ようやくブリイが口を開いた。「マック、あたしがあなたを愛してることは分かってるわよね?」 「ああ。僕も君を愛している」 「あなたのお母さんを愛してるとか、そういう意味ではない。男女の関係で、あなたを愛しているの。あのシダー・ポイントでの一日以来、ずっとあなたを愛してる。あたしが愛したのは、そしてこれからも愛するのはあなただけ。口には出さなくても、あなたを信頼している。あたしと結婚したことを別にすれば、あなたについてのすべてを愛してる。あたしがどういう人間かは分かってるわよね。あたしは自由でいるのが好き。責任も重荷もない、あたしを縛り付けるものがない状態が好き。あたしは仕事も人生も愛してる。あなた以上に愛してるわけではないけど、別に使途ごとあなたのどちらかを選択しなければならないことでもない。あなたはグラニーと同じくらい誠実。あたしたちは互いに理解しあっている。あたしはあなた以外の男とはセックスしないし、したこともない。それはあなたも知ってるはず。あなたはいつもあたしのことを理解してきた。だからこそ、これから言うことは、とてつもなく変なことに聞こえるかもしれないの」 「おおっと! まるでこれからイヤラシイことを言われて驚かされそうな気配だな」と僕は笑った。 彼女は「あんたってバカね」と言いたげな顔をした。 「ええ、多分そう思うかも。あのね、あたしと結婚してくれない、マック?」 飲みかけのワインを気管支に誤飲して死ぬかと思った。しばらくむせた後、直ったものの、僕は口をあんぐり開けたまま座っていた。 「間抜けのふりをするのはやめて、返事を聞かせて!」 「ありえない!」 ようやく僕は返事した。「どうしてだ、ブリイ? またお互いをみじめにしあうのか? 1ヶ月も経たないうちに、互いにいがみ合うことになるぞ。今の僕たちの関係のどこが問題なんだ?」 「何も問題はないわ。これはあたしたちとは関係ないこと。これは、あの可愛い、地球上で最も愛らしい女の子たちに関係することなの、マック。あたしはあのふたりがすっかり大好きになったわ。あなたがあたしを招待したあの夜に、あなたはあたしの人生を完全にひっくり返してしまったの。ふたりはあなたに会いたがってるわよ。ふたりとも、毎晩、あたしに泣いて懇願するの。あなたに会わせてって。問題はというと、あたしもふたりを手放したくないということ。ふたりと一緒に暮らしてから、いろんな楽しいことや腹立たしいことがあったけど、こんなに気持ちが揺れ動いたことは、これまでの人生で一度もなかった。で、あたしもあなたも、安定した家庭環境を作ってはいないでしょ。正常な心を持った判事なら、あたしたちのどちらにもあの子たちを預けることはないわ。でも、もしあたしたちが夫婦なら、速攻でふたりを預ける判断をすると思うの。だから、あたしがあの子たちと暮らしたいと思ったら、あなたを巻き込まないわけにはいかないのよ。あなたも、あの子たちと暮らしたかったら、あたしに我慢しなければならない。それ、あたしたちにできないことかしら、マック? あたしたちはセックスフレンドとしては最高のカップルだし、あたしはあなたを死ぬほど愛している。だから、あたしをイライラさせるのを避けることはできない?」 「どうかなあ。僕も嫌な人間だけど、君も同じくらい嫌な人間だよ。酔っぱらって帰ってくる。仕事以外のことについては、いつも時間を守らない。それに、そもそも家に帰ってこないし、電話の連絡もしない。ねえ、ブリイ、僕たちはそういう生活をしてきてて、その件については、もう済んだことになっているんだよ」 「ええ、分かってる。でも、重要なのは、今は違ってるとしたらどうなのかということ。今のあたしは、早く家に帰りたくて待っていられないほどなの。遅くなる時は、いつもふたりに電話を入れているし、ふたりを預かってからは、一杯もワインを飲んでいない。自分がこんな気持ちになるとは夢にも思っていなかったわ。だから、あたしと結婚して、マック。あたしにチャンスを与えて。あたしもあなたにチャンスを与えるから」 「いろんなことを話し合わなくちゃいけないと思う」 「だから、話し合ってよ。あたしたち、いま何をしていると? あたしは意味もないことをべらべらしゃべっているだけと思ってるの? 何をしなくちゃいけないかを言ってみて。あたしから言ってほしい?」 僕は残ってたワインをぐいっと飲み干し、ウェイターにお替りの合図をした。 「ああ、言ってみて」と僕は彼女に言った。
物欲しげな目をしていたと思うけれど、僕は目の前で次第に裸体を見せていく妻の姿をにんまりしながら堪能していた。豊かな乳房が張りを保って胸に盛り上がっている様子、平らな腹部と細いウエスト、少し大きめのヒップと涎れが出そうになるお尻。ポルノスターでも彼女の体を羨ましく思うことだろう。 「今度は君の番だよ」と僕は自分の顔面を指さした。「君の可愛い子猫ちゃんをここに連れてきてはどうかな?」 でも、彼女はイヤラシイ笑みを浮かべながら首を左右に振った。「いいえ、いけません、ご主人様! 今夜はあなただけのもの。ただ、くつろいでいて。一度だけでいいから、あなたに思う存分、ご奉仕させて」 僕は自分の萎えたペニスに目をやった。こいつはしばらくの間、言うことを聞いてくれない状態だ。「うーん、その思いは感謝してるんだけど、本当に……でも、僕はもう18歳じゃないし。次の出番が来るまで、ちょっと時間がかかるよ」 「大丈夫。あたしもいろいろすることがあるから。だから気を揉まないで。今は、ただ、くつろいでいて」 そう言って彼女は僕の足から官能的にマッサージし始めた。足から徐々に上へと移動してくる。 「いずれ、今の僕の姿が見れなくて寂しくなる時が来ると思う?」と僕は小さな声で訊いてみた。彼女は申し訳なさそうな顔を見せた。 「あたし、そんなに顔に出てしまってる?」 「いや。ただ、僕は君のことをよく知ってるから。君が今の僕のすべてを記憶にとどめようとしてるのが見えるんだ。……いずれ、それがすっかり変わってしまうだろうから」 彼女はエロティックなマッサージの手を止めなかった。「ということは、もう決心したということ?」 「君は間違っているなんて、いつ言ったかな? 君がこれがベストだと思ったなら……僕は、君の思う通り、これがベストだと思うよ」 妻の目に涙があふれてくるのが見えた。「あたしは……あなたに無理強いされてると思ってほしくないの。あなたが普段からあたしの思うとおりにさせてくれているのは分かってる。でも、あなたがみじめに感じると思うなら、その場合は……やらないと言ってもいいのよ? ノーと言ってくれていいのよ?」 「僕は君を信頼している。君があらゆる角度から考え抜いたことだと信じているんだ。君の方がはるかに賢いから、僕は君を信頼するほかないじゃないか。そもそも、僕は何かしようとするといつも失敗してるわけだし。カレン、僕は子供が欲しいんだ。君の子供が欲しいんだよ」 今や彼女は僕の上にまたがった姿勢になっていた。両手の爪を僕の胸肉に立てるようにしながら、僕の瞳を見つめていた。30センチも離れていない。「分かったわ。病院に予約を入れるわね」 不安はあった。それは間違いない。でも、子供が持てるという魅力は、そんな不安に打ち勝つだけの力があった。「だから、僕を捨てたりしないと約束してくれ」 彼女は僕の唇に唇を押し付けてきた。彼女の涙が僕の顔に滴り落ちてきた。「約束する。あなたを愛してるの。とても……今度はうつ伏せになって。背中もしてあげるから」 あまりにリラックスしすぎたのか、背中のマッサージをされてる間に僕は眠ってしまった。翌朝、目が覚めると、ベッドに彼女の姿はなく、伝言だけがあった。僕を愛してるというメッセージだった。 そして、キッチンにはたくさんの洗い物が僕を待っていた。 ****** 病院のガウンは着心地が悪い。僕は診察台の上に座って、辛抱強く待っていた。お尻が出てるのを気にしないよう努めていた。 ストリッパーとして何年も裸を他人目にさらしてきたんだ。これくらい何てことない。 診察室のドアが開き、妻が入ってきて、ドアを閉めた。「ジョンソンさん、おはよう」と彼女はあいさつした。 「おはようございます、ジョンソン先生」と僕も挨拶を返した。だが、笑いを完全に押し込めることはできなかった。 とはいえ、職場にいる妻を見るのは、この時が初めてだった。たいていは、メディカルスクラブの姿で家に帰ってくる妻しか見ていない。いま、白衣をまとい、首に聴音機をかけ、手に僕のカルテを持ってる妻の姿を見て、僕はちょっと畏敬の念に打たれていた。彼女がどうして僕の担当になったのか分からないけれど、多分、彼女はそのお願いを何度かしなくちゃいけなかったのだろうと思う。 「準備はいい、タイ?」と妻は心配そうに訊いた。 僕は肩をすくめた。「どうかなあ。でも、結局はこれに慣れなくちゃいけないとは思うけど?」 彼女は優しそうに微笑み、コンピュータ制御の装置に重たそうな金属製のシリンダを設置した。「それでは、今から、インフォームドコンセント関係の質問をします。いいですか?」 「もちろん。どうぞ」 「あなたは、今回のWイェックス注入により、あなたのジェンダーを完全に女性に変えること、及び、期間はほぼ1年間で、誤差により8日の前後があることを理解しています?」 「分かっています」 「よろしい。あなたは、これが魔法のように思えようとも、そうではないことも理解している。あなたは84キロの男性であり、84キロの女性になるということを理解している」 「分かっています。君が太った可愛い子ちゃんが好きだといいけど」 カレンは刺すような目で睨み付けた。だが、その目つきの裏で笑ってるのも見て取れた。「あなたは、最終的な体形や特徴を決めるのは、あなた自身のX染色体に隠れている遺伝情報であることも理解している」 僕は目をぱちくりさせた。これは聞いてなかった。「分かりました」 「ジョンソンさん、大変よろしい。あなたは、変身剤の注入に同意されますか?」 「同意します」 これで決まりだ……女性側への旅立ちの時間だ! カレンはシリンダを取り、底部を回してふたを開け、中の物を抜き出した。実際の注入器は透明の保護ケースに入っていた。注入器をらせん状にチューブが巻き付いていて、そのチューブの中にはピンク色の液体が満たされていた。 「この注入器には底辺部に7本針がついています。7本同時にあなたの肌を刺します。ですが、ほぼ瞬時に刺された跡は消えます。刺された痛みが続くのは数秒間だけですので、動かないようお願いします。注入する場所は、あなたの恥骨の上の部分ですので、今からローブを脱いでいただく必要があります。私がいることが気になるようでしたら、代わりの男性医師を呼びますが、どうしましょうか?」 僕はジョンソン先生は好きじゃなくなっていた。あまりに医療関係者的すぎる。妻に戻ってほしい。 「先生、僕の妻がいてくれると気が落ち着くんですが」 そう言って僕はガウンの前をはだけ、診察台の上、股間をさらした。 「いいわ、あなた。じゃあ、深呼吸して」 深呼吸して、そこで息を止めた。カレンは冷たいシリンダーを僕のお腹に押し付けた。ペニスとおへその間の中間地点あたりの場所に。 そこで妻はシリンダーの上部を外した。同時にチクリと痛みが走り、細い針が僕の中に入ってくるのを感じた。チクリとした痛みは1秒もしないうちに消えた。目の前で、シリンダー内のピンクの液体がチューブを進み、僕の体内に入ってくるのが見える。
ブリアナは背が高い、ゴージャスと言われる赤毛の美人だ。匂い立つような色気を放っているのに、自分ではまったく分かっていない。彼女が家に入ってきた時、マギーとストークリイは、彼女のオーラに唖然としていた。ブリアナは僕に全身が搾られるようなキスをし、その後、ふたりの女の子たちをハグした。 「あたしの替わりを入れたってわけね」と彼女は僕にウインクした。 「いや違うよ、ブリイ。君の代わりになる人なんかいないよ。知ってるくせに」と、僕は冗談っぽく言った。 でも、ブリイの代わりがいないのは本当だ。マギーたちには、僕がブリイと友だちだと言ったし、その通りだ。僕とブリイは相互に利益が得られる友人関係にある。離婚後も素晴らしいセックスを楽しんでるし、時には週に一回かそれ以上している。彼女が僕のところに来て1週間くらい泊まっていくときもある。そういう時は、僕たちはサカリのついた動物のようにセックスしまくる。離婚したのは、単に、彼女の生活には夫のための時間が作れないということだけだったし、これからもそれは続くと思う。ブリイはブリイのやり方で僕を愛してくれているし、僕も僕なりに彼女を愛している。単に、僕たちふたりは夫婦関係でいることができないということだけ。僕たちはセックスパートナーとしてなら完璧にうまく付き合えるけど、夫婦でいた時は犬と猫のようにケンカばかりしていた。 「で、あなたの新しい彼女のお名前は?」 とブリイはふたりに微笑みかけた。あの笑顔を見てマギーもストークリイもまぶしく思ったのではないだろうか。 「あたしはマギー。それにこの子はストークリイ」 「会えてうれしいわ。あなたたち、この男が危険なヤツだというのは知ってるわよね?」 「あたしたちには、そうじゃないよ」とストークリイが言った。「敵としている人にはそうなのかもしれないと思うけど。棍棒を持ってるし、すごく大きな犬も飼ってるから」 ブリイはグランビルのところに忍び足で近寄った。するとグラニーは不審げに唸り声をあげた。 「ねえ、大男さん?」と彼女はひざまずいてグラニーにハグをした。「あたしに会えなくて寂しかった?」 グラニーは目を剥いては見せたが、頭をもたげることすらしなかった。 「で、どういうこと、マック? あたしと何を離したいのかしら。別にディナーに招待してくれたことは気にしてないけど。……おふたりさん、この男、料理の腕はたいしたもんなのよ。やる気を出させられればの話しだけど」 「マックは、ラムチョップ( 参考)を作ったと思う」とマギーが答えた。「それ、あたしたち、食べたことないんだ」 「そう。だったら、ごちそうにありつけるわよ。でも、何があったの?」とブリイは再び訊いた。 4人でディナーを楽しみ、僕は説明をした。 「ブリイ、君の助けがほしい。僕は法的なことについては何も知らないからね。この子たちは孤児なんだ。まあ、父親は生きてるかもしれないが、どこにいるか誰も知らない。父親は彼女たちを捨ててどこかに行ってしまったし、母親は殺されてしまった。その後、里親施設にいたが、その施設の誰かバカ者がふたりに手を出し始めたため、ふたりは施設を逃げ、路上生活をしていたんだ。ふたりは、食べ物を求めて、僕の家のゴミ缶を漁っていてね、そこを捕まえたわけ。そこで相談なんだが、何か、この子たちを路上生活に戻さなくても済む方法を探しているところなんだ」 ブリイはしばらく黙ったまま僕を見つめていた。「あなた、この子たちが欲しいのね? 驚いたわ、マック! あなたはずっと子供を欲しがっていたものね。でも、あたしが断っていたので、この子たちが欲しいと。そうでしょ?」 僕は顔を赤らめた。「ああ。そう言ってもいい。そうするためには、どうすればいいと思う、ブリイ?」 「無理だと思う」と彼女は言った。「どの家庭裁判所も、あなたにこの幼い女の子たちを預けるのを許可しないでしょうね。あなたは独身の男性。そこに幼い女の子ふたりを預けるなんて、悲惨な結末を準備するようなもの。絶対に許可されない」 僕はマギーたちに目をやった。ふたりとも目を皿のようにして僕を見つめていた。「ん? どうした?」と僕は訊いた。 ふたりは互いに見合い、突然泣き出した。一緒に僕のところに駆け寄り、しがみついてきた。「あたしたちをもらいたいって?」とストークリイがすすり泣きながら言った。「信じられない。あたしたち、養ってくれる人なんか誰も……誰も……」 ストークリイは先を続けることができなかった。 僕はふたりをしっかりと抱きしめた。「ああ、そうだよ。それを考えていたんだ。君たちは、見守ってくれる人が必要だ。僕も見守ってくれる人が必要なんだ。だから、君たちと僕とで互いに互いを見守ることができるんじゃないかと思ったんだよ。それにグラニーも僕たち3人を見守ってくれるだろうし」 ふたりの小さな体が震えていた。ぐいぐいと、抱き着く力が強くなってくる。 僕はどうしてよいか分からず、助けを求めようとブリイを見た。ブリイの頬には涙が流れていた。彼女は子供たちから僕へ視線を移した。 「もう、マックったら。見てよ、あたしに何てことをしてくれたの! いつも、あなたのことは分かってると思ってる時に限って、こうやってあたしを驚かせるんだから。あたしはどうしたらいいのよ?」 彼女は変な表情をしていた。まるで初めて僕に会ったような顔だった。 「にさん日、考えさせてくれる? 娘さんたち? あなたたちはあたしと一緒に来るの。ここでマックと一緒にいることはできないわ。それが明るみに出ちゃうと、すべてが台無しになってしまうかもしれないから。マック? あたし、この子たちと一緒にグラニーも連れて行くわよ。あたしは一日中家にいることはできないけど、グラニーがいればふたりの安全を見てくれるだろうから」 ブリイはまるで竜巻のように家の中を忙しく歩き回り、マギーとストークリイ、そしてグラニーを家から連れ出し、彼女のメルセデスへと押し込んだ。「後で電話するわ」 実際、ブリイはそれからの2週間の間に、3回、それぞれ30秒ほど電話をしてきた。その期間、ふたりの娘たちの姿は影も形も見なかった。そして金曜日の朝、ブリイが電話をしてきて、アルフォンソの店で夕食がてら僕に会えないかと言ってきた。この店はポンティアック(デトロイト圏内の小都市)にあるイタリア料理の良い店で、僕たちは何度も行っている。 僕が店に入ったときには、彼女はすでに来ていて、カウンターのところに座っていた。彼女の周りには男たちが群がっていた。ブリイは僕を見かけると飛び上がるようにして立ち、涎れを垂らす周りの男たちを置き去りにした。彼女と僕は空いているブースに移動した。彼女は僕を押すようにしてブース内に座らせ、自分は僕の隣に座った。普通はブリイは僕の対面席に座りたがるので、隣に座ったということは何か特別なことがあるのだろうなと思った。注文を済ませるまでの間、彼女はほとんど口をきかなかった。
カレンは熱情の化身そのものになった。それが、とうとう子供が持てるという思いによるのか、僕に何度も劣等感を感じなくてもいいと宥めようとしてのことなのかは分からない。でも、どんな理由であれ、その夜の彼女はこれまでにないほど積極的だった。 ベッドに座る僕に挑みかかるように彼女は唇を寄せ、舌で淫らに僕の口の中を探りまわり、その後、僕の胸に両手を当て、そして僕を押し倒した。ベッドの上、僕は膝から上の部分、仰向けになっていた。 カレンは自分が服を着ていることなど気にせず、素早く僕のズボンと下着を引きずり降ろした。最後まで脱がすのももどかしかったのか、僕の左右の足首は途中まで脱がされたズボンや下着が丸まって、縛り付けられているような形になっていた。そんな姿の僕の勃起を、彼女はパクリと咥えこんだ。 たいていの男たちはどうなのだろう? たいていはフェラチオが好きなのだろう。でも、僕は、10代のころだったと思うけれど、繰り返しセックスできる相手を得るには、愛し合う場面において、与えられる側ではなく、与える側になるのことだと考えるようになっていた。その考え方は僕の本質部分に染み込み、いつしか僕の人間性の一部になっていた。だから、僕は、いかに気持ち良いことでも、単に快楽を与えられるだけでは、居心地が悪く感じる。どうしても、そのお返しをせずにはいられなくなる。 カレンは僕のそんなところも良く知っている。 僕はなんとかしてシャツを脱いだ。「き、君も……うわっ! 君も服を脱いだら?」 カレンは、僕の固くなったペニスから口を離し、僕の目を見てにんまりした。床に正座する格好で僕の脚の間にいて、片手でしごき続けながら、こっちを見ている。 「まだダメ。今はあたしにあなたを気持ちよくさせてて。今夜は、最後まであなたを主人公にするつもりなんだから。あたしにとってあなたがどれだけ大切な人か、どれだけ愛しているか、示したいと思うの」 彼女が卓越したフェラチオを再開するのを受けて、僕はもたげていた首から力を抜いて、頭をマットレスに倒した。彼女が特に求めた場合を除いて、僕は両手を彼女の頭に添えることはしない。だけど、セックスの場面では、僕はとてもこまめに手を動かすタイプだ。触れたり、擦ったり、愛撫するのが好きなのだ。だから、この時は、決して触るまいと、精いっぱいの意志の力を使って、両手を体の両脇に保ち続けた。 普通は、僕も同時に彼女のアソコを舐めるので、妻は気が散り、能力を十分に発揮できないのだけれども、実際、彼女は口唇愛撫について言えば、大変なスキルの持ち主だ。どう吸って、どこを舐めるかをちゃんと知っている。短時間で僕をイカせたいと思ったら、数分で僕をそこに至らせることができる。でも、今夜の妻は、そこに至る時間を長引かせようとしていた。 彼女はとても長い時間、ねっとりと愛してくれた。ゆっくりと吸い込んでは出していく動き。時々休んでは、唇で挟み込むようにしてペニスの底辺部を上下に擦ったり、睾丸を優しく吸ったり舐めたりした。 献身的な愛撫を受けながら、ふと、思った。カレンは意図的に今夜のこの経験を堪能しているのではないか、と。僕の分身が消えた時のために、思い出作りをしているのではないか、と。僕はまだWイェックスを服用すると明言はしていなかったが、彼女には分かったのだろう。もう結論はとっくに出ていると。いったん彼女が何かについて決心をした後は、僕がそれに異を唱えることは滅多にない。実際、彼女の方が僕よりはるかに賢いし、僕は、ずいぶん前から、彼女が十分検討した場合は、どんなことでも、たいてい彼女の方が正しいという事実を受け入れていた。加えて、僕は本当に子どもが欲しかったし、Wイェックスしか僕たちにはそのチャンスがないと思われた。 しかし、妻が僕の射精をさらに先延ばしさせるには、長い時間、頑張りすぎていて、その瞬間は差し迫っていた。 「カレン、もう、いきそうだよ!」 彼女は、僕の勃起の先端部分3センチくらいだけを口に咥え、頭を上下に振り始めた。小さく「んー、んー」とハミングし、僕を見つめながら。その表情は淫らな性欲の顔ではなかった。そうではなく溢れ出る愛情の顔だった。こんな格好で、こんな行為をしているのに、その顔の表情は、それにふさわしい顔つきじゃないと言ってもおかしくなかった。 僕は声を立てず、射精した。10代のころから、自慰をしても声を出さないでいたせいか、セックスの時も僕はほとんど声を出さなくなっていた。これがカレンには理解できなかったようで、分かってもらうまでずいぶん時間がかかった。単に、たわごとや下品な言葉を言ったり叫んだりしなかったからと言って、楽しんでなかったということにはならないのだと。 僕は彼女に出せるものはすべて出し、彼女もそのすべてを受け止め、飲み込んだ。そして唇と舌を使って、過剰なほど敏感になっていた僕のペニスをすっかりきれいにしてくれた。 少し休んだ後、僕は足からズボンを蹴り飛ばした後、ベッドの上、普通に横たわる姿勢になるべく、ベッドヘッドへとずり上がった。その間、彼女は服を脱いでいた。妻の着ているメディカル・スクラブは、彼女の目を見張るボディを覆って隠してしまう点で、人類に対する犯罪と言ってよい。
「すごく大きいね」ストークリイは笑いながら、グラニーの頭をトントンと叩いた。「何て種類の犬? ちょっとトラみたいに縞模様がある」 「ブル・マスティフという種類。こういう柄をしてるので縞柄種と呼ばれているんだ」 「まるであたしたちの顔を食いちぎれそうな感じだよ?」とマギーが言った。 「ああ、やろうと思えばできるよ。でも、グラニーは大丈夫。彼は僕の友達にはフレンドリーなんだ。君たちが家のソファに座って、私と仲良くしてるのを見て、君たちを好きになったんだろうな。もし君たちが僕に好戦的な態度を示していたら、彼も警戒して、とても攻撃的になっていたかもしれないね。もう彼は君たちのことが分かったから、今度は誰にも君たちに好戦的な態度を取らせないようにすると思うよ。もし僕が君たちを怒鳴ったら、それも気に食わないと思うんじゃないかな。彼は、愛する人を守る気持ちがとても強いんだ」 ストークリイは跳ねるようにしてソファから降り、グラニーの上に覆いかぶさって首のところに腕を回して抱きついた。グラニーも彼女の腕をぺろぺろと舐めた。「グラニー、大好き! しわくちゃ顔でキュート! グラニーはガレージに住んでるの?」 「いや、家の中だよ。昨日はちょっと体の具合が悪かったので、家じゅうに吐かれると困るから、ガレージに出していたんだ」 「どうして具合が悪くなったの?」 「グラニーは、よく、食べちゃいけない物を食べてしまうんだよ。棒をしゃぶったり、虫を食べたり、何とは言わないけど、死んだものを見つけては食べたりとかね。でも、今日は大丈夫みたいだ」 「キモっ!」とマギーが叫んだ。「あたし、さっき、顔を舐められたんだった!」 「ああ、彼は可愛いけど、ちょっと汚くなる時もあるんだ。でも、グラニーは僕の友だちだ。だから僕は我慢してる。彼は、君たちが認めるなら、君たちの友だちにもなるよ。そろそろ、みんなで彼の散歩に連れて行った方が良いかな」 グラニーのリードを持ってくると、マギーが彼をリードしたがった。たいてい、グラニーはリードを持つ人を引っ張っていく。だから、マギーは彼に引っ張られて、僕とストークリイの2メートルくらい前を歩いていた。ストークリイは歩きながら、小さな手で僕の手を握った。彼女を見降ろすと、彼女は笑顔で僕を見上げた。ああ、何て綺麗な子なんだろう! 「こうしても構わない?」 「もちろんだよ。可愛い女の子と手をつなぐのは大好きだから」 ストークリイはちょっと顔を染めたが、僕の手を離すことはなかった。僕たちは3キロほど歩き、家に戻ったときには、グラニーはハアハアと息を荒げ、涎れを垂らしていた。この犬は、この日のように寒い日でも、こうなる。 その日の午後、僕たちは、コーヒーを飲みながらおしゃべりをした。そして、ようやく僕は、ふたりに助けてあげてもよいだろうかと訊いた。 「どういうことをしてくれるの?」とマギーが訊いた。 「正直分からない。ブリアナに話しても良いかなと思う。専門外とは言え、彼女は法律家だ。多分、何か方法を考えてくれるかもしれない」 「その人って、例のビッチ?」とマギーが訊いた。 「マギー、ブリアナはビッチじゃないよ。そう言うふうに呼ぶのはやめてくれ。僕を信頼してくれるかな?」 ふたりは顔を見合わせ、その後、僕の方を向いた。「ええ、まあね」とストークリイが言った。「あんたはあたしたちにとても優しくしてくれているよ」 「じゃあ、彼女に電話して、こっちに来れるか訊いてみよう」と僕は言った。「君たちも彼女が気に入ると思う。彼女にチャンスを与えてあげてくれ」 ブリアナは忙しかったが、夕食にはこっちに来れると言った。
「そう。いい? セックス玩具としてのWイェックスはいろいろあるけど、そのひとつは主要な性器だけを変えるの。まさかと思うだろうけど。それはWイェックス・ライトっていう名前。あたしのアイデアはというと、それをあたし自身に使うということ。あたしが仕事を続けられるように、あなたが妊娠するまで週に1回、服用する。職場ではカレンのままでいなくちゃいけないでしょ? あなたの方は体全体を変える強化版を1年間、服用し続けなくちゃいけないわ。すぐに妊娠しなかったら、もっと長くなるかもしれない。妊娠から出産まで9ヶ月半から10ヶ月はかかるし、加えて授乳もあるから」 これは大ごとだった。単に長い期間自分に影響を及ぼすだけのことなどではなく、少なくとも1年間は僕の生活を変えることになることだった。子供をひとり以上求めるならもっと長い期間になる。 「ちょっと考えなくなければ。って言うか、そうなっている間、僕たちの性生活はどうなるのかな? どのくらいの期間が必要か分からないけど、その間、単に君の妊娠した同居人だけになるというのは嫌なんだけど」 その期間、僕たちがそもそも夫婦とすら言えなくなるような感じになるかもしれない。その状況をどう言葉にして説明したらよいか分からなかった。 カレンはカウチの上、僕のところにすり寄ってきて両腕で僕を包んだ。「あなた、そういうふうには全然ならないわよ。あたし……言いづらくて一度も言ってなかったんだけど……あのね……あたし、少し女の人にも惹かれるの。男性に惹かれる時ほどじゃないけど。もちろんあなたは別格」 妻は素早く僕を安心させた。「でも、ちょっとだけよ。こう言うだけじゃ足りなかったら、あたしもあなたに合わせて毎週服薬するわ。そうすればあなたはあたしを離すわけにはいかなくなるでしょう? さっきも言ったけど、短期版のWイェックスだと性欲が増進するし、完全にバイになった気持ちになるわけ……」 そこまで話してカレンは突然笑い出した。 「いずれにせよ、あたしはするかも。まる1年間生理を気にせずにいられるのよ? それっていい話に思うもの」 理論上は、健全なアイデアだと思った。僕は子供が欲しいのか? とてもとても欲しい。 僕はカレンの子供が欲しいのか? 何よりもそれを望む。彼女は子供を産めるのか? いや、産めない。時間はどんどん進んでいる。僕たちは年老いていくのは確かだ。 「その費用は僕たちに賄えるの?」 僕はチェックを入れた。 カレンはさらに強く僕を抱きしめた。「ええ、大丈夫。それって、その気になっているということ?」 と彼女は期待している顔になった。 「そちらの方向に傾いているところ」と僕は白状した。「でも、一晩考えさせてくれる?」 「もちろん! でも、今夜はあなたと寝室に入って、あなたがへとへとになるまでエッチするつもり。だって、そうじゃない? それが、しばらくの間は、あなたのおちんちんを入れてもらえる最後のチャンスになるのかもしれないんだから」 僕は元気を取り戻した。僕もそうしたい気持ちだったから。立ち上がって、洗い物が残ってるキッチンに目をやった……「ちょっとその前にキッチンをきれいにしてからね」 カレンは顔を左右に振って僕の手を掴み、ぐいぐい寝室へと歩き出した。「後からでもいいんじゃない? 今は、あたし、あたしの愛するオトコに抱かれたくて溜まらない気持ちなの」
「ところで、マギーとストークリイについて話を聞かせてくれないかな? 君たちに何が起きてるんだ? なんで食べ物を求めて他の人のゴミ箱を漁るようなことをしてるんだ?」 3人でコーヒーの入ったマグカップを手にリビングに移動し、そこでふたりは嘆かずにはいられない話しをしてくれた。彼女たちの父親は自動車工場の作業員だったが、ふたりが幼い時に失業し、それがきっかけで、アルコールを飲んではふたりに暴力を振るうようになってしまった。母親は彼と離婚し、その後は父親とは会ったことがない。デトロイトの経済は最悪だった。いや経済に限らず、何もかもデトロイトは最悪だったが、とりわけ職に就くのが難しい。ふたりの母親はタクシー運転手をしていたが、ある夜、悪い客を乗せてしまったらしい。その客は彼女たちの母親が持っていたなけなしのカネを求めて、彼女を刺し、置き去りにした。彼女たちの母親は出血多量で亡くなってしまった。 ふたりは養育施設に入れられたが、その施設の男がふたりに淫らなことをし始めた。そこでこの姉妹は施設を逃げ出し、路上生活になった。この生活を始めて3ヶ月になるという。苗字はスティールという。凍死しないか、レイプされたりしないか、殺されるんじゃないか、次の食事はどうやったら手に入れることができるかとか、そう言うことばかり心配し毎日を生きてきたという。 ふたりが話し終えた後も、僕はしばらく黙って座っていることしかできなかった。何てことだ、胸が押しつぶされそうな気持になった。この子たちのような生活を送っている子供たちはいったいどのくらいいるのだろう? おそらく、僕が想像するよりもありふれた話なのかもしれない。この子たちを助けたいが、ふたりはそれをさせてくれるだろうか? どうやって助けたらよいのだろう? 児童保護で役所に相談したら、彼女たちが僕の家で暮らすことを認めるとは思えない。独身男が若い娘ふたりを預かるなどというのは、変態が夢見ることのように聞こえるし、そんなことを公的機関が許すことはないと確信できる。ひとりいろいろ思案していたが、ふたりに遮られた。 「マック、あんた結婚しているの?」とストークリイが訊いた、 「していたよ。僕の元の奥さんは、僕のことを野心的じゃないと思ったんだ。彼女は一流の法律家で、いろんなところに出張に出かけていた。彼女の人生には、夫婦生活をする余地はなかったんだよ」 「ひどい女だね」とマギーが言った。 僕は笑い出した。「いやいや、彼女はとてもいい人だよ。別に浮気をしたとかそういうことはなかったし、今でも僕とは大親友でいる。お互いの合意で決めたんだよ。ふたりはそもそも結婚すべきじゃなかったのだとね。結婚した時、ふたりともとても若くて、とても愚かだったからね」 ストークリイが不思議そうな顔で訊いた。「おじさんは何歳なの?」 「28歳だよ。君たちは?」 「あたしは11で、マギーは13。あたしたち今日は何をするの?」 「『僕たち』今日は何をするか」 「そう、あなたが言った通り」 「おしゃべりをしよう。……でも、その前に、ある人に君たちを紹介しようと思う」 僕はガレージのドアを開けた。ドアの向こうから毛むくじゃらのブルブル震える物体が飛び出してきた。彼は客たちの姿に気づくと、彼女たちが座るソファへ突進し、飛び乗って、ふたりの膝の上に横になった。早速ピンク色の大きな舌をだして、ふたりを舐め始めた。 「彼はグランビルというんだ。僕はグラニーと呼んでいる」 ふたりは、彼の舌にべろべろ舐められ、引きつったような笑い声をあげていた。グラニーは55キロはあるので、ふたりとも彼に膝に乗られて立ち上がれなかった。彼がふたりよりも重いのは確かだ。 「お座り、グラニー」 と言うと、彼は嫌そうに彼女たちから降り、ふたりの足元に伏せた。
カレンはゲラゲラ笑いだした。「冗談でしょ。本当にそんなことで悩んでいるの?」 僕は居心地が悪い感じで肩をすくめた。「まあ、そうだね。何て言うか理屈としてはの話しとしてね。でも、女性には食べ物を提供してくれる人を求める衝動があるのは本当だと思う。君のDNAに書き込まれているんだよ。僕が家の中で単なる『小さな男』でいたら、君の尊敬とか愛情をいつまで失わずにいられるだろう?」 彼女は頭を左右に振った。それに合わせて茶色の巻き毛が揺れた。 「その考えの丸々全部がどれだけ間違っているかってところから話すつもりはないわ。あたしがあなたを夫に持ってることで、あたしの友だちがどれだけ羨ましがられているか知ってるでしょう? あたしを学校に通わせるために粉骨砕身働いてくれた男性。そして、今はあたしが面倒な家事をすべて忘れて仕事ができるようにと、気遣ってくれる男性。 っていうか、あなたは確かにストリッパーをしていた。でもね、たとえあなたが一日中家の中でごろごろしていても、あたしの友だちなら、すぐにでも誰かがあなたをもらいたいって取引を持ち掛けてくるんじゃないかしら」 僕は少し気が休まった気がしたけど、それでも、くだらないことなのだろうけど、追い出されるんじゃないかという不安が残っていた。 「……それに、ちょっと考えていたの。もうそろそろ、あのことを考えてもいい頃じゃないかって」 彼女は注意深く切り出した。 僕はすでに脚を揉む段階から、優しくほぐす段階になっていたけど、その言葉を聞いて無意識的に手に力が入ってしまった。「あっ、え、何のこと?」 「そろそろ子供を考えてもいい頃じゃないかしら?」 息をのんだ。僕はずっと前から子供を持つことを望んでいたけど、カレンは子を産めない体だったから。 「君は養子は嫌だと思っていたけど……」 「まあね……その通りだわ。でも、もうひとつ方法があるの。Wイェックスって聞いたことない?」 僕は顔をしかめた。「それって、一時的に性別を変えるモノだよね? 週末だけ女性になるとかそういう目的でセックス・ショップで売ってるモノだよね?」 「確かに最初はそうだった……だけど、その後に、それが医療関係に大きく応用できると分かったの」 「どうやら、君はそれについてずいぶん考え抜いたようだね。僕よりいろんなことをずっと知ってると思う。僕に教えてくれないか、カレン」 「いいわ。Wイェックスの持続期間はいろいろあるようになったの。効果が短期間のものがある。1日とか2日とか1週間とか。男性は女性に、または女性は男性に変わることができて。脳の構造をバイセクシュアルに変えて楽しむこともできれば、性的欲求を増進させて本気でセックスを楽しむこともできるというわけ。いい?」 「ここまでの話しだと、それでもって君が何をしようとしてるのか分からないんだが」 「もう少し話しを聞いてて。医学的に強化したものだと1年は持続するけど、性的欲求の増進はない。で、Wイェックスは、体の細胞の構成を入れ替えて新しい体形に変えるのよ。病院では重度の病気の治療に使っている。治療不可能な癌? だったら1年に1回、Wイェックスを服用すれば、生き延びられる。もちろん、男性は女性に、女性は男性になるわけだけど、他の道で生きるよりはましじゃない? 例えば、手足の切断とか、麻痺とか、重度の火傷、さらには最悪のトラウマを抱えているとか。そのすべてがWイェックスの注入によって回避できるの」 「オーケー、奇跡の薬ってわけだね。分かった。でも、僕は別にそういう症状にはなっていない」 「うん、その通り。もうひとつ、Wイェックスを使う分野があって、それは産科。女性が子供を産めない場合……あたしのようにね、あるいは、男性が繁殖力がないとか機能不全であるとか、その他なんであれ、そのために子供に恵まれないとき、カップルの片方か両方が1年間、性を入れ替え、そして赤ちゃんを作るわけ」 自然に僕の両手が彼女の足から離れた。大変なショックを受けて僕は呆然と彼女を見つめるだけだった。「ぼ、僕に赤ちゃんを産んでほしいと……」
朝になり、着替えをしてると廊下がきしむ音がした。ドアを少し開けると、あのふたりがリビングの方にこっそりと歩いているところだった。彼女たち出ていくつもりなのかと思い、私はドアを開けた。ふたりは動きを止めた。 「君たち朝食を食べたくなった?」 ふたりは顔を見合わせた。「あたしたち出て行った方がいいかなと思って。あたしたちを泊めておくとか、そういうつもりじゃないんでしょ?」とマギーが言った。 「つまり、君たちは、私が君たちを強制的にここに留めるつもりかと?」 ふたりはまた顔を見合わせ、その後、私に顔を向け、頷いた。 「いや、私は何も強制しないよ。人に何かを強制するのは私のルールに反する。でも、私と一緒に朝食を食べてくれたら良いなと思っているけど?」 ふたりはまたもや顔を見合わせた。「一緒に食べたら、あたしたちを帰らせてくれる?」とストークリイが訊いた。 「そうしたいなら。本当のところは、君たちが今日一日、私と一緒にいたいと思ってくれたらいいなあと思っているんだ。そうじゃないなら、全然かまわないよ。でも、今日は誰かと会う約束でもあるのかな?」 「ええ、うちの株主との面会があるから」とマギーは笑った。まるでクリスマスツリーのように明るい笑顔だった。「で、朝食は何?(What you going to feed us?)」 「まず、君は今の文でbe動詞を抜かしたね。正しくは、What are you going to feed us?だね」 「あんた英語の先生かなんか?」 「実を言えば、その通り。私は大学で英文学を教えている」 「はいはい、かっこいいこと! あたしたちは学校なんか行かないもん。忙しすぎて」 「ともあれ、朝食は食べるんだよね? ワッフルとベーコンを考えているけど、君たちは好きかな?」 ふたりとも好きなようだった。そんなわけで3人でキッチンに行き、私がバターを混ぜている間、ふたりはワッフルアイロンを用意した。私が800グラム分のベーコンを炒めてる間、ふたりはワッフルを焼いた。私はちょっとシロップにうるさい。コーヒーにもうるさい。ベーコン炒めの続きはマギーに任せ、私はコーヒー豆を挽き、パーコレータを設置した。3人の共同作業ですべて完了し、メイプルシロップつきのワッフルが完成した。ふたりとも、コーヒーに入れるクリームはないのかと訊いて私をがっかりさせた。コーヒーにクリームを入れるような野蛮人とブリアナのためにいくらかクリームは用意していたので、それを与えた。ふたりはバニラ・ヘーゼルナッツも好きだった。多量のベーコンだったが、みんなですべて平らげたし、3人それぞれワッフルを3枚ずつ食べた。 「私と一緒にいるといい。そうしたら、1週間以内に君たちをカエルみたいに太らせることができるよ」 それを聞いてふたりは声を出して笑った。その笑い声、これまで聞いた音の中で一番素晴らしい音だった。ふたりは飢えた子牛のように牛乳を飲んだ。家の食料貯蔵庫はちょっと拡張しなければならないだろう。
「仕事はどうだった?」 カレンの一日がどうだったか、純粋に話しを聞きたかったから訊いたのだが、実質、彼女が僕に訊きたがっている不可避の質問を先延ばしするためにしたような質問だった。 「今日ね、あたし赤ちゃんを取り上げたのよ!」と妻は興奮した様子で言ったが、少し気まずかったのか、すぐに落ち着気を取り戻した。「それが今日のハイライトだったわ。その他は? 大半はいつもの仕事。排泄の処理とか、分かるでしょ? 1件、仕事場での怪我の治療があった。普通の怪我だったわ」 僕は微笑んだ。彼女が医療関係の仕事についたのは、出産を手伝うことをしたいという最終目標があったからだと僕は知っていた。そして、なぜ彼女がそれをしたいのかも知っていた。 「そう。じゃあ、良い一日だったんだね?」 カレンも微笑んだ。「ええ、良い一日……今日は仕事探しはどうだった?」 僕が避けていた質問がこれだった。僕は急に食欲がなくなり、溜息をついた。「何もなかった。第2種運転免許を取るつもりになれば別なんだけど。またダンスの仕事に戻ろうかとさえ思ったよ」 妻は顔を曇らせ、ほとんど食べ物がなくなった皿に残ってるご飯つぶを指先で拾い始めた。僕は自分の皿から残っていた寿司を彼女の皿に移してあげた。 「トラックの運転手はしてほしくないわ。そうなったら、あなたはいつも留守になってしまう。それよりもっと嫌なのは、ストリップの仕事に戻ること。あの当時、あなたがお相手しなくちゃいけなかった女たち……あのアザの数々、今でも忘れないわ」 僕も忘れていない。しょっちゅう、強くつねられ、後にアザが残った。その痛みを隠しつつ、つねってきた女性に愛想よく笑顔を見せなければならないのだった。「ああ、あちこちアザだらけになったなあ。でも、少なくとも、帰宅するときは給料を持ってこれたんだけどね」 カレンは寿司の残りをきれいに平らげた後、立ち上がって僕の手を握り引き寄せた。僕も立たせようとする。「カウチに一緒に座ろう。足を上げたいの。でも、この件についてあなたと話しもしたいから」 妻はカウチの端に座り、僕は真ん中に座って膝を叩いて見せた。 「足をここに乗せて」 カレンはこの家におカネを運んでくるただ一人の人だ。一日中働いてきた彼女の足を擦ってあげることくらいしか僕にはできない。 靴を脱がし、両足の土踏まずを揉み始めた。「じゃあ、お話したいんだね?」 僕の両手で足が癒され、彼女は唸り声をあげた。「ちょっとね。もしかすると……あなたは働かなくてもいいかもと思ってるの。今はあたしがかなり稼いでいるし、あなたはダブルワークをして、あたしを医療学校に通わせてくれた。あなたは、しばらく、仕事をしないでいてもよい資格があるわ」 僕は顔をしかめながら、彼女のふくらはぎへと手を移動した。「一日中、家にいられないよ。何をしたらいいんだろう?」 「もう、今していることは? 家に帰るときれいに掃除されてて、夕食もできてる。これがあたしにとってどんなに嬉しいことか、いくら言っても言い切れないわ。今夜のステーキ寿司もすごく、すごく美味しかった」 「でも、君が主夫なんかいらないと思ったらどうなるのかな? 職場にいる野心的な医師とかの方が君の好みになるんじゃ?」 僕にとって一番大きな不安は、彼女が僕を負け犬と思い、誰かもっと……少なくとも誰か仕事をしている人と一緒になるため、離婚を決意するということだった。
「椅子を引いて座りなさい。君たちはコーラがいいかな? ジュースや牛乳もあるが」 ふたりとも牛乳を望んだ。「私はマッケイ・ノースだ」 牛乳を注ぎながら名乗り、牛乳をカウンターの上、ふたりの前に置いた。「飲みなさい」 「あたしはマギー」と大きい方が言った。「マーガレットを短くした名前。この子はストークリイ。本当にこれ全部食べていいの?」 「もっと欲しけりゃ用意するが? 朝になったら作ってやろう。午前2時には料理したくないからな」 「いや、これでいいよ。ありがとう」とストークリイが言った。 マギーは私のことを疑い深そうな目で見ていた。「何かしてもらおうってことか? あたしたち、イヤらしいことはしないよ」 私は笑った。「いや、私もそれは御免だ。君たちのどっちかが何か私に下心を抱いているようだったら、がっかりするだろうね」 明らかに、ふたりとも私のユーモアを理解していなかった。「私は幼い女の子には興味がないよ」 ふたりは私が「幼い女の子」と言ったことが気に食わないようだったが、ともかく、ふたりは食べ始めた。飢えた動物のような食い方だった。「おい、ほら、もっと落ち着けよ。食べ物は逃げたりしないんだから。チキンはすでに死んでるし、ジャガイモは足が速いわけがない。そんな調子で食べると腹をこわすぞ」 今度はふたりともくすくす笑ってくれて、多少はがつがつしなくなった。「君たちはどこに住んでるんだ?」 「ひとブロック先に空き家があるんだよ」とマギーが言った。「マットレスと上に掛けるものを見つけた。だけど、薬物中毒が入ってくるんじゃないかって心配なんだ。あいつら、空き家だと分かると、すぐに入ってくるから」 「今夜は温かいきれいなベッドで眠りたいか?」 ふたりは、またも怪しむ顔をして私を見た。 「アハハ。私のベッドではないよ。予備の寝室が3つある。まあ、確かに予備のベッドも私のものだが。言っている意味は分かるよね?」 ふたりは引きつった笑い方をした。「あたしたちおカネ持ってないよ」とストークリイが言った。「カネは払えない。空き缶集めはしてるけど、稼いだカネは全部食い物に使うから」 「いや、別におカネを払ってもらうつもりはないさ。カネを払えなんて言ってないだろ?」 「じゃあ、なんで? なんでおじさんはあたしたちにそんなに親切なんだ? マック……」 「呼び方はマックでいいよ。みんなそう呼ぶし」 「どうして親切にふるまってるんだ、マック?」 「別に『ふるまってる』つもりはないが。私の母親に訊いてみるといいよ。私は優しい男なんだ」 それを聞いてふたりは笑顔になった。いい笑顔だった。私はふたりをもっと笑わせたいと思った。「もし、私が君たちの境遇だったら、やっぱり、誰かに優しくしてもらいたいもんな」 ふたりは私の言葉の意味を考えたようだった。「そのチップス、少しもらってもいい?」とストークリイが訊いた。私はポテトチップスの袋をふたりの方へ押した。ふたりともサンドイッチを頬張ってるにもかかわらず、同時に手を伸ばした。私はポテトチップスはもう充分だ。ふたりは牛乳を飲み干したが、まだ飲み足りない様子。ふたりにお替りの牛乳を注いで上げると、それも一気に飲み干した。驚いたが、ふたりとも皿に盛ったものをきれいに平らげたし、野菜も残らず食べた。本当にお腹がすいていたに違いない。 「もう寝る時間だな。ふたり、それぞれ、自分のバスルームがある。そこの戸棚には歯ブラシやヘアブラシなんかがそろっている。薬棚にはアスピリンや腹痛薬や歯磨き粉やデンタルフロスがある。他に何か必要なものがあったら、言ってくれ」 「ドアに鍵をかけてもいいよね?」とマギーが訊いた。 「もちろん。でも、私が求めたら、ある程度の時間はドアを開けておくように」 ふたりとも変な顔して私を見たが、ふと、マギーのありえないほど緑の瞳がきらりと光った。「あたしたちが何か盗むと思ってるんだよ」と彼女は妹に言った。「あたしたち、何も盗まないよ、マック。あたしたちを信じなくてもいいけど、あたしたちもあんたをあまり信頼しないから」 私は思わず笑いだしてしまった。「オーケー。相互に不信状態でいるわけだ。いいよ。そのうち、私を信頼できると分かるだろうから。私はね、美しい女の子を傷つけることなど滅多にないんだよ」 それを聞いて、ふたりともパッと明るい笑顔になった。「美しい」と言った部分に気分を良くしたのだろう。ふたりは私の後に続いて廊下を進み、部屋に入った。ふたりが入ると鍵を締める音がし、それを聞いて、私は笑顔になった。 自分の寝室に入り、ベッドに横になった。しばらく眠らずに横になっていた。あの女の子たち、どうしよう? どうして、うちのゴミ缶を漁っていたのだろうか? どうして、ふたりだけでいるのか? 親はどこにいるのか? 明日の朝になったら、その答えを聞くことにしよう。
「Wイェックス:妊娠」 Wyex: The Pregnancy by icedragonmo3 https://www.literotica.com/s/wyex-the-pregnancy 僕はカウチに座り、嫌々ながらも、もう一度だけ求人情報を調べた。解雇されてから何か月も経っているが、いまだに新しい職を得る幸運に恵まれていない。あの工場勤務が気に入っていたのだが。 ウェブ上でまだ応募していなかった職は、僕が資格に満たない仕事か、長すぎる期間をお妻と離れて暮らさなければならない仕事か、僕がもう二度と御免だと決めた仕事だけになっていた。 妻のカレンがそろそろ帰ってくる時間になったので、僕はようやくノートパソコンを閉じ、夕食の準備に取り掛かることにした。今夜は新しいモノを試すつもりで、彼女が気に入ってくれればいいと思った。魚の代わりにステーキを巻いた寿司だ。僕はおいしそうと思うが、彼女がどう思うかは分からない。 冷蔵庫を開けると、ご飯がちょうど寿司に良さそうな状態になっていた。適度に冷やされ、粘り気が強くなっている。 僕はいまだ無職でいることのむなしさを何分間かは忘れることができるだろうと、料理に没頭した。ステーキとご飯を、刻んだ少量の野菜と味付けのためのスパイスと一緒に円筒状に巻く。それを一口サイズに切っていくのだが、それは予想したより難しかった。とは言え、2個ほどぐちゃぐちゃにしてしまったものの、その後はコツを会得したので上手くできた。 ほぼ完成に近づいた時、玄関ドアが開き、僕の最愛の妻が部屋に入ってきた。 彼女の姿を堪能するためだけに、一瞬ちらりと彼女に目を向けた。12時間勤務のシフトの後にもかかわらず、カレンは本当に美しく、思わず息をのんでしまう。 髪は褐色で、肩までの長さ。ゆったりとカールしている。褐色の大きな瞳が僕を捕らえ、その瞬間きらりと輝いた。帰宅して喜んでいるのがその目を見ただけでわかる。 大きな胸はメディカルスクラブ( 参考)の中、はち切れそうだし、同じ布地に包まれた細いウエストも最高だ。ヒップにかけての豪華な曲線は、彼女の体つきの中でも僕の最も好きな部分で、仕事服を着てても、そこの特徴はほとんど隠しきれていない。 僕と彼女が一緒の写真を見たら、多分、ストリッパーをしていたのは僕ではなく、彼女の方だと思うことだろう。 カレンはカウンターにハンドバッグを置き、両腕を広げて僕を抱きしめた。僕の方もほとんど待ち焦がれていたといった感じで彼女を抱き返した。ほぼ一日中、職探しをしていたので、こういうふうな人との接触が嬉しかった。 「いい匂いね、タイ。今夜は何?」 僕は彼女のおでこにキスをした。彼女が仕事から帰ってくると病院の匂いも連れてくるが、それにはずいぶん前から慣れていた。「ステーキの寿司だよ。気に入ってくれるといいけど。テーブルについててくれ。僕が用意するから」 カレンは僕の頬にキスをし、キッチンテーブルの椅子に座った。脚を伸ばしている。一日中、立ちっぱなしで痛くなっているのだろうと思った。 僕は素早くやりかけだった切り分けの作業を終え、2枚の皿に盛りつけた。カレンの分の皿を彼女の前に置き、冷蔵庫からダイエットコーラを取り出した。 「グラスと氷は、いる?」 「いいえ」と、口に頬張った寿司を急いで飲み込んで返事した。「缶のままで。これ、すごく美味しいわよ! 自分がこんなにお腹がすいていたことも忘れていたけど」 僕は、彼女のコーラと、僕のダイエット・マウンテン・デューと寿司の皿をテーブルに運び、彼女の向かい側に座った。 僕も一口食べてみた。寿司は、本当にとても美味しくて、自分でも驚いた。彼女が貪る様子をちらりと見て、僕は数個、自分の皿から彼女の皿へ移してあげた。実際、僕は、今日はあまりカロリーを消費していなかったのは事実だから。
「浮浪者」Vagabonds by blackrandl1958 出所:https://www.literotica.com/s/vagabonds-1 よろけながらも、警棒を手にパティオに出た。バカ犬どもめ、またウチのゴミ箱をひっくり返しやがって。ゴミ置き場のドラムが転がる音で私は目を覚ました。今週になって3回目で、いい加減、私はうんざりしていた。ここの住民は、どうしてバカ犬どもを家に閉じ込めておくことができないのだ? 犬たちは腹をすかしているのは分かる。だが、こんなの馬鹿げてるじゃないか。 音を立てずに裏門を開け、飛び出て、みすぼらしい野良犬どもを懲らしめようと身構え、一気に門を開け、ゴミ置き場にダッシュした。ゴミ入れドラムの横、黒い姿がふたつ見えた。棍棒を振り上げると、私に気づいたようだ。 「お願い。腹がすいていたんだ」とひとりが言った。「片付けるから、叩かないでくれ!」 犬ではなかった。子供だった。だが、野良犬化した子供なのは確かだった。そこは暗かったので、私はふたりの首根っこを掴んで、家の庭の防犯灯の元へ引きずった。ふたりを立たせ、まじまじと見た。汚い、ぼろぼろの風体。浮浪者のようだ。よく分からないバギーの服を着て、野球帽を被ってる。冷え込んだ夜だった。ふたりが震えてるのが見えた。 「今週、うちのゴミ缶をひっくり返していたのはお前たちなのか?」 ふたりは顔を見合わせた。「はい。このゴミ缶にはいつもピザとか残ってるから。そのままにしてきて、すみません。もうしないよ。だから、逃がして。もう、迷惑かけない。ちゃんと後片付けするから」 これで許すのは良くないだろう。私はふたりのシャツを掴んで、ぐいぐい引っ張るようにして、家の中に戻った。バスルームに直行し、ふたりを中に入れ、ドアを閉めた。 「私が戻ってくるまで、出てくるんじゃないぞ」 私は寝室に行き、クローゼットから元妻のスウェットパンツ、フード付きウェア、ソックス、それにふかふかの大きなタオルを2枚を取り出し、それを持ってバスルームへ戻り、ドアを開けた。ふたりは窓を開け、そこから逃げ出そうとしていた。 「お前たちは、汚い格好でいるのが好きなのかもしれないが、熱いシャワーを浴びても体に害はないと思うぞ。シャワーにはソープとシャンプーがある。それに、これは清潔な服とタオルだ。服を脱いで、シャワーを浴びることだな」 「別に汚い格好が好きなわけねえし」と大きい方の子供が悪態をついた。「ここみたいなシャワーがねえんだよ。あんた、ずっとそこに立ってるつもりなのか?」 「お前たちが何か盗むかもしれないからな」 「ああ、その通りさ」と小さい方が言った。「あんたのトイレットペーパー、持って帰るかもな。オレたち、泥棒じゃねえし。おじさん、あんた、変態なんだよな? 少女が好きなんだろ?」 私は唖然とした。よくよく見ると、確かに、汚れの下には女の子の姿が見えた。「わ、私は……。君たちが女だとは知らなかった。ともかく、シャワーを浴びて汚れを落とすんだ。何か食べ物を用意してやろう。きれいになったら、キッチンに来なさい。食べ物をあげるから」 私はバスルームを出てキッチンに向かった。冷蔵庫を開け、食材を探した。冷たくなったフライドチキン。ポテトサラダがボールの半分ほど。半分食いかけのサラダ。サンドウィッチ用のパストラミとピクルス。フライドチキンをふたり分の皿に分けた。ひと皿あたり3ピース。それぞれの皿にポテトサラダを山盛り。サラダの野菜も盛って、ディップできるようにドレッシングも用意した。それぞれの皿にピクルスとパストラミ・サンドウィッチ。あと、私自身が食べるためにポテトチップスを盛った。いや、あの子たちも、食べたかったら、食べてもいいだろう。完璧のディナーじゃないか、と思った。あの子たちも、サンドに、ムエンスター・チーズとマヨネーズとマスタードが最高と思ってるといいなと思った。 バスルームのドアが開く音がした。その後、キッチンのドアの向こうで何か囁きあう声が聞こえた。1分ほどした後、ドアが開いた。そして、見たことがないほどの美少女がふたりキッチンに入ってくるのを見た。漆黒の長い髪とオリーブのような肌。緑の可愛いアーモンド形の瞳。高く隆起した頬骨とキュートで可愛い鼻。11歳か12歳くらいの、まだティーンになって間もないような感じに見えるが、元妻のブリアンナの服を着てるので、妙な感じだ。ブリアンナは背が高いが、この子供たちは小柄だ。袖もズボンの裾も捲くっているので、本当に浮浪者みたいに見える。
 It had to happen 「あの時はどうしても」 「ケネス、あたしに……ここであたしに会うとは思ってなかったでしょうけど」とライラは腕組みして言った。「でも、これはやっておかなくちゃいけないの。このことについて、ふたりで真剣に、正直に話し合わないといけないと思うから」 ケネスは顔をしかめた。自分のことを男性の名前で考えるのは、もう何か月も前にやめていた。だけど、彼女は自分の裸体を隠すことはしなかった。隠れることに飽きあきしていたから。何年も、いや、何十年も、彼女はクローゼットに隠れていた。もう、嘘をつき、隠れる人生を生きることにうんざりしていたのである。とは言え、ライラが望んでいる話し合いを彼女も望んでいるかというと、そうではない。 「ケンナよ。あたしの名前はケンナ」 「そう聞いてる」とライラが答えた。ライラはケンナの横を通り過ぎ、かつてふたりが共有していた寝室へと入った。ベッドに腰を下ろし、うつむいたまま、彼女は続けた。「ここに来たのは、世の中の理屈をお話しして、あなたに正気に戻ってほしいと思ったから。そういう理屈、知っていた? あなたに分からせることができると思ってた。ちゃんと理解させることができると思ってたの」 ケンナは、裸のまま、そして、裸でいることを恥ずかしがっていないように自分に無理強いしつつ、元妻の隣に腰を下ろした。「それで?」 ライラは床を見つめたままだった。「ホルモンはいつから?」 「キミが出ていく1ヶ月前から」 ライラは頷いた。「なら、合点がいく」 彼女は顔をあげた。目には涙が溜まっていた。「あたしに話してくれたらよかったのに。あなたのそばで力になってあげられたかもしれないのに。あなたの気持ちは分かってるわ……あたしたち、一緒ではないのもわかってる。でも、あたしはあなたの友人にはなれたかもしれないのよ。あなたの変身を手助けできたかもしれないの。もちろん、あなたにはあたしの力が必要と言いたいわけじゃない。あなた、驚くほど素敵だわ」 「ありがとう」とケンナは言ったが、その感謝の言葉にはほとんど感情がこもっていなかった。実際、彼女は元妻に関する心的戦いの真っ最中だった。確かにライラの表情には後悔や自責の念が浮かんでいた。だけど、だからと言って、彼女がケンナの「異常性」に気づいた時にどんな反応を示したか、決して忘れることはできなかった。皮肉でも上品な反応とは言えない反応だった。叫び、怒鳴り、物を投げる。その間、ケンナは、似合わないドレス姿と不器用な化粧の顔で、ライラがいま座ってる場所から遠くない場所に突っ立ったまま、ただそれを受け止め耐えるだけだった。 当時、ケンナは異性装者としてバレることを恐れていた。侮辱されることに恐怖を感じていた。そしてライラが離婚届を出し、ケンナは破滅的に落ち込んだ。とは言え、そのことは、ケンナが自分自身に目覚め、変身し、最終的には幸福になるための刺激になった。彼女を押し留めてきた結婚というしがらみが消えた以上、女性に変わらない理由はほとんどなくなったのである。であるから、ある意味、人生で最も屈辱的な一日が、最良の日にもなったのだった。 「自分でも何故ここに来たか分からないの」とライラはすすり泣きながら続けた。「思うに……多分……謝りたかっただけかも。ひどい反応をしてしまったと」 「いいのよ」とケンナは元妻の太ももを軽く叩きながら言った。「本当に、もういいの」 If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 New suit 「新しい水着」 「いい水着だな」 「何? あ、ありがとう。カミラがボクに買ってくれたんだ」 「俺は皮肉で言ってたんだぜ? マジで言うけど、お前、何てもんを着てるんだ?」 「水着だよ? 彼女は、超ファッショナブルだって言ってるよ。2年くらいのうちに、皆がこういうのを着るようになるって」 「多分、女たちはな」 「また、その話? ほんとに? 誰でも知ってるよ? 男のファッションと女のファッションには別々の基準があるべきだって考え方は……」 「時代遅れだって言うんだろ。ああ、お前が髪を伸ばした時に訊いた時も、お前、そう言ってたな。化粧をし始めた時も。脚の毛を剃ったときも。その議論は理解してるさ」 「だけど、同意してないんだよね?」 「ランス、ぶっちゃけて言うと、お前、まるで女にしか見えないぞ! 女だ! 誓ってもいい。お前と一緒に出歩いたら、大半の人は、俺たちをカップルと思うはずだぜ?」 「で、それって、そんなに悪いこと? ボクがあんまりブサイクすぎて、ボクがキミのパートナーになってる世界を想像することすらできないって、そう言いたいわけ?」 「え? いや、そういうわけじゃ……違うよ……つか、そんなことを言ってるんじゃないんだよ!」 「じゃあ、それって、ただのホモ嫌いってことじゃない? 言いたくないけど、キミがそんな偏見に凝り固まった人だったなんて知らなかったよ、アダム」 「俺は……なんていうか、俺はホモ嫌いなんかじゃないよ。ゲイの人たちも大好きだ。本当に。俺は、ただ……」 「過剰に反応してるんじゃないかって言いたいの? ちょっと、聞いて。ボクはこういう服装をするのが好きなの。ボクは可愛い服を着ることができるってことが好きなの。そして、それでボクが男らしくなくなるというなら、それで何が悪いって思ってるの。でも、アダム、キミはもっとちゃんとした人だと思ってたんだよ。本当に。キミが、キミとは違う人もいるというのを頑固に認めたがらないのを見て、ちょっと、ボクはキミとの関係を考え直したくなってしまったよ。ボクは、キミはそんなんじゃないと思いたいけど、そうじゃなかったみたい」 「お、俺……何て言っていいか分からない」 「助けてあげる? ただ、こう言えばいいんだよ。『わーお、ランス! 今日のキミはすごく可愛いよ! いいねえ、好きだよ……その水着!』って。そんなに難しいことじゃないと思うけど」 「わ、分かったよ。わーお、ランス。今日の君はすごく可愛いよ。君の新しい水着、俺、大好きだよ」 「素晴らしい。だって、キミが喜ぶと思って、こういうのを買ったんだから! ボクたち双子みたいになれるかも! キミが体毛を剃ったら……ね、分かるよね? じゃあ、一緒に来て。みんながここに来る時間までに、キミの姿をすっかり変えておきたいと思ってるんだ、ボク」 If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」(13:終) 「あら、ほんと、あなた可愛いわよ。すっかりきれいになって」 「あ、ありがとう……」 「笑顔は、ヘザー? あなたがあたしにいつも言っていたことよ、笑顔は。笑顔でいれば幸福になれるって。違う?」 「あたし……こういうの居心地が良くないわ、フランキー」 「フランキー様でしょ。ヘザー、どうやら垣根を作らなくちゃいけないみたいね。誰よりも、あなた自身がそれをきちんと理解すべき」 「で、でも、分からないんです。あたしは、ただ料理や掃除をするだけでよいと思ってて……」 「あなたはメイドなのよ。かつてのあたしと同じメイドなの。実際、あなたはこの状態を感謝すべきなのよ。あたしはあなたにメイド服を着せるつもりはなかった。それにあなたを本当の召使のように扱うつもりもなかったの。でも、そういうことをあなたはあたしにしたのよ。だから、正直言うと、あなたには、かつてのあたしと同じ境遇にあってほしいと思ってるのよ」 「で、でも……あたしはこんな状態は……」 「あなたならできるわよ。事実を言えば、あなたには他に選択の余地がほとんどないわ。あなたの上司のちょっとした演説、あなたの業界じゅうに広まったでしょ? あれで、あなたが職を得る可能性はなくなったの。もうちょっと貯金しておけばよかったのに、残念ね」 「あたしには家族がいるの。友人がいるの。こんな状況を認めなくちゃいけないなんてありえないの」 「可笑しいわ。みんな、あなたのことを嫌ってるわ、ヘザー。あなたはすべての人間関係を台無しにしてしまった。あなたのお母さまがあなたを助けることはもちろん、声を掛けることですら、するようなことがあったら、それだけでも、あたしはびっくりしちゃうわよ。ちゃんと現実と直面して。この状態は、すべてあなたが自分で招いたことなの」 「あんたなんか大嫌い……」 「どこに新しいことが? あなたはずっと前からあたしを嫌っていたでしょ? でもね、明るい側面もあるの。少なくとも、セックスなしで生活しなくてもいいの。あたしたち……というか、ポールもやりたくなる時があるし、それはあたしも同じだから。それに、可愛い奴隷女を使って遊んでも、あたしと彼の関係が脅かされないわけで、お互い安心できるでしょう? そんなわけであなたのメイド服が、服というよりエプロンにけが生えた程度になってるわけ。それだとあたしたちふたりとも、気軽に触れるから」 「あたしは……こんなこと許さないわ……」 「まあ、そうかしら。だって、あなたには選択の余地がないのよ、ヘザー。さあ、もう、仕事についてちょうだい。ポールとあたしは外に出てディナーを食べてくるわ。戻ったときには、家の中、チリひとつない状態だといいわね。それに、どうなるか分からないけど、あなたの仕事ぶりが良かったら、ちょっとしたご褒美がもらえるかもよ?」 「そんな仕事、あたしは……」 「ちゃんとするでしょ。これ以上、不平はなし。拒否もなし。言われたとおりに仕事をするか、この家から出ていくかのどっちか。それがあなたに与えられた選択肢。それに、ヘザー? あたしを試すようなことはしないこと。あたしは、あなたが服従しないのが分かったら、我慢する気はないから。即刻、首にするつもりだから」 「は、はい……フランキー様……」 「よろしい。大変よろしい。これは素晴らしい取り決めになると思うわ。今からでも、それが分かる」 おわり If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」(12) 「あんた、本当に最低オンナ。知っててやってんのよね? そんな完璧におめかしして歩き回ってさ。で、あたしを見てよ。食事もできないし。睡眠もダメ。しかも、あたし自身の彼氏だと言うのに、あたしに話しかけようとすらしない。彼は、お気に入りのオカマの邪魔者を甘やかしてばっかりいる」 「ヘザー、本当に大人になってよ。鞭と石つぶてって、いったい何の話し?」 「そのどっちかであんたをぶっ殺したいって話しよ。そうしたらあたしの人生を取り戻せるかもしれないってね」 「ヘザー、あなたがクビになったのはあたしのせいじゃないわ。あたしは何も関係ないわよ?」 「いい加減なこと言うのやめてよ。バカじゃないの? あんたが何もかもの原因なの、フランキー。どうでもいいけど、バカっぽい名前よね、それ。フランチェスカの方が良かったのに」 「あなたはそうでしょうね。あの頃のことを懐かしんでるようだけど、別にあたしがそう仕向けたわけじゃないのよ? あなたは仕事で自分のプロジェクトを台無しにしてしまったけど、それも別にあたしが仕向けたわけじゃない。それに、あなたが上司に暴力をふるったのも、あたしが全然関係なかったのは明らかだわ」 「あいつが目の前からどけようとしなかったから……」 「自分でしたことでしょう? 全部、自分で。あたしを責めたいなら、そうしてもいいわよ。でも、あなたはすべて自分で選んだことなの」 「死ね、くそアマ」 「ほらまた。大人になって。本当に。あなたに助けを申し出ようとここに来たのに、あなたったら……何て言ったらいいの……あなたったら、自分で問題の解決をすごく難しくしてしまってるんだもの……」 「助け? あんたの助けなんかいらないわよ」 「ええ、そう言うかもと思ってたわ。でもね、本当のことを言うと、あたしたち、あなたがここにいるのにうんざりしているの。もしあたしがわがままを押し通してたら、とっくにあなたを路上に追い出していたわ。というか、自分の姿をよく見てみて。最後にシャワーを浴びたのはいつ? 髪の毛を手入れしたのはいつ? ちゃんと食事したのは? 追い出される前から、すでに、あなたはホームレスの人みたいになってるじゃないの。でも、ポールはあの通り、優しい気持ちの持ち主だから、あなたを助けてあげたがっているの。そんなわけで、あたしはここに来たの。チャンスをあげようと思って」 「どんなチャンスよ?」 「実を言うと、あなたがあたしに与えてくれたのと同じチャンス。そのための制服も持ってきてるわ」 つづく If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」(11) 「こ、こんなの……支持するわけないわ!」 ヘザーは事態の変化にあわてた。「絶対に! さあ、仕事に戻りなさいよ!」 「あたしは、もう、あなたのメイドじゃないわ」とあたしは両手を腰に当てて言った。「ここはポールの家なの。そしてポールは、あたしはもうそんなことしなくていいと言ってるの」 ヘザーはポールを見た。「本当?」 ポールは肩をすくめ、「ああ」とだけ言った。簡潔なひと言だったが、その簡潔性ゆえにいっそう効果的だった。 ヘザーは、腰砕けになって椅子に座った。「理解できない」 床のタイルを見つめる彼女の顔にブロンドの髪が垂れた。「わけ分かんない」 あたしは彼女の隣に立った。自分がコントロール権を握ってると感じたのは何年ぶりだろう。たった2時間ほど前のことだった。彼女は帰宅し、あたしとポールが一緒になっている現場を見たのだ。ポールは、今後どうなるかをヘザーに時間をかけて説明した。この家に留まりたいなら、ポールをあたしとふたりで共有することに同意しなければならないと。だけど、言うまでもなく、ヘザーは聞く耳を持たなかった。 でも、あたしには分かる。ヘザーはその提案を受け入れるだろうと。ヘザーはあたしにはもはや関心がないかもしれないけれど、あたしの代わりになったこの男性には身も心もささげている。彼女の心の中、すでにギア・チェンジしてるのは疑いようがなかった。多分、頭の中で、ポールがあたしに興味を示したのは、ほんの一時的なことだと思ってるはず。いずれ、ポールのあたしへの気持ちが色あせれば、自分が元の立場に戻れると。そう思い込めば、彼女のよじれた性格には心地よいのは間違いない。 でも、ポールとあたしの間にあるものは移ろいやすいものではないことも知っている。彼はあたしを愛している。この1ヶ月という短い期間の情交だったけれども、彼は何度もあたしにそう言ってくれた。だけど、あたしが彼を信じる理由はそれではない。彼の言葉ではなく行動だった。行動は言葉よりはるかにずっと声高にものを言うのを知ったし、彼の行動は真の愛について語ってくれている。 ヘザーが顔をあげた。「それ、どんなふうに進むの? 一緒に寝る夜を交互にするみたいな?」 「それについては3人で考えよう」とポールは彼女の横にひざまずいた。彼は、彼女の顔にかかった髪の毛を優しく払いのけた。それを見て、あたしは胸に嫉妬の痛みがわくのを感じた。その痛みを隠し、耐えながら、彼の話しを聞いた。「だが、さしあたり、この関係では、僕たち3人の関係は平等としておこう。僕は君たちのどっちも愛しているんだ」 でも、平等に愛するってわけじゃないなと、あたしは思った。それは間違いないと思った。 つづく If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」(10) 「大丈夫?」とポールが訊いた。彼の固いペニスが半分まであたしの中に入っている。彼は何時間とも感じられるほどの長時間、この行為に向けてあたしの準備を整えるために使ってくれていた。舐めてくれたし、指で愛撫してくれたし、何リットルにもなるかというほどたくさん潤滑剤を使ってくれていた。でも依然として、彼のソレはあたしを真っ二つに引き裂いているように感じられた。「いつでもやめていいんだよ?」 「イヤ、やめないで」とあたしは息を絶え絶えにしながら答えた。 なぜ自分が彼に続けて欲しがったのか、今でも分からない。気持ち良くはなかった。少なくとも肉体的な快感はなかった。ではあったけれど、これは、あたしにとって登り切ってしまおうと心に決めた山だった。それに、アナルセックスで快感を得てるという人が何百万人もいるのを知っている。その全員が嘘をついてるはずはないと思った。だから、あたしはポールに続けるよう繰り返し求めた。 あの時、自分は、これをすることと、女になることとを結びつけたのだろうか? それも今は分からない。多分、あたしはこれを通過儀礼と思っていたかもしれない。あるいは、単に、他の普通の女性が愛する男性を喜ばすのと同じやり方で、彼を喜ばせてあげたいと思っていただけかもしれない。あたしには分からない。ともかく、苦痛が耐えきれなくなりそうになるのにつれて、あたしは、こういうことを考えようとするのを止めた。 主観的には永遠と思われる時間の末、ようやく彼は完全にあたしの中に入った。体の一部が埋められただけとは理解しつつも、体全体がいっぱいにされ、今にも全身が破裂しそうな感じ。もし後ろに手を回して触ったら血がついているはずだと思った。知らないうちに両頬を涙が伝っていた。でも、それでもなお、あたしはポールに続けてほしかった。 そして、実際、あたしが苦痛に顔をゆがめ頬を濡らしているにもかかわらず、ポールはやめなかった。彼ほど愛情深く、思いやりがある人間であっても、やはり男なのである。それに、彼自身は痛みを感じていないのであるから。 最後まで貫通した後、今度は引き抜きの動きになった。彼のペニスがあたしの内側を滑るように動くのを感じる。苦痛が和らいでいるのか? それとも、それはあたしの想像にすぎないのだろうか? はっきりしなかった。彼は、抜け落ちそうになるまで引き抜いた後、再び中へ戻ってきた。二回目の挿入は、最初の時より少し速かったけど、不思議と最初の時ほど痛みはなかった。また出ていっては入ってくる。6回か7回出し入れがなされた頃には、痛みは薄らいで意識の背後に消え、代わりに満足感と肉体的快感が混じった奇妙な感覚が前面に出てきていた。 彼のアレを受け入れることができたのだという満足感。彼を喜ばせているという満足感。自分は女になっている! 「もっと強く」と囁いた。ほとんど聞こえないような声で。ポールはそれに応じて、出し入れのペースを上げてきた。それを受けて、あたしはもっと速く、もっと強くと懇願した。苦痛は消えていない。完全には消えていない。というより、より大きな快感によって苦痛が打ち消されているだけと言えた。押し入れられるたびに、その快感が大きくなっていくのを感じた。どんどん膨らんでいく。つい何分か前は苦痛で体が破裂しそうだったのに、今は快感で体が破裂しそう。 そして、突然、溜まりにたまった快感の塊が破裂し、あたしのカラダ全体を包んだ。 これまでの人生で落胆しかもたらしてくれなかった一物であるあたしの萎えたペニスがが、ピュッピュッと水っぽい精液を放った。体全体がガクガク痙攣した。両脚がぶるぶる震えた。つま先がキューっと内側に反った。枕に顔を埋めながら言葉にならない叫び声をあげていた。もっと求めてお尻を後ろに突き上げながら、震える両手でシーツを握りしめた。オーガズムに達している。しかも経験したことがない形で。エクスタシーの波が次々に襲ってくる。そして、その間も、ポールはずっと突き続けてくれている。 自分は死にかかっているのだと思った。あるいは、長い人生で初めて生きているのだと。どっちなのか分からないけれど、この激しい経験の本質を説明することはできないものなのだと思う。ともかく、あたしにとって初めての女性としてのオーガズムは、人生を変える経験だったと言えば充分だと思う。 永遠と思われる時間が過ぎ、ようやくあたしの発作が収まり始めた頃、ポールがあたしの中に射精した。彼の全身の筋肉がギューッと収縮するのに合わせて、彼は切羽詰まった感じであたしの腰をつかんだ。そして次の瞬間、あたしの奥底に来ていた彼のペニスがそれまでになく膨張し、脈動を始め、それと同時に子種液であたしの中を溢れさせた。これは先とは違った種類のエクスタシーをあたしにもたらした。純粋に心理的な満足感。でも、それは肉体的なオーガズムとほぼ同じくらいインパクトがある感覚だった。 ハアハアと苦しい喘ぎで呼吸しつつ、あたしは、ベッドにがっくりと突っ伏した。彼があたしの中から抜けてるのをぼんやりと感じた。あそこがぱっくりと口を開け、空っぽになっているような気がした。それは本来の姿ではなく、中を埋められ満たされている状態が本当の姿のような感覚がした。だから、すぐにまた埋めてほしいと思った。そうしてくれないと困ると。何分間か、それしか考えていなかったと思う。でも、ゆっくりとではあったけれども、その気持ちは薄らいでいき、やがて、満足感だけが後に残った。 ポールがあたしの隣に横たわった。うつぶせに横になってるあたしの腰のくびれに腕をぐったりと回して垂らしていた。ふたりとも何も話さなかった。どちらも、そうする必要を感じなかったから。ふたりとも、カラダが話さなければならないことのすべてを語っていたので、後は、黙って横になっているだけで満足だったのだと思う。 つづく If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」(9) 彼といちゃつきながらも、これは良くないと思っていた。あたしが女ではないのは事実だし、ゲイでないのも事実。でも、彼と一緒にいるのはとても気持ちよかった。その理由のひとつは、人との接触が欠けていたという単純なことだったと確信している。この半年間で、あたしが人に触れられたのは1度だけで、あたしが決まりに違反したことで、ヘザーにお仕置きをされた時だけだった。キスはしていない。もちろん、セックスもしていない。もはやあたしたちが男と女として機能できなくなっていたから。端的に言って、あたしは人に関心を持って体に触れられることに飢えていたのだと思う。そんな時、突然、ポールはあたしが求めていたすべてを与えてきたのだ。いや、それ以上のものを。 本能が支配した。彼の硬直した部分があたしの開いた脚に押し付けられるのを感じた瞬間、何をしたらよいか分かった。というか、あたしのカラダが分かったと言うべきか。あの時点では、あたしは彼という乗り物に乗った乗客のようなものだった。その乗り物の上、いくつも小さなキスをしながら、ゆっくりと彼の胴体を下っていった。とてもいい匂いがした。男らしい匂い。あたし自身は、もうずいぶんそういう匂いを発していなかったと思う。 キスの小道は、やがて彼のスラックスの腰バンドの下へと到着した。震える手で、そのボタンを外した。彼のズボンを引き降ろし、逞しい太ももの下へと手繰っていく。でも、そうする前から、あの盛り上がりは見えていた。昔だったら、それを見て嫌悪感を感じたかもしれないけれど、今は、それを見て興奮しか感じない。 そして、ほとんどためらうことなく、両手の指を彼の下着の腰バンドに引っ掛け、引き降ろした。すでに床に落ちているズボンの上に、新しく彼の下着が落ち、重なる。その間も、あたしは欲望の対象を見つめていた。一切の抑制を忘れ、純粋な欲情だけの目でそれを見つめる。 それは欲求からピクピク震えていた。あたしがそれを求める気持ちとほぼ同じくらい、それはあたしを求めていた。いや、それ以上かもしれない。そして、それを見て、あたしは緊張に体がいっそうこわばっていくのを感じた。 手を出し、軽く触れた。とても熱い。芯は固いのに皮膚は柔らかくベルベットのよう。自分でも何をしてるのか気づかぬままに、自然に顔を寄せていた。舌を伸ばし、アイスクリームのように舐めた。ぺろぺろと。その味が舌の上で踊ってる。塩辛さ。男っぽさ。汗と何か他の、何かピリピリする味。一度、鼻から大きく息を吸った。ムッとした彼のエッセンスの匂いを楽しむ。 それまでペニスをしゃぶりたいと思ったことは一度もなかった。確かに、想像したことはあった。誰でも想像したことがあるはず。でも、あたしは、それを想像しても興奮することはなかった。でも今、ポールのペニスの頭部を舌でゆっくりとねぶりながら思うことは、早く唇でそれを包み込みたい、そうやって彼を喜ばせたいと、ほとんどそれだけになっていた。 興奮でお腹の筋肉がワナワナと震えてたけれど、思い切って口に含んだ。そうしながら目をポールに向け、彼の瞳を見つめた。彼もあたしを見つめ返してくれた。まぎれのない至福の表情をしている。そして、生まれて初めてのフェラをするあたし自身の表情も、彼を鏡に映したように、同じ至福の表情になっていた。 つづく If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」(8) 「君はどうすべきだと思う?」と彼が訊いた。 急に、彼がシャツを着てないことがとても重要なことに思えた。それに、あたしがオレンジのタンクトップとボーイショーツ( 参考)だけの格好でいることも。あたしは唇をかんだ。緊張でお腹がキリキリしている。自分が何をしたいか知っている。彼が何をしたいかも知っている。だけど、それをすることはできない。そういう形でヘザーを裏切ることはできない。 頭を振った。そういう思いはどこから出てきのだろう? ヘザーはあたしの忠誠心に値しない妻だった。彼女はあたしを強引に女性化した。そして、あたしが大変な苦労をして女としての新しい生活に適応したのに、彼女はそんな苦労があるとは思ってもいなかったのは明らかだ。ヘザーはあたしの人格を破壊したし、それも、ためらうことなく行ったのだ。さらに、彼女は不倫を働いた。多分、あたしたちふたりが一緒になったときから行っていたことだと思う。あたしが彼女のメイドになった後は、一度ならず、あたしが男性として彼女を満足させたことがまったくないとほのめかした。 だったら、どうしてあたしはためらっているのだろう? 彼と肉体的に結ばれたら心が落ち着くはずなのに。それをしても正当だって感じられるはずなのに。勧善懲悪、因果応報であるのに。 がっくりと両肩を下げた。根本的に、あたしはヘザーのような人間ではないということだ。彼女にさんざんひどいことをされてきたにも関わらず、あたしはいまだに彼女を気にしている。いまだに、彼女を傷つけたくないと思っている。だから、これをこれ以上進めることなどありえない。 だったら、どうして、あたしは急に彼の上に乗ったのだろう? どうして、彼と唇を重ねているのだろう? どうして、両手の指を彼の胴体に這わせ、波打つ腹筋の感触を楽しむように上下にさすっているのだろう? どうして、この行為を止めることができないんだろう? もちろん、答えは知っていた。欲望と興奮に心を支配されていても、あたしはその答えを知っていた。 それは、あたしは女だということ。彼は男だということ。そしてあたしたちは求めあっているということ。 そして、その瞬間、意味があることは、それだけになっていた。 つづく If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」(7) 「ダメ。本当に。もしヘザーに見つかったら……」 「ヘザーはいないよ」とポールはあたしにウイスキーが入ったタンブラーを差し出した。「知らないことなら、傷つくこともない」 あたしはウイスキーを受け取った。もし妻が、いや、正式に離婚して3週間近くになるから、元妻だけど、もし彼女があたしが彼女の高価なお酒を飲んでいたと知ったら、しこたま叩かれるだろう。実際、あたしは、すでに一度、彼女の膝にうつぶせにさせられ、お尻を叩かれるという屈辱を味わっていた。しかも、彼女のお友達が見ている前で。あの経験は二度と繰り返したくない」 茶色の液体をひとくち啜った。喉が焼ける感じに、思わずハアーっと息を吐いた。あたしは、笑顔であたしを見るポールにちらりと視線を向け、「ごめんなさい。あまりお酒は飲まないので」と言った。 「いいんだよ。君は今みたいに顔をくしゃくしゃにすると、本当にキュートに見える」 「ポール……あたしたち……こういうことは……」 「不適切だなんて言わないように」とポールは片手をあたしの膝に乗せた。このひと月かふた月ほど、彼はあらゆる機会をとらえてはあたしの体に触れてきてるように思える。そして、気づいて恐ろしく思ったことに、あたしはそれを嬉しく感じているのだった。もっと言えば、彼とふたりだけになるときが来るのを待ち望んでいる自分がいた。表面的には何も起きていない。でも、そうだからと言って、あたしが彼とのことを思い続けていないことにはならない。実際、いつも彼をのことを意識し続けていた。 「不適切だわ」 やっとの思いで口に出した。急に喉がカラカラになった。あたしの細い指が彼の指に触れた。ただ一瞬、触れただけだったけれど、その瞬間、体に電流が走った。「分かってるの……あなたがあたしのことを見てたこと……いつもずっと。あなたが何を考えているのか分かってるわ」 「本当に?」 「あ、あなたは、あたしとしたがってるんでしょう?」 小さくつぶやいた。「彼女としてることみたいなことを」 「それは否定しないよ」 心臓が喉から飛び出そうになったけれど、何とか堪えた。「じゃあ、どうしたらいいの?」 つづく If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」(6) 「俺といる時はそんなことしなくていいんだよ。ヘザーは何時間も帰らない。服を着たかったら、着ていいんだから」 「何を言いたいの? あなたは、何もかも見てきたでしょ。それに、何を気にしてるの?」 「こんなこと言っても始まらないだろうけど、俺は、この状態の何もかも、よく分からないんだ。そもそも……」 「あなたがあたしの妻とエッチしまくり始めてから?」 「彼女は、君たちは別れてると言ってたんだよ、フランチェスカ」 「別れてないわ。というか、少なくとも誰からも離婚届もらってないし」 「すまない。ただそれだけだよ。俺は別に……」 「もうやめて、ポール。ほんとに。あたしたちがあなたと一緒に暮らし始めてから、もう1ヶ月以上になるの。もういいでしょ。どうせ、あたしはあなたのメイド。変態メイド。あたしは、これまでベッドに横になって、毎晩欠かさずあなたたちがやってるのを聞いてこなくちゃいけなかった。それに、あなたたちふたりのベッドメイクや掃除をするときに、あたしが気づかないとでも思ってるの? そういうことがあなたが来た最初からずっと続いてきたの。だから、あたしを侮辱することに関して、まるで自分が傍観者だったみたいな振る舞いをするのはやめてちょうだい。あなたは最初からずっと、あたしを辱しめる場にいたんだから」 「そういう感じじゃなかったんだ」 「本当? だったら、どんな感じだったと言うの? あたしが隣の部屋で寝てるのを知りながら、あたしの妻にセックスしまくっていたわけだけど、その間、あなたの頭の中ではどんなことを考えていたか、本当に、本当に知りたいものだわ」 「最初、君もこういうことが好きなんだろうと思ってた。何て言うか、変わった趣味のゲームのようなもんなんだろうなって。特に、あのビデオ会議の時に君の姿を見て、そう思ったんだよ。そして、その後、彼女は君を連れてここにやってきた。……よく分からないけど、俺はタガが外れてしまっていたんだと思う。すまないと思ってるんだよ。もし、すべてをやり直せるなら……」 「まあ、やり直しなんかできないでしょ。誰にもできないわよ。というか、あたしを見て、ポール。あたしを見て、あたしがどんな人間か言ってみてよ」 「美しい女性だよ」 「その通り。あたしは……ちょっと待って……今なんて言ったの? あたしのことを美しいって?」 「ああ、その通りだ。そういうことを言ってはいけなかったのか?」 「ええ? いや。ええ。分からないわ。ただ……そういうことを言うのはやめてくれる? それに謝るのもヤメテ。謝ってもらっても、どうしようもないから」 つづく If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」(5) 「き、キミの……キミの何? 何を言ってるのか分からないよ」 「んもう、フランチェスカったら。あなた可愛くて運が良かったわね。可愛くなかったら、やっていけないかもしれないもの。彼はあたしの彼氏。そんなに複雑なことじゃないでしょ?」 「で、でも……キミはボクの妻なんだよ……」 「あたしはあなたの雇い主。あなたがあたしに雇われた瞬間、夫と妻の関係からは離れたの。あなたも分かってるでしょ?」 「そ、そんな……ボクに対してそんなことをするなんて」 「もう決まったことよ。ポールとは、もうひと月以上デートしてるわ。それに、あたしたち、1年も前から知り合いだったし。正直言って、あなたが気づかなかったことの方が驚き。あたし、別に隠そうとしてなかったのに」 「ボクは……ボクは、キミたちはただの友達だとばかり……」 「頼むわ、フランチェスカ。あなたはちょっと間抜けなところがあるけど、そんなにウブじゃないでしょ? ポールみたいな男よ? よしてよ。あたしが彼を取り逃がすなんてありえないわ。でも、知っていてほしいんだけど、あたしが彼のところに引っ越すとき、あなたも一緒に連れて行くつもり。そうすれば、あなた、失業せずに済むでしょ? それに、どうなるか知らないけど、ポールはあなたの給料を上げてくれるかもしれないわよ」 「彼のところに行く? 本気で……でも、ボクたちまだ……キミはボクの妻なんだよ?」 「確かに書類上はね。でも現実は? あなたはもうちょっと頭いいでしょ? ええ、さらに進んで離婚してもいいわよ。それがあなたの望みなら、そうしてもいいわ。でも、離婚した相手を雇い続けるって何だか気まずいって思わない? ポールもそう思うと思うわ。でも、あなたが新しい人生に向けて変身するのを、あたしも彼も完全に同意してて、手助けしてあげようって思ってるの。それに、あなた、本当に有能なメイドになってるでしょ? あなたの代わりに別の人を訓練するなんて、考えただけでうんざり」 「でもボクは……ボクは……」 「それにどうなるかなんて分からないんじゃない? ひょっとすると、3人一緒で楽しくやっていく道を見つけられるかもしれないんじゃない? ポールは気にしない人なの。彼、あたしがべつの女の子といちゃつくみたいなの、好きそうなのよねえ。だから、もう、バカげた考えは頭から追い出したらいいんじゃない、フランチェスカ? そんな考えは、そのおつむに入れてても、邪魔なだけ」 「う、うん……多分、そう……」 「そうよ。ちゃんと分かるじゃない。分かってくれて嬉しいわ。さ、じゃあ、メイド服を着て。あと1時間くらいで、ポールが来るの。あたし、彼にちゃんと良い印象を持ってもらいたいから」 つづく If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」(4) 「そんな顔しないで。あなたが、隔離要請が解除されたので出かけたいって言ったのよ」 「本気で言ってるの? ヘザー、キミはボクの服を全部売ってしまったじゃないか」 「実際は、大半をグッドウィル( 参考)に寄付したんだけどね。でも、あなた、あたしに感謝すべきだわ。処分した分、全部、替わりの服を用意してあげたんだから」 「女物の服でね! マジで、ボクのこの格好を見てよ!」 「もう、お願いよ。あなた、もう2ヶ月以上メイド服を着てきてるのよ。まだ、あの手の服にこだわるなんてありえないんじゃない?」 「でも……でも、あれは違うんだよ。あれは……分かるよね?……あれは家の中だけのこと。誰にも見られなかったから」 「そもそもの初めからあなたの可愛いショーを見たあたしの同僚たち以外には誰にも見られなかったわね。あと、あの動画をシェアした人たちみんな以外にはね」 「思い出させないで」 「ちゃんと聞いて、フランチェスカ。こういうこと、もう100回は話し合ってきたんじゃない? あなたがこれを一時的なことと思ってたのは知ってるわ。隔離要請が終わったら、外に出て、仕事に就いて、こういうことは全部終わるだろうって思ってたんでしょ?」 「最初からずっと仕事に戻るつもりでいたよ」 「あなたはちゃんと仕事をしてきてるじゃないの。あたしがその報酬を払ってるわ」 「それとは違うんだよ」 「頼むから、ちゃんとして。あなたは仕事をしてる。あたしは給与を払ってる。それにあなたの仕事ぶり、素晴らしいわ。あなた以上のメイドは求めようとしても無理」 「ボクの人生での目標は……」 「その話はもう充分。マジで、またあなたに懲罰を与えたくないの。罰を与えると、あなたが感じる痛みより、ずっとあたしの心は傷つくのよ」 「本当かなあ」 「いいわ。そんなことどうでも。家にいたいなら、そうしなさい。あたしが外で楽しんでる間に、自分の部屋の掃除でもしたら?」 「嫌だ! ボクはどうしても……ボクは何か月もここに閉じ込められてきたんだ。どうしても……どうしても外に出たいよ」 「じゃあ、文句を垂れるのはやめなさい」 「わ、分かったよ。でも、靴くらいは別のにしてもいい? いまだにハイヒールだとふらついてしまうから」 「いいえ、ダメ。あたし、ヒールを履いたあなたが好きなの。それに、そのロンパー( 参考)、可愛いわ。それを着ると、あなたの素敵な脚が良く見えるもの」 「あ、ありがとう……って言っていいのだろうけど」 つづく If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」(3) 「うげぇ」と妻のヘザーがボクの半立ちを指さして言った。「まだ、それ、あるの? きもっ。何とかしてよね」 数週間ぶりに勃起したというのに、彼女は見たくないモノを見たような反応をした。ボクは激しく落ち込んだ。彼女に強く言われて、あのバカげたメイド服を着始めてからずっと、ボクは自分が男であると自覚するのが難しくなっていた。その不安感は寝室で如実に効果を発揮した。でも、そういう機能不全になった人に向けられる心配とか怒りとか、その他、普通の人が向ける反応とは違って、ヘザーは安心した顔をしていた。まるで、厄介な義務をようやく果たせたような顔をしていた。 もちろん、ボクと彼女はボクの不能を別の方法で埋め合わせた。セックスは重要よと彼女は言った。ボクは男性として当然の行いができないことから、他の方法で彼女を喜ばす方法を会得しなければならなかった。つまり、ボクと彼女の性生活は、主に、ボクが彼女の脚の間に顔を埋める行為に変わったということ。終わるまで何時間と思える時間がかかるのが普通だった。もちろん、ヘザーはボクの行為に対してお返しをしてくれた。乳首をいじるとか、指をボクの未踏地のアヌスに滑り込ますとかで。ボクのペニスは一貫して無反応のままだった。 これはよくないと思い、ボクはこれを変えようと心に誓っていた。失われた男らしさ。そのいくらかだけでも取り戻したい。ボクは、ネットであの青色の錠剤、つまりバイアグラのまがい物を注文した。そして分かった。ボクがほとんど勃起できなくなっていたのは、その薬のせいだったと。ボクはひどくがっかりした。原因が分かっても、依然としてほぼ萎えたままの状態だったから。ではあるけど、久しぶりの勃起で、ひょっとすると妻と本当のセックスができるかもしれないとボクは天にも昇る気持ちだった。 でも、彼女はそうは思っていなかった。それは明瞭だった。そして、そのことはボクの心に突き刺さった。 「ねえ、ボクたちアレをしてもいいと思ってたんだけど……分かるよね?」 ヘザーは、一瞬、何を言ってるか分からないといった困惑した顔でボクを見つめた。そして、急に何のことか分かったのだろう。「ああ……アレ?」 「うん、アレ」 「ちょっといい? フランチェスカ」と彼女はボクに近寄り、両肩をグッとつかんだ。「無理……正直、無理……だと思う。あたしは、アレはもう望んでないの」 「で、でも、キミはボクの妻なわけだし……」 「そうかも。でも、あなたはあたしの夫ではないわ。もはや、違う」 「な、何を言ってるか分からないよ」 「いいえ、分かってるでしょ? 今のあなたはヘルパーなの。それにもっと言っちゃうと、自分の姿を見てみて? 間違いないと思うけど、胸が膨らんできてるでしょ? もう紳士服は着てない。1ヶ月以上も。それ以上かな? 今はあたしたちふたりとも正直になって、明らかなことを認めるべきじゃないかしら」 「あ、明らかなことって?」 「あなたは女だってことよ」と彼女は言った。「少なくとも、シシーだってこと。どっちなのか、まだあたしには分からないけど。でも、はっきりさせられるわ。ふたりで力を合わせれば」 「ぼ、ボクは別にそんなこと望んでないけど……」 「望んでるか否かの問題じゃないの。現実がどうなってるかの問題なの。そして、あたしたち、その現実に対処する以外に選択の余地はほとんどないのよ。さあ、身支度をして、メイドの服装になりなさい。自宅待機の制限が解除されたら、お友達を家に呼ぼうと思ってるの。その時にはあなたに給仕をしてほしいわ」 「は、はい、わかりました、ヘザー様」 ボクは自動的にそう返事をするようになっていた。 つづく If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」(2) 「で、でも……これってボクたちが同意したことじゃないよ!」 「ほんと? 初耳だわ。あたしがオンライン会議をしていた間、あなたが後ろをうろうろするのは防ぎようないもの。ちなみに、会議に出てた男性はみんなあなたのパンティ、可愛いって言ってたわ」 「み、みんな……見てたの?」 「もちろん。あなた、カメラの真ん前で前かがみになってたもの。正直言って、あなたがカメラが動作してたのを知らなかったなんて信じられないわ」 「部屋には誰もいなかったけど……」 「これ、すでに話し合ったことだわ。あたしはトイレに行くために部屋から出たの。あなたが注意してなかったとしても、あたしにはどうしようもできないこと。もっと言えば、あなたの自己責任といえるわね」 「ボクの自己責任? ボクの? ネットに上げたのはあの人たちの方なんだよ! ボクの友だちにも見られてしまったし、キミの友だちにも見られてしまったと思う。ソーシャルメディアじゅうにばら撒かれてしまってるんだよ。だけど、最悪なことは何かって分かる?」 「あたしが答えなくても、どうせ自分で言うんでしょ?」 「最悪なのは、ボクがそれを楽しんでるように見えることだよ!」 「まあ、だって、あなたニコニコして鼻歌うたってたもの。それに踊ってもいた。すごく意味深なカラダの動きで」 「ボクは……キミがあんなだったから……これは……これはボクのせいじゃない! こんなこともうやりたくない!」 「いいわよ。で、いつ家を出ていくの?」 「な、何て?」 「いつ出ていくのって訊いたの。いい? あなたが失業したこと。それには理解を示しているの。ひどいことだわ。で、あなたはそのことを盛んにこのパンデミックのせいにしたがっているようだけど、あなたがクビになったのは、今回のことが起きるずっと前のこと。半年前から無職になっていたじゃないの」 「でもそれはボクのせいでは……」 「あなたのせいだったことは何もない。でもね、そんなこと関係ないの。重要なことは、あたしは、この家の家計を支える唯一の人間になるつもりはさらさらないということ。分かってるでしょ? この家のおカネはあたしが払ったし、あたしの所有なの。あたしは、他の人にたかられ続けて平気でいる人間じゃないの。あなたのことは愛しているわ。でも、こういう種類の関係は続けられない。だから、あなたがそれ相応の負担を抱えるつもりがないのなら、あなたにはここにいてほしくないわけ」 「でも、どうなのかな……ダメなのかなあ……普通の服装に戻れないのかなあ? もう1ヶ月になるし……」 「ダメ。フランチェスカはこの家にいてもいいけど、フランクはダメ。仕事を得るまではダメ。で? どうするの? フランク? それともフランチェスカ?」 「ふ、フランチェスカで」 「よろしい。この件についてあたしたちが合意できて嬉しいわ。じゃ、お風呂の準備をしてちょうだい。それに笑顔を忘れずに。動画に映ってたように笑顔になって。そう、いい娘ね」 つづく If you like this kind of stories, please visit Nikki Jenkins' Feminization Station https://thefeminizationstation.com/home/
 「隔離への順応」 「あら、まあ! すごく可愛い! あたし、あなたなら、目を見張る姿になるって分かっていたの! さあ、言って、言って……あたしの言うとおりだったでしょ? 違う?」 「ボクは依然として完全にこれに乗ってるわけじゃないんだけど、ヘザー」 「ヘザー様でしょ? 忘れないでね、あなたは今はあたしのメイドなの」 「でも……」 「あなたも同意したでしょ。だからこれから何とかして逃れようなんて考えないこと」 「仕事に戻るまでは家の掃除を担当することは同意したよ。でも、こんな……こんなコスチュームには同意しなかった。スウェットパンツとかじゃダメなの? ていうか、この服だとボクはまるで……まるで、おっぱいがあるように見えてしまう」 「それを買ったのあなたでしょ?」 「キミに買ったんだよ! キミがつけたら……セクシーになるかと思って……」 「ええ、セクシーだわ。でもね、あなた。ちゃんと現実を見て! それを着けたあなたは、あたしなんかより何倍もセクシーに見えているの。床屋が軒並み休業しててホントありがたいわ。あなたのそういうヘアスタイル、あたし好きだもの。加えて、あなたはお化粧も本当に上手だし」 「本気でボクにこういう格好をさせ続けるつもり?」 「もちろん。どうして?」 「だ、だって、ボクは男だから。男性なんだから」 「それを着てる間は違うわ。全然違うもん。だからあなたの名前を考えたの」 「ボクの名前の何がおかしいの?」 「だって、その姿を見てると、フランクって呼ぶの変に感じるのよ。そうじゃない? ぜったい変だわ。前からフランチェスカって名前がずっとフィットしてると思ってたの」 「フランチェスカ? まさか本気で……」 「もうお話は充分よね、フランチェスカ。あたし、仕事に行かなくちゃ。それと、おうちは、ひとりでにきれいになるものじゃないわよね? あたしが戻るまでにきれいになってるといいわよね? シミひとつない状態ってことだけど。分かった?」 「うん」 「うん、って何が?」 「はい、ヘザー様」 「いい娘ね」 つづく
「コロナウイルス自宅待機」 Coronavirus Stay-cation by oneaesthete 出所午前7時、目覚まし時計が1秒間だけ鳴って止まる。マディが素早く止めたからである。毎朝、彼女はこうして目が覚め、仕事に行く準備を始める。彼女はいつも全裸になって寝ている。だから、起きる時の寒さは避けられない。寒いだろうなとぼんやり思いつつ、掛け布を引き剥がすようにめくり、両脚を振ってベッドのわきに足をつき、体を起こし、二度三度、目をこすった。けれど、完全には目覚めていない。そのまま、朦朧と、いつもの朝のルーティンを続けた。そして、朝の紅茶のためのお湯を途中まで沸かしたところで、ようやく彼女は気が付いた。「今日は仕事に行かなくていいんだった!」 「コロナのバカ……コビット19だか何だか知らないけど」と、マディは小さな声でつぶやいた。ロックダウンの期間、職場も閉鎖なので、これから2週間はレイオフ状態になっていた。収入がなくなり頭に来ていたけれど、突然、自由な時間をたんまり与えられたことには文句を言えなかった。週60-70時間のハードな勤務時間に慣れされてしまった彼女にとって、「自由な時間」というのは、一種、新しい概念だったのである。実際、自由に使える時間について考えれば考えるほど、これまで時間がなくて着手すらできなかった仕事以外の個人的なプロジェクトが、To-Doリストにどんどん積み上がっていくのに気づくのだった。 「まあいいか」と彼女はため息をついた。……さっきまでなら、もうちょっと寝ていたいと思ってたけど、もう起きちゃったし、ティーの準備もしてることだし、このまま一日を始めちゃってもいいかもしれない……。 マディは、何をしようかなあといった顔で部屋の中を見回した。どのプロジェクトから始めようか? 何気なく、ガラスの引き戸ごしに中庭へ目をやった彼女は、むかし作った小さな庭をずっと放置していたことに気づいた。……お天気もいいし、あれから始めるのが一番かも……。 ふわふわ毛のついたスリッパをはき、マグカップを手に、紅茶を啜りながら彼女はベランダに行き、引き戸を開け始めた。でも、途中まで開けたところで、朝の冷たい空気に触れ、彼女はある事実に気づいた。自分が、スリッパを除いて、一糸も身に着けていないということに。 マディは急いで引き戸を閉め、カーテンの陰に隠れ、こっそり誰か見てる人がいなかったかと覗いた。でも、改めて外を見て気づいたのは、外が不気味なほど静まり返っていることだった。確かに、普段でも、この早い時間帯だとたいていの人は起きていない。その上、この町は小さなカレッジタウンであり、コロナウイルス危機のために、住民の大半を占める学生たちの多くが故郷に戻ってしまい、ほとんど人がいなくなっていた。それに、ここに留まることにした人たちも、たぶんできるだけ寝ていることにしてるのだろう。加えて、マディの住居の周りにはフェンスがあるので、彼女の家を覗き込めるほどの高さのビルは3つほどしかなかった。 見られる心配がないと気を強くしたマディは、改めてカーテンも引き戸も開け、庭に出て、引き戸を閉めた。朝の陽ざしが肌に当たる感覚の気持ちよいこと。信じられないほど心地よい。 ガーデンチェアの横に紅茶のマグカップを置き、腰を下ろした。紅茶を啜りながら、少しだけ日光浴をしようと。チェアの背もたれに背中を預け、ゆったりとした姿勢になった。チェアのひんやりとした生地が裸の背中とお尻に感じる。その、ひんやりとした感じが、日差しに照らされた太ももやお腹や胸に感じる温かさと一緒になって気持ちいい。 「うーん……」 朝にブラを着けなくても構わない。そのことがすごく気持ちいい。ましてや何も着ないでいられるのだから、なお一層。この時になって初めて、マディは日々の生活でいかにストレスを受けていたかに気づいたのだった。何時間も何時間も、着心地の悪いブレザーやスラックスに身をまとい、あるいは窮屈なスカートにハイヒールの格好になってすごす。その間、自分の仕事でちゃんと物事がなされているかをチェックするのに全エネルギーと全神経を集中させる。そんな毎日だった。マディは、自分が忙しいと気づくことすらできないほど忙しい日々を過ごしてきたのだった。だが、今は、パティオの椅子に手足を伸ばしてゆったりと座りくつろいでいる。聞こえるのは、鳥のさえずる声だけ。紅茶の香り。そして体を優しくなでるそよ風。ようやく彼女は、長い間、抱えてきたストレスを心の中から洗い流すことができたのだった。「ああ……。やろうと思えば、毎朝、これができるのね」と彼女はため息をついた。 3、4分だろうか、彼女は目を閉じて、ゆったりと座っていた。太陽光線に冷えた肌を射抜かれる感覚を味わっていた。その時、突然、強い風が何秒間か吹いた。マディは素早く両手で胸を抱えるような姿勢になったが、同時に冷たい空気に当たったせいか、左右の乳首が固くなっていることに気がついた。彼女は、鳥肌が立ったのを直そうと両手で乳房を優しくさすり始めたが、確かに鳥肌は消えたものの、すぐに、自らの手で乳首を一層固くしてしまっていることに気づいた。もちろん、寒気とは別の理由で固くなってしまってるのだが。ともあれ、それにより、マディは体がうずき始めるのを感じた。お馴染みの結果だった。急に、自分が裸で庭にいることを思い出し、マディは慌てて体を起こした。 彼女は、片腕で乳房を隠し、もう片手で股間を押さえながら、周囲を見回した。でも、依然として辺りには誰もいないことに気づく。一瞬、部屋に戻って、手短にソロ・セッションをして解消しようかと考えたが、それはやめた。この屋外の空気があまりにも気持ちいいこともあるし、加えて、こんなにリラックスしたことも、さらに自分でも驚くけど、こんなに性的に興奮したことはしばらくなかったからである。思い返せば、最近、自慰のための時間も気力もなかったのだった。今この瞬間せっかく得ている心の平安を失うかもしれないリスクは避けたかった。 そういうわけで、誰にも見えないし、声を聞かれることもないだろうと、彼女は元通り椅子にゆったりと座り、胸を押さえていた手にやりかけの仕事を再開させた。その手は勝手に指先を立てて、乳首をカリカリと掻き始めたが、もちろんマディはそれを止めようとはしない。経験上、こうして掻くと間違いなくジュースが溢れ出てくるのを知っていたし、この時もそれは同じだった。太ももを少しだけ開き、軽くトリムしてる陰毛の林の中に中指を這わせた。その指は脚の間を進み、外側の唇の間へと進む。マディは指をその真ん中の部分に押し付けた。みるみる濡れてきているのが分かる。 「ああーん……」 喘ぎ声が出た。自分の声に自分で驚いた。周りが静かなだけに、その声はいつまでも響き渡るように聞こえた。誰かに聞こえたかもと気になったからか、マディは口を閉じたが、指の方には探検を続けさせた。 さらにちょっとだけ指を伸ばし、先端だけをアソコに入れ、濡らした後、クリトリスへと矛先を変えた。その瞬間、体がブルッと震え、またも喘ぎ声を漏らした。ただ、口を閉じてるのでくぐもった声にしかならなかったが。指はクリトリスのところを優しく円を描くように動いた。同時に、もう一方の手はもう一方の乳房へと移動し、乳房全体をぎゅうっと体に押し付ける動きをした。 アソコにもっと自由に触りたくなった彼女は、左脚を持ち上げ、椅子の上に乗せた。結果、脚を大きく広げた姿勢になっていた。近くに人がいたら、隅々まで見えていたことだろう。マディは、あまりに快感に溺れてしまい、もはや誰かに見られるかもしれないことなど全然気にしなくなっていたからか、今度は指を2本にし、バギナに滑り込ませた。ヌルリと簡単に入っていく。いったん入れた後は動かし始める。最初はゆっくりと、でも次第に強さを増しながら。 声を漏らすまいと努力はしていたものの、エクスタシーへと昇っていく過程で、どうしても声を漏らしてしまう。ハッと息をのむ声。ああーと安堵する声。そして苦悶してるようにも聞こえる喘ぎ声を。空いている一方の手で腹部、太もも、そして胸を撫でまわるかたわら、もう一方の手は3本目の指も入れていた。頭の中は空っぽに近く、特に何も考えなくなっていた。意識は、ただひとえに、体が感じている刺激のひとつひとつに集中していた。 今や彼女の指は驚くほど速く動いている。椅子がギシギシ音を出し始め、彼女の体が激しくうねるのに合わせて、少しずつ位置をずらしていた。 「ああ、いいっ! すごいわ! 感じる。ああん。あっ、すごい!」 上品さを求める意識などすでに放り投げてしまい、はしたないほど自由奔放に声を出し、喘ぎ、叫ぶマディだった。体をさすっていた方の手を左の乳房に戻し、強く揉み、同時に股間の指で容赦なく自分自身を犯した。そして、それから間もなく快感は頂点に達し、マディは全身をけいれんさせた。オーガズムが荒波となって彼女の体を飲み込んでいく。 自分では分からなかったが、呼吸を止めていたらしい。ようやく呼吸を再開し、ぐったりと椅子の背もたれに背中を預けた。両腕を椅子の左右にだらりと下げ、脚も大開きのまま。呼吸は短く、時折、ちょっと止めては苦しそうに大きく吸う。玉のような汗が顔や体に噴き出している。 オーガズムが終わった後も、彼女は興奮が醒めるまでの何分かぐったりと裸のまま日光とそよ風に体をさらしていた。が、日が高くなるにつれ、日光が肌に暑く刺すように感じられてきたマディは、ようやく目を開いた。いったん目を開けたものの、陽の光がまぶしく、すぐに細目になった。 その時、彼女は視界の隅に人の姿が見えたように思った。気のせいではない。確かに誰かがフェンスのところからさっと逃げるような姿が。さらに、その直後に、近くで引き戸を閉める音も聞こえた。 マディは即座に両腕で裸をできるだけ隠し、体を起こした。アドレナリンが噴出し心臓が高鳴ってるのを感じつつ、人の気配を探して辺りを注意深く見まわした。でも、結局は、誰も見つけられなかった。 急いで椅子から立ち、戸を開け、部屋の中に飛び込み、戸を閉め、カーテンを引いた。そのすべてを、ほぼ一瞬の動作で行った。 あそこに誰かがいてあたしを見ていたのかしら? 急にそわそわしてきた。どこまで見られたのかしら? あたしの知ってる人? 動画に撮られていた? 次々に問いが浮かび上がった。心配の気持ちで興奮し、心臓がどきどきしてるのを感じたけれど、彼女自身、驚いたことに、そのことを考えているうちに、あそこがいっそう濡れてくるのも感じたのだった。 ……まあいいわ、どうせ、今日は他に何もすることがなさそうだし。 マディはそう思いながら寝室に戻り、引き出しの中からお気に入りのおもちゃを取り出したのだった。 おわり
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