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56_Lesbian by design 「作られたレズビアン関係」
「ああっ……」 彼女にゴム製のファラスを突き立てられ、あたしは喘ぎ声をあげた。
「このおちんちん、大きいでしょ? あなた、大好きよね?」 彼女があたしの耳元に唸り声で囁く。それに応えて、あたしはまたも喘ぎ声をあげる。「やっぱり好きなのね。あたしの大きなおちんちん、大好きなのね!」
「うん、大好きなの!」 甲高い、喜びの声があたしの口から洩れる。あたしは小さなバイブを持って後ろに手を伸ばし、ふにゃふにゃのペニスと今は役立たずになっている睾丸の間の場所に押し当てた。あたしが女なら、この場所に快楽の入り口があるはず。ホルモンが効果を発揮して、あたしの男性器は何らかの化学的薬剤を飲まなければ機能しなくなっている。代わりにバイブが刺激の手段になっていた。あたしは、このようにしてアナルを犯されることでもオーガズムを得る方法を獲得していた。
あたしと彼女の関係は不思議な関係と言える。ふたりは普通のカップルとして付き合い始めたのだけど、ふたりの関係は、急速に、レズビアンの関係に似たものに変わっていた。今やあたしは女として生きている。女のようにセックスをしている。それに正直言ってしまうと、自分は女だと思っている。女でいるときだけ、正気でいられるようになっている。
実際は、あたしは女になるよう自分から動いたわけではなかった。女性になりたい願望を心の奥深く眠らせていたといった人間ではなかった。ごく普通の男だった。彼女に会うまでは。
彼女はあたしが望むすべてだった。彼女が望むならどんな人間にでもなりたかった。そして、今のあたしがいる。これがあたしの本当の姿。
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56_Just once 「いちどだけ」
「ダイアン、マジで居心地悪いんだよ。それ、分かってほしいんだけど、いい? いや、マジで……」
「分かったわ。でも、真面目でよ、ジャック。大したことじゃないわ。単に服装の問題じゃないの?」
「それに化粧も。美容院通いも。脚の脱毛も」
「オーケー、それくらいにして。でも、それであなたが変わるわけじゃないでしょ? あなたは前と同じ男。ただドレスを着ているだけ。なによ、全然、大したことないじゃない」
「ああ、大したことないよ。確かにね。だけど、ボクは……」
「ちょっといい? 本当にやりたくないなら、別に無理強いしないから。でも分かってほしいのは、これってあたしにとって一番萌えるシチュエーションなの。いい? あなたがやりたいことに、あたし、付き合ってあげてるでしょ? 今度はあたしの番よ」
「ボクの方はそんなに大したことじゃないのに」
「ええ、まあ、あんたは縛られる方じゃないからそう言えるかもね。あたしにとっては大したことなのよ。だから、これ。あたしたち、ここまで来てるのよ。あなたはすでにすっかり女の子の外見になっている。だったら、一晩くらいあたしの彼女になってくれててもいいんじゃない? 約束するわ、あなたもきっと楽しめるから」
「わ、分かったよ。でも、これで終わりだよ。いいね? これが終わったら、もうこんなレズ遊びは終わりだよ? ボクたちは普通の彼氏・彼女の関係に戻るんだからね?」
「ええ、もちろん。あなたがもう一度やりたいって言わなければの話しだけどね……」
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56_Intruder 「侵入者」
自分のパンティで目隠しされて仰向けになっている。体を縛られ動けない。身をよじっても動けない。でも、これはすべて遊びの一部。ドアが開く音が聞こえた。ちょうつがいがきしむ音が耳に響く。重たそうな金属音が広大な部屋にこだました。あたしは笑みを浮かべた。もうすぐ始まる、と。
でも、いつもと何かが違う。それを最初に感じたのは、入ってきた人の足音を聞いたとき。フェリシアのいつものコツコツというハイヒールの音と全然違う。威圧的なドスンドスンという足音。
「フェ、フェリシア?」 期待で声がかすれていた。
でも返事は、遠くから聞こえる男の笑い声だけだった。
自分の現実の状態を理解し始めるのに合わせて、頭の中、パニックが暴れ始めた。自分は素っ裸で縛り上げられ、まるでこの侵入者を迎えように脚を大きく広げてる。もしこの男があたしを奪いたいと思ったら……それは確実だ……そうなったら、彼を止めることはほとんどできない。そして、それを望む自分もいる。
「だ、誰?」 わずかな勇気を振り絞って訊いた。声が小さい気がした。あたしは形ばかりの目隠しを振りほどこうと、頭を激しく振った。そしてすぐに、その努力は報われ、見えるようになった。頭をもちあげ、侵入者を見た。そしてハッと息を飲んだ。
「おや? 俺が分かるんだな」悪意に満ちた平然とした声だった。「ずいぶん前だったから、分からないかもしれないと心配したよ」
「何を……ここで何をしてるんだ?」 勇気を出そう必死で訊いた。でも、それが茶番にすぎないことは彼にもあたしにもはっきりしていた。「フェリシアはどこ?」
「今日はお前の彼女は来ねえよ。で、俺はってか? 俺がなんでここにいるか分かってるんじゃねえのか? ずいぶん前のことだが、お前は忘れちゃいけねえだろ? 4年にわたって俺をイジメを続けていたことをよ。全部、俺の性的嗜好をネタにイジメてた。マジで皮肉な状況だよな? お前がそんな格好でいるとはな。どうなんだ? それ、ずっと隠し続けていたのか? それとも、最近、目覚めたってことか?」
「あたしは……」
「いや、言わんでいい。答えは知っている。フェリシアは、お前が俺を扱うやり方をずっと前から憎んでたんだよ。お前、知ってたか? ずっと前からだ。そして彼女はお前を罠に嵌めていたんだよ。どうやってお前に償わせるかをずっと考えていたわけさ。最初は他愛のないことだったな。バカバカしい計画で、結局、俺たちは実行しなかった。だが、最近、フェリシアはお前を変え始めたんだよ。少しずつな。しかも、その間ずっとお前は自分で考えて変身してるんだって思い込んでいた。パンティとかホルモンとか縛りとか……ストラップオンも。フェリシアが言ってたぜ。お前、最近はストラップオンで犯されるのが大のお気に入りって言うじゃねえか。そこでだ、取引しようぜ。俺は今から、淫乱のお前にふさわしく、お前を思う存分犯す。お前には犯されてヨガリ狂ってほしいもんだな。もし、俺がお前は本当にオーガズムを感じていると思えなかったら、そん時は、お前は今まで通り縛られたままだ。だが、もし俺がお前が喜んでると納得したら、縛りを解いてやってもいいだろう。どうだ、この取引?」
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56_Interview 「面接」
「さあ、がんばって、ボビー」と、レニーはボクの後頭部に手を添え、優しくボクを前に押した。ボクは従順に口を開いた。ペースさんのペニスがボクの口の前、何センチも離れていないところでぶらぶら揺れていた。そして突然、頭のことろがボクの舌の上に当てられた。何をすべきか、何を期待されているか分かっていたけど、どうしても躊躇ってしまう。ためらう理由は山ほどあった。
レニーはなだめるようにボクの髪の毛を撫でた。何が問題か、レニーは知っている。ボクも彼女も知っている。でも、どうしても壁を打ち破れない。どうしても、この一線は越えられない。
頭の中、この行為は問題ないんだとする理由を探しまわった。どれだけ犠牲があろうとも、この仕事を得る機会をもらえたことだけでも幸運だったのは分かっている。レニーは、ボクがこのポジションにつけられるようにと、たくさんコネを使ってくれた。その恩に報いるためにも、彼女の期待にそぐわなければならない。
最悪な点はボクの性別ではなかった。外見とは違って、ボクは女じゃない。多分、女性的なところはあるにしても、女では決してない。それに女になりたいとも思っていない。ボクは単に会社の服装規定に従っているだけだ。レニーによれば、秘書はスカートかドレスを着なければならず、例外はなし、とのことだ。ちゃんとした印象を与えるためには、標準的な適切な服装をするほかほとんど道はなかった。そして、それが意味することは、そういう服装をするだけにはとどまらないということでもあった。そういう服装にちゃんと慣れている必要もあった。というわけで、レニーにも手伝ってもらって、ボクは女性的になるよう変身したのだった。かなり可愛くなったと自分でも分かる。その面で努力をしなかったら、ここまでこれなかったと思う。
もちろん、会社の人たちはボクが男だと知っている。最初、嘘をつくことを考えたけれど、レニーがそれはいけないと忠告してくれた。ボクは彼女の判断にしたがった。
でも、前に言ったけれど、女の子に仮装することは、最悪の点ではない。最悪なのは、そこではなくて、ペースさんのような人たちが、ボクのことを欲求を満足させる手段としてしか考えていないと悟ったことだった。ボクは人間ではなくて、あるひとつの目的のためのモノにすぎないということ。それを前もって知っていなかったならば、あのあからさまな現実をやり過ごすことができなかったと思う。口唇奉仕をすることが面接審査の一部になってるという事実。
面接の場でそれを知ったとき、ボクはなぜ自分はこの場にいるのかを思い出した。ボクはギリギリの状態で、ホームレスになりかかっていたのだ。何よりも、自活できる手段である仕事が欲しかった。こんなことでためらうことよりも、誇りを守ることよりも仕事が欲しかった。まして、男らしさにしがみつきたいという気持ちなど、仕事を得るためなら、どうでもよかった。そして、ボクと仕事の間に立ちふさがっているのは、ペースさんのペニスだけ。これは障害物にすぎないと認めた後は、ためらいの気持ちは一気に薄れていった。そして、ボクは「面接」において、とても情熱的な仕事ぶりをしてみせたのだった。