

「それを知って安心したわ。それで、いつ頃、彼を連れ帰ることができるかしら?」




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