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The big night 「大切な夜」 

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64_The big night 「重要な夜」

「早くしろよ、遅れるぞ」 とジョナが言った。

ケイシーはちょっとだけためらい、返事した。「すぐに出るから」

その声は明るい調子だったが、頭の中で考えていることは、それとは正反対だった。体から石鹸の泡を洗い流しつつ、どうしてすべてがこうも急速に、こうも間違った方向に進んでしまったのだろうと思わずにいられなかった。

「それはあんたがバカだから」と彼はつぶやいた。その声はシャワーの音でかき消され、外には聞こえないだろう。彼は他にもいくつか自分を罵る言葉をつぶやいた後、シャワーを終えた。何をするにしても、この大きくて敏感な乳房が邪魔になる。でも、こういう胸をジョナは好きなのだ。この胸はケイシーの愚かさの代償なのだ。

シャワーから出て、タオルで体を拭き始めた。ジョナはノックすらせずにシャワールームに入ってきた。

「急げと言ったぞ」 ジョナは体の大きな男ではないが、どこか恐ろしい存在感がある男だった。ふたりの関係ではジョナが統率する人間であり、それはふたりとも了解していた。

「できるだけ早く済ませるから」とケイシーは訴えた。

「これから逃げようとしない方がいいぜ。これはもう決まったことなんだ。お前にできることなど何もないんだからな」

「分かってる」 ケイシーにはそれしか言えなかった。もし彼が自分に正直だったなら、わざと時間延ばしをしていたこと、しかも、そうすることには充分な理由があることを認めたことあろう。同窓会に行きたくなかったのだ。自分がどんな姿になってしまったか、それを昔の友達やクラスメートたちに見られたくなかったのである。

だが、ジョナはその正反対だった。彼はみんなにケイシーの運命を見せたがっていた。彼をイジメていたあのケイシーの今の姿を。ケイシーを見て、みんなが笑ったり、からかったり、ショックでハッと息を飲んだり、そういう光景を見たがっている。そして、それがすべて終わった後、この征服物を犯しながら満悦の気分に浸りたがっているのである。

ジョナはケイシーの丸い尻をひっぱたいた。尻頬がぶるぶると揺れた。「急げよ。お前にとって大切な夜だ。その前にお前にお仕置きをする気はねえんだからな」

「大切な夜……」 ケイシーは反復した。声は小さく、恐れている調子がこもっていた。もちろん、すべてを変えてしまう夜になるだろう。そうならないわけがない。旧友たちに知れるとすぐに両親にも知れ渡ってしまうだろう。兄やいとこたちにも。すぐに、彼が好きだった人すべてに、何もかも知られてしまうだろう。心の中、みるみる恥辱感が膨らんでくる。耐えがたいほどに。

とは言え、その代わりの道はもっと悲惨なものだった。もし行くのを拒否したら、ジョナは約束通り、お仕置きをするだろう。しかも、それで済むのは彼がご機嫌な時だけだった。ジョナの機嫌を損ねたら、ジョナがケイシーに飽きてしまったら、彼はためらうことなくケイシーを警察へ通報するだろう。ジョナがためらわないのは明らかだった。ケイシーが行った違法と言える悪いビジネスについて通報し、彼にその報いを味わわせるだろう。

それは避けなければならない。彼には選択肢がなかった。つまりはジョナが計画した通りにしなくてはならないということであった。


[2017/12/26] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Special project 「特別プロジェクト」 

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64_Special project 「特別プロジェクト」

あたしは、日々、彼がすることを見ている。男たちを喜ばそうと、自分も気持ちよくなろうと、夢中でやってることを見ている。そして、どうしても誇りを感じずにはいられない。これはあたしが達成したことなのだ。あたしが推し進め、拍車をかけて達成したこと。なだめたり強く言ったりして納得させ、そして、ついに、あたしがまさに求めていたモノを手に入れたという達成感。忠実で、美しいシシー。あたしが命じたことを何でも行い、どんな相手であってもそれを行うシシー。しかも、こんなに綺麗なシシー。

これはあたしにとって夢だった。しかも、本当にずっと前からの夢。あんまり長年にわたっているので、実質上、あたしの人格になっていると言ってもいい。どうしてこんな夢を持つようになったのか、分からないし、正直、そんなことは気にならない。だけど、男性の男らしさを破壊し、一度、その人を粉々にした後で再建し、あたしの望む鋳型に合わせて作り直すということに、すごく魅力を感じる。麻薬的と言ってもいいほどの魅力を感じている。

ダレンの場合、それは実に容易だった。実質上、彼は自分を変えてほしいとあたしに懇願したと言っても良い。もちろん、彼はそんな懇願を言葉で言ったわけではない。そのような希望を言葉に出して言う男などいるわけない。言葉ではなく、行為や振る舞いで、まさに彼の人格そのもので、彼は本当の欲望を訴えていた。そして、あたしも、その欲望を実現させてあげたく思っていた。あたしのその気持ちは本当に間違いない。

もちろん、彼は抵抗した。男らしさというものについて、ダレンの場合は影響は弱いのだけど、それでも彼が抵抗したということは、それだけ、頑固な観念だということなのだろう。彼は反論したし、別れると脅かしたし、あからさまに拒否した。しかも、何度も何度も。でも毎回、彼は結局抵抗をあきらめた。彼の場合、いつも最終的にはあきらめるのである。そして、それが繰り返されるたびに、以前よりも説得が楽になっていき、やがて彼は、あたしがバーで知り合った頃の彼とは似ても似つかぬ人になっていたのだった。今は、彼自身の母親ですら、彼のことが認識できるか怪しいと思っている。

女性化は服装から始まると思っている人が多すぎる。あるいは、ホルモンとか、セックスとかにかかわると思ってる人が多すぎる。そのいずれも間違いだ。それらは症状にすぎない。症状の詳細にすぎない。真の女性化は心の中で起きるものなのだ。男性が自分は男性であると思うのを辞めた瞬間こそ、その人を仕留めたなと思える時である。その時こそ、その人について仕事をコンプリートしたと思える時である。そして、ダレンについても、コンプリートしたのは確かだ。

でも、正直なところを告白すると、あたしはちょっと飽きがきている。こういうふうになっている彼を見ても、あたしは、かつてほど興奮しなくなっている。むしろ、昔の彼が見せた抵抗が懐かしい。あたしには目標が必要なのだ。思うに、昔からの格言が正しいのだろう。「重要なのは目的地ではない。そこに至る旅路こそが重要なのだ。そこにこそ、目的と真の楽しさを見出すことができるのである」と。

近々、新しいプロジェクトに入ろうと思っている。多分、ダレンのような別の男で。多分、今度は少しだけ、より挑戦し甲斐があるようなことを……


[2017/12/25] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Someone's got to do it 「誰かがしなければならない」 

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64_Someone's got to do it 「誰かがしなければならない」

「ああ、ジミー、本当に彼女そっくりだ」とクリスが言った。

俺は腰に両手を当てて、ポーズを取った。「そう思うか?」

「あのじいさんには、誰に会ったか分かりっこねえ」

俺は微笑んだ。「ちょっと明らかな違いはあるんだがな。一つは身長だ。3センチくらい彼女より背が小さい。それに顔の特徴も、いくつか改良しなくちゃいけないところが残ってる。でも、全体的に見たら、これでほぼ準備はできたと思う。後は、『ケリーになる』ための知識を全部覚えれば完了だな」

「それ、しっかり覚えてくれよ」とクリスが一歩近づいて言った。彼は俺の腕に血圧計のベルトを巻き付けた。血圧計のベルトがじわじわ膨らんでくる。「完璧である必要はないんだ。彼は信じたがっているから。ケリーっぽいところだけ忘れないでくれ」

「分かってる。俺が言ってたのは、ケリーについての細かい情報のことじゃない。大まかな仕草とかのことを言っていたんだ。習慣と言うか、彼女の歩き方とか話し方とか。化粧のしかたとかな」

彼は俺の顔をちらっと見た。「その習得にはちょっと苦労するのは確実だぞ。顔は絵を描いたようにそっくりなんだけどな」

「分かってる。でも、ちゃんと習得してみせる。2週間もあれば準備できると思う」

クリスは何も言わなかった。黙ったまま、血圧など、俺の体の状態をチェックしていた。そしてしばらくした後、彼は再び口を開いた。「本当に彼に罠をかけられると思っているか? 自分の娘だぞ? 大丈夫か?」

俺は頭を縦に振った。「彼は娘にほぼ4年間会っていない。彼女が最後にどうなったか見ただろう? タイで側溝にうつ伏せになって死んでいた。腕には注射針。あれはまるで……」

「知ってるよ」

「俺が言いたいのは、彼女自身、こういうことをするのを望んでいただろうということ。あのじいさんが財産を放棄してしまう前に、誰かが、それは俺たちのものだと言う必要があるんだ。それが俺たちだっていいだろ? それに言わせてもらえれば、俺は最後までやったわけではない。俺は完全には体を変えていない。完全に変えちまうと、得点を上げる前に怖気づいてしまうからな。だから、そういう心配は心の奥のずっと奥にしまい込んでしまうんだ。もう、仕事は始まってるんだぜ。どういう形になるにせよ、もう始まってるんだ」

「分かってるよ」とクリスは言った・

「それで、俺のおっぱいは間に合うのか? それともプッシュアップ・ブラとかをつけなくちゃいけないのか?」

「あと2日ほどでできる。彼女と同じCカップだ」

「大丈夫だよな?」

「彼女のDNAを使ったんだ、トミー」 と彼は全部説明する必要があると思っている様子で説明した。

「トミーはやめよう。ケリーだ。これからは俺のことをケリーと呼んでくれ」


[2017/12/25] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Role swap 「役割交換」 

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64_Role swap 「役割交換」

ジェイデンはドレスの裾をいじりながら、ガールフレンドのエイミを見た。「ちょっと変わったことをして刺激を得たいと言ったけれど、こんなことを考えていたわけじゃないんだよ」

エイミは笑った。「ええ、何? あなた、サンドレス(参考 http://ashediamonds.blog4.fc2.com/blog-entry-72.html)が大好きだっていっつも言っていたじゃない?」

「女の子が着ているサンドレスが好きって言っていたんだよ。こんなことでは……」

「もちろん、言ってる意味わかってるわよ。いいから、落ち着いて。単にドレスにすぎないでしょ?」

でも、ドレスだけの話しではなかった。ウイッグも。化粧も。ランジェリーもハイヒールも。それに体毛を全部剃られてしまった体も。「バカになったみたいな気持ちだよ」

「あなた、すごく可愛いわ」 とエイミは即答した。そしてジェイデンもそれには異論がなかった。だが、だからこそ、彼は心底、恐怖を感じていたのだった。確かに、彼は際立って男らしい男だったわけではない。だが、女性的でもないのは確かだった。いつも自分は普通の男だと思ってきた。そして、彼は自分がこれほど可愛らしい姿になれるなど思ってもいなかったのである。本当に、まるっきりそんな考えはなかった。そして、自分が可愛らしく見えるということが、彼自身の男らしさの認識にかなり大きな影響を与えたのだった。

「これって、よく分からないんだ。君がこれに夢中なのは知ってるけれど、でも、ボクは……これで人前に出て行くなんて、ちょっと……」

「ええ、言いたいこと、分かるわ。ちゃんと。だから、別に強制してるわけじゃないのよ?」

ジェイデンは安心して、ほっと溜息を洩らした。「ああ、よかった。ありがとう、エイミ。君が強く言い張るんじゃないかと心配していたんだ。何と言うか、ボクがずっと前から、こういうことに関係した妄想を語って来ただろ? だから君はひょっとして、こういうことををする資格があると思い込んでるかもしれないって思って。でも、ドレスを着て外に行くなんて? こんな格好で? 職場の同僚に会うかもしれないし。そんなことになったら、大変なことにならないなんて想像できないからね」

「ええ、そうね。分かるわ。じゃあ、四つん這いになって。パンティを脱いで」

「え? 何? ボクは……」

エイミはまたもジェイデンの言葉をさえぎった。「もちろん、どこにも出かけないわ。でも、あなたはあなたで妄想遊びを押し通してきたわけでしょ? 今度はあたしの番だわ。さあ、さっさと四つん這いになりなさい!」

「ぼ、ボクは別に……」

「今すぐ!」とエイミは怒鳴った。ジェイデンは自分でも気が付かないうちに、彼女の命令に従って四つん這いになっていた。突然、エイミが激しい命令口調になったショックで、言い返すことなど考えもしなかった。「それでよろしい。では、ドレスをめくりなさい。そして、その格好でいるのよ、スケベ女! あっちの部屋にお前を驚かすモノを用意してあるの」

エイミが向こうの部屋に行っている間、ジェイデンはじっと動かずにいた。動けなかった。こういうふうに問題と直面したのは嫌だったけれど、それ以上に、エイミを怒らせることも嫌だった。だから、ジェイデンはじっと四つん這いのままで、お尻を露出したまま、待っていた。ようやくエイミが部屋に戻ってきた。彼女は素裸になっていた。しかも、股間には紫色のディルドがあり、誇らかに勃起していた。彼女はそれを撫でながらジェイデンに近づいた。ジェイデンは、ディルドが何かの潤滑剤でテカテカに光っているのが見えた。

「今夜は、お前はあたしのオンナになってもらうわ。どういうことか分かってるわよね?」 それを聞いてジェイデンは生唾を飲み、黙って頷いた。「ちゃんと言葉に出して言いな。自分は何者かちゃんと言いな」

「あ、あたしは、あなたのオンナです」とジェイデンは囁いた。

「まさに、お前はその通り!」とエイミは言った。



[2017/12/25] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Phases 「一時的なもの」 

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64_Phases 「一時的なもの」

大きくなる時、みんなに、これは一時的なものだと言われた。いずれ成長すれば、これから直ると。もちろん、あたしは自分が他と異なると思っていた。自我の一番の中核部分から異なるのだと。でも、みんな、本当に自信ありげに、あたしは遅かれ早かれ本来の男らしさへと向かう道を見つけるだろうと言っていた。

子供の頃、あたしは姉の人形で遊んでいた。そういう遊びをするのが本当だと思っていたけど、どうしてそうなのかは自分でも理解できていなかった。でも、今は、人形は本当のところとは関係がなかったと分かっている。人形でなくてもよかったのだ。ただ、人形はあたしが心の底から憧れていたこと、つまり女らしさを表すものだったから、人形が好きだったのだ。

父は、人形で遊ぶあたしを見つけると、素早くやめさせ、ベルトを使ってあたしにしてはいけない遊びがあると教え込んだ。

大きくなるにつれて、あたしは姉の服をこっそりバスルームに持ち込み、心臓をドキドキさせながら、それを試着するようになった。あたしは注意深く隠していたつもりだったけど、完全ではなく、そんな行為の証拠を残してしまうのだったが、なぜか、みんな、それを無視した。みんな、知っていたと思う。確信している。

でも、学校から連絡の電話が来ると、父も無視するわけにはいかなかった。あたしは、学校のトイレで友達にフェラをしているところを見つかったのだった。その時、父の運転する車で家に戻ったのだけど、あの時の沈黙状態を忘れることができない。父は怒っていたし、それは見て取れた。でも、父は怒鳴り声をあげたりはしなかった。父は何も言わず、じっと前方を見つめ運転していた。

その日の夜、あたしは父にベルトで激しく叩かれた。死にかけるほど叩かれた。少なくともあたしにはそう思えた。父はまるで、あたしの中からゲイっぽいところを叩きだそうとしているようだった。叩けばそうなるだろうと父は思っていたようだった。

父に、あたしはゲイじゃないと言いたかった。あたしは普通の女の子なのと言いたかった。でも、父は理解しなかっただろう。理解できなかっただろうと思う。あたしは、父にとっては、恥をかかせることしかできないダメな息子だった。父にはそれしか見えていなかった。

もちろん、そのすぐ後、あたしは家を出て、振り返ることはなかった。それは簡単なことだったと言えればいいのだけど、実際はそうではなかった。精一杯、もがき頑張らなければならなかった。ひとつは、生きていくために、そしてもう一つは、自分がなりたいと思っている人間になるために。その過程で、いくつか、いかがわしいこともした。自分でも恥ずかしいと悔やむことをしたこともあった。でも、最終的には、意思を固く持ち続けたことで報われた。

時々、自分が歩んできた道のりを疑うことがある。みんなが言ってたことが正しかったなら、どうだったのだろう? 本当にあたしが病気だったのだとしたら、どうだったのだろう? みんながあたしのことを怪物のように言っていたけれど、それが本当だったとしたら、どうだったのだろう?

でも、そういう迷いが生じたとき、あたしはドレスを着たときの気持ちについて考える。つるつるに滑らかな脚にパンティを通した時の気持ちについて。誰かに「奥様」と呼ばれた時の気持ちについて。男性があたしに言い寄ってきた時の気持ちについて。あるいは、その男性にベッドへと連れて行かれた時の気持ちについて。体に精液をかけられたときの気持ちについて。彼のペニスをアヌスに入れられたときの気持ちについて。精液を味わったときの気持ちについて。

そして、あたしは微笑む。あたしは男性ではない。あたしはまさにあたしがなるべき人間になっているのだと。


[2017/12/22] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Pent up 「逃れられない」 

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64_Pent up 「逃れられない」

「い、いったい、これは……君は一体何をしてるんだ? どうしてここにいる? それに……」

「ジョンソンさん、なぜあたしがここにいるか知ってるくせに。あたしたち、これを先延ばしにしてきたけど、もう長すぎるくらいだと思うの」

「いや、いや。これは良くないよ。いいから、何か服を着てくれないか? もし、君のそんな姿を誰かに見られたら……。それにその言葉遣い。まるで……」

「女の子みたい? だって、それがあたしの本当の姿だから。それにあたしのこの姿を誰かが見たら、勘違いしてしまう? 勘違いじゃないかも、ね。でも、心配しないで。バリーはキャンプに行ってて、2日間は帰ってこないから。それに、あなたの奥様も旅行中だわよね? だから、この週末はずっとあたしとあなたのふたりっきりなの」

「何か服を着てくれと言ったじゃないか!」

「イヤ。拒否します。今日は、あたし、あなたに言い逃れさせるつもりはないの。あなたのことずっと見てきたのよ。バリーとお友達になってからずっと。あなたは隠そうとしてきたけど、ちゃんと見えていた。プールであたしのことをちらちら盗み見していたのをちゃんと知ってるの。あたしが見ていないと思ったときに限って、あたしのことを見ていた。それに、あたしが着替えしてたりシャワーを浴びてる時に、『偶然』、部屋やバスルームに入ってくるとか。ねえ、ジョンソンさん、お願い。ちゃんと認めちゃって。あなたはあたしのことを欲しいと思っているんでしょ? ずっと前からそう思ってきてたんでしょ?」

「で、でも……」

「あたしが女性化を始めた後は、もっとひどくなっていったわよね? あなたに言う必要もないほど。あなたには、はっきり見えていたはず。あたしの体の曲線とか、あたしがみんなに隠し続けていた胸の膨らみとか。ちゃんと消しきれなかったお化粧の跡とか。誰にも言わなかったわ。バリーにもね。親友なのに秘密にし続けるって、どれだけ大変なことか分かる? でも、バリーは気づいていない。あたしの両親も知らない。誰も知らないの。そもそも、あたしのことなんか誰も知りたいとも思っていないんじゃないかしら。でも、あなたはちゃんと知っていた。あなたは、ずっと最初から、全部知っていた」

「わ、私は……こんなことできないよ、ジェシー。こんなことは……」

「いいえ、できるはずよ。あなたのために、あたしはここまでしてきたの。あなたのためでなかったら、ここまですることはなかったと思うわ。少なくとも、自信をもって、ここまで体を変えることはなかったと思うの。でも、あたしはあなたが欲しかったから。ジョンソンさんのことが大好きで、あたしのことを愛してほしいと思っていたから。ああ、本当にあなたに抱かれたいの。それにあなたのズボンの膨らみ具合から判断すると、あなたもあたしのことが欲しいんじゃない? いいのよ。本当に、いいの。あたしたちの間には、これをしない理由はないんじゃない?」

「き、君は若すぎる。私は結婚しているし、君は私の息子の親友じゃないか。ジェシー、これはいけないことだよ。やってはいけないことだよ」

「あたしは18歳よ、ジョンソンさん。つまり、あたしは大人の仲間入りしたの。だから、ヤリたいと思った人と誰とでもヤッテ構わない年になったの。そして、今は、あたしがヤリたい人は、あなたのこと。だから、もう言い訳をいうのはやめて、こっちに来てください」

「本当に誰にも言わない?」

「もちろん、誰にも」




[2017/12/22] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Okay 「オーケー」 

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64_Okay オーケー

時々、あたしは、自分でいてもオーケーなのだと自分に言い聞かせなければならない。

時々、あなたは、あたしのことが欲しくなってもオーケーなのだと自分に言い聞かせなければならない。

時々、あなたは、あたしのことを愛してもオーケーなのだと思い出さなくてはならない。

[2017/12/22] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Obsession 「強迫観念」 

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64_Obssession 「強迫観念」

強迫観念とは、ある特定の狂気であると思う。強迫観念により、人は大変な努力を行い、まったく想像していなかった領域へと駆り立てられることがある。カレブについてはそうだった。

カレブは、決して、皆に人気がある人間ではなかった。それに彼自身、そうなりたいと思っていたわけでもなかった。平凡でおとなしい人間。彼自身、自分をそう思っていた。他の人が彼のことを考えることはなかったが、あえてどう思うかと訊かれていたら、誰もが「平均的」という言葉を当てはめたことだろう。そして、カレブが思いを寄せていた隣に住むカレンも、例外ではなかった。そもそも、カレンは彼が隣に住んでいることすら知らなかったと言ってよい。

初めてカレブがカレンのことをスパイし始めたとき、彼は自分の動機は純粋なものだと自分を納得させていた。気になるので、彼女に関する充分な情報を集めたいだけなのだと。いざ、彼女に接触するときになったら、正しい知識でもって武装できるようにと。カレンが何が好きで、何が嫌いか知りたかった。彼女の外面も内面も、ぜんぶ知っておきたかった。

しかし、ゆっくりとではあったが、彼の調査は彼の生活のあらゆる側面を支配するようになっていった。カレブの恋心は強迫観念へと変形したのである。彼は、眠っているときはカレンの夢を見たし、起きて学校に行ってる時もカレンについて白日夢を見ていた。いつの時間でも、その時点でカレンが何をしているかを知らないと息もできないほどになっていた。

変化というものは一気には起きない。むしろ、変化は徐々に起きるものである。ある物事について、カレンがそれが嫌いだと分かると、カレブもゆっくりとそれから遠ざかるようになった。カレンがそれが好きだと分かると、彼も自分の興味をそれに集中させるようにした。食べ物でも、音楽でも、映画でも。彼は自分の関心を、彼女の関心を鋳型にして合わせていった。そのうち、彼の中で、自分と彼女の境界線がぼやけ始めたのだが、それも当然と言えば当然だろう。彼は、自分の心をこれ程まで支配している女神について、彼女のようになったら毎日の生活はどうなるのだろうと想像するようになったのである。

まさにその時、彼はすべてをはっきりと理解したのだった。自分はカレンと一緒になりたいのではないと。そうではなくて、カレン自身になりたいのだと。あるいは、できる限りカレンに似た存在になりたいのだと。彼はすでに、カレンと自分は、他の人には決して理解できない形で互いにつながった同じ魂の持ち主なのだと思い込んでいた。

そのようなわけで、彼は暇な時間があるとカレンと同じ服装をするようになった。ダイエットもした。化粧も試すようになった。インターネットで女性ホルモンを注文した。そして、高校を卒業する時期になるまでに、カレブの体は変化し始めており、新しい人間が現れてきたのだった。

そこまでの成功に勇気づけられたカレブは、さらに先へ進み、話しを聞いてくれる人みんなに、自分は実はトランスジェンダーであると、ずっと前から内面的には女の子だったのだと言うようになった。彼の両親すら、彼の言い訳を見透かすことがなかった。

だが、それでも彼にとっては充分ではなかった。まだ男らしさが完全に消えていないと彼は思った。もっと過激な措置を取らなければ、完全に消せないと。真に自分の可能性を知り、本当にカレンのようになりたいのなら、手術を受ける必要があると。

だが、手術代は高額であり、高校を出たばかりでもあり、まったく手が出せなかった。しばらくの間、彼の目標は達成不可能のように思えた。進展がない状態が続くと、強迫観念に駆られた彼は、自分自身を違ったふうに見るようになった。このままでは自分は醜いと、男のままであると思い始めたのである。それが彼は嫌だった。

彼は解決策を求めて知恵を絞ったが、何か月間も、答えがでなかった。次第に気持ちが深く落ち込んでいき、鬱状態の暗い闇に囚われていった。来る日も来る日も、その状態から回復することが不可能だと思い込んでいた。行き詰っていた。そこから這い出る方法がない。それに、理想の彼女は遠い存在であり、カレンがいることによる心の暖かみに安らぎを求めることもできなかった。そもそも、カレンがいることによる心の暖かみすら、どんな感じだったか忘れかかっていた。彼女が毎日の生活のあれこれを楽しげにこなしているのを見て、彼女が別世界にいることを思い知らされるのであった。

そんな時、あることが閃いた。そして、カレブの生活はその黄金のような機会に救われたのである。ライブビデオ・ガールになることだった。それは彼が想像していたような優雅な生活ではなかったが、彼の変身を続けるのに充分な金銭をもたらしてはくれた。もっとも、どんな手術であっても、完璧に人に似せることは技術的に不可能であり、手術を受けても彼はカレンの複製になることはできなかったが、それでも、おおよその範囲で彼女に似ることは可能だった。

だが、奇妙なことに、それでも彼には充分ではなかったのである。今や、カレンと彼は姉妹だと言っても通るようにはなっていた。ちょっと見た限りでは、他の人にはふたりの区別はできないだろう。外見ばかりでない。趣味についてもカレンに似るようカレブは努力してきたし、着るドレスについても彼女の服装に似せた。振る舞い方も似せた。だが、彼は心の奥では、どれだけ頑張っても、決してカレンにはなれないと思っていた。

でも、もしカレンがいなくなったら、彼女になれるかもしれない、とも……。


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Normality 「普通らしさ」 

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64_Normalty 「普通らしさ」

私は誰もが望むようなタイプの人間ではない。特に父が期待していたような男ではないのは確かだ。だが、嫌なことが起きるのが世の中だし、人間は変わるものだし、物事はいつもあなたたちが望むように展開するわけでもない。私の人生が仮に道から外れるとしても、私にはどうしてもそうしなければいられないだけなのである。私にできることは、溺れないように水面から頭を出し続けようとすること。自分の状況をできるだけ良いものにしようとし続けることだけだ。

とはいえ、それでも心が痛む。陰口のすべてが心にグサグサ刺さってくる。軽蔑的な視線をひとつひとつ感じる。嫌悪感が溢れた表情を目にする。すべてがどうしても目に入ってきてしまう。

時々、人々は私のことを人間として見ているのだろうかと疑問に思うことがある。私のことを、ちゃんと感情、目的、希望、恐怖、そして夢を完備した人間として見ているのだろうかと。あるいは、私のことを単なる厄介者として見ているのではないか? 何か異常な存在として? 嫌悪すべき存在として? 怪物として? 憐れむべき対象として? あなたたちの意図が善意によるものであろうが、悪意によるものであろうが、そんなことはほとんど関係ない。どちらにせよ、あなたたちは私のことを人間として見ていないのだ。自分と同じ存在として見ていないのだ。

いつの日か、自分自身にラベルを付ける必要がなくなる日が来ることを夢見ている。私はゲイなのか? ストレートなのか? トランスジェンダーなのか? シーメールなのか? シシーなのか? アンドロギュノスなのか? 男なのか? 女なのか? そんなラベルが一体何の関係があると言うのだろう? あなたたちは、正直言って、本当に私がズボンの中にどんな種類の性器を持っているかに興味があるのだろうか? あなたたちは私のことを単に人間として受け入れることができないのだろうか? 同じ仲間の人間として?

もちろん、あなたたちにはそんなことすらできない。あなたたちは次のふたつのどちらかを望むことしかできない。ひとつは、私に私は間違っていると知れと。私は不自然なのだと分かれと。もうひとつは、あなたたちは私の「特殊な」事情を支援していると知れと。デモ行進をしたい。街に出てパレードをしたいのだと。確かに、それを望むあなたたちは善意で言ってるのだろうが、私が何らかの点で他と異なるという神話を拡大することにしかなっていないのだ。所詮、私は他者にすぎないと。

私が何よりも強く求めていることが何か、あなたたちはご存じだろうか? 私は、特に目立つことなく、決めつけるような視線を感じることなく街を歩きたいだけなのである。人々が、他の人に対してするのと同じように、普通の視線で私を見るだけでよいのである。私という存在が普通であることを望んでいるだけなのである。

だけど、決してそんなことは実現しないだろうと恐れる。人間というものは、そういうふうにできていないのだ。でも、私には夢を見ることはできる。希望を持つことはできるのだ。


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No regrets 「後悔なし」 

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64_No regrets 「後悔なし」

時々、いまだに自分のことを男だと思うことがある。目を覚まし、家族と顔を合わせ、仕事へと出向く。自分から奪われた人生。それを生きているような錯覚。一時的であれ、自分の身に起きたこと、自分が変わってしまったことを忘れる。でも、その後、現実が襲い掛かってきて、何もかも思い出す。その現実は、胸に感じる重みの場合もあれば、裸の自分の腰に絡みつく男性の腕とか、視界を邪魔する長い髪の毛とか、前日の夜の行為による体の鈍い痛みとか。現実の自分を思い出すための手掛かりが山ほど襲ってくる。現実から隠れる場所があまりに少ない。

私は警官だった。しかも優秀な警官だった。私には家族がいたし、友人たちもいた。家族も友人も、いまや誰も私を探していない。彼らにとっては、私は3年以上前に行方不明になって、死んだのだろうとされている。多分、私という男性は死んだ。行方知れずになって、忘れ去られたのだ。男性ではない何か他のものに姿を変えられたのだ。

潜入捜査を始めたとき、これは長期にわたる任務のはずではなかった。二日ほど出入りして捜査したら、ドラッグ売人が街から消え去ると。だが、実際はそういうふうには進まなかった。

彼らはすべてを知っていたのだった。私が誰であるかもバレていた。私の家族についても知っていた。より重要なことは、もし、私が彼らが言うことに従わなけば、私が愛する人すべてに恐ろしいことが起きるということだった。本当の意味での選択肢が私にはなかった。そして、彼らの要求に従ったことを私は後悔していない。少なくとも、後悔したいとは思わない。

でも、鏡で自分の姿を見るたび、自分がどんな人間になってしまったかを見るたび、少しだけでも家族をリスクに晒しても良かったのではないかと思う自分がわずかに浮かんでくる。家族を守ることができたのではないか、家族もそれに耐えてくれたのではないかと、そう思う自分がでてくる。

もちろん、それは無意味な妄想だ。終わったことは取り戻せない。私はもはや警官ではない。私は男でもない。かつては別人だったが、今はただの売春婦だ。これが今の自分の生活だし、それを変えることは私にはできないのである。


[2017/12/21] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Missing the window 「逃した機会」 

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64_Missing the window 「逃した機会」

時々、彼は決断を後悔しているんじゃないかと思うことがある。楽しいはずがないもの。いつも脇役で、誰といても中心にはいられないなんて。彼に悪いことをしたかなって思いそうになる。でも、思い出してみれば、彼は自分がどんなことに首を突っ込んだのかちゃんと知っていた。自覚して選択したのだ。そして今、彼は、その決断の結果に甘んじて生きなければならない。

彼と出会った瞬間から、彼はあたしのことを大好きになってどうしようもなくなるだろうなって分かっていた。そういう目の表情をしていたし、その恋愛感情がすぐに強迫観念に変わるだろうとも思った。その時点ですぐにあたしは彼との関係を断つべきだったのだし。自己弁護させてもらえれば、実際、あたしはそうしようとした。でも、職場が同じだったこともあり、彼を完全に避けることができなかった。

もちろん、彼のことが嫌いだったわけではなく、むしろ好きだった。ただ、ロマンチックな意味で好きだったわけではなく、彼はとても仲の良い友人という位置づけだった。あたしのことについては彼も知っていたし、そのことを彼に何回話したか覚えていないほど。多分、彼は、いつの日かあたしを変え、突然、男性が好きになるようになると思っていたのだろう。正直、彼の心の中で何が起きていたかあたしは知らない。知ってることは、あたしは自分が誰を求めているか、迷ったことは一度もないということだけ。

彼がトランスジェンダーだとカムアウトした時、正直、これはあたしに近づくための見え透いた企みだろうなと思った。あたしは女性が好きなわけで、彼は、もし自分がもっと女性的になったら、あたしが彼のことも何とか好きになるんじゃないかと思ったのだろう。そんなふうにはならないものなのよって、彼に叫びたかった。だけど、あたしには言えなかった。その代わり、あたしは、彼を支援する友達の役割を演じた。そして、あたしたちは以前より近しい間柄になったのだった。

思うに、あたしがヘザーとデートし始めたとき、彼はひどく落ち込んだと思う。まさにその頃から、彼は本当の意味で一線を越え、ホルモンを摂取し始め、様々な手術を受け、完全に女性として生き始めたのだった。女性になるための努力を倍にしたのである。

皮肉なことだけど、もし、当時の彼が、今の彼のような容姿だったら、ひょっとするとあたしは彼の言い寄りを拒否しなかったかもしれない。今の彼はとてもステキで、まさにあたしが好きなタイプになっているから。でも、あたしはヘザーと付き合っているし、ヘザーのことを愛している。

多分、あたしたちは適切な機会を逃してしまっただけなのだろうと思う。


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Making a choice 「選択」 

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64_Making a choice 「選択」

「わっ、すごくヤッテって言わんばかりのお尻してるじゃないの。まるで、ヤルためにあるようなカラダしてるのね」

「ハレ、本当に、からかうのはやめて。からかわれるのはイヤ。知ってるくせに」

「ジョーイ、からかってるわけじゃないわよ。誉めているの。ほんと、そのウィッグをかぶると、彼女そっくりになるわね。そこのちっちゃなのを除けばってことだけど」

「また言うけど、お願いだからベネッサのことを言うのやめられない? あたしが一番聞きたくないのが姉さんのことだって知ってるでしょ?」

「だって、言わずにいられないんだから仕方ないじゃない? それに、これが何なのか、あなたも分かってるでしょ? あたしが何をしたいか、完全にはっきり言ったはずよ。それに、言わせてもらえれば、あの時、あなたも完全に同意していたじゃない?」

「分かってるけど……」

「ジョーイ、あたしはレズビアンなの。女の子が好きなの。特にあなたのお姉さんが大好きなの。そして……」

「分かってる。でも、もし、あたしにさせてくれたら……」

「……そしてあなたがあたしに付き合ってと頼んだ時……『しつこく』頼んだ時と言ってもいいわね……その時、あなたに言ったはずよ。あなたとするとしたら、あなたが彼女にそっくりになったときに限るって。あなたはベネッサの身代わりなの。代用品。あなたがそれ以外になるなんて一言も言わなかったわよね?」

「ただ、あたしは……」

「あなたはあたしを変えられるかも、と思ったんでしょ? あたしが女性が好きなのは一時的だろうと。ただの一段階にすぎなくて、じきに変わるかもしれないと。ふん! そんなんじゃないのよ。まあそうねえ、あたし、あなたのこと好きよ。嫌いじゃないわ。それに、あなたが今みたいに面倒くさいことを言いださなければ、あなたとのセックスは気持ちいいし。でも、一瞬たりとも、忘れないでほしいの。あなたがいつものジョーイに戻ろうとしたら、その瞬間、あたしはあなたとは別れるから」

「ど、どう言っていいのか……」

「何も言う必要ないわよ。選択肢はふたつ。ひとつは、いつものように、あなたはベネッサになって、あたしにお尻を突き出して、ふたりでちょっと楽しむこと。もうひとつは、あなたは男に戻って、そのままお別れとなること。あなたがどっちを選ぶにせよ、あたしとしては、この話し合いはもうお終いにするわ。というわけで、どっちか選んで。今すぐ。選択するの。男になりたい? それともあたしの彼女になりたい?」



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Interference 「介入」 

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64_Interference 「干渉」

「服を脱げ」と、レギーが言った。レギーはこの工場の長で、でっぷりと太っている。ジェシーがためらっていると、レギーは付け加えた。「お前、女王様の怒りを買いたくないんだろ? だったら、服をさっさと脱ぐんだ、ジェシー。これはお前が自分で招いたことなんだからな」

ジェシーはため息をついた。この命令に従うほかに選択肢がほとんどないのを知っているからだ。まずはチューブ型のトップを脱ぎ、手術によって大きく膨らんだ胸を露わにした。続いて小さなミニスカートも脱いだ。この時はためらわなかった。少しでもためらうそぶりを見せたらお仕置きされるかもしれないと分かっていた。指示されていたように、彼は下着をつけていなかった。トップとスカートを脱いでしまえば、即、全裸状態になる。

「連中、お前に大した仕事をしたようだな」 とレギーは元ボスの見事に女性化した肉体を淫猥な目つきで見ながら言った。「俺ですら、ほとんどお前だって気が付かなかったぜ」

ジェシーは、何と言ってよいか分からず、返事しなかった。彼は全裸ですべてを晒したまま、立ち続け、避けられぬ事態が来るのを待った。

「彼らが入ってきたら、口をきくんじゃねえぞ。ただ突っ立ってろ。しかも、可愛い顔をしてな」

ジェシーは頷いた。レギーはそれを見て隣の部屋へと姿を消した。ジェシーは、立ち尽くしながら、自分の状況について考えた。もっとも、不安な思いが頭の中で駆け巡って集中できない。すると、レギーが戻ってきた。彼は後ろに12名の職員全員を引き連れていた。

ハッと息を飲む声や、信じられないと感嘆する声がジェシーの耳に届いてくる。いやらしい視線を浴びせられた。彼の元従業員だった男たちが訳知り顔でニヤニヤしているのが見えた。

レギーは男たちを集めると話し始めた。「お前たちみんな、ジェシー・ニコラスを知ってるよな。俺たちの元工場長だ」 ジェシーは両腕を胸の前で組んだ。「それに、こいつが何をしたかも知ってるよな。こいつは無数の女たちにセクハラを繰り返した。そして、こいつは、よりによって俺たちの社長であるミセス・ナイト様の娘さんにまで手を出してしまった」

ジェシーはその主張に反論をしたかったが、いくら論じても彼らは聞く耳を持たないだろうと思った。前に試みたときがそうだったし、今回も、言っても聞いてくれないだろう。だが、誰も聞いてくれないと分かっていたとしても、事実が変わるわけではない。事実として、彼は誰にもハラスメントはしていなかった。社長の娘にしても、ただ、彼女の腕に手を触れただけだった。何の邪心もない、無害な接触のはずだった。それに、無数の女性にセクハラ? 確かにふたりほど女性従業員をデートに誘ったことはある。だが、それだけだった。なのに、そのふたりは苦情を言い立て、それを聞いたナイト社長は彼に究極の選択肢をだしたのだった。社内で懲罰を受けるか、司法システムに全面的に乗っかり、その重荷を背負うかの選択肢だった。彼は、前者を選んだことを後悔した。

「これが、道を外した男に起きることだぞ」とレギーは男たちにジェシーの女性化した体を指さしながら説明した。「道を外してもいいが、そうなったら男らしさをはく奪されるんだ。実にシンプルだな。そしてさらに、モノとして見られること、性的な対象として見られることがどういうことか、身をもって知ることにもなる。そういうわけで、ここにジェシーを連れてきたわけだ」

レギーはニヤニヤしながら話を続けた。「もし、お前たち、何か発散したいと切羽詰まった必要を感じたら、ここにいるジェシーがそのお手伝いをしてくれるだろう」

「な、何?」 とジェシーはレギーの言葉の含意に驚いて、声を上げた。

「おや?」 とレギーはわざと知らないふりをして答えた。「女王様に聞いてなかったのか? こりゃ残念な」

「な、何を言ってるか分からない」

「そんなややこしいことじゃない。お前のような頭の軽いカラダだけのオンナにも分かることだ。男たちはエロい気分になるものだ。それは世の中の真理でどうしようもない。だが、ナイト社長は、会社の中で男たちがふらふらと女たちに近づくのは好ましくないと思ってらっしゃるのだよ。と言うわけで、そういう時にお前が男と女の間に、いわば介入するわけだ。そういう時に俺たちを気持ちよくさせて仕事に専念できるようにする。それがお前の仕事だ。協力したくないなら、したくないって言っていいんだぜ? 社長にそう伝えるだけだから」

「やめて!」とジェシーは即答した。彼は社長の怒りを買うことだけは避けたかった。たとえ、それが、レギーの説明したような恐ろしいことをすることを意味しようとも。「いや、やめて! どんなこともします。してほしいことを何でも。だから、社長に、あたしが悪い娘だったって言うのだけはヤメて。お願い、何でもするから」

「そうだな。そういうと思ったぜ」とレギーは言った。


[2017/12/19] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

In a corner 「心の片隅では」 

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64_In a corner 「心の片隅では」

「いつまでも、そこをいじっていてもいいのよ」と彼女は言った。ボクは彼女を睨み付けたが、何も言わなかった。「でも、いじったからって起きたことは変わらないわよ」

「分かってるよ」とボクは答え、ボクの男らしさの点で最後に残った部分に目を落とした。哀れを誘う代物だ。2センチもないし、完全にしなびている。まだ少し感じると言えば言えるけれど、かすかな感覚しかない。何をしても反応しない。無能状態。かつては睾丸があったところには、ちょっと柔らかい肌があるだけ。睾丸を取られたのはずいぶん前になる。ボクの男らしさの感覚が奪われたのもずいぶん前になる。

「正しい決断だったわね」とボクの元妻は続けた。「あなたもそう思うでしょ?」

ボクは頷いた。もっとも声に出しては同意しなかったけれど。ボクは黙ったまま頷き、かつての男だった頃のふにゃふにゃの残りモノを見つめ続けた。こんな姿になったことには意味があったんだと自分に納得させるように。

ボクには選択の余地はなかった。そこまではボクも彼女も知っていた。元妻のギャンブルによる借金とボクのわずかなおカネすら管理できない無能さゆえに、ボクと彼女はホームレスになる寸前の状態になっていた。だけど、そんな状態にありつつも、あの男の提案に同意するのは容易ではなかった。たとえどんな状況に置かれていても、彼の提案に同意するのは、それほど容易ではなかっただろうと思う。

ボクはいまだに彼が仕掛けているゲームが分からない。彼の本名すら分からない。ボクも彼女も彼を「ご主人様」とだけ呼んでいる。知っていることと言えば、彼が並外れて裕福であるということと、並外れて変態であるということ、そして、去勢し女性化した若い男が好きだということだけ。彼は自分の欲望を満足させるためなら、どんな苦労もいとわない。たとえ、ボクたちが一生かかって合法的に稼ぐことができると期待できる金額をはるかに超えた金銭をボクたちに費やすことになっても、彼はそんなことは平気だと考えている。

「あたしたちがどんな状況になっていくか、あたしたちふたりとも分かっていたわよね?」 と彼女が言った。ボクは顔を上げた。半分涙目になっていた。「あなたにとっては辛いことなのは分かるわ。でも……」

「ほんとに? ほんとに分かってるの? ケリー、ボクは奇形みたいなものだよ。ボクを見てみてよ。ボクは死ぬまでこんな姿でいることになったんだよ。それに比べ君は……君はただ……」

「体じゅうにピアスをされた。いい? これって本当に不快なんだから。あなたと比べて割が合わないのは知ってるわ。でも、これは必要だったのよ」

「分かってるよ」 とは言ったけど、本当は必要なかったんだよと言い返せたらいいのにと願った。激しく毒づいて、叫び、泣きわめけたらどんなに良いだろうと。でも、ボクは自分の判断でこうしたのだった。ボクは誰も非難できない。咎められるのは自分自身だけだ。

「でも、たった2年くらいよ。それが終わったら、あたしたち、したいような生活をできるようになるわ」

ボクは思わず笑いだしそうになった。こんな姿になった以上、もう決して、夢を実現することはできないだろうし、それはボクも彼女も知ってるはずだった。もう、昔の夢をあきらめるしか道はない。だから新しい夢を見つける必要があった。新しい自分を見つける必要があった。たとえどんなことが起きようとも、ボクはかつてのような男に戻ることは決してできないと分かっているのだから。

「ケリー。君のそういうところが、ずっと前から大好きなところだったよ。君はどんな時も楽観的だ。ボク? 僕はどっちかというと現実的。今のことが良い形で終わることはないと思ってる。でも、君が言ったように、ボクたちには選択肢がなかったしね」


[2017/12/18] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

Hatching a scheme 「悪だくみ」 

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64_Hatching a scheme 「悪だくみ」

「わっ、彼、可愛いじゃない。ほとんど彼って気が付かなかったわ。いったい、どうやって彼にあの服装を着せたの?」

「賭けよ。というか、一連の賭けと言った方がいいかしら。彼、負け続けて、そのたびに賭けのネタが高くなっていったの。何回かわざと勝たせてあげて、彼にチャンスがあるかもと思わせてあげたわ。でも、賭けネタがあたしが欲しいところまで上がったところで、ドッカーン! とね。彼にハンマーを打ち下ろしたってわけ」

「それで彼にあの格好をさせたわけ? あれ、何? ドロシー?」

「知らないわよ。あたしは、ただ彼をコスチュームのお店に連れて行って、一番女の子っぽいのを選んでと言っただけ。それを着てトリック・オア・トリートをしに出掛けると聞いて、彼、すごく怒りそうだった」

「ちょっと待って。あなた、彼にあの格好で外に行かせたの? それって、すごいイジワル」

「あら、たった2時間くらいよ。それも街中じゃなかったし。誰も彼のこと分からなかったし」

「誰にもバレなかった理由が分かるわ。彼みたいな人がこんなふうになるなんて、あたしも予想していなかったもの」

「こんなふう、って、セクシーだってこと? そうでしょ? 正直言って、あたしも、彼にとってはまったく別の理由で恥ずかしいことになるだろうなって思っていたの。でも今は、彼はこの格好がちょっと女の子っぽすぎる点だけで恥ずかしいと思ってるんじゃないかって思ってるの。それに彼の態度がどんだけ変わったか、あなたも見るべきだったと思ってるの」

「どんなふうに変わったの?」

「そうねえ。彼のこと分かってるわよね? チョー傲慢な性格。うぬぼれ。根っからの仕切たがり屋」

「ええ。高校の時よりは良くなってきてたけど、彼って、いまだ昔のリックそのままだわ」

「でもね、あの衣装を着ているときは違うの。彼、本当にすごく受動的な性格になるの。しかも、恥ずかしがり屋にもなるし。誓ってもいいけど、声まで甲高くなったわよ。それに、もっと言っちゃうと、あたし、それが気に入ったのよね。とても気に入ったので、こうやって写真に撮ることに決めたわけ。さらに、このバージョンのリッキーを見るのは、ハロウィーンの時だけにはしないことに決めたの」

「待って。何? あなた、彼にもう一度、これをさせようと思ってるわけ? でも、どうやって?」

「彼、この写真を友達に見てほしいと思う? あたしのためにこの格好でダンスしてくれたけど、その時のビデオとかも? もちろん、そんなわけないわよね。だから、これを秘密にしておくためなら、彼、どんなことでもすると思うの。要するに、あたし彼に罠をかけたわけ。でも、彼はまだそれを知らない」

「ケイティ、それって……すごく邪悪だわね。でも、あたしも気に入ったわ。威張り腐ってるポールにも同じことができたらって思ったわよ」

「あなたならできるわよ」

「どうやって?」

「あたしに任せて。何か考えるから。約束するわ。来年のこの時期、あたしたちには可愛いシシーがふたりいるはずよ」


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Fathers and sons 「父と息子」 

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64_Fathers and sons 「父と息子」

私は性差別主義者ではない。私は同性愛者嫌いでもない。そして、私は、誰であれ、単に染色体がたまたま本人が自覚する性と同一でないということだけで、その人のジェンダーが他の人のジェンダーより劣っていると思う人間では決してない。私は、他の人に負けないほど進歩的な考えの持ち主だと思っている。であるが、たとえそうであっても、自分の息子が女の子だと知るのは非常に、非常に辛いことである。

まさにそう感じる自分自身に嫌悪感を感じてしまう。本当にそう感じている。そのような考え方は間違っているのは分かっているし、彼を(彼女をと言うべきか)ありのままの姿で受け入れるべきであることを分かっているし、これまでと同じように彼女のことを愛するべきであることも分かっている。頭では分かっているのだが、どうしても、息子が一緒に育った他の男の子たちと同様に成長してくれたらよかったのにと願わずにはいられないのだ。

最悪なのは、過去を知る人と会うときである。息子の昔の友達の父親たちと会い、彼に息子は最近どうしているかと聞かれるときである。正直になれたなら、私はそんな父親たちにこう言うだろう。息子はようやく本来の自分を発見し、幸せになれたと。そんな強い心をもった息子を自慢に思っていると。だが、私は嘘をついてしまう。真実を隠してしまう。性別を明らかにしなければならない代名詞を使うことを避けてしまう。彼らがあまり深く掘り下げないように願いながら、実行し慣れたカモフラージュの壁の陰に隠れてしまうのだ。

息子が大きくなるにつれて、私は彼が他の男子とは違うところがあると思ってきた。どのくらい根深いものかは分からなかったが、そういう印象は持っていた。そのヒントも目にした。それを無視しようとどれだけ頑張っても、そう考える手掛かりが目の前に出てきて、目を背けようとも否応なく目に入ってきたものだった。だが、息子はずっと黙っていた。彼が言ってくれたのは、大学に進んでしばらく経ち、すでに女性化する道に入り始めた後だった。

息子のベッドの下にパンティを見つけたときを思い出す。私は、息子にガールフレンドができて、それを隠しているのだと自分を納得させた。息子の顔に化粧の跡があるのを見つけた時を思い出す。息子のクローゼットの上のところに男性器の形をした玩具があるのを見つけた時を思い出す。それでも私は、そういう変わったことを説明するあらゆる可能性を信じこもうとしていた。そういう可能性がますますあり得なさそうに見えてくるにも関わらず。

とうとう息子が私に話してくれた時、私は驚かなかった。私自身が認めたがっていようがいまいが、ずっと前から私には分かっていたことだったから。そして、息子の告白に私は心暖かに、支援する反応を示した。私の世界に新しく娘ができたのだと歓迎した。その新しくできた娘を愛していると息子だった彼女に言った。私はその娘を誇りに思っていると伝えた。本当にそう伝えたし、誇りに思っていることも本当だった。

だが、それでも、私は彼女のことが恥ずかしいという恥ずべき気持ちから逃れることができずにいる。いかに心の奥深いところにその感情を埋め隠しても、依然としてその感情は存在し、私の思考に影響を与えている。願わくば、その感情を彼女から隠し通すことができればと思っている。理想としている父親のふりをしているのであるが、最後までそんな父を演じ続けることができればと願っているのだ。


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Fantasies and reality 「妄想と現実」 

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64_Fantasies and reality 「妄想と現実」

私は自分の人生がこんなふうになるとは思ってもいなかった。確かに、妄想はしていた。インターネットでストーリーを読んでもいた。夜。ベッドに横になりながら、そういうストーリーを実際に実行する想像をしてもいた。でも、それは単にそれだけのものだった。つまり、単なる妄想。決して実行するつもりなどなかった。

もっと用心すべきだったのだと思う。特に職場のコンピュータについては用心すべきだった。でも、私のブラウザの閲覧履歴が勝手に他の人の手に落ちるとは思ってもいなかったのだ。本当に全然考えていなかった。そもそも、どうしてそんなことが可能だったのだろう? 私は特に目立った人間ではなかった。重要な人間でもなかった。私は社内に何十人もいる会計士のひとりにすぎなかった。私のような人間が何をしてるかなんて、誰が気に留めるだろうか?

どうして彼らにバレたのか、いまだに分からないけれど、彼らは実際に見つけてしまった。すべてを知られてしまった。ブラウザの履歴やら、オンラインで投稿した写真(ごく普通の女性服を着た私自身の写真)やら、私が書いたストーリーのいくつかまで、彼らは全部見つけてしまったのだった。彼らは、すぐに私を破滅させることはしなかった。代わりに、選択肢を出してきた。実際に妄想通りの生活をするか、それともみんなに私の本当の姿をバラすかのどちらかという選択肢。

正直言って、最初は、これは、そもそも選択肢などとは言えないと思った。正気な人間なら、後者を選ぶ人間などどこにいるだろうかと。だけど、自分の新しい状況の現実に直面したとほぼ同時に、私は自分の選択がいかに間違っていたかを悟ったのだった。

想像すること自体は面白い。だけど、実際に、他の人にこんな品性を貶める境遇になることを強要されたり、辱めを受けたり、体に突き入れられたりするのは、まったく別の話しだった。

彼らは私を人間として見ていない。彼らにとっては、私は、彼らが職場で淫らな気持ちになったときに自由に使える玩具にすぎない。命じられるまま、ウイッグをかぶり、スーツを脱ぎ捨て、中のランジェリー姿の肉体を晒す。そして、私の男らしさ(の欠如)について様々な恥辱を味わわされた後、彼らを性的に喜ばすよう強要される。

この行為について、少しでも私に選択する余地があったら、多少は楽しいかもしれない。だけど、現状では、大半が楽しくもなんともないと自信を持って言える。多分、古くからの格言が正しいということだろう。つまり、何かを願うときには注意しないと、本当に実現してしまうよ、ということなのだ。



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Don't overthink it 「考えすぎるな」 

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64_Don't overthink it 「考えすぎるな」

「一体なに? 何するの?」 リックがシャワールームに入ってくるのを見てサムが大声を出した。「出て行ってよ!」

「俺はシャワーを浴びるだけだよ。何が悪いんだ?」 とリックは平然と答えた。

「悪いって? 何が悪いって?」サムは吐き捨てるように言った。「あんた、あたしと一緒にここにいるのよ。あんたは素っ裸。それにあたしも……裸なの。何と言うか……これって……」

「ちょっといいか? これってそんなに変なことじゃねえだろ?」とリックは答えた。

「遅すぎだわ」

「おい、おい。俺、初めて見るってわけじゃないんだぜ? もう、昨日の夜、ふたりっきりの時に、俺にしっかりじっくり見せたじゃないか?」 とリックは答えた。

「ちょっと待ってよ」とサムは両手を前に突き出して、彼の言葉をさえぎった。「昨日の夜のことは、起きてはいけない出来事だったの。いい?」

その出来事は、ふたりがシェアしている寮にリックが一日早く帰ってこなければ、起きるはずがない出来事だった。サムがランジェリを身にまとい、化粧をし、女性ホルモンにより変化した体をすっかり露わにしているところをリックが見つけなければ、起きようがない出来事だった。サムが諦めて、自分がトランスジェンダーであることを告白し、女性化した肉体をだぶだぶのバギー服の下に隠し続けてきたことを告白しなければ、起きるはずがない出来事だった。リックが非常に理解があり、サムに一緒にビールを飲もうと言いださなければ、起きるはずがなかったのは確かだった。

サムが言った。「ふたりとも酔っぱらっていたの。あたしはあんなつもりじゃ……」

「俺は酔っていなかったぜ」とリックがさえぎった。「それに、俺はアレで終わりにしたいとも思っていない。君の気持ち次第だけどな。だけど、昨日の夜のことから判断すると、君も俺のことを好きなんじゃないかな? だったら何が問題なんだよ?」

「ああもう、全部リストアップしなくちゃいけないの?」とサムは答えた。「第一に、あたしは本物の女の子じゃないの。いい? それ、ちゃんと分かってるわよね? それにみんなにもバレるわ。あなた、みんなに知られたくないでしょ?」

リックは、唇で、続きを言おうとするサムを黙らせた。長々と熱のこもったキスだった。それによって、一時的に、サムが思う多くの恐れをすべて黙らせた。ふたりがようやくキスを解いたときには、サムの手は無意識的にリックの長く太いペニスを優しく包んでいた。

「俺は気にしないよ。君は女の子で、俺は男だ。そして、俺たちは互いに好きだと思っている。考えすぎるなよ」


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Digging deeper 「深みへと落ちる」 

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64_Digging deeper 「深みへと落ちる」

彼女がボクにペニス拘束具を取り付けた時、こんなの間違いだと思った。でも、当時は、これは一時的で、すぐに外されるだろうと思っていた。あのプラスチックの拘束具をつけられ2週間ほど過ごしたら、後はすべて普通の状態に戻るだろうと。彼女はボクがしたことを許してくれて、元通りの普通の夫婦に戻れるだろうと。それは夢としては良いけれど、決して実現しない夢だと分かったのだった。

何日かという話が、何週間かに変わり、何週間かという話が何ヶ月かに変わった。彼女が拘束具を外してくれるのは、体を洗う時だけだった。最初は、拷問のように感じた。嫌で嫌で仕方なかった。不快そのもので、そう感じる理由はいくらでもあげられる。身体的な面で言えば、いつも、拘束具の存在を意識せざるを得ない状態にさせられる。その器具が局部の肌を擦る感覚に慣れた後ですら、その重さはいつも感じていた。あの器具があることを常に知らされる。では心理面では? 自分の妻に拘束具をつけられ、性欲をコントロールされていると思い知らされることは? それは、極度に去勢された気持ちにさせることだった。

そして、妻に家の中では彼女のランジェリを着るように言われてからは、事態は悪化の一路を辿った。ペニスをプラスチックの拘束具に締め付けられ、家の中では網ストッキングを履いて歩き回り、妻に「可愛い子ちゃん」といったペットを呼ぶような言い方で呼ばれる。そういう状態で自分は男だという気持ちでいることは難しい。さらに、妻に何ヶ月もビタミン剤として与えられてきたものが、実は、女性ホルモンだったのだから、男でいることはいっそう難しいものになっていった。

それを知ったとき、その場で家を出るべきだったと思う。本気で拘束具を外したいと思えば、外す方法がなかったわけではない。だけど、正直な気持ちで言うと、一年近く、そういう状態を続けていた後では、むしろ、完全に自由になることを少し恐れていたと思う。もし彼女が正しかったら、どうなるだろう? もし、ボクが本当に自制心の効かない人間だったとしたら、どうなるだろう? なんだかんだ言っても、ボク妻を裏切って、浮気をしてしまった人間だ。彼女の怒りも落胆も、当然のことだった。そして、その頃までには、ペニス拘束具をつけていることに、多少、居心地の良さを感じ始めていた。

もちろん、ボクは妻を愛してもいたし、妻にはボクのことを自慢にしてほしかったし、ボクのことを愛してほしいとも思っていた。だとしたら、拘束具を外したらどうなるのだろう? 外してしまったら、妻に愛されるなどありえないと思えた。だからボクは家に留まり、自分の運命を封印したのだった。

それから間もなくして、妻はボクにストラップオンを使い始めた。そして、それが始まってすぐに、ボクはそれを喜ぶようになっていった。結局、性的な解放はその行為を通してでしか許されていなかったわけで、ボクはそれにすがりついたのだ。他にどうしようもなかったのは分かってもらえると思う。

妻が愛人を家に連れてくるようになった時も、ボクはそれを受け入れた。これは妻の性的欲求を満足させるための手段だと。男たちは何の意味もないのよ、と妻は言っていた。単にセックスだけだと。ボクは彼女のことを信じた。拘束具に閉じ込められているわけで、ボクには夫の果たすべき義務を行えないのは事実だった。気に入らないことではあったけれど、理解はしていた。

そして今度は、ボク自身が男性の愛人を持つべきだと妻は言い始めた。ボクは反論すらしなかった。ボクは妻の命令に従うことにあまりに慣れていたので、拒否することなど、思いもよらないことになっていた。

ボクは次から次へと間違った選択をしてきた。その始まりはボクが浮気をしたこと。そこから次々にミスを犯し、穴の中、より深くへと陥ってしまった。そして今はどうなってるか? 今は、もう、この穴から抜け出せないと分かってる。かつてのような男に戻ることはありえない。それに、妻がこのちょっとした遊びに飽きてしまうのは時間の問題だとも分かっている。間もなく彼女は次の段階へと進むだろう。その時どうするか、ボクには何も考えがないのである。




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Destiny 「運命」 

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64_destiny 「運命」

「やだ、彼また裸になってる。あなた、彼をもうコントロールできないの?」

「彼は、もう、『彼』と呼ばれるのが嫌なのよ。知ってるでしょ?」

「どう見ても、彼は、もう、服を着るのも嫌になってるわね。彼を連れてくると、必ず毎回、こうなってる……」

「ええ。彼、失われた時間の埋め合わせをしていると思うのよ。そう思わない? 彼、乱れることが一度もなかったから」

「乱れる? トイレで手当たり次第に知らない男にフェラをするとか、理解できないわけでもないの。それとか、あなたの知ってる男の人を家に連れてきてエッチするとかもね。でも、これはどうなの? 最初に彼を一緒に連れあるいた時からずっと、この調子なのよ?」

「最初の時って、サマンサの独身女の会の時ね。覚えているわ。正直、後悔しそうになっているもの」

「こんなふうになるなんて、知りようがなかったものね。たいていの男なら、こういう状態になるって話しを聞いたら、速攻で拒否したでしょうね。こういうふうになることが彼の夢のひとつだったなんて、そんなのあなたに分かるわけなかったものね」

「ほんとよ。あたし、彼はずっとあたしにブラフをかましてるだけだって自分に言い聞かせていたわ。でも、その時、あのドレスを着た彼を見たわけ。あの男性ストリッパーのちんぽをしゃぶっている彼を見たわけ。その件についてあたしと話すことさえ必要なかったわ。分かる? 彼は女性の身体になりたいとすら言う必要がなかったの。あたし、彼の顔の表情を見ただけで一瞬にして分かったもの」

「ええ。すごいことだわ。びっくりするくらい。彼は、彼がなるべき人間になったわけよ。でも、あたし、彼がまた別のストリッパーのために、ああやってお尻を突き出すところを見なくちゃいけないと思うと……」

「彼を連れてくるのをやめればいいじゃない? 彼じゃなくて彼女か。正しい代名詞を使うことになれなくちゃいけないみたい」

「でも、置いていくと言うと、彼女、悲しそうな声で泣き出すのよ。それを聞いてごらん? むしろ、連れてきて、あの小さなモノがぷるんぷるん揺れ回るのを見る方がマシかなと思うから」

「まあ、そういうことよね。あたしたち、こういう光景をこれから何回も見なくちゃいけないように運命づけられているみたいね」


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Caught 「見つかる」 

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64_Caught 「見つかる」

「気持ちいいんでしょ、エッチねえ」 秘書のサマンサがあたしの奥深くにストラップオンを突き入れながら荒い息で囁いた。「ほら、気持ちいいんでしょ? 私の大きなおちんちんが大好きなのよね?」

「ええ!」 あたしは喘いだ。かろうじて聞こえるほどの小さな声で。「ああ、いいっ!」

誰も知らない。あたしは、もう何ヶ月も外面を保ち続けてきた。それに、サマンサを除いて誰もあたしが二重生活を送ってきたことを少しでも疑う人はいない。職場では高価なスーツに身を包み、その分厚い生地の下に女性化した体を隠してきた。かつては本物の男になりたいと願っていたが、職場ではそんな男になっているフリを続けてきた。だけど、それは嘘。それは本当ではない。

自分でも、見つかってほしがっていたのだと思う。だからこそ、女性になって外に遊びに出たのだと思う。だからこそ、近くのバーに頻繁に通うことにしたのだと思う。いつの日か、誰かに見つかって、あたしだとバレることになると思っていたに違いない。そして、それが現実になったのだった。サマンサは二度見するまでもなく、あたしだと気づいたのだった。

その場ですぐにカムアウトして、大人がするように事態に対処すべきだったと思う。そうしていたら、確実に、みんなあたしを受け入れてくれたと思う。今の世の中は、かつての世の中よりも、はるかに進歩的になっているでしょう? でも、あたしはそうしなかった。あたしは彼女に秘密をばらさないでと懇願したのだった。お願いと何度も訴えたのだった。そして、結局、サマンサは同意してくれた。ただ、いくつか条件をつけられて。

最初は簡単なルールだった。これからは男性用の下着を着ないこと。その代わり、彼女は男性的なスーツの下、高価なレース・ランジェリを着るように要求した。さらに驚くべきことに、彼女は毎日、それを着てるかチェックすると言い張った。

その要求で、自分がどれだけモノとして扱われる気持ちになったか、言葉にできない。けれど、あたしには選択肢はなかった。サマンサはあたしの人生を掌握してしまったのである。

あの時、あたしは、サマンサがもっと要求してくるだろうと予想すべきだったと思う。でも、あたしは、あまりに驚いてしまって頭が回らなかった。なんと、彼女は一緒に近くのホテルへ行くよう言ってきたからである。驚いた状態のまま、あたしは彼女にホテルの一室へと連れ込まれた。彼女はあたしに何を求めているのか、よく分からなかった。多分、もうちょっとドレスアップするとか、そいうことだろうと思っていた。でも、彼女がバスルームから出てきた時、あたしは気絶しそうなほど驚いたのだった。サマンサは素っ裸で、股間にストラップオンだけをつけた格好で出てきたからである。

それが、ほぼ半年前の出来事。今現在、サマンサはほぼ毎日あたしを犯している。ホテルに行くときもあれば、あたしのオフィスでするときもある。さらには、あたしの家に来たり、彼女の家に行ったりすることもある。そして、毎回、あたしは、モノ化される感情と諦めの感情と恥辱の感情のすべてが混じった感情を味わわされている。しかし、それに混じって、誇りの感情と喜びの感情も間違いなく味わっている。あたしは、その混沌とした感情が好き。それが大好きだし、同時にそれが大嫌いでもある。

あたしは、自分には選択肢が他になかったのだと自分に言い聞かせている。でも、それは嘘。現実はというと、選択肢であろうがそうでなかろうが、結局は、あたしはこうなっていただろうということ。その理由は単純で、たった一つ。サマンサにアレを突っ込まれているときほど、自分がオンナになっていると感じる瞬間がこれまでの人生でなかったということ。結局は、これこそ、あたしが本当に求めていたことなのだ。本物の女性になったように感じること。



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Better late than never 「遅れても言わないよりまし」 

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64_Better late than never 「言わないより、遅れても言った方がまし」

「何ということだ」 リックはあたしの裸の体を見つめた。彼の眼はあたしの過去を示す証拠にくぎ付けになっていた。あたしは笑顔を保ち続けた。できれば、そこは無視してほしい、見過ごしてほしいと願いつつ。

もっと早く言うつもりだったけれど、いつも今は適切な時ではないように思えた。それに彼を失うのが死ぬほど怖かったし。ああ、彼がそれを知ったら、すぐにあたしから逃げてしまうといつも恐れていた。いや、もっと悪いことになるかも、と。もっとずっと悪いことに。

以前、ある男性に、あたしがその人を騙そうとしていたと責めたてられ、ひどく殴られたことがある。路上で、傷つき血だらけになって倒れながらも、あなたの方があたしに言い寄ってきたんじゃないのよ、って指摘したかった。あなたが惹かれた相手がトランスジェンダーの女の子だったからって、あたしが悪いわけじゃない、って。でも、あたしは言わなかった。その男の偽善性に文句を言う勇気があたしにはなかった。

でも、そういう性差別主義的なコインにも表と裏があって、あたしは裏の面も経験してきた。男性の中には、あたしのまさにアノ側面を必要以上に気に入る人もいた。そして、それは、しばらくの間は、あたしにも楽しいものだった。あたしの脚の間についているモノで必要以上に崇拝されるのだけど、それが気分が良いと思ったこともあった。でも、そんな関係は本物じゃない。相手のフェチの対象になっているだけ。ちゃんとした人間同士の関係とは言えない。

「も、もっと早く言うべきだった」とあたしは言った。内心、彼はあたしの脚の間にあるモノなんか気にしない、100万人にひとりの男性でありますようにと祈っていた。あたしの本当のあたしを見てくれる人でありますように、と。あたしのことを普通の女の子として見てくれますように、と。

彼は落ち着かない様子であたしから目を背けた。「ああ、そうだよ。君は言うべきだったんだよ」

「ごめんなさい。あたし、どうしても……」

彼は急にあたしの方へ振り返った。あたしは彼のこぶしが飛んでくるかもと半分予想し、身を屈めた。「こういうことはやめるようにしよう、いいか? つまり、喧嘩なんかやめだ。君はずっと前に俺に言うべきだったということだけ認めてくれ。そして前に進むんだ、いいか?」

「と、というと、これでもいいの?」

「そんなので何も変わらないよ」 彼の声は前とは違って辛辣な、怒った調子ではなくなっていた。いずれにしても、あたしが最初に彼のことを疑ったということに、ちょっと腹を立てているようだった。

「いいか、もう二度と俺に嘘をつかないでくれ。俺は君のことを愛しているんだ、トリッシュ。本当に。でも、嘘をつかれるのも許せないんだよ」

「あたしも嘘をつかれるのはイヤ。誓うわ、もう二度とあなたに嘘は言わない」



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Beautiful justice 「美しい正義」 

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64_Beautiful justice 「美しい正義」

「これが? ……ウソ? ありえない」 ヘザーは、友達のメラニーに話しを求めて顔を向けた。「ウソでしょ? 本当なの?」 メラニーは頷き、ニヤニヤしながら言った。「リッキー、ほら、昔の彼女に今の自分を見せてあげなさいよ」

「でも……」

「ママに、また言うことを聞かなかったって言ってほしいなら、別にいいけど? あんたがまたあんな目に会うのを見るの、あたし、本当はイヤなのよねぇ」

リッキーの顔が青ざめた。「ダメ……」 彼はすでに自分からつるつるの脚に沿ってショートパンツを降ろし始めていた。「お、お願いだから。ママに何も言う必要ないでしょ。何でも言うことを聞くから」

彼は、それに続いてTシャツとパンティも脱ぎ捨て、素っ裸で、すべてをさらけ出しながら自分の妹とその友人の前に立った。とても18歳の青年には見えなかった。しっかりとホルモンを摂取し続けたおかげで、体はしっかり変化していた。

「カウチに上がって、いつもの姿勢になりなさい」とメラニーが言った。

彼は言い返さなかった。言っても無駄だろう。彼は言い返す代わりに、カウチに仰向けになり、脚を広げ、両膝を引き寄せた。

「見えるでしょ? 脚の間のちっちゃいの」 とメラニーが訊いた。

「ほ、ほんとにちっちゃい」 とヘザーは感嘆した。

それを聞いてメラニーは引きつった笑い声をあげた。「かろうじてちんぽと言えるかどうか? 彼、今は、大学であの娘にひどいことをしたこと後悔してるわね。絶対」

「私は何もしなかったわ! 彼女は嘘をついてるの、それに……」 とリッキーは声を上げた。

「うるさいわね!」 メラニーはそう怒鳴りつけ、その後、優しい口調になってヘザーに言った。「ひどいことに見えるのは分かるわ。それに、変態じみているのも分かる。でもね、ママはリックには特別な罰が必要だと思ったの。そして、これがママが思いついたお仕置き。あたし、これって、たぶん、パパがママを扱ったやり方と関係があるのかもって思ってるわ。分かるでしょ? パパが……姿を消す前まで、パパがママをどう扱っていたか。ママは、リックがパパと同じ道をたどるのは見たくないって言ってたわ。だから、こうすることに決めたって」

「で、でも、どうやったの? どういうふうにして……」とヘザーが訊いた。

「ホルモンよ。それも、ものすごく多量のホルモン。それに、もしリッキーが私たちが引いた線を踏み外したら、確実に牢屋送りにするって、彼は知ってるから。他の人の人生を完全にコントロールできるようになると、何でもできるって分かるわよ。驚くほど」

「こ、これっていけないことよ。悪いこと。あなたにも分かるでしょ?」とヘザーが言った。

メラニーは肩をすくめた。「それは、物の見方の問題じゃない? これまでずっと私をからかってきた性差別主義者のバカには、これが最適の懲罰だと思うわ。あなたも分かるんじゃない? あなたたちが付き合っていた頃、この男はあなたの写真をネットに出しまくっていたのよ? あなたは悪いことと思うのは分かるけど、これこそ、リッキーにふさわしいと思っているの。正義っていつも上品なものとは限らないわ」

「でも……」

「あなたにこれを見せたのは、あなたはこれを知る資格があると思ったから。あなたには、彼が適切に罰を受けているところを見る権利があると思うから。あのことが起きたとき、あなたは彼の手の甲をピシャリと叩いただけ。でも、あれじゃダメなのよ。もし、あなたがちゃんと対処できないなら、そうねえ……私のママは理解がある女性とは言えないわね。もし、誰かが密告したとママが知ったら、ママが何をするか私には想像できないわ」

「どういう意味?」 ヘザーの声は少し震えていた。

「つまり、誰かに知られたとしても、ここにいるリッキーは自分の自由意思でこれをやっているということにしろということ。自分で選んでやってると」

「もし、私が警察に直行したら?」とヘザーは訊いた。

「さっきも言ったけど、ママが何をするか想像できないわね。私はママほど創造性に富んでいないわ。まだ分からないなら言うけど、ええそうよ。これは脅かし。誰かに本当のことを告げ口してご覧。うちのママがあんたの世界をめちゃくちゃにするから」と言った後、メラニーは笑顔になった。「でも、あなたはそんなおバカなことしないわよね? 私たち友達だものね?」



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Be you 「自分になる」 

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64_Be you 「自分になる」

男に生まれたからと言って、男になるわけではない。

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Be careful what you wish for 「何を願うか注意せよ」 

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64_Be careful what you wish for 「何を願うか注意せよ」

「さあ、ポーズを決めてもらおうか」 ご主人様が言った。この人のことをご主人様と言うのは嫌なのだけど、彼を呼ぶための他の名前を知らなかった。それに、いずれにせよ、その呼び方は適切だった。そもそも、彼に従わないことなんて想像すらできない。これは明らかに彼が私の精神をいじった結果だろうけど。

私は、同じ囚われ仲間と一緒に並んで床に座り、体を後ろに傾けた。両肘で体を支え、両脚を広げる。その私たちを見て、ご主人様がめったに見せない笑顔を見せたのを見て、私は報われた気持ちになった。私も、どうしても笑顔を返してしまう。彼を喜ばすこと、それは私自身を喜ばすことよりも、嬉しいことになっている。

ご主人様は椅子のひとつに腰を下ろし、何か思い悩んでいるような顔で顎髭を撫でた。「私は気づいたよ。これは無意味だな。何もかもだ。お前たちのどちらも自分が誰か分かっていないだろう? この方が、お前たちをコントロールしやすいから良いだろうと思ったのだが。もちろん、コントロールの点に関しては私は正しかった。今、お前たちにお前たちの道具を返してやっても、お前たち、その使い方すら分からないだろう」

「ご主人様、私たち、何かご機嫌を損ねることをしておりますでしょうか?」と隣の囚われ人が尋ねた。彼女の名前は知らないが、彼女も私と同じなのは分かっていた。つまり、自分の意思に反して女体化された囚われ人。彼女の方が年上なのは確か。でも、私と彼女は同じ運命にあるという点で親近感があった。

「いや」と彼は手を振って否定した。そして、スキンヘッドの頭を撫でた後、話をつづけた。「お前たちは、自分が誰か知るべき時が来たと思う。お前たちふたりともだ」

私は息を飲んだ。知りたかった。だけど、答えを知るのがとても怖かった。必死に求めていたけれど、あまりに無力で知り得なかった答え。

「お前!」とご主人様は年上の囚われ人を指さした。「お前は伝説だ。いや、伝説だったと言うべきか。お前こそ、これを始めた者たちのひとりだ。この自警の文化をな。お前は無数の犯罪者たちを捕らえ、世界規模のプロットをふたつも潰した」

彼は立ち上がった。「みんなお前はすでに死んだと思っている。お前の仲間の英雄たち全員、そう思っている。実際、お前は死んだも同然だが。お前は、お前がかつて用いていたあの素晴らしいおもちゃも、今は使い方すら分からないだろう。だが、お前は、お前の仕事がすべて無効にされてきているのを知るべきだな。お前が駆除した犯罪者たちはどうなったか? 全員、罪を逃れたよ。いま彼らは、お前が街と呼んでいた汚水溜めを、事実上、仕切っている」

彼は次に私に目を向けた。「ああ、そして、その子分。か弱いはぐれ鳥。彼はお前を自分の翼の中に引き入れ、お前は自分から犯罪と戦う恐るべき戦士になって、彼の庇護に答えた。だが、お前は最初から弱味でもあったのだ。彼か? 彼はほぼ攻撃不可能。巨人であり神。アンタッチャブル。確かに彼に傷を負わせたり、殺すことも可能だったが、その精神力の強さが抜きんでていた。その精神力のおかげで、彼は、誰にも、宇宙人ですら敵わない強さを得ていた。彼の唯一の弱点はお前だったのだよ、小鳥のお前。お前こそが彼の失脚の原因になったのだ」

彼はしばらく黙りこくり、その後、話をつづけた。「今の自分たちの姿を見てみろ。バットマンとロビン、ゴッサムの庇護者。それが今は性奴隷になっている。お前の執事ですら今のお前たちを認識できるか、それすら疑わしい。そしてここにいる私はと言うと、涙が出るほど退屈している。争いごとはなくなってしまった。抵抗もない。お前たちはふたりとも破滅した。そして今の私は、次に何をしてよいか分からず途方に暮れているのだよ」


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An irresistable proposition 「抗しきれない提案」 

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64_an irresitable proposition 「抗しきれない提案」

「マーク? 何を……ここで何をしてるんだ? それに何を着てるんだ?」

「スカートよ。お気に召さない?」

「それは……いいと思うが。でも、私は…ちょっと待って、なんで、スカートをめくりあげてる?」

「面倒くさいことはカットしていいのよ、アンドリューさん。あたしたちふたりとも分かってるはず。あなたがこれを求めているって」

「私が何を求めてるって? 君は……」

「もう何年も、あなたがあたしを見るときの目つき、あたし、知ってるの。あなたが何を思ってるのか知ってるのよ」

「何のことを言ってるのか……」

「あたしは18になったわ。だからもう我慢する必要がないの。あなたは、好きなようにあたしのことを奪ってくれていいの。どんな形でもいいの」

「でも君は……君はうちの娘のボーイフレンドじゃないか!」

「あたし、今だけは、あなたのガールフレンドになりたいの。いけないことなの、アンドリューずさん? ずっと何年もあたしを見ては思い続けてきた、いやらしくて、エッチなことあるでしょう? それを全部やりたいと思わない?」

「いや、それは……」

「できるわよ……」

「いや、しない。したくないんだ。やってはいけないんだ」

「やりたいって思ってるくせに。ただ、やっちゃえばいいの。誰にも分からないから。お願い、アンドリューずさん。あたしたち出会った時から、こうなることを夢見てきたでしょう? それを認めてしまって。あたしは歓迎してるんだから。あたしを抱きたいんでしょ? あたしが欲しいんでしょう? あなたのズボンの中のモノは、もう観念しているみたいよ?」

「わ、私は……本当に誰にも知られないだろうか?」

「あたしたちが知ってほしいと思うまでは、誰にも」


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Accidental 「誤送信」 

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64_Accidental 「誤送信」

あいつはわざと写真を送ってきているのだろう。もちろん、あいつに言っても、絶対に認めないだろうが。間違って送信したとするには頻度が多すぎる。あいつは、そうすると私がどれだけ怒るか知ってるし、あいつが下した人生の決断に私がどれだけがっかりしてるかも分かっている。分かっててやっているのだ。

「あいつ」のことを「あの娘」と、女性の表現で呼ぶべきなのかもしれない。少なくとも、そうすべきと周りから言われている。だが、20年間もあいつのことを自分の息子と思って過ごしてきたのだ。いまさら変えることなどできない。あいつがどれだけ体を変えてしまおうが、どんな服装をしようが、あいつは私にとっていつまでも男の子なのだ。

もちろん、あいつは私のことを憎んでいる。だからこそ、こういうことをするんだろう。風俗で働いたり、ストリップをしたり、まるっきり体を変えたり。すべて邪悪な父親への仕返しでやってると私は納得している。確かに、あいつにとって、この仕返しは大成功だろう。私は、うちの家族の薄汚い秘密がいつの日か誰かにバレるのではないかと、恐れている。どれだけ私が恐れているか、誰にも言えないほどだ。

確かに、そんなことを無視するのは実に簡単だろう。あいつはこの国の反対側に住んでいるので、そもそも、私には息子なんかいないとシラを切り通すことは簡単だ。ただ、あいつがこういう写真を「間違って」送ってくることがなければの話しだが。あいつが送ってくる写真は、みな同じだ。あいつは、素っ裸になって、女性化した肉体を余すところなく露出し、知らない男たちに囲まれて弄ばれている写真だ。

こんな写真、すぐに削除すべきなのだろう。だが、私にはそれができない。なぜか、何度も開いては、繰り返し見てしまう。何枚も連続して見続けてしまう。息子がどんな姿になってしまったか、どうしても見たくなってしまうのだ。どうしてもやめられないのだ。



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A very good thing 「とても良いこと」 

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64_a very good thing 「とても良いこと」

「あなたの体って、まさに、こうするためにできてるのね」とレニーは自分のボーイフレンドに微笑みながら言った。「あなたも、そう思ってるんじゃない?」

チェイスはおどおどしながら、レースのランジェリの裾を握りしめた。それにより、彼の男性自身が露出した。「これがよいことか悪いことか分からないよ」 彼は普段は強圧的な言い方をしていたが、この時の声はその面影は皆無だった。

「アハハ、あなたは人生での自分の立ち位置を発見したの。だから決して悪いことじゃないわ」

「僕の立ち位置? そんな……これは一回限りのことだよ、レニー。僕は決して……」

「バカ言わないで。あなた、びっくりするほど素敵よ。あたしが思っていた通り」

「でも……」

「認めなさいよ。あなたも気に入ってるのよ。そうじゃない理由がないもの。何年もの間、あなたは他の男たちとの『比較』ばかり気にしてきた。そうじゃない?」

「僕は、べ、別に……」

「でも、今は、あなたがどれだけ小さいかとか気に病む必要はないの。どれだけ可愛いかとか、顔かたちがどれだけ女性的かとか、そういうことに悩む必要がなくなったのよ。それらは全部、良いことに変わったの」

「ぼ、僕は別に…自分では……君は僕が小さいと思っていたの? いつも、ちょうどいい大きさだって言ってくれてたけど」

「うーん……あなたの気持ちを大事に思って言ってったのよ。男の人ってそうでしょ? あそこの大きさとか、誰が男らしいかとかに囚われちゃってる。でも、今はどう? 私にはあなたは女の子の仲間になっていると見えてるわ。だから、あそこの大きさなんて、そんなことを気にしなくていいんじゃない?」

「で、でも……分からないけど……これって永久ってわけじゃないんだよね? 君がこういうのを着てみたらと言うものだから、試しただけだよ。今回限りで……後は……」

「でも、あなたのその姿を見ると、私があなたに試してほしいと言ったのは正解だったと思うわ。あなた、美しすぎる。その美しさを男性の仮面の下に隠しておくなんてできないわ。それほどきれいなのよ。セクシーだし。とても女っぽいの」

「でも……」

「大丈夫、リラックスして。そして、これを楽しむのよ。良いことなの。とても良いことなの」


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A small surprise 「小さなサプライズ」 

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64_A small surprise

彼女がいつからそこに立っていたのか、あたしたちを見ていたのか分からない。ドアが開く音が聞こえなかった。それほど夢中になっていたということかも。

「それで」 彼女の声に恐怖心が高まった。「あんたたち、ここで、こんなことしてたわけね?」

氷のように冷たい水をバケツ一杯、頭から掛けられた感じだった。

「あんたこそ、いったい誰よ?」 とレアが訊いた。レアはあたしの脚の間にいて、お気に入りのディルドをあたしのお尻に挿し込んでいたところだった。もちろん、あたしもレアも素っ裸だった。「それに、あんた、あたしの部屋で何しているの? 誰が入っていいって言ったのよ?」

「私はチャドの彼女よ」 とサマンサが叫んだ。

「チャドって誰よ?」 とレアが声を荒げて言い返した。あたしはベッドや床を透過して消え去りたかった。気まずさがどんどん増してくるこの状況から逃げたかった。

サマンサは引きつった笑い声をだした。もちろん、その笑い声は嬉しさとか面白さとは関係がない類の笑いだった。「あんた、彼の名前すら知らないの? なのに、それを……そんなものを彼の中に入れてる。彼が誰かも知らないのに」

「あんた何なのよ……ほんとに……」 レアはそうつぶやき、あたしに顔を向けた。「どういうこと、ゾーイ?」

「ゾーイ……。あんた、ここではその名前で呼ばれてるの?」 とサマンサが言った。

「ぼ、……ぼくは……」 混乱した頭で考えをまとめることができず、あたしは口ごもった。「分からない……」

「もう、あんたは黙っていて」とサマンサがさえぎった。「私が代わりに説明するから。ここにいるチャドは…」と彼女はあたしを指さした。「彼は、たぶん、故郷にガールフレンドがいることをあんたに言わなかったんでしょう? 彼は野球選手になる奨学金でこの大学に入ったことも、あんたに言わなかったんでしょう? それに……」

あたしは何とか勇気を振り絞って、叫んだ。「お願い、もうやめて、サマンサ! あたし……あなたに言うべきだったわ……」

「あんたが、シシーだったと?」

「あたしが女の子だとよ! あたしはずっと前から女の子だったの。ただ……どうしたらいいか分からなくて……地元ではカムアウトできなかったのよ。ここに来るまでできなかったの。ほ、本当にごめんなさい……」

「ごめんなさい?」 とサマンサはあたしの言葉を繰り返した。「それってどういう意味よ? あんたは、最初の日から嘘をついてきたということ? 私たちが出会った最初から、嘘を? それで、あんたは、私にそれでもかまわないと言ってほしいわけ? そして、地元を離れてここに来たらすぐに、他の女と寝ていると。ごめんなさいと言えば、それで済むと思っているわけ? 最低ね、チャド。最低ね、ゾーイ。あんたが他に何と呼ばれてるか知らないけど、あんたって、最低!」



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A real girl 「本物の女の子」 

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64_A real girl 「本物の女の子」

「わーお!」 とエリックが言った。「何て言うか…わーおだよ。君がスーツの下にこんなのを隠していただなんて、想像もできなかった」

「誰にも言っちゃだめよ」とライリーは答えた。「分かった? 大丈夫? さもないと……」

「もちろん、誰にも言わないよ。でも……ちょっと聞いてくれ。多分、俺には全然関係ないことなんだろうけど、いったいなぜ? なぜ、普通にしなかった? なぜ、そのまま、やってしまわなかった?」

「本気で言ってるの? 2時間くらい前にあたしを見たときに、自分がどんなことをしたか考えてみてよ。あなた、ホテルのバーの真ん中で大騒ぎをしそうになっていたのよ」

「いや、そのつもりはなかったんだけど……」

「あたしを辱めようとしていたわけじゃないのは分かってるわ。でも、結果的に、あなたはそうしてたの。それに、あなたはあたしの親友なわけだし。職場の人たちが何と言うか考えてみて? あたしのことを嫌ってる人たちが何と言うか、考えてみて? あたしの仕事を狙ってる人のことを考えてみて? あたし、破滅しちゃいうじゃない、エリック。あなたは、それが分かってるはずなのに」

「でも、君は、とても、素敵だし。大丈夫だよ、誰も気にしないって。君はまさに……何と言うか…」

「本物の女の子に見える、でしょ?」 とライリーが答えた。「そう言いたかったんでしょう? あたしは本物の女の子なの。ちょっとだけ余分なものがくっついて生まれただけ。そこのところが、あなたが全然分かっていないところなのよ。その点こそ、誰も理解したいと思わないところなのよ」

「でも……」

「あなたがそのつもりで言ってるんじゃないのは分かってる。でも、それって傷つくの。何が言いたいっかっていうとね、こういう出張の機会。あたしにはこれだけなのよ。1ヶ月に2夜だけ、その時だけ、あたしは本当のあたしになれるの。トーリもいないし、友達もいない、ただあたしだけ。本当のあたしになったあたしだけ、なの。なのに、そんなところで、あなたがいきなりバーに入ってきた。そして、こともあろうか、あたしに言い寄ってくどき始めた。あなた、あたしが誰かすら分からなかったわよね、エリック」

「じっくり見たら分かったけど」

「ええ、知ってるわ。でも、ちょっとだけ、あたしは別の現実世界にいるように思ったの。分からない? あたしがごく普通の女の子になっている世界。どこにそんな世界が……」

「そういうわけで君は僕を誘って、ここに連れて来たんだね? そういうわけで君は素っ裸で僕の前に立っているんだね? そうだろ?」

ライリーは笑いながら肩をすくめた。「だとしたら、何なの?」

エリックは前に進んだ。「僕に関する限り」すでにライリーから数センチのところに来ていた。「今夜は、君は、僕がバーで引っかけた女の子に過ぎないんだが。君がそれでオーケーならの話しだけど」

ライリーは彼の胸にもたれ、囁いた。「オーケー以上よ」


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